空は酷く澄んでいる   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

こっからソレアのカミングアウトが続きます。

感想下さい(願望)


破壊の始まり、飛行の終わり

 

 

 

 

「──────────え?」

 

 

 刹那、脳内に流れる()()()()記憶。首を折り、取り返しのつかないことをしてしまった大切な人。光の無い白と蒼の瞳が訴えるように此方を見ていたのを憶えている。白く透き通った肌が、溢れ落ちる熱が冷たくなって……。

 

 

「やめろぉ!!」

 

 サオリのタックルを食らって後ろに倒れる。背中を打った痛みなんかより、今しがた見た記憶のことが気がかりだった。

 

「なんで……私……」

 

 

 

「大丈夫かソレア? ソレア!?」

 

 確かにこの手で、この両手でソレアの首を折った。ソレアの柔らかくて滑らかな肌を絞めて、その尊い命を奪った。

 

「ソレア! おい、しっかりしろソレア!」

「……サオリ、逃げろ」

「お前を置いて行けるか! 私達は家族なんだろ?!」

 

 ……ソレアはまだ生きている。まだ私は《人殺しの魔女》じゃない。私は……ソレアを……殺そうとした?

 

(嘘、嘘嘘嘘嘘……)

 

 頭に昇っていた血が急速に引いていく。胸の奥が重く動悸して、冷静になろうと必死になる。サオリに助けられるソレアはまだ意識が朧気なのか、体が動かせないみたい。

 

(……あっ)

 

 見たくないのに、目を逸らしたいのに、ソレアを見ていると目が合ってしまう。白と蒼の双眸に映る何かに怯えながらも、視線を逸らすことなんてできなかった。もし……、もしソレアに嫌われるなら、私は…………。

 

 

――――――――――

 

 

 朦朧とした意識の中で、とても懐かしい記憶を見た。

 ベアトリーチェに拐われてアリウスに連れてこられた日、丁度何かのパレードがあった。そこで、ロイヤルブラッドのアツコと出会った。綺麗に着飾って、守られて、それは物語に登場するお姫様そのものだった。

 

 ベアトリーチェの前に二人並べられて、彼女は仮面を自分達に渡した。黒服の技術を用いて作られた〈死を回避する仮面〉。彼女のことをベアトリーチェは()()だと言っていた。花よ蝶よと保護され、贄として〈儀式〉の準備ができるまで浪費される生命と知っても、アツコは気高く強かだった。

 

 ゲマトリアに居た時より一層過激になる実験の数々、区切りがついた時に自分は施設から飛び出した。廃れた自治区を見て回り、貧民街……スラムの路地裏に蹲った一人の少女を見つけた。

 

「ねえ、大丈夫?」

 

 何となく声をかけてみた。アツコ以外の、それも歳の近そうな子だったのもあったかもしれない。子供と接触するのはこれで二人目だ。アツコとは隔離されて話すことも出来なかった自分は話し相手に飢えていたのだろう。

 

「……」

 

 顔を上げた少女の青白磁の瞳に、自分は希望を見た。こんな環境でも、明日の姿が見えなくとも、必死に生きようとする力強さと諦めない執念の心を見た。自分にはそれが初めてで、羨ましくなった。だって、それはとても()()()()()と言えるものだったから。

 

「お前は……?」

「私はソレア。ただのソレアだよ」

 

 

~~~~~

 

 

 それから自分は時を見計らってはサオリ達に会いに行った。ベアトリーチェはその行いを咎めることはしなかったが、釘を刺された。

 

「あなたがそこら辺の誰と関わってても興味ありませんが、何かあればその者達の命の保障はないと思いなさい」

 

 明らかな脅迫だった。それでも自分はサオリ達に会いに行った。人として成長していく時間は、自分にとってかけがえのないものだった。それは訓練を課された後も同じで、アツコも一緒に今のアリウススクワッドと短い時間を過ごした。自分の家族は間違いなく彼女たちだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから……

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

「ミカ……」

 

 はっきりとしてきた視界で怯えたミカを見る。どうやら落ち着いてくれたようだ。被害は……義手だけか。軽い脳震盪だったから身体に異常は無い、戦闘継続可能だ。

 

「ミカ」

「あ……ご、ごめん。いや、あの……」

「……いいよ」

 

 トリニティの有象無象がミカを責めても、思い出の物が燃やされても、もしもナギサとセイアに見限られたとしても、自分は最期までミカの味方でいる。この世界の全ての人がミカを害するなら、自分だけで守り抜く。トリニティで最初に手を差し伸べてくれたミカに、自分は最期まで手を差し伸べたい。

 

 

「大丈夫だから、ミカ。ミカは魔女じゃない、ミカは私のお姫様だよ。だから泣かないで。私が居るから。素直で不器用で我儘でお転婆なミカのこと、絶対嫌いにならないから。聴聞会だって、退学になる必要なんてない。チャンスはまだまだあるよ」

 

 

 片腕と片翼でそっと抱き締める。両腕で抱き締めてやれないのが今は悔しい。

 

「でも、でも……私…………」

「いいよ。大丈夫だよミカ。私はミカの味方だから」

 

 ぽろぽろと涙を流すミカの背中をさする。大丈夫、自分は決してミカの敵になったりしないよ。だから安心してほしい。

 

 サオリの方を向くと、少し不服そうにサオリは此方を見ていた。ミカの攻撃で分断されたとはいえ、少し迂回すれば先生たちと合流できるだろう。

 

「サオリ、早く先生と先へ」

「だが……」

 

 

『茶番はもう終わりですか?』

 

 不快になる声を発してベアトリーチェのホログラムが現れる。咄嗟にホログラムに撃とうとして止まる。憎き全ての元凶の出現に怒りを隠しきれない。サオリは恐怖しているが、奴を知らないミカは状況が掴めずにいる。

 

『尽く上手くいかないのはやはりお前のせいでしたか、ソレア』

 

 一抹の不安だったベアトリーチェの目的が不明なこと。奴が今、その姿を見せつけてきたこと、それに嫌な予感がした。

 

『ふふ、ハハハハハハハ! よくぞ此処に帰ってきましたねソレア。これでようやく〈儀式〉を始められます』

 

 ベアトリーチェが出した画面に映っていたのは磔にされたアツコ。あの赤い茨に付けられたであろう傷が所々に見えている。

 

「あ、アツコ……!」

(やっぱりバレてたか)

 

『そろそろ幕引きとしましょう。さあ、ユスティナの聖女バルバラ。全部殺してやりなさい』

 

 

 複製(複製)のユスティナ聖徒会とその聖女、サオリじゃ手に余る相手だ。

 

 背負っていた白い箱を地面に突き刺す。

 

「権限認証、パージ」

 

 手に取る乖白刀がいつもより重く感じる。片手なのもあるが、身体の疲弊が激しい。でも、それは敵を斬らない理由にはならない。

 

「サオリ、急いでアツコを助けに行って。残り時間は約25分。アツコの命はそれが限界だ!」

「ソレアはどうする?」

「私はコイツらを引きつける。早く!」

「……わかった」

 

 至聖所に走るサオリの後ろ姿を見届ける。さてさて、複製の全滅は理論上不可能。サオリ達がどんなに早くベアトリーチェを倒しても数百から数千の複製は確実に残る。乖白刀を一振りして間合いを確かめる。

 

「ミカ、手を貸してくれる? 私一人ではちょっと時間かかりそうだからさ」

「…………ううん、ここは私に任せて」

「ミカ……?」

 

 ヒールを鳴らしてゆっくりと、ミカは複製の群れに近づいていく。

 

「ほら、私はさ……ワガママなお姫様じゃん? だから……、苦難を乗り越える主人公たちの舞台には上がれないの」

 

 そう言って振り向いたミカはあの時と同じく指を口に当てて妖艶に笑う。

 

「行って、ソレア。あなたの大切な家族の為に」

 

 もしかすると、この時《未来》を変えることが出来たのかもしれない。《魔女》の彼女はもういない、憑き物が落ちたようなミカに促されるまま自分はサオリの後を追うように走り出す。

 

「また後で」

「いってらっしゃい……ソレア」

 

 

――――――――――

 

 

 

「変だ……」

 

 サオリの後を追っているはずなのに道中の敵が異様に多い。サオリ達はもうベアトリーチェとの戦闘が始まってる。

 

「邪魔だ!」

 

 勢いの侭、斬り捨てていく。《未来》はきっと、願い叶う場所だから。

 

 

~~~~~

 

 

「よくも……よくもやってくれましたね、先生」

 

“私は、お前を絶対に許さない”

 

 

 

「先生! みんな!」

 

 辿り着いた至聖所には先生とサオリ達に倒されたベアトリーチェ。アツコの神秘を得ていながら、まともな運用方法を知らない愚者はただ悪戯にエネルギーを放出することしか出来ていない。〈儀式〉を行えたとしても、低脳であることは昔から変わってなかった。

 

 萎んだ枯れ木のようなベアトリーチェは自分が至聖所に入ってくると先程とは打って変わって嬉々として笑い始めた。

 

「来た! 私の()()!! やりなさいあなた達!!!」

 

(何を……)

 

 

 

 

 

 ベアトリーチェの叫びに呼応して建物の至る所から飛び出して来た人影に銃口を向けて、止まる。

 

 

「助けて……」

「死にたくない……」

「う、あああ……」

 

 

 体に《ヘイローを破壊する爆弾》を着けられたアリウスの生徒だった。涙目になりながら銃も持たずに特攻している彼女達の手にはこのキヴォトスでは見慣れないナイフを持っていた。

 

 生命を脅した特攻策。人を使い捨ての武器みたいに粗末に扱うベアトリーチェに自分の怒りは爆発した。

 

「ベアトリーチェぇ!」

「待てソレア! 罠だ! くっ……」

 

 

 無数のアリウス生徒が先生達を取り囲む。爆弾がある以上下手に撃てない。乖白刀では肉体ごと斬ってしまう。手を出さなくても起爆装置はベアトリーチェが持っている。解決策は起爆される前にベアトリーチェを倒す……

 

 

「ふふ……フハハハハハハハ!!」

(こいつまだ力が残ってるのか)

 

 

 アリウス生に気を取られると、赤い根に手足を拘束される。無理やりにシグヌスの銃口を向けた瞬間、赤いエネルギーの爆発が自分を襲う。その衝撃で銃と刀が飛ばされた。

 

「なんの」

「うわぁぁぁぁ!!」

 

 

 

―ドスッ。

 

 

 背中を押されたような衝撃が走った。ジワジワと熱くなっていく傷口には、ナイフが根元まで刺さっている。自分を刺したアリウス生は恐怖に満ちた顔で逃げて行った。

 

「ようやく……ようやくこの時が……」

 

 力が抜けていく、神秘を持つ者にとってこの程度の傷ならすぐ治って当然なのに。食道から上がってきた血を吐きながらナイフを確認して、それがゴルコンダの作品であることに気付く。

 

(血が……止まらない!)

 

“ソレア!”

 

 先生の声が聞こえる。手足の拘束を解かれて地面に倒れそうになって、また何かが爆発した。普通なら熱くて痛いで済む爆発が、今回は腹部と左脚を深々く抉り焼いた。

 

 

 

 

 

「最初からわかっていたことでしょう、ソレア?」

 

 白いドレスを纏う赤い貴婦人は言う。自分の手元に銃は無く、至聖所の硬い地面に倒れ伏している。

 

「あなたに幸せな結末なんて訪れない。精々その()()を私に捧げて死ね」

 

 

 体から出た血液は赤い水溜まりを作って、ステンドガラスから漏れ差す光にテラテラと輝く。仰向けに倒れた自分の腹部と左脚は表面が抉り取られて骨や臓器が顔を覗かせる。肺が呼吸を求めても、血が器官に溜まって苦しい。

 

 

(ヒマリ、リオ、ウタハ、チヒロ、ヒナ、セナ、ミカ、ナギサ、セイア、サクラコ、ミネ……ごめん)

 

 

 旧友たちの名に一人一人謝る。

 

 

(リン、■■■…………)

 

 

 

 

 

 

「先生……」

 

 

 まだ残ってる右手、羽がボサボサの左翼、右足に杭を打たれて磔にされる。赤い茨が刺さるように巻き付いて、十字架と首が離れないよう絞め付けてくる。絞められて漏れる息もなくて、口端から血が重力に引かれて地面に染みを作る。

 

 

 

「───! ─────────!!」

 

 

 サオリが何か叫んでいるけど、もう何も聞こえない。目も見えない、痛みも感じなくなってきた。

 

 

 

(全て燃えて壊れてしまえ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

キヴォトスは謨代o繧後k螢翫&繧後k

 

 





ソレアの影響で原作以上の外道になったベアトリーチェ。
この先は世界観の独自解釈が混じります、一応予告を。
地獄が好きなら大丈夫です。


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