平安に生まれ変わったら九十九さんがいたんだが 作:位相波羅蜜光の柱
オリ主
死滅回遊プレイヤーが平安に転生、そして千年間封印されてたぞ!
真依
苦労人、頑張ってください。
羂索
友情と努力はある、
勝利はない。
「ぐ、がっ」
苦悶の表情を浮かべる真依に対して、平常の心を保ったままに腕を切り落とした穂乃果。
自分には反転術式のアウトプットがあるのだから問題はない、そうじゃなくても術式反転で対象の時を戻せば問題ない、それが穂乃果の思考。
21世紀現代社会ではあまりに異質であまりに異常、表面上は平成に適応したかに思えど、根本では
「藤原北家直属討伐部隊『祭』……僕が設立した組織なんだけどね、日月星辰隊と比べ若手の育ちが異様に早かったんだ。なんでだと思う?」
「知ら、ないわよ……!」
三級とはいえ術師は術師、真依はなけなしの呪力で腕周りを覆い出血を止めた。
それを見た穂乃果は、自分が腕を切り落とした当事者だと言うのになんでもないかのように話を続ける。
「術師はアスリートじゃない、僕らを急激に成長させるのは走り込みでも日々の食事でもなく実戦だ。だから僕は当時の貴族としては異例の行動───自ら“祭”の指導官となる事を決めた」
驚くべき事に、平安の時も今の彼女には善意しか存在しなかった。
『この人には生きていて欲しい』『あの人には強くなって欲しい』誰もが抱く自然な感情を、彼女は実行出来てしまう。
相手の感情を考えずただ自分がそう思ったからそうすると言うのは、現代どころかありとあらゆる時代で忌避される事であり肯定されてはならない事だ。
「懐かしいな」
だがしかし彼女が生きたのは弱ければ死が待ち受けた術師全盛平安の世、個人的事情があるとはいえ弱者を強くさせようとした彼女の行動は受けいられた。
いや、受け入れられてしまったと言うべきだろうか。
どれほど残酷な指導であろうと、それを確かに部下の成長へと繋げるセンスが彼女にはあった。
どれほどの無理難題や政敵からの糾弾であろうと、跳ね除けてしまえる力が彼女にはあった。
全ての過去が、今の彼女を作り出してしまった。
今現在、藤原穂乃果は100%の善意で真依の腕を切り落とした。
「アンタ……何がしたいのよ……!」
真依は机の上に置いてあった銃を拾い上げ穂乃果へ向けた、腕からはもう一滴も血が落ちてはいなかった。
通常の戦闘時であれば不可能な事、互いに動かないこの特殊な状況が真依に訓練通りの呪力コントロールを成させた。
「構築術式の術式反転は便利でね、自分が生み出したモノに限り『物体→呪力』への変換が出来るんだ。君にピッタリの戦闘方法だと思わない?」
穂乃果は語り続ける、純然たる善意と共に。
それが他者にとっては狂気以外の何物でも無い事を知りながら。
「そのために必要なのが負の呪力を正の呪力に変える反転術式、そしてそれは死の間際が最も目覚めやすいと言われているんだ」
反転術式は高度な呪術ではあるが、使い手に術師としての戦闘の才能を要求しない。
極論呪術のじゅの字も知らない人間にだって反転術式に目覚める可能性はあるのだ、反転の才能は誰が持っててもおかしくはない。
そう、それがたとえ禪院家の落ちこぼれであろうと。
「反転術式の使い手が少ない理由で良く挙げられるのは機会がないからってやつ、反転に必須な呪力の確信を掴む最短ルートが死にかける事である以上仕方がない事なのかもしれないけどさ」
黒閃により呪力の味を理解するという手もあるが、それは禪院真依には不可能であると穂乃果は推測していた。
どう見積もってもそれほどの才は真依には無い。
「私に反転術式を使わせようっての?馬鹿馬鹿しい、出来るわけが───あっ」
瞬間、穂乃果の指先から放出された呪力が真依の拳銃を吹き飛ばした。
呪力の放出を武器とする術師は少ない、呪力消費が激しいのに対して余程呪力出力が高い術師でなければ有効なダメージを与えられないからだ。
その事を穂乃果は記憶の中にある石流との戦いで理解していた。
だが、真依の手から拳銃を落とすのには十分すぎる威力を発揮する事が可能。
「これからの日本は魔境となる、近くで人が死んだくらいじゃ誰も気に留めない地獄のような国になる。呪霊も溢れかえるさ、少なくても一千万体は出てくる筈だ。そんな世界で反転無しじゃ恐らくオマエは死ぬ」
「……その話が嘘にしか思えないのは置いておいて、やり方が雑過ぎない?」
漸くいつもの調子を取り戻してきた真依、死の間際になっても減らず口を吐き続ける今の姿こそ真依の本領。
拳銃という唯一の対抗手段を無くして返って冷静になったのだろう。
「そう?チマチマやってもオマエが覚醒する気はしないよ。だってオマエ反転の才能もないし」
彼女の特殊な目は人の才能を見抜く、六眼にこそ届かないが藤原家でも重宝されるくらいには貴重な眼だ。
「……才能がないのは知ってるけど、だったら尚更よ。一回死にかけたくらいで私が反転術式を使えるようになるって、本気で思ってるの?」
「いいや、全然。
「は?」
ただ、平然と彼女は語る。
悍ましきその訓練の実際を。
「四肢を斬り落とす、それでダメなら頭を潰す──安心してよ殺すときは一瞬だ。そして僕の振動呪法、その術式反転で真依の体を巻き戻して数分前の状態にする。勿論記憶は消えている。ソシャゲのガチャと同じだよ、
「……雷と泥沼男の話を思い出すイカれっぷりよ」
真依は唾を吐いた、もはや真依にとって穂乃果は理解のできない怪物と同じであった。
「スワンプマン問題?それは考えたことがなかったね……まぁ、それはいいとして僕としては別にオマエに対しての感傷だけでこんなことをやろうとしてるわけじゃない。あの鬼神への恩を返せるなら……真希さんの無念と後悔を無くせるならそれでいい」
「真希の事知ってるの?やけに情報通の呪詛師ね」
「僕は呪術師さ」
「こんなことしてる時点で呪詛師よ、高専規定に書かれてる授業内容を逸脱しすぎてる」
真依の言っている事は事実だ。
実際のところ穂乃果が無許可でこのような暴挙に出た場合、即座に呪詛師認定とは言わずともなんらかの処分が言い渡される事は想像に難くないだろう。
例え真依が禪院の落ちこぼれであろうが確かに御三家の一員、真依への情は無くとも彼らにはメンツがある。
まあ、もしも本当に無許可だったらの話だが。
「……僕が言うのもなんだけどさ、アイツイカれてるよ。あんな異常者が最強を務める社会がまだ崩壊してないのを、心底疑問に思う」
「何を言ってるのよ」
「既に五条悟の許可は取ってある、アイツノリノリだったよ。まぁ、歌姫さんが知ればめちゃくちゃ怒るだろうけどね」
嘗て出会った雷神と呼ばれた術師、彼に似た物を五条悟に感じていたとはいえど穂乃果が最強にドン引きしたのには変わりない。
まあ、実際真依を殺すのは穂乃果であるのだが。
「ほんっと最低よアナタ達」
全ては真依のためであれど、あまりに苦痛を伴う訓練。
それが行われるのを阻むものはもはやいないと思われた、真依は
「……ここで罪悪感を覚えられる程の情緒は、とっくの昔に捨てちゃったよ。じゃあ、そういう事で始め────嘘でしょ」
風が、吹いた。
ここは室内、外から風が入り込む事はない。
ならば何が?
その疑問の答えはすぐに示された。
「悪い、遅れた」
全身に大きく広がる火傷、それを隠そうとしない態度や服装、一切の呪力を感じさせずにソレは真依と穂乃果の間に入り込んだ。
「……今は、まだ禪院家の惨劇が起こる前のはずだろ?」
「あぁ、そうだな。だがまあ、そんな事はどうでもいい」
瞬間、穂乃果が弾き飛ばされる。
異様なスピードで動くソレの一撃を食らって後退したのだ。
「嘘、ありえない。何よその怪我……」
変わり果てた姿を見て尚真依はそれが何者なのかを一瞬にして理解した。
「オマエが真依を傷付けるんなら殺す、それだけだ」
禪院甚爾の再来、天与呪縛のフィジカルギフテッド。
禪院真希が、穂乃果の前に立ちはだかった。
この世界には普通にポーニーテールの真希さんもいます