ソレアを死なせるRTA、はっじまるよー!
ではどうぞ
「クックック……、まさか先生の方から来てくれるとは思いませんでした」
“御託はいい。さっさと本題に入れ”
「……あなたとはもっと話をしたいのですが。仕方ありません」
ソレアをミレニアムに行かせて、やっと一人になることが出来た私は黒服の元に尋問しに来ている。
“お前もソレアのことを知っているんだろ?”
「白故ソレア……。ああ、『嘆のイカロス』ですか。それがどうして……」
知らない単語を口にしながら、黒服は訝しげに手を組んだ。
「まさかとは思いますが、『嘆のイカロス』が居るのですか? 先生のすぐ近くに?」
“ソレアはソレア、ソレアは私の大切な生徒だ『嘆のイカロス』なんて名前じゃない”
苛立ちを隠さずにそう言うと、黒服は一層冷たい雰囲気で私にはっきりとした口調で語った。
「悪いことは言いません、一刻も早く白故ソレアから離れて下さい。あれは先生が思っているような生徒とは根本から違います。先生に危機が及ぶどころか、下手したらこのキヴォトスが滅びかねません。『嘆のイカロス』は先生が思うほど善良ではありません、キヴォトスを
前の飄々とした態度とは違い、真剣一色で黒服は言う。怪物だの化け物だの、黒服もドクトゥスと同じことを言う。
“ドクトゥスも同じことを言ってた”
「ドクトゥス……?」
“あれ? あいつは元ゲマトリアだと言っていたけど、面識無いの?”
「ドクトゥス……知りません。いや、この感覚……、もしや……。有り得てしまうのか?」
顔に手を当て、何かを考え込む黒服。こんなに真剣な黒服は私が大人のカードをチラつかせた時だけだったから珍しい。
「……先生、本日はお帰り下さい。こちらで確かめなくてはいけないことができました」
“そ、そう。じゃ、失礼するよ”
――――――――――
アリウススクワッドのことは早急に対応しなくてはいけない事案だが、自分の《未来》は“酷く限定的な”能力故に訪れる正確な時刻はわからない。景色に時計等の物があれば即座に時刻がわかるが、絶対に時計が見えないのには作意的なものを感じる。
「お越し下さりありがとうございます、先生。しばらくぶりのトリニティ訪問となりますね」
かと言って何もしない訳にもいかず。自分は先生と共にトリニティへと訪問に来ている。
“こんにちはナギサ、みんな”
「またお会いしましたね、先生。先日はお世話になりました」
「……はじめまして。救護騎士団の団長を務めております、ミネと申します」
ナギサじゃないけどもう胃に違和感が来た。先生は通常運転だが、ナギサのカップを持つ手が微動している。今回、先生がトリニティを訪れたのはエデン条約以降の顛末と事件の後始末について話し合う為……だったが。きかん坊なシスターフッドと救護騎士団のリーダーが出席している。見ろ、ナギサがストレスでさっきから紅茶を飲む手が止まらないぞ。自分もこんな空気は嫌いだ、早く退席したい。
「今、ティーパーティーには外部の助けが必要です」
ミネが何故ティーパーティーではなく彼女たちが、という先生の疑問に答える。
「エデン条約の前後に、ティーパーティーの一員がホストを攻撃する事件が起こり、その結果、監獄に入れられるという前代未聞の事態となりました。まさか、セイア様を攻撃するよう命じたのがミカ様だったなんて……」
「……」
「……」
「……」
本人は真面目に騎士団の長として言っているつもりだとわかっていても、癪に障らずにはいられなかった。無意識にシグヌスに伸びた手を止めて、自身の激情を抑える。
「セイア様の治療に当たったのは周知の通り、私です。そのため、私も自分なりにこの事件を調べてまいりました。み ミカ様は結果的にアリウスに利用された形ではありますが……だからといってご本人の罪が消えるわけではありません。そして、現ホストであるナギサ様は「シャーレ」という超法規的組織を利用し、無辜の生徒を退学に追い込もうとしました。被害を受けた生徒たちに謝罪し、およそ丸く収まったとは聞いておりますが……。それでも、ナギサ様の行為が無かったことになるわけではありません」
「……」
「……」
「セイア様は幸い学園に復帰することができましたが……以前より体調が悪化してしまい、自室から出られない体となっております。そのため、現在不安定な「ティーパーティー」には外部の手助けが必要だというのが私の判断です」
もうミネが全部言ってくれた通り。エデン条約の事件でティーパーティーは不安定になっている。被害は自分が限りなく抑えたとはいえ、それでも波紋のように揺らぎはその脆い所から崩れていく。
この一連の事件の黒幕として、三人の結論はアリウス分校だと考えている。それは間違いでは無い。実行犯は確実にアリウスの者であるし、結果としてアリウスは
しかし、それだけだと疑問が残る。何故アリウス……いや、ベアトリーチェはエデン条約の妨害と複製の確保を秘匿されていたアリウス分校の存在を露見させてまで実行したのか。仮説としては、自分にやられた損害を複製で補いたかった、エデン条約を妨害することで目的の状況を作りたかった。1つ目の仮説はアリウスの露見と釣り合うのか怪しい、2つ目に関してはその目的が不明だから何とも言えない。
何にしても、アリウスが表舞台に出てきたことで必然とベアトリーチェも舞台上に引きずり出される。さっさと処理して、アリウスの解体及びトリニティとの併合の為に時間を割きたい。
「ソレアさん……聞いていますか」
腕を組んで考え事をしているとナギサが声をかけてきた。この場の全員と仲が良い自分が居ても気まずい空間から退席したい一心でも、一応はちゃんと会話に参加しなくては。
「大丈夫、ちゃんと聞いてるよ。カタコンベに関しては私も調査してるけど、今現在全貌を把握できてない。アリウス自治区に繋がる通路でさえ推定のものが多くて絞りきれない。突撃を仕掛けるのは当分厳しい。スクワッドって呼んでるんだっけ? サオリ達は自治区に帰ってないとはいえ、彼女らは隠密のプロ、見つけるのは困難だ」
情報が足りない、このままだと後手後手に回るしかなさそうだ。自分だけで片をつけれたらいいけど能力の調子もこの頃頗る悪い。全体的に靄がかかっていて、正直使い物にならない。
「スクワッド以外にも一人、通路を熟知している生徒がいるのではありませんか?」
義手を着けても、火傷の傷は深い。どこまで勝負を持ち込めるのか考えてると、サクラコの発言に眉を顰める。
「ミカのこと?」
「ええ、彼女は長い間アリウスと内通してきました。それなのにアリウスの位置を知らないという言葉を信じるのですか?」
「……たしか、ミカ様はアリウス生徒に補給品を手渡した記録が残っています。クーデターを起こすため、アリウスの支援を得るために……そう考えるのが自然でしょう」
「……」
サクラコにミネも乗っかった。ナギサの手が震えてる。ずっと一緒だった幼馴染に糾弾されれば当然そうなる。怒り、悲しみ、困惑、疑問、ナギサは苦しい思いを押し殺して耐え忍んでいる。
「ですが……ミカさんは……」
「これまでのミカ様の評判と行動はあまりに模範的とは言えません。ナギサ様はよくご存知だと思いますが……ミカ様はティーパーティーに所属している事を盾に、多くの過失や問題を誤魔化してきました。今現在、学園で発生しているミカ様に対しての糾弾と騒動──こういった世論もまた、彼女のこれまでの振る舞いと無関係とはいえません」
「黙れ」
自分でも吃驚するくらい低い声が出た。ミネもサクラコもナギサも、先生でさえ驚きの目で自分を見ている。
「サクラコ、ミカが嘘をついてるって言いたいの?」
「……そういうこともあるかもしれないという─」
「何故? 客観的にミカの現状で嘘をつく理由が何処にある? サクラコの言うミカだったら知ってたらさっさと吐いて罰を軽くするのが自然だ」
「ミネ、ミカへの糾弾や騒動については私もそう思う。それは仕方ない、過去は変えられない。やんちゃなミカの性格もね。でもミネにはミカが計算高いタイプに見える? やらかしを繰り返して、ティーパーティーの権力で誤魔化してきたミカが急にアリウスからの信用とか考えると本気で思ってんの?」
「何より!
「ソレアさん……」
「ナギサも、信じたいならもっと頭回して理由を捻り出さないと。聴聞会でミカを弁護するんでしょ?」
三人とも押し黙ってしまった。お通夜みたいな空気に耐えられなくて、自分はやけくそ気味に声を荒らげた。
「もう疲れた! 今日はお開き! 解散!」
本当……こんなのはゴメンだね。
――――――――――
サクラコとミネが退室して、先生がナギサにミカの事をお願いした後、自分だけ呼び止められた。
「ソレアさん……」
「どうしたのナギサ」
顔を合わせ、無我夢中に抱き締められる。胸に顔を埋めて、涙目になるナギサ。
「心配……したんですよ。腕も……翼も……こんな酷い怪我をして」
「……心配してくれてありがとうナギサ。ナギサが無事だったから栄誉の負傷かな」
「っ! 冗談でもそのようなこと言わないで! 傷だらけで死人のように眠るあなたを見て、とても苦しかった。私の手の届かない場所まで行ってしまって……そのままふと消えてしまいそうで。正直……あなたが銃を持っているだけで不安になります。変ですよね……キヴォトスでは当たり前なのに、その当たり前があなたに似合って欲しくないと願うなんて」
それに……、とナギサは自分の首輪に手を当てる。抱きしめ直したから顔が後ろにあるから表情が見えないけど、若干の寒気を感じた。
「こんな邪魔物を着けさせるくらい優しいあなたです。これから私がすることも、受け入れてくれますよね?」
そう言ってなし崩しに押し倒される。妖艶に笑う彼女は、普段のイメージとはかけ離れていた。
「私の不安を……埋めて…………」
――――――――――
なんやかんやあって、先生に発信元不明のメールが届き、そこに行こうと言う先生の護衛で外に出ている。
(確実に罠だ)
自然と銃を握る手に力が入る。微かに聞こえた物音の方向に反射的に銃口を向け、先生を背中に隠す。
「先生、危険を感じたら振り向かずに逃げて。……そこのお前、ゆっくりと姿を見せろ」
物陰から現れた人物に、自分は目を見開いた。汚れてボロボロのサオリだ。あれからずっと逃げ続けてきたんだろう。自分たちの前まで歩いて、力無く座り込んでしまった。
「……ソレア、先生。アツコが……連れて行かれた」
「なっ……」
「他の仲間もアリウスの襲撃に遭って、散り散りに……生死も不明だ……。あれから何日も……逃げてきたが……。私では彼女を止められなかった……。このままでは……アツコは……姫は、死んでしまう……。明日の朝……夜明けと共に「彼女」に殺されてしまう」
先生を見る。ソレアのしたいように、そう言ってる気がした。自分も膝を着いて、サオリと同じ目線になって肩に手を置く。雨と泥で連邦生徒会の制服が汚れるけど気にならない。
「わかった」
顔を上げたサオリの目に少し光が宿った。最低でもタイムリミットは明日の朝……、それまででもベアトリーチェに《儀式》を進めさせたらアウト。迅速且つ的確な行動が求められる。
「先生」
“うん、任せて”
そう言って、カタコンベに向けて歩き出す。
「ま、待ってくれ。これを……」
サオリは見たことない爆弾を取り出し、先生に差し出す。普通の爆弾じゃない、ゲマトリアの手で生み出された物だ。
「《ヘイローを破壊する爆弾》だ。この起爆装置でしか起爆しない。信用できなくなったらいつでも起爆してくれ……」
「はいはい」
無言で横から起爆装置を奪って誤爆しないよう丁寧に壊す。
「行くよサオリ。
「……っ、ああ」
アリウススクワッド救出作戦、開始。
絶対にソレアを殺したいベアトリーチェ
vs
絶対にソレアを救いたい先生
vs
何もしなくても勝手に死ぬソレア
vs
曇るアリウススクワッド
ファイ!
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