「いやぁ、戦う力があるってのは気持ちがいいなあ」
「先生、たしかにかっこよかったですけどあんまり調子に乗るとそのうち痛い目を見ますよ?」
アロナは私の戦い方を褒めつつも、少し心配そうにこちらを見ていた。
「まあ、何があってもスーパーAIのアロナさんが守ってくれるんでしょ?」
「もちろんです!ですがあまり無茶なことはしないでくださいね?」
「それは…約束しかねるな」
「先生〜?」
すこし呆れたようなアロナの視線が痛いが、せっかく手に入れた力は使わなくてはもったいないと思い、おもちゃを譲らない子供のような気持ちでいた。
「ライダーの力はたしかに強力ですが、万能な訳では無いんですよ。テレビでも言ってました」
「確かに力に溺れたライダーが良い結末を迎えることはあんまりないな…善処しよう」
「それでいいんです!まあ、何かあってもこのスーパーAIのアロナちゃんが守ってあげますけどね!」
(アロナはかわいいなあ」
「ふぇ?!せ、先生!そういうことは私ではなく生徒さんたちに言ってあげてください!まあ、悪い気はしないですけど…」
どうやら心の声が漏れてしまっていたようだ、気をつけないとな…
「ところで先生、次はなんのライダーに変身するんですか?」
「あれ、アロナも案外乗り気だね」
「当たり前です!先生に無茶はしてほしくないですが、戦う先生の姿はかっこいいので!」
こいつ絶対俺のこと好きだろ…などとしょうもないことを考えつつ、アロナの質問に対する答えを探す。
「前回はテクニカルに戦うギーツだったし、今回は力押しで戦う感じのライダーがいいかな?」
「なるほど、せっかくデザイアドライバーを作ったので、ゾンビバックルを使ってはどうでしょう?」
「なるほど、バッファか!」
次に変身するライダーが決まったのですぐさまクラフトチェンバーの置いてある部屋に向かって歩いていく。
「行ってこい!ゾンビレイズバックル!」
「バッファのコアIDも入れとくか…」
クラフトチェンバーに手持ちのDX玩具を入れ、数分待つとデザイアドライバーと同様に、見た目は変わらない本物が出てきた。
「ほんとにどういう仕組みなんだ?」
見た目は変わらないと言ったが、サイズは少し大きくなっている。恐らくプロップサイズというものだろう。
「よし、なんか事件でも探しに行くかぁ」
「そんなんでいいんですか先生…」
♢
「先生 in アビドス!」
「テンション高いですね先生」
「まあ、新しいフォームに変身するのが楽しみだからね」
とりあえず学校の方に向かって歩いているとカイザーコーポレーションの子会社であるカイザーローンのお偉いさんと猫耳の生えた黒髪の女の子が口論しているのを目撃した。
「今月の支払い分はこれで足りてるでしょ?!」
「これでは利息分が全然足りませんよ」
「はあ?!利息分合わせて先月までこの金額だったじゃない!」
「今月から金利が上がるとお話したはずですが?」
「聞いてないんだけど?」
どうやら借金の返済額がどうのこうので揉めてるらしい
「やあセリカ、どうしたんだい?」
「あ、先生!こいつらがまた卑怯なことを…」
「いえいえ、卑怯なことなんてしてませんとも。れっきとした契約内容に基づいた正当な請求です。今この場でお支払い頂けない様でしたら武力行使も辞さないですよ。」
お偉いさんがそう言うと、後ろに止めてあった車両からゾロゾロと武装したオートマタの軍が出てくる。
「なっ…先生、ここは一旦逃げるわよ!」
「いや、ここで戦おう」
「戦おうったって私一人しか居ないし…勝ち目ないわよ!」
「いや、セリカ一人じゃない。俺とセリカの二人だ」
「何言ってるの!変なこと言ってないでさっさと逃げるわよ!…先生?何持ってるの…?」
セリカの言っていることの方がこの状況では最適解だということは一目瞭然だが、俺は手に入れた玩具で遊びたくて仕方がなかった。
《DESIRE DRIVER》
♢
「うへぇ、セリカちゃんがまたカイザーの奴らに絡まれてるって聞いたんだけど大丈夫かなぁ」
「ん、セリカならきっとなんとかする」
「なんとかするったって…ねぇ…」
「ん、見つけた」
銀髪で獣っぽい耳の生えた少女…砂狼シロコは何かを見つけると急に走り出した。
「うへぇ、シロコちゃん急に走り出さないでよ〜。おじさんは足腰が弱いんだから…って先生とセリカちゃん?」
「ん、武装した軍団に囲まれてる。助けに行かないと」
「ちょっと待ってシロコちゃん…先生が持ってるあれ、なんだと思う?」
♢
紫色の角の生えた凶悪そうな生物の顔が書かれたIDコア…仮面ライダーバッファのIDコアをドライバーにセットする
《ENTRY》
腰にベルトを巻き、ゾンビレイズバックルを取り出し、ドライバーにセットすると、少し不気味な鐘の音と共にシステム音が鳴り響きら待機音が流れ始める。
《SET》
(前回はギーツのコアで変身したけど違うコアでも変身できるのか?まあ、そこら辺は融通が効く感じなんだろう)
左手で右肩の汚れを落とすように手を払う、そして手を顔の横に持ってきて〝あの言葉〟を口にする。
「変身!」
ゾンビレイズバックルの側面に着いてる鍵の取っ手を回し、戻す。
《GRAB! CLASHOUT!》
《ZONBIE》
謎の光に体が包まれ、ギーツの時と同様体が黒いアーマーに包まれた後、バックルから紫の毒々しい色の液体が漏れだす。そして出現したどこか人の骨を思わせるようなデザインのアーマーを機械的なアームがこちらに引き寄せ、装備される。
《READY…FIGHT》
(なんか紫色の液体足にかかったんだけど!かぶれたりしないよね…?)
そういえばテレビでもなんか出てたなと思いつつ冷静を装う。
「せ、先生なの…?」
「俺は仮面ライダーバッファだ。」
「どういうこと…?まあ、いいわ。先生も戦ってくれるならこんなやつら楽勝よ!」
♢
「ん、先生、かっこよくて強そう」
シロコは先生の変身後の姿が好みだったようで、元々少ない口数がさらに減り、先生に見蕩れていた。
「せ、先生…?うそ、先生があのばけもの…?嘘だ、そんなわけ…」
「ん、先輩、顔色が悪い。少し休んだ方がいい。」
先生の変身を見終わったホシノの顔は青ざめていて、体の震えが止まらない様子で、まるでトラウマを掘り起こされたかのようだった。
「先生、嘘だよね…?」
♢
「全員吹っ飛べ!」
マグナムシューター同様、変身後いつの間にか握っていた紫色のチェーンソー《ゾンビブレイカー》を横になぎ払い、近くにいたカイザーの兵士を一気に倒す。
「まだまだ行くぞ!」
「せ、先生強すぎない?」
調子に乗って敵を薙ぎ払っていくと、目の前に急に壁が大きな地響きと共に現れ、砂埃が舞う。
「チッ…盾持ちか!」
「先生、私がサポートするからさっさとこんな雑魚倒しちゃって!」
「ああ、さっさとぶっ潰してやる!」
何度かゾンビブレイカーで盾を攻撃するが、大きさの差なのか、全く動かない。
「さっさとやっちまうか…」
「先生、さっきからいつもとキャラ違くない?」
かなり痛いところを突かれてしまった。だって変身したらキャラ作りたくない?
そんなしょうもない事は後で考えるとして、とりあえずはこの現状を打破する方法を考えながら、ゾンビブレイカーに視線をやる。あっそういえばこの武器にもギミックがあったよな…〝あれ〟やるか
ステップを踏み、敵から軽く距離をとる。ゾンビブレイカーの剣先を地面に向け、右足の裏でゾンビブレイカーの黒いカバーを踏みつけるように蹴り、剣先方向にスライドさせる。
《POISON CHARGE》
(このカバーなんも役割果たせてないよな…)
ゾンビブレイカーの刃が紫色の光を纏いながら高速で回転し始める。その状態で何度か相手の盾を切りつけると、先程よりは効いている様で、盾持ち兵の巨体が少しバランスを崩す。このタイミングを逃すまいとゾンビブレイカーを相手の盾に押し付け、トリガーを引く。
《TACTICAL BREAK》
ゾンビブレイカーの纏う光が紫色からオレンジに変わり刃の回転がより早く、より力強くなる。そのまま勢いに乗せてゾンビブレイカーを振り抜くと、巨体の兵が持っていた盾諸共相手を破壊した。
「先生、危ない!」
「え?まずい!」
盾持ちを倒すことに集中しすぎて気づいてなかったが、先程よりも敵が増えている上、戦車まで出撃してきている。
「おいおい、ちょっとまずいんじゃないか?」
急いで射線を切ろうと走り出すが、人数差的にも分が悪い
「ピンチはチャンスだ!あれやってみるか」
ドライバー上部のボタン《リボルブアンロック》を押し、ドライバーを勢いよく回す。
突如、体が宙に浮いたと思えば視界の上下が反転する。
「先生…それどうなってるの?!」
「俺もわからん!こわいこわい!」
一瞬視界が暗転したり手足の感覚がなくなったりしてぶっちゃけめっちゃ怖かった。
「おぉぉぉぉぉぉ…お?」
リボルブオンが終わったことを表す軽快なサウンドが鳴ると共に視界や手足の感覚が戻ったことを確認する。
「痛くなくてよかった…どの道怖いからもうやりたくないけど」
「先生の上半身と下半身が入れ替わって…????」
リボルブオンを初めて見たであろうセリカは今自分が見たものが何なのか脳の処理が追いついていないようで頭の上には?マークが浮かんでいて宇宙猫のような顔をしている。
(まあそういう顔になるよな)
「っと、そんな悠長にしてられないな」
ブーストバックルを取り出し、ベルトが回転した事で空いた右サイドのスロットにセットする
《SET》
そしてブーストバックルのハンドルを2回捻り、ゾンビバックルの鍵を回す。
《DUAL ON》
《DESTROY! CLASHOUT!》
《ZONBIE AND BOOST》
出現したブーストのアーマーがいつものアームによって装着させられる。
《READY FIGHT》
腕のアーマーのマフラーから火を吹き、相手に向かって行く。
今度はゾンビブレイカーを使わず、ブーストの速さとパワーから繰り出される強力なパンチで相手をなぎ倒していく。
(パンチからしてはいけない音鳴ってないか?これ)
「先生、凄い…!敵がすごいスピードで減っていく…」
見る見るうちに相手の兵力は減っていき、残すは戦車1台となっていた。
「戦車…パンチじゃ壊れないよなぁ…しょうがない、ブーストバックルとはここでお別れだな」
変身時と同じようにブーストバックルのハンドルを2回捻る。
《BOOST TIME》
壮大な待機音と共に赤い牛の形をしたブーストライカーがどこからとも無く走ってきたので、それに飛び乗る。
(やっべ…バランスとるのムズい…)
ちょっとバランスを崩しそうになるが何とか姿勢を低くすることで持ち直し、再びブーストバックルのハンドルを捻る。
ブーストライカーがさらに加速し、相手に向かっていく。足に力を込め、ブーストライカーから飛び降り、右足は軽く曲げ、左足を真っ直ぐ伸ばし、勢いに乗せて炎に包まれながら戦車に爆速の飛び蹴り…ライダーキックをかます。
体は戦車を貫通し、しっかりと着地する。クルっと振り返り戦車の方を見ると炎を上げながら爆発した。
「爆発しなきゃいけない決まりでもあるのか?」
「っと、カイザーのお偉いさんは…逃げたか 」
「あっちから戦闘を仕掛けてきたのに、負けそうになったら自分だけ逃げるなんて、やっぱり卑怯な奴ね!」
セリカと少し言葉を交わすと、ベルト…主にブーストバックルがカタカタと音を立てて揺れ出す
「あちゃー、やっぱりか…」
想像していた通り、ブーストタイムを使い、役目を果たしたブーストバックルは火を吹きながら飛んで行った。
「ありがとうブーストバックル…」
ゾンビバックルをドライバーから外し、変身を解除する。戦闘が終わった開放感と緊張が解けた事で力が抜け、少しよろける。
「先生、いつの間にあんな力を?」
「まあ、ちょっとね」
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蛇足パート
何とかカイザーの兵士たちを退けたので、セリカをアビドスまで送るために歩き出す。
そうして数分ほど歩いていると、2人の生徒と目が合う。シロコとホシノだ。シロコはこちらに気づくや否や、嬉しそうに小走りで近づいて来たが 、一緒にいたホシノは気のせいかこちらを警戒している様だった。
ずっとやってみたかったライダーキックができて気分が良かった俺は近寄ってきたシロコの頭を撫でてやる。
「せ、先生…みんな見てる」
シロコは顔を少し紅潮させながらもじもじとしている。
(かわいいなあ)
などと思い癒やされていると、少し距離をおいたところにいるホシノと目が合う。ホシノの目は、いつも自分に向けられていた穏やかなものではなく、宿敵を見たかのような憎悪を孕んでいた。
(体調でも悪いのかな)
「こ...来ないで!」
「...え?」
♢
なぜ先生が?見間違い?いや、先生があの姿に変身するのも見たし、変身を解除した先生がそこにいる。なんで?なんで先生が〝2年前にアビドスを襲った怪物〟に...?
大量の疑問で頭の中が埋め尽くされるが、とりあえず、後輩を守らなければ。
「先生、今すぐそのベルトを地面において動かないで。でないと撃つ」
正直今すぐに逃げ出したい。だが守らなければいけないものが今の私にはある。
「シロコ先輩…?!なんで先生に銃なんて向けるの?!それにアビドスを襲ったって…」
「セリカちゃんは何も知らなくていい。知らない方がいい。」
♢
なんかホシノが俺に銃向けてきてるんだけど…こわ…
「ねえホシノ、この姿のこと知ってるの?何があったか教えて欲しいな」
「…まずそのベルトを置いて」
「わかった」
ホシノの様子を見るに冗談ではなさそうなので大人しく従っておく
「先生は…私のことを騙したの…?」
「ちょっと待ってくれ、何を言っているのかわからない」
「とぼけないで!」
(こわっ!俺なんかしたっけ…?…した気がする)
「2年前、アビドスの街を襲ったこと…知らないとは絶対に言わせない」
「そんなことした覚え全くないんだが?!」
「嘘!見間違えるわけが無い。あの紫色の鎧やチェーンソー、あんな特徴的なものを!」
(2年前って言われてもなぁ…バッファに変身したのは今日が初めてだしなぁ…あっもしかして…?)
♢
つい先程まで恐怖に支配されていた心が少し冷静さを取り戻し、しらを切る先生に憤りを感じるくらいの余裕は出来てきた。私はまた…大人に騙されたの?
──────────────────────
2年前、私がまだ1年生だった時急に現れた紫色の化け物…先生にアビドスは侵略された。当時は今よりは過疎化が進んでいなく、営業していた店もちらほらとあった。が、あの日、アビドスは一夜にして今の荒廃具合に一気に近づいた。あの紫色の化け物の手で…
もちろんアビドスの街を守ろうと戦った…が、まるで歯が立たなかった。圧倒的な力の差を感じさせられ、まるで違う次元の存在と戦っているみたいだった。あの化け物は1日と経たずして飽きたようで学校は守れたが、アビドスが受けた被害は尋常ではなかった
──────────────────────
私が…学校と後輩を守らないと…
♢
「ちょっと待ってくれ!」
「まだしらを切るつもり?」
「そのアビドスを襲ったやつとさっきの俺の姿は酷似していたらしいが、顔はどうだった…?」
デザイアグランプリには悪人も多く参加していたらしい。もしこの世界でデザイアグランプリが行われたこともあったとしたらありえない話では無い。だがバッファはそんなことをするような人間ではないし、この世界にいるはずがない。
「顔…?」
「ああ、本当に俺と同じ仮面だったか?」
「…角は生えていなかったしあんな凶暴そうな顔つきではなかったような?」
「やっぱり!良かったぁ…」
「それがどうしたの?」
俺はホシノにデザイアグランプリのこと、ゲームの参加者であればゾンビバックルは誰でも使うことができることを伝えた。
「本当に…先生じゃないの?」
「ああ、ゲームマスターに誓ってもいい」
「………わかったよ、うへぇ、びっくりさせないでよ先生〜」
あまりの切り替えの速さにツッコミたくなったが、そういう空気ではないだろう。
「じゃあ、先生、おじさんをびっくりさせた罰として、そのベルトはアビドスで預かるね」
「えっ…それはちょ「いいよね?」」
「…はい…」
(とほほ…デザイアドライバーではもう遊べなさそうだな…)
♢
(もし先生が嘘を言っていてもこのベルトさえなければもう先生は戦えないはず…もっと信じさせてよ?先生)
デザイアドライバーがホシノおじさんに没収されちゃったので次回からは違う作品のライダーになります!