ようこそ!デスゲーマーのいる教室へ! 作:橘諸兄
今後のお話としては、勘違い系のギャグ寄りになるかと思います。
お久しぶりです、日本さん。そしてさよならデスゲーム。
「...?」
白い壁、白い天井、白い床。
真っ白な建物の中で機械音が鳴り、アナウンスが流れた。
『3名の人狼の死亡が確認されました。これにて、人狼ゲームを終了します。賞金は指定の口座に入金され、勝者は自宅付近にお送り致します。お疲れ様でした。』
円形に並べられた13脚の椅子には私だけが丁寧に姿勢良く座っていた。
隣の少年は真っ白な床を真紅の血で染め上げ、隣の少女は糞尿と唾液で床を汚す。
不快な臭いが制服に着いてしまわないか心配だったが、アナウンス終了と同時に強い眠気が襲ってきた。
これで、退屈で悲しいゲームが終わった。
◇◇◇
私の名前は水無瀬さやか。
好きな物は甘い物、好きな洋服のテイストはフェミニン、休日は買い物をして過ごす事が多い、一般的な女子中学生だ。
部活は特にしていないが、小学生の時、市内のクイズ大会で優勝した事がある。
しかしこれは表向きの顔なのだ。
私の本当の趣味は人には言えないような、少し仄暗いものだった。
それは...
"デスゲーム"だ。
私は非日常に強い憧れを抱いていた。
例えば、宇宙人が地球を侵略したり、ゾンビウィルスが世界に撒き散らされたり、世界中の火山が噴火して地球が海に沈んだりといった、映画の中のような出来事を妄想する事が多い。
そして、私の学校に突然殺人鬼がやって来て立てこもり事件が発生したり、リア〇鬼ごっこみたいに、全国の中学生が突然鬼に追われて殺されかけたりするデスゲームみたいな展開も好きだ。
世界規模であろうと、小規模であろうと非日常を私はずっと願っていた。
非日常を追い求めて、特殊な教育に力を入れている海外の中学に進学し、そこそこ楽しい青春を送っていた。
そこの中学では思考力を養うための特別授業が行われ、中でも無人島生活やトロッコ問題等の思考実験を用いた授業はとても面白かった。
しかし私の平和な学校生活は突如終わりを迎えたのだ。
休日に友人とホームパーティーをし、その帰り道、後ろから薬を嗅がされ気づいたら白い部屋に居た。
そして殺人ゲームに参加させられたのだ。
初めてのゲームは、脱出ゲームだった。
巨大な迷路から謎を解き脱出を目指すものだが、中にはお腹を空かせた猛獣や恐ろしい殺人鬼が彷徨いている。
そして初めに持たされた食料は500mLの水とハンバーガー1つ、そして武器を1つ選ぶ事が出来た。
迷路の規模は東京ドーム10個分であり、千葉ネズミーランドより少し小さい程度の広さだった。
その中を歩いて移動すれば、食料なんですぐに尽きてしまう。
結局クリアする事は出来た。
自然破壊は禁止されていなかったため、手榴弾を投げまくって迷路を破壊し、更地を作った。
他の参加者も大勢巻き込んでしまったが、物理の力はとは偉大なものだ。
勝者としての賞金、500万円を獲得し、気づいたら学校近くの公園に倒れていた。
そしてこのデスゲームを皮切りに、私は様々なデスゲームに参加した。
参加方法は色々あるが、その地域を牛耳るマフィアの下っ端と取引をし、デスゲームに参加する事が出来たのだ。
そして学生の傍ら、デスゲームで荒稼ぎをし、中学3年生の9月、私は日本に帰ってきた。
両親は何も知らずに私に留学が楽しかったかと聞いてきた。
「さやか、留学は楽しかった?辛い事はなかった?」
「勿論だよ。最高に刺激的で素敵な生活が出来たのよ。もっと向こうで学びたかったけど、向こうの受験は大変だし、仕方ないよね。」
留学は元々私が希望した事だったが、両親は強く反対していた。
しかし、私がどうしてもとお願いして英検1級を取得出来たら、という条件付きで認めてくれたのだ。
元々、英会話スクールに通っていた事もあり、英語には自信があった。
難なく英検1級を取得し、私の留学が決定したのだ。
留学が終わり、日本の私立の中学に編入したが、その学校は付属高校が存在せず、高校受験をしなくてはならなかった。
「うーん、どこか刺激的で楽しい学校はないかしら?」
「そうねぇ、さやかちゃんはお勉強が出来るから日本女子学院の付属か、白川女子高校が良いんじゃないかしら?」
「お嬢様学校は興味無いかなぁ〜!」
どちらも有名な女子校であり、そこそこのお嬢様学校だと聞いている。
特に白川女子は有名なお嬢様学校であり、普通科の試験でも音楽か美術の実技試験が行われるそうだ。
まあ、小学生の時、ペティナのコンペティション、C級で金賞を受賞している。留学中もレッスンを行っていたため、ピアノの実力は落ちていないので問題無い。
よって受験しても実技の点数で落とされるという事は無いだろう。
他にも何校か受験校を勧められたが、如何せん普通のカリキュラムで、ただ難関校を目指すための学校ばかり。
留学していた学校の様な特殊な教育プログラムの学校ならまだしも、デスゲームの無い平凡で平和ボケした日本の高校に通うなんてお断りだ。
「うーん、困ったわね。...あ、そういえば国立の高校はどう?橘さんの家のお嬢さんが通っている学校なんだけど、全寮制で3年間外部との連絡ができないそうよ。でも進路を100%保証してくれるんですって。」
橘というと、背の低い可愛らしい茜お姉さんの事だろうか。
しかし、国立の高校と言えど、3年間外部との連絡が出来ないとは問題にならないのか?と疑問に思ってしまう。
もしかしたら、非人道的な教育が行われているのかもしれないな。
考えただけでワクワクしてしまう。
「うーん、お母さん、私そこ行きたい!茜お姉さんもいるし、とっても素敵な学校生活が送れそうだわ!」
「お母さんとしては、さやかちゃんにまた会えなくなってしまうの辛いのだけどね...でも仕方ないわね。早速塾の先生に受験対策をお願いしなくちゃね。」
こうして、私は高度育成高等学校に合格するため、そこそこ手を抜きながら勉強に勤しんだ。
併願で私立高校を受験しているため、万が一落ちても人生的に詰む事は無い。
そして合格した。
試験には大学入試レベルの問題も含まれていたが、算数が得意であれば簡単に解けてしまう。
柔軟な思考を持っていれば誰でも解ける問題だ。
こんな問題が天下の京大で出されているのだから、おかしな話である。
まあ、誰でも得点できるが頭が固ければ解くのに時間がかかり、ほかの問題に回す時間が減ってしまう。
敢えてそれを狙って出題しているんだろうね。
「じゃあお母さん、体に気をつけてね?」
「私がそれを言うのが当たり前なのに、私の身を案じてくれるなんて、さやかは本当に優しい子ね。」
母は私を善人だと思っているが、私は単なる人殺しだ。
デスゲームに参加した事は突発的だったとはいえ、その後自主的に参加していたのは紛れもなく私の希望に基づく行動なのだ。
外見はいくらでも取り繕う事が出来る。
しかし、見る者が見れば私は異常な人間なのである。
「...お母さん、行ってきます。」
私が玄関の扉に手を掛けた瞬間、慌てた様子で母が静止の声を上げた。
「ちょっと待って。...ああ、これじゃない...どこに仕舞ったかしら...」
母は何やら慌てた様子でポケットの中を探り出した。
20秒程経った頃、何かをポケットの中から取り出し、私に差し出してきた。
「もし困った事があったらこれを見せなさい。きっとあなたの助けになるからね。」
そう言って母から手渡されたのは睡蓮の花が描かれた青いブローチだった。
レッドサファイアの宝石が埋め込まれており、高価な物なのだと推測できる。
「これは?」
「詳しくは話せないけど、きっとあなたの役に立ってくれるわ。本当は留学の時みたいにクレジットカードを渡したいんだけど、あの学校では無意味なものだからね。」
母はどうやら、相当私の事を心配していた様だった。
安心して欲しい、これでもデスゲームで何度も殺して何度も勝利を手にしてきたんだから。
ちょっとやそっとの事では死んだりしない。
「ありがとう、お母さん。じゃあ私はそろそろ行くね。また3年後に会おうね?」
「ええ、そうね。元気でね?頑張るのよ?さやかちゃん。ピアノのレッスンの方は、こっちでお金を払っておくから、週一のペースで帝都音大の先生が見て下さるからね。」
全寮制の学校といえど、生徒の才能を潰す事はしないらしい。
ピアノのレッスンを継続したいという申し出をしたら、週一で外部の講師を招待する事が許可された。
将来的に音大に進む事も検討しているため、そこそこ真面目にピアノは続ける予定だ。
わざわざ今の段階でそれを口にしてまで、会話を続けたいだなんて、相変わらず子離れ出来ない人だよね。
子供の私が心配になるレベルだよ。
「分かってるよ。じゃあ、そろそろ行くからね。」
なにか言いたそうな母を無視して家を出る。
新しい制服に身を包み、必要最低限の持ち物を持って高校へ向かった。
高校へはバスを利用して行かなければならない。
家の近くのバス停に到着すると、約半年間同じ学校に通っていたよく見知った生徒の姿を見つけた。
「みーちゃん!」
「わあ、さやかちゃん!さやかちゃんもこの学校を受験していたんですね!」
この子は王美雨、通称みーちゃんだ。
私が半年間通っていた中学で仲良くしてくれた友達である。
「バス停で会えたのも何かの縁だし、一緒に行こっか。」
「そうですね。」
しばらく雑談をしているとバスがやって来た。
車内はそこまで混んでおらず、私とみーちゃんは隣あった席に座った。
「みーちゃんは高校でなにか部活に入る予定はある?」
「うーん、まだ考えてないです。中学では帰宅部だったので、高校では何かやりたいですね。」
「みーちゃんは英語が得意だし、英会話クラブとかどう?資格を取れば進学にも有利になるんじゃないかな?」
みーちゃんは中国からの留学生という事もあり、英語が堪能だ。
中学時代は日本語が覚束なかったため英語で会話する事が多かったらしい。
私と出会った頃には日本語でスムーズに会話出来ていたから、相当努力をしたんだろうね。
「確かにそうですね。さやかちゃんは部活は決めましたか?」
「うーん、クイズ研究会には興味があるけど、多分部活には入らないと思う。でも在学期間中はなにか目標を持って生活したいな。例えば、色々資格を取る、とかね。」
「クイズですか。確か、さやかちゃんはクイズ大会で優勝経験があるんですよね?」
「まあ、小学校の頃の話だけどね。テレビ番組のクイズにハマってさ。その流れで雑学を少し勉強し始めて、クイズ大会にもノリで出てみたんだよね。そしたらなんと優勝出来ちゃった。」
「凄い!!やっぱりさやかちゃん頭良いですよね!」
「あはは、小さい時から学校のお勉強はちゃんとしてたからね。」
「そうなんですね!私も勉強はしてましたよ。結構教育に厳しい家だったんです。」
みーちゃんの家庭も御両親の教育指導が凄かったと聞いたが、みーちゃんを愛しての事だから何も言えなかったらしい。
私の母も似たようなもので、私をなるべく良い学校に通わせて良い教育を受けさせようと画策していた。
ちなみに習い事は、ピアノ、書道、華道、茶道、英会話、テニス、水泳、ダンスと数多くの習い事をさせられた。
実を結んだのはピアノ、書道、英会話くらいで、無駄な習い事が多かった気がするな。
「あ、そろそろ着くね。降りる支度をしようか。」
「そうですね。といっても荷物はこれしかないです。」
「必要な家具や洋服、日用品は家から送ってるもんね。私もこの鞄だけだよ。」
そう言い、学校前のバス停に到着した。
私達はバスを降りて校門から敷地内に入った。
「少し人が多いね。早くクラス表を見に行こう!」
「そうですね!このままだと人だかりが出来ちゃう。」
混み合う前に私達は昇降口に向かった。
昇降口は混みあって居らず、クラス表も簡単に確認する事が出来そうだ。
「えーっと、私のクラスは...Aクラスだね。みーちゃんはどこだった?」
「私のクラスはDクラスでした。離れちゃいましたね...。」
少し落ち込んだ様子のみーちゃんを宥め、私達は互いのクラスに向かうため別れた。
「じゃあまた連絡するね!またね!」
「そうですね!またお話しましょう。」
Aクラスに入ると、半数以上の生徒が室内にいた。
ざっとクラスを見回して、特徴的な生徒は2人。
まず1人目は頭髪の無い真面目そうな男子生徒だ。
彼は近くの男子生徒と親しそうに話しており、コミュニケーション能力も高い様だ。
2人目は銀髪の髪が特徴的な低身長の美少女だ。
杖が机の横に掛けられている事から身体的な障害を抱えている事が分かるが、彼女の持っている思想学の本から知的な印象を受けた。
何となく、そう、単なる勘なのだ。
この2人が今後Aクラスの未来に大きく関わっている、そんな気がした。
私は暇つぶしに携帯端末を操作し、音楽を聴きながら楽譜に目を通して行く。
腕試しに今月行われる横浜市の市民コンクールにエントリーする事になっており、その自由曲に選んだのは"ショパン ワルツ 14番 遺作"という作品だ。
様々な技法が使われており、演奏速度も速く、華やかなフランス宮廷を思わせる様な1曲となっている。
ピアノの旋律に耳を傾け、自分の中の演奏とのすり合わせをしていく。
表現力が問われる作品なので、他者の演奏の真似をしても意味が無い。
一回聴き終えたところで、隣の席の少女が話しかけてきた。
「あ、あの、それショパンの楽譜?」
「うん、そうだよ。」
「...ワルツ集のやつだよね?コンクールとか目指してるの?」
「まあね。ピアニストになりたい訳じゃないけど、教養として身に付けて生涯学習として続けていけたら良いなって思ってるよ。」
私の楽譜を覗き込みながら少女は楽しそうに鼻歌を歌う。
どうやら知っている曲の様だ。
しかし声が小さく、早口なので話すのが苦手なのかもしれない。
「私、水無瀬さやか。あなたのお名前を聞いても良いかな?」
怖がられない様に、優しく問いかければ彼女は頷いてくれた。
「...私は山村美紀です。ピアノを小さい頃から学んでいて、少し気になって話しかけてしまいました。」
「私も小さい時からピアノを弾いてたなぁ。好きな曲とかある?」
「ドビュッシーのアラベスクとブラームスのラプソディーかな。アラベスクは発表会とコンクールで弾いたから、特に思い入れがある曲なの。」
ゆったりした曲、表現力が問われる曲が好きなのかな。
「私はバダジェフスカの乙女の祈りが好きだよ。初めて町のコンクールに出た時に自由曲をこれにして、銅賞を受賞したんだよね。」
「乙女の祈りは旋律が美しいし、私も好きだよ。アンサーソングの叶えられた祈りとセットで聞くと一人の女性の生涯を表すかのように切なくて、儚くて、映画を見ているみたいだよね。」
「分かってるね!私も乙女の祈りを弾いた後にレッスンの課題曲で弾いたんだけど、とっても綺麗な曲だよね!!」
その後私と美紀ちゃんはピアノの話で盛り上がり、連絡先を交換した。
「そうだ、美紀ちゃん!今日の放課後一緒にお買い物に行かない?学園内を散策しながらさ!」
「散策...うん、一緒に行きたい。」
「楽器屋とかに寄って楽譜見たいんだよね。私、この学校入学時にレッスン室の使用許可を貰ってるから、美紀ちゃんと一緒に連弾とか出来たら良いなって思うんだけど、どうかな?」
「れ、連弾かぁ...やった事ないから今はちょっと遠慮しておくよ。でもレッスン風景とか、さやかちゃんの演奏してる姿は見てみたいな。」
結構打ち解けたと思ったけど、やっぱりまだぎこちない。
まあこれから仲良くなっていけば良いよね。
「そっかそっか!じゃあ今度レッスン室に遊びに来てよ!私も美紀ちゃんが演奏してるとこ見てみたい!」
「えぇ、恥ずかしいよ。」
「大丈夫、私も恥ずかしいからさ。」
こうして一緒にピアノを弾く、という約束を取り付ける事に成功した。
美紀ちゃんは意外と押しに弱いのかもしれないな。
その後趣味や好きな物の話題でさらに盛り上がり、この学校に来て1人目の友達が出来た。
「さやかちゃんは趣味とかある?」
「うーん、人狼ゲームが好きでよくやってるよ。後脱出ゲームとか、サバイバルゲームとか、バトルロワイヤルとか、武器を使いながら反撃ありの鬼ごっことか、色々やってるよ。」
「凄いね、私も人狼ゲームはネットでやった事があるよ。」
「人狼ゲーム楽しいよね!私はネット人狼もやるけど、多いのはリアル人狼かな。人を集めて、賞品とか用意して遊ぶんだけど、制限もあって面白いんだよね。特に狼が好きなんだよね。誰を襲撃に選ぶ事で誰が疑われるか、占い結果をどう出すか、誰が狂人か、考える事が沢山あって楽しいよ!ゲームメイクにおいて最も重要な役職であり、エンターテイナーでもあるからね。」
「人狼かぁ...私は苦手だよ、すぐ吊られちゃう。さやかちゃんは強そうだね。」
人狼で最も楽しいの、信頼してくれた子を殺す瞬間だ。
ゲームに恐怖して動けない子を優しく諭し、信頼を勝ち取ってから殺す。
あの時の叫び声や絶望に染った表情はなかなかそそられるよ。
まあ、多少罪悪感もあるんだけど、ゲームを運営してる奴らが悪いんだから許してね。
暫く人狼ゲームについて話していると、HRが始まる1分前になった。
水無瀬さやか
所属 1年Aクラス
学籍番号 S01T009089
誕生日 3月3日
【学力】 A-
【知力】 B
【判断能力】 A+
【身体能力】 C
【協調性】 E+
【面接官からのコメント】
中三の全国マーク模試では全問正解の5教科満点という優秀な成績を収めており、非常に優秀な生徒だ。
だが、協調性が著しく低く、合唱コンクールや体育祭は欠席しており、本人自身に問題がある。
コミュニケーション能力は高く、友人も多いため今後の改善を期待したい。
よってAクラス配属とする。
【担任からのコメント】
留学をしていた事から、語学堪能な類稀な生徒です。
協調性を持ち、更なる向上を目指して切磋琢磨して欲しいと考えています。
水無瀬さやかの恋愛描写を入れても良いですか?
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いいよ♡
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ダ〜メ♡