キヴォトスに転生したので幼なじみの聖園ミカを幸せにする話   作:グリムリーパーRS

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補習授業部の真実

「...うっ、ここは?」

「あっ、ヒフミちゃん気が付いた?」

 ベッドで体を起こそうとするヒフミの体を支える。

「えっと..確か私は...そうです!試験の結果!どうなりましたか!?」

 ヒフミは試験の結果を聞いて倒れてしまったのに覚えてない...。やっぱり、かなりショックだったんだな...。

「えーと、落ち着いて聞い「合宿が決定した。」アズサちゃん。」

 私の言葉を遮って放たれたアズサの残酷な真実はヒフミにクリーンヒットした。

「あ、あうぅ...。」バサッ!

“ヒフミ...!しっかり...!”

 

―その日の夜

 

「あら、先生。お疲れ様です。補習授業部の方はいかがですか?」

 訪れた先生にナギサが労いの言葉を送る。

「......と言いつつ、すでにお話は聞いております。どうやら最初の試験は、上手く行かなかったようですね。」

“まあ...。そうだね。”

「ですがまだ、後2回残っていますので...。」

 その言葉を聞きながら先生は卓上の物を見る。

 

「......ああ、これですか?チェスです、趣味でして。」

 そう言うだけあってナギサには勝てた試しが無い。

「......おそらく、見慣れないタイプですよね?黒はキングとクイーン、後はすべてポーンだけ。白はキング、ルーク、ビショップ、ナイトがそれぞれ3〜4個づつ......きっとあまり見ない形でしょう。」

“これ、1人でやってたの?」

「はい、今は私1人で。うるさいミカさんもいないですし。」

 

 そこまで話した後に1口、紅茶を口にふくみまた話し始める。

「今日は先生に、お伝えしておきたい事があったのですが......それよりも先に、先生の方から何か言いたげな事があるように見受けられますね。」

“3回とも不合格になったら、補習授業部のみんなはどうなるの?”

 これは私がみんなと顔合わせをした日にコハルが出ていった後辺りでつぶやいていた事だ。

 そして、先生のその言葉を聞いてナギサは少し口をつむぐ。

 

「......。小耳に挟まれたのでしょうか?出処は......ヒフミさんかそれとも......。」

 そうして彼女はもう1度カップを口に運び、話を続ける。

「いずれにせよ、『彼女』はそういうところがありますからね。まあそれが、『彼女』の良いところでもあるのですが......。」

 

「さて、質問にお答えしますと、簡単なお話です。試験で不合格を繰り返す、落第を逃れられそうにない、助け合うこともできない......だとすればみなさん一緒に退学していただくしかありません。」

“退学!?”

「もちろん、本来はここトリニティにも落第、停学、退学などに関する校則が存在します。ただ、手続きが長くて面倒でして、たくさんの確認と議論を経なければなりません。ゲヘナとは違って、我々は手続きを重要視しますので。」

 

「ですが今回急造された補習授業部は、このような校則を無視できるように調整してあります。シャーレの権限を少し組み込まさせていただいたこともあり、このような措置が可能となっているのです。そもそも、補習授業部は......」

 そこから続く言葉は、先生にとってそれはとても衝撃を覚えるものだろう。

 

「生徒を退学させるために、作ったものですから。」

“......っ!?どうしてそんなことを......!?”

「......。あの中に、トリニティの裏切り者がいるからです。」

“裏切り者......?”

 

「その裏切り者の狙いは、エデン条約締結の阻止。

この言葉が持つ重みを理解していただくには......『エデン条約』とは何か、という説明が必要ですね。」

 そうしてナギサは先生に

 エデン条約...ゲヘナトリニティ間の不可侵条約について

 

エデン条約機構(Eden Treaty Organization)』、『ETO』と呼ばれる中立的な機構について

 

 立案者である連邦生徒会長の失踪により空中分解しかけた事

 

 ナギサがどうにか立て直し、締結直前まで持ってきた事

 

 そしてそれを妨害しようとしている者達がいる事を話した。

 

 

「まだ、それが誰なのかはわかりません。特定には至りませんでした。そこで、次善の策として......その可能性がある容疑者を1か所に集めたのです。

 他に気になることもありますが......ともかく、裏切り者はそこにいます。ですが、誰かは分かりません。

であれば、1つの箱にまとめてしまいましょう......いざというとき、まとめて捨ててしまいやすいように。」

“......ナギサ。”

「ええ、そろそろお分かりでしょう。それが『補習授業部』です。先生には、その『箱』の制作にご協力いただきました。」

 ......知っていたとはいえ、長い付き合いである幼なじみがこんな事を言うのは正直かなりショックだ。

 だがナギサの全てを否定することはできない。だってナギサも......。

 

「......ごめんなさい。こんな、血生臭いことに先生を巻き込んでしまいました。私のことは、罵っていただいても構いません。」

“......でも本当に私を利用する気だったら、こうして今

話してくれてないよね。”

「......流石、理解が速いですね。言っても信じてもらえるかなと思っていましたが、仰る通りです。こうなったらお話は早いですね。」

 

「先生。」

――......補習授業部にいる裏切り者を、探していただけませんか?

 

 

 

「...出て来ないのですか?」

 あらら…。

「バレてた?」

「当然です。何年あなたの幼なじみをしていると思っているのですか。」

 仕方がないので柱の陰から体を出す。

「それもそうだね。」

…………。

「なぜこの時間に出歩いているのかについては言及しませんが...。」

 

「あなたですか?」

「ううん、話したのはヒフミちゃん。まあ、わざわざ言う事でも無かったか。」

 いや、違うな

 

「ナギサが聞きたいことは、私が『裏切り者』か......ってことでしょ?」

「......。」

「沈黙は肯定と捉えるよ。......まあ、私が裏切り者ではないとだけ言っとくよ。」

 私がそう話しつつもナギサは紅茶を飲み、カップを置く。

「ならばなぜ、わざわざ隠れて私と先生の話を聞いていたのでしょうか。そうでないならこんなことをする必要も無いでしょう。」

 まあ、それはそうだ。

 

「痛いところを突くね。そうだね、答え合わせって感じかな?」

「そうですか。ですがリエルさんならほぼすべてがわかっているでしょう?セイアさんが『倒れた』という事もすぐに知ることができていたのですから。」

 

「......すぐ知れるということは全部知っているということではないよ。」

「ええ、そうです。しかしその確率はかなり高いです。」

「そうでもないよ、よほど頼れる相手じゃないと早い情報は間違っている可能性の方が高い。それこそ、当事者でもないとね。」

 

…………。

……………。

「ナギサは強かになったね。」

「......。」

「でもそれだけで物事を進める事はできないよ。」

 

 そう言ってナギサに背を向ける。

「......リエルさんはこれからどうなさるのですか?」

「......先生の言葉を借りるなら、『私は私のやり方で、その問題に対処させてもらうね』。」

「そうですか。では私も、リエルさんの行動が『トリニティに利するものであることを願っていますね。』」

 

 

― 時間は進み...

 

「ようやく着きましたね、ここが私たちの......。」

「はい、合宿の場所です。ようやく着きましたね、ふぅ......。」

 

「しばらく使われていない別館の建物と聞いたので、冷たい床に裸になって寝ないといけないのかと思ってましたが......広いですし、きちんとしてますし、可愛いベッドもあって何よりです。」

 

「これならみんなで寝られそうですね、裸で♡」

「さっきから何でちょいちょい『裸』を強調するの!?それにベッドの数もちゃんとあるんだから、みんなで寝る必要ないでしょ!?」

「せっかくの合宿ですし、そういうお勉強も必要ではないでしょうか?」

「ダメ!エッチなのは禁止!死刑!!それに!」

 お、駄エ死来た。それに?

「なんであんたがここにいるのよ!」

 あ、私のことか。

「なんでってみんなのサポートをするためだよ。」

「なんでよ!というか何をしてるのよ!」

「持ってきた参考書の整理をしてるの。いつでもすぐ使えるようにね。」

 そう言うとコハルは納得した様子だ。

「そ、そう。なら......。じゃなくて!アンタは帰らなくちゃいけないでしょ!?」

 ダメだったか。

「寮長の許可はもらってるよ。『補習授業部とシャーレの先生の手伝いをするので1週間補習授業部の合宿場所で外泊する許可をください』って。」

 と、楽しくお話しているとヒフミが

「その、これから1週間寝食と勉強をともにするので、みなさん仲良く......。」と。

 

 ちなみに寮長には「ティーパーティーからの依頼」ということにしておいた。何も言われていないことからナギサも認めたのだろう。

 建物の偵察から戻ってきたアズサも交えて楽しげ()に話をする4人を見ながら昨夜のことを思い出す。

 

『あの中に、トリニティの裏切り者がいるからです。』

 

『いざというとき、まとめて捨ててしまいやすいように。』

 

『補習授業部にいる裏切り者を、探していただけませんか?』

 

 ナギサ、ナギサは間違えていないのかもしれない。でもこれは違うよ。

何の罪も『ないかもしれない』子たちを切り捨てるのは最善かもしれない、でもそれは今ある手札だけから導き出した結果だけだ。

 

 でも私はなにがあってもナギサを責めることはしない。リスクを取る選択肢はなによりも選び難い。

 それにナギサも......。ナギサも陰謀や思惑に揺り動かされている被害者の1人だ。

 

 少し遅くなったけどそろそろ始めよう。

肯定はしない、でも決して否定もしない。そうやって拾い集めていく。

 

 そんな私の青春の見聞録(ブルーアーカイブ)を。




いつもありがとうございます。

なんとか年内の更新ができてほっとしております。

今年はブルアカに復帰して、二次創作にも手を出してこうして公開することにもなって自分の中で大きな意味を持つ1年になりました。

拙い文章ではありますが来年もよろしくお願いします。
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