空は酷く澄んでいる   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

評価赤圧倒的感謝!
我一層曇作品投稿奮励!


ではどうぞ


歯車のイデア(バッドエンド3)

 

 

 

「だ、誰だ……ぐわ!」

「応戦を……がぁ!」

「ひ、ひぃ!」

 

 

 先生の護衛をサオリに託して、カタコンベまで一直線にアリウス生を掃討していく。ベアトリーチェに勘づかれる前にできるだけ進みたいから、無線で報告される前に一瞬で意識を刈り取る。義手での実戦は初だが、流石はエンジニア部、かなりの高性能だ。ウタハは昔から機能を付け足す癖があったが、この義手にはそれらしい(余計な)機能は見当たらない。彼女も義手に手を加える気にはなれなかったか。

 

(ありがたい限りだよ)

 

 義手で撃つと勿論精度が落ちるが、近接用と考えればさほど支障はない。ゲリラ戦を仕掛ける身なら動作音だけが少し気になるが、些細な事だ。音を聞かれても、それは白い怪物の落ちる合図だ。

 

(あらかた片付いたな)

 

 先生とサオリはヒヨリの救出に向かった。なら自分はミサキの救出に行く。こんな状況だ、ミサキの場所は検討がつく。ここら近辺で高くて、確実に死ねる場所。

 

 

(待ってて……ミサキ)

 

 

~~~~~

 

 

 雨上がりで夜風が冷たくて、月が儚く照らされている。自分を通り抜ける風に靡く外套は純白から薄く汚れていて、月明かりに照らされる翼は堕天したみたいに黒く焦げている。

 

 数十メートル下の水面を見つめて、大河に架かる橋の柵に身を乗り出すミサキ。

 

「……」

「アツコを助けに行くよ、ミサキ」

「なるほど……リーダーはそっちを選択したんだ」

「私にとってもアツコは家族だし。何より……」

「……?」

「いや、なんでもない。行こう」

「…………あなたはいつもそうだったね」

 

 

 柵に腰掛け、ミサキは呆れ声で呟く。近付こうとすれば、ミサキは手で自分を止めた。

 

「?」

「ねえ、私がこのまま死にたいって言えばどうする?」

「止める」

「そう「止めてから痛みのないように殺してあげる」……!?」

 

 驚いて目を見開いたミサキ。ゆっくりと近付いてもミサキは自分を止めない。

 

「……あなたは変わったね」

「そうかな?」

「うん、色々……あの時、アリウスから私達を置いて出て行った時から変わったよ」

「私は変わってないよ。()()私はこうだっただけ」

「でも、昔のあなたならそんなこと言わなかった」

「そう?」

「あなたは……誰?」

「白故ソレアだよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 話してるうちに自分はミサキの前まで来た。もう飛び降りるつもりがないミサキを柵から下ろして軽く泥を叩く。よし、と顔を見ると何処か青ざめている気がした。

 

「行こうミサキ。アツコを助けて、幸せな瞬間が訪れるのを待とうよ。ミサキなら生きる理由も意味も見つけられるからさ」

「……え?」

 

 

 

“ソレアー”

 

 

 ミサキが何かを言おうとしたのを先生の声が遮る。先生とサオリの後ろには助けに行ったヒヨリの姿がある。救出は上手くいったようだ。

 

 

「ミサキは無事、カタコンベまでのルートの敵も排除済みだよ」

「わかった。あと90分で入口が変わる、急ぐぞ」

「やっぱり入口変わってたんだね。どうりでアリウス自治区が見つからなかったわけだ」

 

 

 一人足りないアリウススクワッドと先生と共に、アリウス自治区に急ぐ。全てはアツコを助け、幸せな《未来(エンド)》に向かう為に。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「残り」

「30だ」

 

 先生より早くサオリと自分を先頭にカタコンベ内を制圧していく。残り時間は30分、このペースなら追いついてきた先生も含めて突入できる。

 

 

──キィィィィ。

 

 ヘイローを回転させる。自分のヘイローは三重円。三重の円はネイタル、トランシット、プログレスを意味する。これは()()()、自分に()()()()()()()()()()()()()()()だ。自分がどう生き、どう死に、何を成すのか。全ては()()の望みのままに決められている。

 

《「私が失った分だけ、あなた達も失ってよ。そうじゃないと──不公平でしょう?」》

 

「ぁ……あぁ……、クソ……」

 

 やはり事はそう簡単じゃない。ノイズがかかっていて顔は見えないけどミカだ。ミカがアリウススクワッドを襲いに来る。

 

「急げサオリ、ミサキ、ヒヨリ、先生は私がそっちに送る。だから─」

「やっほー☆」

 

 ヒヨリが銃弾の雨を喰らう。全弾命中、暫くは戦闘不能だろう。サオリ達が警戒する中、壁があった穴から砂煙を払いながら一人の大天使が姿を見せる。此処に居るはずのない、聖園ミカ。

 

 

「ミカ……」

「ってあれ? どうしてソレアがスクワッドと一緒に居るの?」

「待ってくれミカ」

「え、あ……、こんな姿……見せたくなかったのに」

 

 

 

“みんな……”

 

「スクワッド! 先生抱えて急げ!!」

 

 追いついた先生をサオリ達に託して指示を飛ばす。もうボロボロのサオリ達じゃミカの相手にならない。優先順位はアツコの救出が一番、我儘お姫様に構ってる暇なんかない。

 

「逃がすと思ってるの?」

 

 ミカもそんな隙だらけなスクワッドに銃弾を放つ。気が撹乱してるのか、あのままだと先生にも直撃してしまう。勿論、そんなこと自分が許すわけが無いが。

 

 翼を広げて先生達を庇う。自分の翼は片翼だけでも10mはある、本気を出せば通路を塞ぐなんて造作もないことだ。弾を防がれたミカの表情はより暗くなり、堕ちた雰囲気が濃くなる。

 

「ソレア、どうしてあんな奴ら庇うの?」

「家族だから」

「違うでしょ、ソレアは孤児だもん。もし仮に家族だとして、あいつらはミサイルを落としたんだよ。ソレアの腕と翼を奪ったのはあいつらなんだよ。そんな奴ら家族なんて呼べるの?」

「サオリ達は何があっても私の家族だ。それにミサイルを撃ったのは彼女たちじゃない。銃を下ろしてミカ」

 

 

 ミカは力無く銃と顔を下ろす。しかし、ブツブツと独り言が増えていき、目の濁りも渦巻いていく。

 

 

「どうして? ねえどうしてよ。……全部燃やされちゃったの、ソレアやナギちゃんとの思い出も、大切にしてた物全部。セイアちゃんも私のせいで……」

(セイアが?)

「私が《魔女》だから、だから全部私のせい。私が受け入れなきゃいけないの。じゃあ彼女たちは? サオリのせいで私は全部失ったのに、なんであいつはまだ」

「ミカ!」

 

 ようやく焦点が合ったミカと目が合うと、背筋が凍った。

 

「……ねえ、その首輪は何? 誰に着けられたの? ソレアまで誰かに奪われるの? ……それだけは絶対にダメ」

 

 ミカの姿が消えるのと同時に上体を反らす。ミカの爪が首輪をかすって小さな火花が発生した。ミカの目から光が完全に消え、深淵の如き暗闇だけが残っている。

 

「なんで避けるの? ダメだよソレア、早くあの女の物を失わせなきゃいけないんだから。……でも、ソレアがあの女の家族なら、……ソレア」

 

 

「私に復讐させて(殺されて)?」

 

 その瞳には、ドス黒い狂気が宿っていた。

 

 

――――――――――

 

 

 

 

「ソーレアー」

「今日も元気だね、ミカ」

「ミカさん、少しは落ち着いて下さい。あなたは次期ティーパーティーなんですから、周りの目をですね……」

「もー、今は他に誰もいないんだからいいじゃんね」

「ソレア、君が甘やかすからだぞ」

「え、私の責任なの?」

 

 

 煌びやかなテラスで絢爛なティータイムを過ごした過去。ここトリニティの地ではあるが、四人の間に腹の探り合いはない。純粋に会話と茶を楽しむ友人の睦まじい姿があった。

 

 

「ねえ、ソレアはまだ見つからないの?」

「……できる限りの事はしてますが、まだ……」

「もっと規模を大きくして隈無く探そうよ。なんで隠れてコソコソと探さなきゃいけないわけ?」

「……ミカ、私達はもうティーパーティーなんだ。トリニティのトップたる私達が一個人に学園の総出で探すとなれば、他の者が黙ってはいないだろう」

「わかんないよ! 行方不明になった友達を探すだけじゃんか!」

 

 

 三人になった茶会の顔ぶれはティーパーティーと呼ばれ、されど茶はいつもより不味くてかなわなかった。人々を導く天使はその役目を果たしながらも、空席の四席目、そこに座っていた大切な白い人、其の者の帰還を願う。

 

 

 

 

 歯車が狂い始めたのは何時だったか。もしくは歯車は最初から狂っていたのか。正しい歯車を知る者は誰もいない、最初から狂っている歯車を狂っていると誰が言えるのだろうか。

 

 

 

「誰も望んでなくても、結末は必ず訪れる。例えそれが凄惨で、残酷で、救いの無い、そんなバッドエンドだとしても……」

 

 

 

――――――――――

 

 

「アハハ!」

「あー、もう!」

 

 二人の戦闘は激しさを増す一方、距離も近くなっていく。1.75メートルの間合い、ティーパーティーでありながら異様な強さを持つ聖園ミカと、キヴォトスの全行政を担う連邦生徒会が隠し続けてきた連邦生徒会最強の白故ソレア。二人のインファイトが始まる。

 

 銃が日常のキヴォトスでは珍しく体術の心得があるソレアにミカは怪力と頑丈で対抗する。周りの建造物を破壊しながらアリウス自治区を移動する二人。実力が拮抗してるように見えるが、ソレアには考えがあった。

 

(ミカをベアトリーチェにぶつければだいぶ楽になる)

 

 カエルムで撃ちながらバシリカの位置を確認する。

 

「こんな時に考えごと?」

「ッ!?」

 

 ミカの渾身のストレートを咄嗟にクロスガードで受けるが、衝撃で回廊まで飛ばされる。更に今ので義手が逝かれた。義手ありでギリギリだった戦況が、ひっくり返った。

 

(不味いな……)

「ソレアっ!」

 

 此処はバシリカに繋がる地下回廊、先生と疲労したアリウススクワッドだったら丁度ここを通るタイミングだったのだ。

 

「不味い、逃げろサオリ!」

 

 気付くと同時に走り出す。ソレアがサオリを庇うのと、銃声が回廊に響くのはほぼ同時だった。殴打による衝撃でまともに動くことすら出来ない義手は、瓦解するようにバラバラになって壊れていく。

 

 

「あーあ、退いてよソレア」

「無理だよミカ」

 

 片腕は失っても相手は五体満足。正に絶対絶命だ。

 

「いい加減わかってよ」

「いい加減目を覚まして」

「わからず屋だね」

「我儘なのは変わってないね」

 

 

 

 

―ドゴォ!

 

(サオリを……!)

 

 

 ミカの標的は完全にサオリに切り替わった。轟音を上げてサオリに急接近するミカにソレアは挟まるように身を乗り出す。残った右腕で精一杯の防御体勢を取り、迫る衝撃を待った。

 

「アハ」

(まず……)

 

 まんまと釣られたソレアの首輪をガッチリと掴んだミカは笑顔を歪ませて、ソレアを地面に叩きつけた。深く深くめり込んだソレアは朦朧としてきた意識で脱出しようにも、ミカが上乗りになってそれを防ぐ。

 

 

「ねえソレア。私にサオリの大切なもの奪わせて?」

「何を…………」

 

 

 サオリがへたりこんで見ている中、ミカは呪詛のように繰り返す。

 

「許せない、許さないよ。本当に許せない。だから……」

 

 

 首輪が砕かれる。顕になったソレアの首に、ミカの細くしなやかな指が包むように絡む。

 

 

「や、やめ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歯車が狂った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─ゴキ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……。あああぁぁああああア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

「……やっちゃった。サオリ、あなたのせいだよ? あなたのせいでソレアが………………………………………………………………」

 

 

 

 

 

「あれ? どうして私……ソレアを……」

 

 

 

 虚ろに眺めるミカの手に、舞い散った羽が落ちた。

 

――――――――――

 

 

キヴォトスは救われた。





歪んだパーツが検知されました。速やかに交換をして下さい。



頭真っ白に暴れた結果、やってしまったのが大切な人って気付くまでのタイムラグ程素晴らしい時間は無い。その曇りは一生晴れなくて、何度も自殺を行おうとするんだけど周りが絶対に阻止してきて、壊れて本物の魔女になって欲しい。そして、何かを壊す度に自分が魔女であることに傷付いて欲しい。
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