浮世英寿のヒーローアカデミア   作:ベリアロク

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第4話 「邂逅Ⅰ:入学、そして」

雄英高校の深部、モニタリングルーム。幾つものモニターと座席が用意されたその部屋は、個性を使用した授業・試験を監督・採点することを目的として作られ、部屋の中には雄英高校の教師陣が集まっていた。

 

各自採点が終わったところを見たネヅミ、『根津校長』は皆に見えるよう座席に立った。

 

 

「皆採点お疲れ様。今年の受験生も中々豊作だったんじゃないかな」

 

「実技試験平均点数は例年以上。個性・性格ともにバラつきがあり、文字通り『個性豊かな』学年になりそうです」

 

「特に敵Pのみで試験2位、救出Pのみで試験8位。両極端な2人が雄英でどう伸びるのか……今から楽しみじゃねぇか! YEAH!」

 

「ああいう奴らが入学できてしまうのはどうかと思いますがね」

 

 

はしゃぐプレゼントマイクの様子を前に、ボサボサの髪の男──『相澤消太』は気だるげにため息をついた。

 

そんな相澤の様子を見かねて根津は問いかける。

 

 

「そんな相澤君のお眼鏡に叶った子はいるかい?」

 

「……1位の彼、浮世英寿でしょうか」

 

「オイオイオイ! もう話題に出しちまうのかよ! 今回のトリだぜ、トリ!」

 

「もうって……今がそういう時間だろ」

 

「確かに彼は凄かった。数年に1度レベルの逸材といっても過言じゃないかもしれないね」

 

 

根津は目を向ける画面にはギーツとして敵を撃破していく英寿の姿があった。

 

 

「スタートこそ出遅れたものの、すぐに集団に追いつき仮想敵を次々と撃破。敵Pだけで50P。その後怪我した学生を救出し足止めとして0P敵と戦闘、これを撃破。救出Pと合わせて100Pか」

 

「敵P救出Pどちらも高得点を取ったのは君以来じゃないかな、八木君」

 

「ハハハ、そんなことないでしょう。私が入学したのも30年以上前だ」

 

 

金のスーツに触覚のように突き出し曲がっている2本の前髪が特徴的な男───『八木俊典/オールマイト』は笑って返す。

 

 

「昔の私なんて比じゃないですよ。銃撃・スピード・破壊力、優れた強力な個性を持ちながらも個性に甘えていない。周囲を見渡す視野・咄嗟の判断力、肉弾戦も相応の経験を積んでいるように思えます」

 

「おまけにイケメンか。スペック高すぎんだろ!」

 

「目の保養で私は助かるけど……指導は大変そうね」

 

 

肌色のタイツのような服装を纏った妖艶な女性───『ミッドナイト』は手元の資料に目を向ける。資料には中学の教員からの伝達事項がまとめられており、その中には英寿について書かれたものもあった。

 

 

「筆記試験は上位、歴史に関しては満点に近い。通知書見ても内申に問題はないし、成績面では優秀なのは間違いないだろうけど……」

 

「……けど何です?」

 

「中学の先生によると『基本聞き分けは良いが、指示を無視し独断で動く場合がある』、ですって」

 

「「「あー……」」」

 

「なんでかウチに来る奴らってそういうの多いよな。ヤンチャなキッズたちだぜWAOH!」

 

「試験2位の爆豪君は何というか……全面的に気難しい性格をしていそうだし、推薦組のあの子もいるんでしょ? 今年は特にヘビーじゃない?」

 

 

ミッドナイトは試験の映像が映し出された画面に目を向ける。画面には爆豪が次々と仮想敵と打ち倒していく姿の他、少しでも自身の邪魔になりそうな他の学生には獰猛な獣のような睨みを利かせる様子も映っていた。

 

 

「そうした学生を導いて上げるのが先生の役目さ。そんな彼らを今年導くのは相澤君とブラド君の2人というわけだ」

 

「良くも悪くもつよつよカードだな。どっちが取るんだぁ?」

 

「ウチのクラスが貰います。ブラドだと浮世を止められるか怪しい……俺が見るのが確実でしょう」

 

「相澤……」

 

「気にするな。万が一の時にはブラド、お前の力も借りるさ」

 

「ああ! 任せておけ!」

 

「確かに君なら機動力の高い彼にも対処できる。ただ、かなり負担をかけることになってしまうが……」

 

 

ブラドと呼ばれた男が意気揚々に応える一方で、根津は心苦しそうな表情を浮かべる。

そんな根津の『大丈夫か』という様子に、相澤は頷いて答えた。

 

 

「問題ないです。そういう奴らの面倒見が俺の役目でもありますから」

 

「君がそういうなら良いけど……」

 

「正式にはこの後の会議で決めるとして相澤君、頼んだよ」

 

 

根津校長の言葉に相澤は頷く。

部屋での教師陣の会話はしばらく続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから時間は過ぎ、出会いと別れの季節「春」を迎える。桜が舞い散る雄英高校の正門前に英寿の姿はあった。

 

 

「遂に雄英入学か。新しい制服も悪くないな」

 

 

指定のブレザーとズボンを身に付けつつも、ネクタイは付けず軽く着崩している。

 

ネクタイ着用は校則で定められているが、あまりにも様になっている姿、そして1年生とは思えない大人びた雰囲気を受けてか門近くで立つ先生も声を掛けられずにいる。そんな中。後ろから駆け寄ってきた男が英寿の肩を叩いた。

 

 

「やっぱ英寿だったか! やったな、お互いによ!」

 

「お前……切島か! えらくイメチェンしたな、誰かと思ったよ」

 

「へへへ、まぁ気合い入れるためにな!」

 

 

黒かった髪は赤く染まり、整髪料でガッチガチに逆立っている。そんなオラつきそうな髪型をしながらも中身は相変わらずのようで、切島は気恥ずかしそうに頭を掻いていた。

 

 

「受かっててくれて俺も嬉しいよ切島」

 

「……流石に本音だよな?」

 

「どっちだと思う?」

 

 

英寿は顔の横に狐の手遊びをして見せる。

 

 

「むむむ……」

 

「ははっ、相変わらずだな」

 

「ちょ、一人で行くなよ~」

 

 

嘘か真か、切島が唸る様子を見て英寿はニヤリと笑うと、校舎内へと入っていく。切島もすぐ英寿に追いつくと、2人は事前案内を元に校舎内を歩いていった。

 

数分歩いたところで目的の教室にたどりつく。2人を出迎えたのは4、5mはありそうな巨大な扉だった。

 

 

「うっわ、でっけぇ……」

 

「どの扉もこの大きさ……大方ヒーロー科に巨人みたいな奴がいてこの大きさになったんだろうな」

 

「なるほどな……」

 

 

納得している切島を横目に、英寿はガラガラと教室の扉を開ける。

 

真っ先に入ってきた光景は、男2人が口喧嘩する様子だった。

 

 

 

「入学初日だというのに……なんだその着崩し方は! 雄英生たるもの身だしなみはきちんとしたまえ!」

 

「別に俺の勝手だろ! 朝からガミガミよォ!」

 

「勝手だって……? 爆豪君、君も雄英の一生徒である以上勝手な行動は慎むべきであって……」

 

 

 

「朝から賑やかだな。退屈しなそうだ」

 

「そんなこと言ってる場合かよ……」

 

 

爆豪と呼ばれた少年とメガネの少年の口喧嘩次第にエスカレートしていき、見かねた切島が間に入る。

 

 

「おいおいおい! 初日から喧嘩は止めようぜ! な?」

 

「気にすんな切島。そういう奴らは止めたところで、変わらず続ける。やるだけ無駄だ」

 

「あァ⁉ ンだよてめェ喧嘩売ってンのか」

 

「彼と一括りにされるのは心外だな」

 

「……こっちに矛先向いてねぇか?」

 

「喧嘩止められたんだし良いだろ」

 

 

変わらぬテンションで答える英寿に切島は肩をガクリと落とす。

 

実際のところ爆豪は舌打ちを残してこちらの集団から離れた為2人の口論は止まっていた。何とも言えない気持ちが切島にはあったものの、気を取り直して会話を続ける。

 

 

「えっと……俺、切島鋭児郎! よろしくな!」

 

「俺は飯田天哉。これからよろし……ム、君も着崩しているじゃないか! 雄英の一生徒であるという自覚を持つべきだと……」

 

「あー、宗教上の理由でな。首に輪を連想させるものは付けられないんだ」

 

「宗教……すまない、君の事情も知らずに余計なことを」

 

「わかってくれればいいさ。俺は浮世英寿、よろしくな」

 

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 

 

飯田が手を差し出し、英寿は握り返した。

 

 

「友達になるにあたって1つ助言をしてやるよ。『人の言葉を信じすぎるな』。特に初対面の奴のはな」

 

「? ああ」

 

 

英寿からの突然の助言に、意味がわからない状態の飯田。

 

その状況を不憫に思ってか切島が飯田に声かけた。

 

 

「あー……あいつ多分怠いから付けてないだけだぞ、ネクタイ」

 

「なっ⁉ 本当かい浮世君‼」

 

「生憎俺は無宗教だ。狐に化かされたな」

 

「浮世君‼‼」

 

「飯田落ち着け! 取り敢えず落ち着けって!」

 

 

飯田の受け入れられない説教が始まるのを予期した切島は身体を割り込ませ、何とか止めようとする。そんな切島の苦労も知らず英寿は黒板の指示の下、自分の座席を探していた。

 

 

「えーっと、俺の席は前から4列目の……」

 

「あー! 試験の朝絡んできた人だ!」

 

 

突然の大声に思わず視線が黒板から声の主の方へと移る。声の主は試験の朝出会った少女、麗日お茶子。隣には緑谷出久がいた。

 

 

「誰だと思ったら、あの時のカップルか」

 

「だ、だからそういうのじゃないんですって!」

 

「ようわからんけど……私麗日お茶子! よろしくね!」

 

「僕緑谷出久です! よろしくお願いします!」

 

「浮世英寿だ、よろしく」

 

「浮世君の席多分ここかな、僕たちの前のとこ」

 

「みたいだな。サンキュー」

 

 

指定された座席を見つけた英寿はそのまま座席につき、緑谷や麗日・合流した切島と他愛もない会話を続ける。

 

そうしてしばらく経った後、教室の扉が再度ガラガラと開かれる。扉の前に立っていたのは明らかに学生には見えない風貌の男だった。

 

 

「はい静かに。もうチャイム鳴り終わってるから」

 

 

(((((だれ……?)))))

 

制服でもスーツでもなく、黒いタイツのような服に首にくすんだ鼠色の包帯に見える何かを巻き付けている男の登場に教室はざわめく。

 

 

「担任の相澤だ、よろしくね」

 

「「「「「担任!?」」」」」

 

 

相澤の一言にざわめきは一層強まるも、英寿は変わらず平静を保っている

 

そんな中で英寿と相澤の視線が一瞬ぶつかるも、すぐに視線は外され相澤が手を数度叩いたことで騒めき立った教室はシンと静まり返った。

 

 

「静かになるまで10秒、合理性に欠けるね君たち。まぁいいや、早速だけどこれ(体操服)着てグラウンドに出ろ」

 

「体操服? 案内だとこれから入学式の予定ですが……」

 

「入学式ね、それも良いが先にやることがある」

 

 

相澤はコツ、コツと教壇の上を数歩歩くと生徒らの方へと顔を向ける。

 

 

「生きるか死ぬかを決めるテストをね」

 

 

充血した眼をカッと開き、薄笑いを浮かべる。

その顔は学生たちに恐怖を与えるには十分すぎるものだった。

変身中における地の文の名称

  • 『英寿』はパンチを~
  • 『ギーツ』はパンチを~
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