平安に生まれ変わったら九十九さんがいたんだが 作:位相波羅蜜光の柱
呪術高専京都校、禪院真依はそこの一角に存在する寮に住んでいる。
この日はたまたま小腹が空いたため、夜中なのにも関わらず冷蔵庫がある食堂まで向かっていたのだ。
流石に深夜のカップラーメンは翌日に響く、なら枝豆でも食べようか、それともガリガリくんを齧るか。
決めあぐねたまま食堂に入ると、一つだけ付いた灯りの下で見慣れない着物を着た少女がカップラーメンを食べているのが目に入った。
「いや、やっぱカップラーメンは最高だな……昔は『この値段でこの量はないっしょ』とか思ってた日清の奴が千年空っぽだった胃に染み渡る……」
なんだこいつ、真依が真っ先に抱いた感想はそれだった。
うんうんと何度も頷きながら麺を啜るその姿はなんとも奇妙で滑稽であった。
そこでようやく真依は考え出す。
アレは誰だ?、と。
高専内で未登録の呪力が発生すればアラートが鳴る、真依自身が着物少女の呪力を感知できているのに加えアラートが反応しない以上高専関係者なのは間違いない。
だが窓というには感じる呪力の質が高い、それならば自分の知らない術師かとも思ったが、なんでそんな奴が学生寮で深夜にカップラーメン啜っているのかという疑問は晴れない。
とりあえず話しかけようとしたその瞬間、
「気取られもせずに背後を取る、アニメ漫画映画ドラマありとあらゆる媒介で使い古されてる手法だけどやっぱりカッコいいよね」
「……アナタ誰?いきなり人の後ろに立ってキモい独り言喋らないでくれない?」
見ず知らずの他人に出会い頭に攻撃的な言葉を投げ掛けるほど彼女の性格が悪いわけではない。
寝不足の脳みそにいきなり理解不能な状況を叩き込まれて気が立っていただけなのだ、それでも理不尽だと言えばそうなのだが。
「誰かって……説明するのは面倒くさいなぁ。針動呪法の使い手って言って通じる?流石に千年経ってると宿儺くらいしか伝わってない?」
調子に乗った妄言女、そう片付けるのは一番楽だろう。
だが、真依には後ろにいる少女に心当たりがあった。
京都校の地下には千年前に自らを封印した術師が眠っているとされ、その術師の術式は針動呪法であると言われているからだ、
先程から二度繰り返された千年という言葉、一瞬にして背後を取ったその実力。
まさか、まさか本当にアレが封印を解かれたのか。
そこまで考えて自嘲する、そう思ってしまった脳みそを一瞬のうちにクールダウンさせる。
「確かに針動呪法を使う術師は知ってるけど、そいつは千年眠り続けた術師。アニメだの漫画だのを知ってるわけないわ。で、アナタ誰?」
「そっか……よく考えたら平安じゃ意味不明扱いされた言動がここでは自己を証明するための障壁になるのか……まぁ、じゃあ互いに自己紹介でもしよっか」
明らかに落ち込んでいる少女は食堂の端っこにある椅子に座ると、真依にも向かいの椅子に座るように促した。
特に断る理由もなかったので、言われるがままに真依も椅子の腰を下ろした。
「自己紹介ねぇ……私は品位に溢れた現代人だから先に名乗っといてあげるわよ。禪院真依、漢字わかる?」
「藤原穂乃果、一応平安に生きた術師だよ。証明面倒くさいな……僕なんて人生のだいたいを西洋で過ごしたから文献もそんな残ってないでしょ?あー宿儺が羨ましい、あいつのことだから術式一つとってもめっちゃ文献ありそう、なんならフーガも残ってない?」
深夜テンションと不審者の相手をしていることによる多少のストレスから煽るような口調になってしまった真依に対し、穂乃果と名乗った術師は愚痴のような言葉を吐き出した。
「いい年してなりきりとか痛々しくてこっちまで鳥肌立つのよ」
「……待って、禪院真依?なんかどっかで聞いたことあるような……交流会……双子……あぁ、構築術式の使い手か」
何故、なぜそのことを知っている。
やっぱり千年前云々は嘘っぱちでそこらの術師の痛い妄想なのか。
そう思った真依が呆れて立ち上がろうとしたその時、藤原穂乃果は両の手を合わせた。
「うん、わざわざこんな不審者の相手を指せて悪かったね。ちょっとテンションが上がりすぎてたよ」
「何してるの?領域展開の掌印?もう見てられないから辞めなって────」
「証明代わりのついでだ、万の時みたいに
そして展開される、内からも外からも破れぬ結界。
「───針振乱刻歌」
オリ主は平安基準だと謙虚ですが、現代基準だと傲慢な厨二病です。