俺はキヴォトスの先生!そこら辺にいる一般男性だ!
……
「はぁ…」
書類整理の疲れを紛らわすために爽やかに自己紹介でもしてみようと思ったがそこから何も得ることはなくただ虚しさが胸の中で木霊するだけだった。
「どうしたんですか先生?ため息なんかついて」
この青髪に大きな白リボンがトレードマークのパッと見小学生にしか見えなくランドセルが似合いそうな女の子はアロナ。いつも青い封筒を俺の机に叩きつけてくる宿敵とも言える存在だ。アロナァ!
「むむ…!?先生からの敵意を感じます…」
「あぁ、ごめんごめんちょっと疲れが溜まっててね。」
「先生はいつも頑張りすぎです!休憩も仕事の効率を良くするためには大切なことですよ。」
「ありがとう。じゃあちょっと休憩がてら録画していたテレビ番組でも見ようかな。アロナも見る?」
「見ます!」
うぉぉぉぉぉぉぉん!気がつけば俺は泣いていた。隣にいるアロナは多分ドン引きしているだろうが、今はこの溢れる感情を制御出来ない。
「面白すぎたよ仮面ライダーギーツぅ!」
やはり仮面ライダーとはいい物だ。所詮は子供向けの番組だと軽視されがちではあるが、男のロマンが詰まっているし、何よりもかっこいい。今しがた見終わったばかりの物語を振り返りつつ、自分の中の少年が抑えきれないほど肥大化しているのを感じた。そうして自分の中に一つの衝動が生まれたのを感じた。
『仮面ライダーになりたい』
男の子なら誰もが1度は夢に見る、そして大人になっていくに連れて失っていく。そんな欲望が自分の中に湧き出ていた。
「なあアロナ」
「どうしました?先生。」
「クラフトチェンバーってさぁ…あるじゃん?」
「ありますね。」
「なんかあれって家具とか作れたりするじゃん?」
「作れますね。」
「本当に変身できる仮面ライダーのベルトとかって作れたりしない…?」
「作れますよ。」
「ファッ!?」
♢
という訳でクラフトチェンバーに俺の私物であるDXデザイアドライバーを突っ込んでみた結果見た目は何も変わらないが明らかに《本物》であるデザイアドライバーが出てきた。何を持って本物と判断できるのかは分からないが俺の本能がそう感じとったのだからきっと本物なんだろう。
「ふおぉぉぉぉぉぉ!」
「これが、俺の戦う力…」
「先生、喜びすぎてちょっと気持ち悪いです…」
「よし、今すぐにでも変身しようそうしよう!」
敵もいないところで変身をお披露目しても味気ないので先生という立場上あってはいけないのだが事件が起こるのを待ち望んでいた。ご都合主義というものだろうか、数分と待たずしてシャーレのオフィスのドアが勢いよく開き、青髪でツインテールのスーツを着た太ももの太ってぇ女の子が慌ただしく入ってきた。
「先生、ちょっと力を貸していただけませんか?!」
「ユウカ、何があったんだい?」
「エンジニア部の作った高性能自立型戦闘オートマタが暴走したんです!」
またか…と普段なら頭を抱えていた事だろう。しかし今の俺にはドライバーがある。
「そうか!早く行こう!」
「先生、やけに楽しそうですね?」
「ああ、すまない。とりあえず案内してくれるかな?」
「はい、こっちです!」
溢れんばかりの喜びを隠せなかった事を恥じつつ、浮き足立ちながらも現場に向かう。
♢
現場を着くと、そこでは夥しい数の銃声が響き渡り崩壊した建造物がチラホラと見える
「うわぁ…ん?あれってゲーム開発部じゃ…?」
「うわぁぁぁぁぁん!あっ先生助けてぇぇぇ!」
目が合うや否や飛び込んできたモモイを筆頭としたゲーム開発部の子達は破壊の限りを尽くすオートマタの対処に困っていたようだ。
「なるほど、だいたい分かった。」
「先生指揮をお願いします。」
「いや、ここは俺に行かせてくないか?ユウカ。」
『はぁ??!』
ゲーム開発部の皆とユウカは皆口を揃えて驚いた。ちょっとその声量でチビりかけたがそんなことはどうでもいい。
「あの強そうなオートマタと戦うって…死にたいんですか?!」
「いや、俺には作戦がある。」
「だとしても…「行かせてくれ。」」
「うっ…危なそうだったら皆で止めますからね!」
「分かった。ありがとう。」
そして俺は巨大オートマタの目の前に立ちはだかり例のドライバーを取り出し、IDコアをセットする、
《ENTRY》
とドライバーからシステム音が鳴る。
「そういえば俺もギーツのコアIDで変身できるのか?まあいいか。」
そしてドライバーを腰に当てる。そうすると、ドライバーからベルトが伸び、自動で腰に巻き付く。
(うわ〜!ほんとに今から変身しちゃうんだ!)
そしてマグナムレイズバックルとブーストレイズバックルを取り出しデザイアドライバーの両サイドにセットする、
《SET》
待機音が鳴り出し、俺は右手を大きく回し、キツネの形を作り顔の前に持ってくる。そして手を前に突き出し、指をパチンと鳴らし…
(言うのか?ついにあの言葉を言うのか?!)
「変身!」
(ついに言ってしまったぁぁぁ!)
変身の掛け声の後、マグナムレイズバックルのシリンダーを思いっきり回し、トリガーを引く、そしてブーストバックルのハンドルを2回捻る。マグナムレイズバックルからは数発の弾丸が発射され、ブーストバックルからは炎が吹き出す。
(あっっっっっつ!あの炎ただのエフェクトじゃないのかよ!)
ブーストバックルから放出された炎が思いのほか熱かったのに驚いたものの直ぐに変身待機のポーズをとる。
《DUAL ON》
壮大な音楽と共に変身が始まる。謎の光と共に体が真っ黒なアーマーで包まれ、自分の両隣にはアーマーが生成され、機械的なアームがそのアーマーを自分の元に引き寄せ、上半身にはマグナム、下半身にはブーストのアーマーが装着された。
《GET READY FOR BOOST! AND… MAGNUM》
《READY…FIGHT》
変身音が鳴り終わると、俺は体を軽く動かし変身後の勝手を確認する。
『えぇぇぇぇぇぇぇぇ?!』
「先生、その姿は…その力はなんですか?!」
みんなが驚き、視線をこちらに向けている。注目されるというのはこんなに気持ちの良いものだったのか。それはチャンスだと思い極限までかっこをつけるべくクールに、簡潔に、一言だけ口を開く。
「仮面ライダーギーツ。この言葉を…お前は信じるか?」
(決まったぁぁぁぁぁぁ!今の俺絶対かっこいいだろ!)
「先生、かっこいい!」
「先生は仮面勇者だったんですね!」
「仮面勇者?」
「はい!アリス、この前テレビで見ました!普段はヘイローを持たず戦う力を持たない人間が、仮面を付けて戦うんです!」
「確かに今の先生そっくりだね!」
ゲーム開発部のみんな…主にモモイとアリスからの賛辞の言葉を噛み締めながら、顔だけないアバンギャルド君のような見た目のオートマタと相対し、戦いの火蓋を切るかのようにオートマタが射撃を始める。一瞬反応が遅れた俺は回避が遅れ、弾丸を数発もろに食らってしまう。
「あっっっぶねえな!いきなり撃つなよ!」
「先生…さっきまでのクールさが台無しだよ…」
変身後はクールに戦おうと思ったのに出鼻をくじかれてしまった。腹が立ったので変身後いつの間にか手に持っていた白を基調とした銃《マグナムシューター40X》を何発か撃ち込む。
「あんまり効いて無さそうだなぁ」
オートマタは一瞬硬直したが、直ぐにこちらに向かって黄金比を象った盾を構えつつ肩から生えたアームに接続されたアサルトライフルを乱射しながら向かって来る。
「2度同じ手は喰らわん!」
下半身アーマーのマフラーから炎を吹き、勢いよく加速し、銃弾を避けつつマグナムシューターから発射される弾丸を撃ち込んでいく。
(はっや!これどういう原理で動いてるんだ?)
「やっぱり硬いなぁ…あれを使うか…」
本物の仮面ライダーギーツの戦法…もといテレビでの戦い方を思い出した。マグナムシューターに畳まれて格納されていた銃身を引き出し、ハンドガンモードからライフルモードに切り替える。
《RIFLE》
スコープを覗き込み、装甲が薄いであろう関節部分を狙い撃つ。
「どんな強靭な鎧も関節部分は装甲が薄くなっていると昔から相場が決まっている…はずだ。」
「先生、ちょっとダサいよ…」
何とか立て直そうとセリフを発してみたがやはりかっこがつかないようで即座にモモミドコンビに指摘されてしまった。だが実際に関節部分への攻撃は聞いているようで、装甲へのダメージが顕著に現れている。
「よし、このまま決め切る!」
ベルトに装着されてるマグナムレイズバックルを取り外し、マグナムシューターに装填する
《MAGNUM》
機械的な待機音がなり、銃口にエネルギーが集中するのが分かる。そしてオートマタの心臓部であろう部位に照準を定め、トリガーを引く。
《MAGNUM TACTICAL BLAST》
貯められたエネルギーとともに銃弾が発射され、オートマタを貫く。
稼働に必要なエネルギーが供給されなくなったオートマタは事切れたように動かなくなり、何か知らんが爆発した。
「あああああああ!私たちの部室がぁ!!!」
なんかモモイが泣き喚いてるが、気づかなかったことにしよう。爆発したのは多分俺のせいじゃないし。うん、それがいい。
ベルトからレイズバックルを取り外し、変身を解除すると、アリスが憧れの人物を見つめるような眼差しでこちらに向かってきた。
「先生、本当に勇者みたいでかっこよかったです!!アリスともいつか一緒に戦いましょう!」
「うん、最強の勇者パーティーになること間違いなしだね。」
この後エンジニア部は全員で壊れた施設の再建築の刑に処した。