平安に生まれ変わったら九十九さんがいたんだが   作:位相波羅蜜光の柱

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オリ主と五条悟がめちゃくちゃ小難しい呪術戦を繰り広げてます。
『なんかスゲー事してる』くらいで読み飛ばしても全く問題はありません。


殴り合わない呪術戦って地味だよね

「は、ははっ。アレが五条悟、六眼と無下限の抱き合わせ……!」

 

 食堂の天井には大きな穴が空いていて、そこから見えるのは上空に浮かぶ一人の男。

 たった今自身の領域を破られたばかりだというのに、藤原穂乃果はこの状況を喜んでいた。

 対照的に禪院真依は一刻も早くこの場から去りたい衝動に駆られた、領域使い同士が対面しているなんて状況に巻き込まれたくないのだ。

 怪獣大決戦なら私に関係ないところでやって欲しい、それが真依の率直な感想。

 

「ちょっと、これどうすんのよ。アナタ死ぬわよ」

 

「流石に封印解放直後に死にたくはないなぁ、亨子達にも逢えないままは嫌だね。ということで」

 

 穂乃果は着物の内から札を取り出し、ボソボソと何かを唱えた。

 それが終わると己の髪を一本引き抜き札にくっつけた、セロハンテープもないのによく張り付く物だと真依が思っていると、穂乃果は札をこちらに投げてきた。

 

「これ、持っといてよ」

 

「嫌よ、呪詛師の仲間とは思われたくないし」

 

「呪詛師扱いかよ、これでも(みやこ)の平和を守る藤原北家の人間なんだよ?」

 

「守っていた、でしょ。過去形にしなさい。今のアナタはただの不審者よ」

 

 後ろ盾のない真依にとって迂闊な行動はできない、何かがあっても禪院家は介入しないだろうしむしろ積極的に切り捨てるだろう。

 目の前の千年前の術師がこの後五条悟相手にどう出るかわからない以上、仲間と思われるのは避けた方がいいというのが真依の判断であった。

 

「ま、いいや。そこら辺に置いとくだけでもコレは効果を発揮するはずだしね。じゃあちょっと待っててよ」

 

 手練れの術師は体外に流れ出る呪力のコントロールに長けているという、それは自己の隠密性を高めるのに加えて呪力の浪費も抑えられる技術だ。

 穂乃果にもはや身を隠す必要はなかった、呪力を身から立ち昇らせ体外を覆う。

 

「最強を、倒してくるからさ」

 

 眼を紅く染め、藤原穂乃果は飛び上がる。

 もはやその視界に真依は映っていなかった。

 

「……食堂破壊の責任は取りたくないわね」

 

 真依は逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五条悟が京都校に来ていたのは全くの偶然、というわけでもなかった。

 高専の建設前からこの場所の地下に存在した藤原穂乃果の封印結晶、それを恐れた上層部は封印が解けた際真っ先に近場の術師に窓を通して連絡が行くシステムを構築していたのだ。

 

「藤原穂乃果、でいいんだよね?昔五条家(実家)にいた頃ここの地下で見た姿と同じだし」

 

「その通り、あの魔境を生き延びた優雅なる平安貴族さ」

 

 先刻、()()()()()宿()()()()()()()()()()()で五条悟は京都に東京にとあらゆる場所に呼び出されていた。

 その一環で京都校に来ていたところ窓からの連絡があり、来てみれば領域が展開されていたというわけだ。

 好奇の心でそれを破ったところ、中から着物の少女が出てきて驚いたという次第だ。

 

「その割には国外に逃げたって伝わってるけど?」

 

 五条悟にとってあらゆる術師は脅威に成り得ない、例え相手が平安を生き延びた針動呪法の使い手といえどそれは変わらない。

 搦手ならともかく、今のような向かい合っている状況を彼は戦場とは認識しない。

 いつでも殺せる、いつでも捕らえられる、そのような余裕があるからこそ五条悟は普段の口調で穂乃果へと語りかけた。

 

「新天地でハッピーライフを送るための戦略的撤退と言ってくれよ六眼保持者……まぁ、亨子も九十九さんもいない平安に僕は価値を感じなかっただけさ」

 

「へぇ、知ってるんだ僕の眼の事」

 

「見れば分かるさ、それには及ばないけど僕だって特別な眼を持ってるし」

 

 真っ赤に染まった穂乃果の瞳、六眼から得られる情報を基に五条悟はそれを『空眼』であると予測した。

 だがそれよりも彼の意識は『ハッピーライフ』という言葉へと向いていた。

 穂乃果は呪物ではなく生身のまま千年封印されてきたというのは御三家であれば誰もは知っている話だ、ならば受肉による知識の吸収という手段も取れない。

 ならば何故現代の言葉に精通しているのか、そんな疑問が頭に浮かび『面白い』という感情が生まれる。

 

「まぁ色々とツッコミたい事はあるけど……何してんのさっきから」

 

 五条悟は己の特異性を認識している、その一端に空を飛べるという事実が存在する。

 特殊な術式でもない限りは、基本的に空を飛ぶことは出来ない。

 そのような前提を以ってしても、全方の藤原穂乃果の在り方は奇妙だったと言わざるを得ない。

 跳ねているのだ、飛ぶのでもなく静止しているのでもなく、トントンと宙を蹴っているのだ。

 

「空気の面を蹴ってるんだよ、僕はオマエみたいにナチュラルに飛べる程人間辞めてないんでね」

 

 跳ねながら彼女は着物の中から包丁を取り出した、食堂から盗んできたのだろうか。

 そしてそれを指先で弾いていく、呪力を込めた指パッチンで叩いていくのだ。

 

「天与呪縛のフィジカルギフテッドが縦横無尽に空を駆けれるのは、亨子があの術式をカウンターだけでなく攻撃に使えるのは、全て空気の“面”を捉えてるからなんだ」

 

 十回、二十回、語りながら彼女は包丁を弾き続ける。

 もうこの時点で五条悟は穂乃果の目的を理解していた、赫や蒼で止めることもできたが彼はそれをしなかった。

 ただ、見てみたかったのだ。

 千年伝承が途切れなかった少女の力を―『ブラッディ・メシア』と西洋で謳われた術師の実力を。

 無論、高専に被害をもたらそうとすれば戦闘不能にするつもりだったが。

 

「裁縫をしている時の指先、そして殴り合いの喧嘩をしている時の指先、どっちが繊細に動かせてるかって言ったら前者でしょ?呪力操作も同じ、全力で殴る時より指パッチンの方が精密さ自体は上だったりする」

 

 空眼により底上げされた呪力操作の精密度、そこに加わった藤原穂乃果の呪術センス。

 包丁へと向かい続ける指パッチン、その先で歪む空間。

 

「突発的な戦いには向かない、威力もない。だけどやらない理由はない」

 

 彼女は、黒い火花に愛されている。

 

「……驚いたよ、六眼も無しにそれが出来るんだ」

 

「───意図的な黒閃、これで僕はいわゆるゾーンに入った。どう?凄いでしょ」

 

「ククッ、凄いどころの話じゃないね。君、高専来ない?呪術界は年中人手不足、きっと歓迎されるよ」

 

 それは本心からの言葉だった。

 意図的な黒閃、領域展開、そして嘗ての伏黒甚爾と同様の面を捉える技術、今すぐにでも一級になれる逸材だ。

 高専に通ってないのなら厳密には特別一級にしかなれないが。

 そんな人間を放置しておく理由がない。少し離れた場所で此方を見ている真依の表情からして領域内で何かされたわけでもなさそうだ。

 積極的に人に害をもたらすわけではない、文献でも心優しい性格と記述されていた、そんな術師をスカウトしない手はない 

 

「いやぁ、僕もそうしたいのはやまやまなんだけどね。得体の知れない術師を受け入れる程上層部の頭は柔らかくないよね?」

 

「いざとなったら僕が黙らせるさ」

 

「まぁ、それもいいけどもっと手っ取り早い方法がある──闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え」

 

 途端に湧き出すのは黒い闇、最も簡単な結界術の一つである帳が発動した。

 

「何するの?しかもコレ、ただの帳じゃないよね」

 

「ご名答、天元の使っていた空性結界に領域展開に似たオリジナルの効果を付け足して完成した僕の秘技。宿儺が自身の領域内で展延を発動できるように、展延を纏いながら術式を結界に付与できる優れ物。まぁ、世の中全部を探しても羂索と僕くらいにしか使えない超高難易度呪術さ」

 

 言うは易し行うは難し、穂乃果のしている事の異質さは六眼を通して五条悟に伝わっていた。

 帳に空性結界を被せ、そこに術式を付与。

 自身へのバフが乗らないという縛りで領域を用いずとも術式の付与を成り立たせた結界、領域程閉じ込めるのに特化してはいないのが弱点だろうかと五条悟は推測した。

 はっきり言って破ろうと思えば破れる、だがコレは恐らく未完成だ。

 

「努力は認めるけど、コレ意味ある?結界の強度は帳と同じなんだから内側から破るのも容易くない?」

 

「ごもっとも、単なるパフォーマンスだよコレは。御前試合で使ったりしたんだ。だけど、コレでなきゃ僕は無下限を攻略できない」

 

「……僕に勝つ気?」

 

「それは無理だろうけど、右腕一本くらいはイケるんじゃない?そうすれば上層部にもしっかり僕の危険性と重要性が伝わるでしょ。良くも悪くも無視できなくなる」

 

「右腕一本ね。まぁ、昇格査定代わりに相手してやるよ」

 

 明らかにこちらを舐めている態度の穂乃果、それに対して五条悟はあくまでも教師として臨戦態勢に入った。

 千年眠っていた少女に、現代の術師の力を教えてやるという名目で。

 

「昇格査定?どうせなら一級じゃなく特級でも狙ってやろっかな。一級なんて中途半端な称号は、藤原の一族には許されない」

 

 領域展延を纏った穂乃果は、五条悟へと殴りかかった。

 それに対し蒼での瞬間移動で地面へと降りた五条悟は、上空に向けて赫を放つ準備をした。

 

「位相」

 

 真っ先に狙うべきは周囲を囲う特殊な帳、そう認識した五条悟は結界に向けての赫の詠唱を開始。

 

「波羅蜜」

 

 射線上には穂乃果、帳を守って被弾するか避けて各界を破壊されるか。

 

「光の──!」

 

 詠唱の最中、穂乃果から呪力の起こりを感じた瞬間五条悟は詠唱を辞めた。

 順転のエネルギーと反転のエネルギー、それらが重なり合わさる気配がしたからだ。

 御三家に伝わる針動呪法、されどその内容は順転と反転のみ。

 だが五条悟はその内容から虚式の正体を推測し、己を守るための最善策を実行した。

 

「流石最強!土壇場で気が付いたか!でもそれじゃ意味はない!コレで虚式は発動する!」

 

 シン・影流簡易領域、弱者の領域を展開。

 本来簡易領域には術式そのものを中和する力はない、結界を中和する事で必中効果を打ち消しているのだ。

 しかしこの空性結界には必中効果がない、あくまで術式を結界内に無差別にばら撒いているだけだ。

 故に簡易領域には意味はない、その事に気づくまで一歩遅れた五条悟。

 穂乃果の策が五条の想定を上回る、だが最強の術師はこの程度の小技で破れる程甘くはない。

 彼はその瞬間、いずれ天元の空性結界で羂索が披露するはずだった離れ業を思いつく。

 

「領域展開──無量空処」

 

 自身の体内を領域とする事で、間一髪穂乃果の虚式を防ぐ事に成功したのだ。

 穂乃果と五条悟以外の全ての物体の時間は止まり、静寂が結界内に訪れる。

 

「……マジかよ」

 

「君の針動呪法は順転で時計の針を進めて反転で戻す、時間を操る術式だ。ならきっと、()()()()()()()()。違う?」

 

「正解だよ五条悟────そして僕の負けだ」

 

 瞬間、帳は溶けて穂乃果は地上に降りてきた。

 

「正直危なかったよ、時間に無下限は関係ない、喰らってたら動けなくなってたたかもね」

 

「いやぁ、オマエなら時間すらも超えれそうな気がするけどね。というかなんで体内だけに領域を留めたんだ?僕を含めて無量空処に巻き込んでればオマエのストレート勝ちだったろ」

 

「え?そしたら君死んじゃうじゃん」

 

「……あぁ成る程、気遣われたのね」

 

 和気藹々と会話を交わす二人、それを遠くから見ていた真依は後にこう語った。

 『正直帳が上がったら穂乃果は首だけになってると思ってた、生きてたのが意外』と。

 

 

 




面白かったら感想とか評価を送って欲しいです……

以下読まなくても問題ない捕捉



Q真依に渡そうとした呪符はどうなったの?

Aアレは一種の録音装置です。五条悟が詠唱している間に針動呪法の『順転』「反転』「虚式』の詠唱をしていました。

Qなんで術式をばら撒いたのに穂乃果の時間は止まってないの?

A自分にだけはバフが乗らないと影響を及ぼさないいう縛りで成り立ってる結界です。彼女は『じゃあ自分だけに悪影響も及ばないよ』という風にやってます。屁理屈です、ですが縛りの本質はいかに上手く屁理屈を捏ねるかというのは宿儺の領域が実践しているので大丈夫です。

Q簡易領域って術式を中和するんでしょ?メカ丸戦で見たよ俺

Aレジィ戦を見ましょう。メカ丸戦ではあくまで『領域はあらゆる術式を中和する』としか言われてません。

Q空性結界にオリジナルの効果って何?

A後々書きます
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