浮世英寿のヒーローアカデミア   作:ベリアロク

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第2話 「胎動Ⅱ:変身」

 

説明を受け終えた学生らはバスに揺られ、会場へと向かう。その内の一人だった英寿も例外ではなく、到着したバスから降りてまず目に入ったのは誰用のなんだと言わんばかりの大きさの扉だった。

扉は既に開き切っており、その先には普段過ごすような街並みが広がっていた。

 

 

「ハハッ、巨人でも住んでるってのか。流石は雄英、スケールが違うな」

 

 

ここ天下の雄英高校、そのヒーロー科の試験倍率は何と驚異の300倍。普通の公立高校であれば大抵2倍弱、いっても3倍程度だろう。ヒーロー科がある学校の倍率はどこも比較的高いが、雄英高校は中でもずば抜けていた。

 

 

馬鹿みたいな光景に英寿は笑いつつ周囲を見渡す。緊張でガチガチに固まっている者、周囲と談笑する者、黙々と準備に取り掛かる者と皆それぞれだった。

 

誰もが「スタートまでは時間があるだろう」と油断した。その時だった。

 

 

 

「はい、スタートォ‼」

 

 

 

突如響く拡声器を通しての声に皆が呆然とする。

そんな光景を見てプレゼントマイクはニヤニヤしながらも言葉を紡ぐ。

 

 

「どォした⁉実戦にカウントダウンなんざ無いんだよ‼ ほら走れ走れ‼賽は投げられてんぞォ‼」

 

 

「おいおいマジかよ⁉」

 

「やばいやばいやばいって!」

 

「うおおおおおおッ⁉」

 

 

 

マイクの囃し立てる言葉に受験生は一目散に我先にと市街地へと駆け出していく。

 

 

 

唯一人、浮世英寿を除いて。

 

 

「さーて俺も他の会場にアナウンスを……って一人スタートしてねぇな。ったく……『ヘイスタートで突っ立ってるリスナー! 既に賽は投げられた! このままじゃ周りのウェーブに置いてかれちまうぜ⁉』」

 

「あー気にすんなマイク! もうスタートするからさ!」

 

「気にすんなだってぇ? 全くとんだ大物だぜアイツ」

 

 

英寿の様子にマイクは呆れてその場を後にする。

その姿を英寿は脇目で見つつ、会場の様子を観察していた。

 

 

「大通りに敵の配置は多く、競合は多いが狙い目。小道にも配置されてそうだが数は多くなさそうだ。余裕があったら狙うとして……一先ず見せ場といこうか───変身」

 

 

〈DESIRE DRIVER──────ENTRY〉

 

 

 

ステーキプレートのような形状のバックルを腰に当てると、どこからともなく流れた音声とともに身体が漆黒のスーツに包まれる。冷淡な音声に似つかわしく、スーツには装飾の類は一切ない。顔には白を基調とした狐の面のようなものがある。この姿が英寿の個性を使った姿───『仮面ライダーギーツ』だった。

 

 

「目標は50……いや70ポイントってところだな」

 

 

既にスタートした集団に続くように英寿/ギーツは走り出す。ギーツの姿となった英寿の身体能力は並外れたものではないものの、アスリート並み。前方の集団が仮想敵を前に詰まっていたこともあり、1分と経たない内に前の集団まで追いついた。

 

 

「うおおおお!」

 

「固ってぇ……ポイントは俺のもんだァ!」

 

 

大通りには仮想敵と戦う学生の姿。道の脇には仮想敵の残骸が散見される。一部の学生はここで苦戦しているようだが、残骸の様子からして先に進んでいる者も多くいるように見えた。

 

 

「流石は最高峰。雄英の名は伊達じゃないな」

 

『ターゲット確認、ブッコロス‼』

 

 

大通りを駆けるギーツを狙い残骸に隠れていた仮想敵が飛び出し、鋼鉄の拳を振り下ろす。

 

 

「ハッ、物騒な物言いだな。ハァッ‼」

 

 

ギーツは跳躍しその拳を躱すと、そのままの勢いを乗せて踵落としを仮想敵に叩き込んだ。蹴りは敵の装甲を深く凹ますと、仮想敵は黒い煙を上げながらその場に沈黙した。

 

 

「これで2P。もう少し派手に壊れると想像してたが……思ってたより硬いな」

 

 

ギーツは倒した残骸を見つつ辺りを見回す。

周囲に残骸として捨て置かれているのは(恐らく)1Pの仮想敵。ここで詰まっている学生らは先ほど倒した2Pの仮想敵、或いはそれ以上のP対象の仮想敵と対峙・苦戦しているようだった。

 

 

『ミツケタ!』

 

『イケ―!』

 

『ブッコロスゾォ!』

 

 

ギーツが目を離している内に仮想敵4体が背後を取る。恐竜のような尾を持ったようなものにガトリングを搭載した仮想敵。サイズ感も多少異なっていて、軽装の方から1P・2P・3Pの敵であることが伺えた。

 

 

「手隙の相手を狙うように出来てるのか? まぁ、どっちでもいいか」

 

『ブッコロス!』

 

「ありがたくポイントを稼がせてもらおうか……2重の意味でな!」

 

 

暴言とともに真向に向かってくる1P敵。ギーツは助走をつけた拳でその敵の装甲を砕くと、その装甲を土台に跳躍した。

 

 

「これで……3P!」

 

 

1P敵の残骸の影から飛び出したギーツの姿を2P敵は捉えきれず、落下の勢いを活かした蹴りで機能を停止した。

 

 

「あとは3P敵……チッ」

 

 

続けざまに残る2体の3P敵を追撃しようとしたギーツの頭部をゴム弾が掠め、残骸に姿を隠す。学生の試験ということもあって実弾ではないものの、痣に残る程度の威力はあるようだ。

 

3P敵の両肩には砲台が1つずつ乗っている。こちらを狙う敵は2体いる為計4門の砲台がギーツを狙っており、劣勢なのは誰が見ても明らかだった。

 

ガトリングの雨を残骸を背に受けつつ、ギーツは慌てることなく周囲を見渡す。

周囲の学生の数も少なくない。Pを持つ敵を奪い合うこの状況下で誰もこちらを狙う3P敵を奪おうとしないのは、かなりの硬さでタイパが悪い・倒せる奴がここにはもういない、或いはそのどちらもであることは察しがついていた。

 

 

「このままだと埒が明かないな……おい、そこの攻撃食らい続けてるヤツ!」

 

 

現状を打開しようと付近にいた学生の1人にギーツは声をかける。

同じく複数の3P敵に狙われ、弾丸の雨に撃たれながらもその場で踏ん張っている男───切島鋭児郎だ

 

 

「うおおおおおおお……おお⁉ 俺のこと言ってんのか⁉ 今目の前の相手で忙しいんだが!」

 

「少しの間盾になってくれ! お前も今の状況を打開したいだろ⁉ 絶対打開してみせる……俺を信じろ!」

 

「……いいぜ、信じた! おーい敵共! こっち狙ってこいよ‼」

 

 

『ターゲット転換、ロックオン』

 

『集中砲火! ブットバセ!』

 

 

 

ギーツが完全に姿を隠したこともあり、3P敵5体の砲台すべてが切島の方に向く。いくらゴム弾とはいえ蜂の巣にされるのは目に見えている。けれど切島はニッと笑い、身体を硬質化させた。

 

 

『ブットンジマエェェ!!』

 

「うおおおおおおお‼ 倒れねぇからなぁ‼」

 

 

雨のように降り注ぐ弾丸の雨は鉤爪のように鋭利に尖った切島の皮膚に当たると裂けたり、弾け飛んでいく。切島が感じるのは弾丸が運んでくる衝撃のみで痛みはほぼ無に近かった。

 

 

「後は頼んだぜ! えーと……狐男!」

 

「ネーミングセンスゼロだなお前。さーてこれからどうしたものか……ッ!  ナイスタイミング!」

 

 

どう打開すべきかと考える自身の頭上に光が集まるのをギーツは捉えると、待ってましたと手で受け皿をつくる。数秒経たない内に光は一つの箱になりギーツの受け皿に落ちた。

 

黒を基調とした表面に所々に白いライン。そして上面の中心には白い狐のマーク───『ギーツ』のシンボルがある。

 

中身は開けてのお楽しみの支給品(サプライ)。これもまた浮世英寿の個性の一部であり、戦闘において重要な要素だ。

 

スライド式の蓋を開くと、白いシリンダーに黒い掴み手の付いた銃身の無いリボルバーのようなもの───『マグナムバックル』が入っていた。

 

 

「今日のバックルは……いいね、今の状況にピッタリだ」

 

 

ギーツは箱からバックルを取り出すと立ち上がり、バックルをベルトの側面から差し込んだ。

 

 

<SET>

 

 

バックルの認識と同時に無機質な電子音と共に単調な待機音声が流れ始める。ギーツの立つ横には人の胴程の大きさがありそうなシリンダーが浮かび、中心には『MAGNUM』の文字がある。

急かす様子もないその音声を聞きつつ、ギーツはバックルについていたシリンダーをカラカラカラと回しトリガーを引いた。

 

一発の弾丸の銃声が響き、同時に側方にあった大きなシリンダーが白いアーマーへと形状を変える。形状を変えたアーマーはスライドされるかのようにギーツの身体へと動き、ギーツの黒き姿は白き鎧を身に纏ったガンマンへと姿を変えた。

 

 

<MAGNUM───READY…FIGHT>

 

「待たせたな。約束通り打開してやるよ」

 

 

<RIFLE>

 

ギーツは敵の残骸を壁にしつつ、拡張武装である『マグナムシューター40X』のバレルを残骸の上に乗せる。砲身を伸ばした『ライフルモード』へと変化させ、敵を照準を定めると同時に引き金を引いた。放たれた銃弾はゴム弾の数倍の速さで空を進み、メキリと音を立てながら装甲ごと精密部を貫いた。

 

 

『ブッコロ……』

 

「おお⁉ 一瞬で一体倒しやがった!」

 

「さぁ、ここからがハイライトだ。はっ!」

 

<HANDGUN>

 

ギーツはシューターを『ハンドガンモード』へと変形させ、残骸の影から飛び出した。

 

 

『オソイオソイ!』

 

『ゼンダンメイチュウサセテヤルゼ!』

 

 

けれどギーツのスピードは先ほどまでとさして変わらず、残る仮想敵4体に簡単にロックオンされてしまう。4方向からの一斉攻撃、切島程の耐久力を持たないギーツにとって相当のダメージは避けられない。

 

 

 

 

先ほどまでのギーツと同じであるならば、だが。

 

 

 

「さっきのお返し……させてもらおうか!」

 

 

仮想敵に向かうギーツは走りながらも両手を前に突き出すと、銃を持たない腕に備え付けられていた筒状の装飾が敵の方向へと身体を向け隠された銃口を表に晒した。

 

 

『アレハ……ジュウ⁉』

 

「その通り!」

 

 

敵の視界に表れたのは2つの銃口、『マグナムフォーム』の特徴と言える疑似二丁拳銃は仮想敵が一瞬怯んだその隙を逃さなかった。

 

 

「弾丸の雨をプレゼントしてやるよ!」

 

 

ギーツは2つの銃口から絶え間なく弾丸を発射する。拳銃でありながらその様はまるでガトリングのようであり、弾丸の雨に見舞われたのは仮想敵の方だった。

 

弾丸の雨を食らい、限界を迎えた2機は火を吹いてその場に崩れ落ちた。

 

 

「やるじゃねぇかアンタ!」

 

「まぁな。残りは2機……一機は任せたぜ」

 

「おうよ! 1機程度屁でもねぇからなぁ! うおおおおお‼」

 

 

 

ギーツと切島は同時に駆け出し、残る仮想敵2体へと向かっていく。敵のガトリング弾は飛び交うが切島には直撃もダメージは通らず、ギーツに至っては弾丸を躱し先ほどと同じく弾丸の雨をお返ししている。実質的に1対1になった彼らにとって周囲の学生が苦戦するような仮想敵はもはや敵ではなかった。

 

 

「「ハァッ‼」」

 

 

2人は仮想敵の目前まで近づき、渾身のキックを決める。2機の仮想敵は同時に耐久の限界を迎えその場で大破した。

 

 

「よっしゃ! やったなアンタ!」

 

「ああ。いい囮がいてくれたおかげで楽にポイントが稼げたよ」

 

「囮ってなぁ……まぁ打開は出来たから文句は言わねぇよ」

 

「狐に化かされたな。でもまぁ、今みたいなのは無駄にはならないと思うぜ」

 

「だと良いけどな! だああああもう!畜生、遅れた分も取り返してやらぁ!」

 

「その意気だ」

 

(人を救うことを『ヒーロー』と定義するなら何かしらの救済はある筈。上の奴らの頭が凝り固まってなければな)

 

 

時間をロスした分互いの獲物を取り合うようなことにならないよう別々の方向へと走り出そうとする。

 

その時、天変地異の前ぶれかのような大きな地震が彼らを襲った。

 

 

 

「きゃあッ⁉」

 

「おおっ⁉ な、なんだ⁉」

 

「こんな時に地震かよォっ!」

 

 

その場に立っていられない程の揺れに、ギーツや切島の他周囲にいた学生らもその場に膝を付く。

すると間もなく建物が倒壊した音が通りに響き渡った。

 

学生らはその音した方を反射的に見る。そこには倒壊した建物も、顕在の建物の背も優に超え通りの幅を埋める程の巨体を持ったロボットが現れていた。

 

 

「なんだよアレ⁉ デカすぎんだろ……」

 

「雄英も面白いことするな。いよいよラスボスのお出ましか」

 

 

 

これまでと明らかに規模感の異なる仮想敵を前にし、会場の空気は一変。混乱に陥るのだった。

 

 

 

 

 

変身中における地の文の名称

  • 『英寿』はパンチを~
  • 『ギーツ』はパンチを~
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