空は酷く澄んでいる   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

これにてエデン条約編、終幕です。


エピローグのバッドエンド

 

 

何故?

 

何故、繰り返すことができるのか?

 

何故、繰り返すことができるのか、物語の結末はそうであったはずなのに?

 

何故、繰り返すことができるのか、物語の結末はそうであったはずなのに、傲慢にも望んでいるのか?

 

何故、繰り返すことができるのか、物語の結末はそうであったはずなのに、傲慢にも望んでいるのか、切り取られては繋げられて伸ばされる命は生きていると言えるのか?

 

 

 

――――――――――

 

 

「おや? おやおや……。こんにちは先生」

 

 今回は長く進めることができた。ここさえ乗り切れば《色彩の襲来》までは安心できる。

 

“早くしてくれ”

 

「おや? ……なるほど、そこまで来たのですね先生。どうやらワタシはもう殆ど語り尽くしたらしい。ですがワタシは何時でも手を貸します。先生が紡ぐ選択……その先にある物語を楽しみにしています。それはもう大いに」

 

 

 相も変わらず変な奴だ。何がしたいのかよく分からない上、この空間と言い不可解な力を持っているのは確か。元ゲマトリアと名乗っていながら私に対しては協力的で、実際そのお陰でソレアが生存する世界線が確立しつつある。

 

 

“お前の目的は何だ?”

 

「………………嫌ですな。言わばワタシが貴女の物語を観測することです。貴女の懸念するようなことは存在しません」

 

 どうだか、口ではどうとでも言える。態とらしい態度が癪に障るが、しかし今は疑う以上のことが出来ない。大人しく時間切れを待つ。

 

「暇を持て余してるので、ではお送りしましょう。またお会い出来るのを楽しみにしてます。それはもう大いに」

 

 意識が暗転して来た。またいつもと同じく逆行した時点で覚醒するだろうが、意識が落ち切る前……ドクトゥスは笑っていたような気がした。

 

 

――――――――――

 

 

「おはようございます先生」

 

 一瞬、調印式の日まで戻ったと思って吃驚する。疲労の目を見て、ソレアが純白に戻った直近だと気付く。

 

「先生……どうして私を止められたんですか?」

 

 答えようともせずにソレアの腕を引いて退る。居た場所から鋭利な根が突き出るも、私の意図を察したソレアが私を咄嗟に抱えて回避した。

 

「……何故分かりました?」

 

“ソレアはやらせない”

 

 キメ顔で言ってみたが、抱えられたままじゃカッコつかないな。でも、不意打ちは防いだ。

 

「ですが貴女の生徒は満身創痍。貴女もカードを使うのが厳しいほど消耗している。大人しく崇高を差し出しなさい。私の敵対者」

 

 

「嘗めるなよ?」

 

 蒼い雷が迸り、瞬きの間にソレアの手に白い大太刀が現れる。刹那に閃き刀を振るえば、ベアトリーチェは四肢を失い達磨になる。隻腕片翼から五体満足に戻ったソレアは万全ではないとはいえ連邦生徒会最強の白故ソレアだ。

 

「は? ……ハア?」

「不意打ちが成功するなら兎も角、真正面から私と対峙したんだ。覚悟はいいか?」

「ま、待ちなさい。私は─」

 

“もういいよソレア。そこまでだ”

 

 正直ベアトリーチェの処遇なんてどうでもいい。でもソレアの手がベアトリーチェで汚れるのは嫌だ。汚いしそんなことする意味無いからね。

 

「止めて下さりありがとうございます、先生」

 

 首無しコートの杖を持った紳士服と、手に持つ顔の額縁がどこからともなく声をかけた。

 

「デカルマニーと……ゴルコンダか」

「お元気そうでなによりですメトニミー」

「黙れ、私を記号で見るな」

 

“ゲマトリアか”

 

「おや、私のことをご存知でしたか。どうやら以前お会いしたようだ。私は戦いに来たのではありません。マダムを連れ戻しに来ました」

 

 

 ゴルコンダを睨みながらソレアはベアトリーチェの首に切先を立てる。

 

「いや、ベアトリーチェはここで処刑する。私は此奴を処刑できる権限を所有している。此奴はやりすぎた」

「その主張は尤もです。しかし、私共も一応の仲間である彼女を見捨てることはできかねます」

 

“いいよゴルコンダ。連れてって”

 

「……先生?」

 

“大丈夫、何かあってもなんとかするから”

 

 私はこれ以降ベアトリーチェがキヴォトスに危害を与えることがないことを知ってる。ソレアを制してベアトリーチェが連れてかれるのを見てると、ゴルコンダとデカルマニーは礼儀正しく礼をした。

 

「この舞台装置(マクガフィン)は私達にお任せ下さい。先生……貴女が介入してしまうと、全ての概念が変わってしまいます。元々この物語の結末はこうではなかったはずなのです。白故ソレアも、もっと文学的なテクストだったのですが……」

 

“いいから早く行け”

 

「ええ、そうします。〈ヘイローを破壊する爆弾〉も、〈神秘を希釈するナイフ〉も、実験としては成功しましたから。ですが、残りは廃棄にします。白故ソレアに露見した以上、私の手元にあれば殺されてしまいそうですからね。マダム、帰りましょう」

「ゴルコンダ……」

「失礼しました、先生。それでは、また」

 

 

 何処かに消えていく二人を見届けて、この物語は本当の終幕を果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

「助けて先生」

 

 病室でもみくちゃにされてるソレアは半泣きになりながら助けを求めてくる。

 

“……ドンマイ”

 

「あ、いや、待って! ちょっと何処触ってんの?! や、やめ!」

 

 トリニティ総合学園を混沌に陥れた事件は無事に解決された。ミカはティーパーティの権利を剥奪されたが、退学になることはなかった。アリウス分校は正式にトリニティ総合学園と併合することになり、ベアトリーチェを失って行き場がなかったアリウス生徒を受け入れることに。アリウスとトリニティの溝はゲヘナと同じくらいあるが、時間が緩和してくれるのを待つしかないだろう。

 

「駄目だって! ちょ、聞いてる皆さん?!」

 

 ソレアは失った腕と翼が戻り、これまで通り生活できるようになった。

 

「いや、まだ何処かに怪我があるかもしれない。もっと詳しく見るべきだ」

「医者ァ! もう救護騎士団にも救命医学部にも診てもらったから! 恥ずかしいくらい隅々まで見られたから!」

「ふふ、照れてる? ほらここ、こんなにしちゃって……」

「アツコはもっと下心隠せ!」

「ねえ、もう何処にも行かないで……」

「暑いから包帯巻かないでミサキ! もう十分巻かれてるから! あ、ちょっとその巻き方身動き取れないから!」

「えへへ、これからはソレアさんと一緒ですね♪」

「うん、もう苦しくないよヒヨリ!!」

 

 

 病室だというのにこの盛り上がりよう。ソレアも変なテンションになってる。

 アリウススクワッドはソレアの要求でシャーレに来ることになった。最初はみんな自分達のような犯罪者は……とか言ってたが、ソレアが軒並み黙らせた。先の戦いで酷い怪我を負ったみんなは入院、見た目は怪我が無くても一応でソレアも入院することになった。それからというもの、ミカ、ナギサ、セイア、ヒナ、リオ、ヒマリ、ウタハ、チヒロ、……等など、入れ替わるでもみくちゃにされてる。誰か来なくてもスクワッドにもみくちゃにされる。……なんかもうご愁傷様。

 

“ご、ごゆっくりー”

 

「ちょっと先生? 見捨てるんですか先生? 先生ー!」

 

 私は何も聞いてない。うん、ナニモキイテナイ。

 

 

――――――――――

 

 

 月が綺麗に照らされる宵。漸くと落ち着き静寂が訪れた病室。不意に眠気から醒めた。

 便所は何処だったか、と思いながらスリッパのカサカサと乾いた音を鳴らして扉を開ける。廊下はとうに消灯しており、非常灯だけが淡くその周りを明瞭にしている。

 

(思い返せば、シャーレに来て初めての大仕事だったな)

 

 帰ればきっと溜まりに溜まった書類が待ち構えている。サオリ達には早急に仕事を覚えてもらう必要がありそうだ。

 

「先生は凄いな」

 

 あの人は《未来》を変える力を持ってる。()()()は確実に発動しているが、それでも《未来》を変えることなんて普通はできない。星の動きが決められているように、辿り着くべき《未来》は定まっている。先生がしたのは天体──世界そのものの解釈を丸ごと変えることだ。

 

(起こり得てしまったよ■■■)

 

 いつの日か結んだ約束が自分をまだ自分にしてくれている。力の全権限は自分にあるが、《恐怖》のものは封印されて暴走する気配がない。もう《未来感知》の暴走も無いと断言できるし、絡まっていたコードが整理されたような感覚で前より動きやすい。この調子なら明後日には退院できるだろう。そして……

 

 いつか必ず訪れるキヴォトスの終焉。先生なら……。

 

(■■■も同じこと考えたりしたんだろうな)

 

 自分や■■■じゃ絶対出来なかったこと。キヴォトスの安寧を守り抜くことがどれほど困難なことか、自分はよく分かっている。

 

「ん?」

 

 暗い廊下の向こう側から人らしき影が歩いてる。自分と同じここの患者だろうと思い、その人も同じく便所に行ってたんだと勝手に勘違いした。

 

「こんばんは」

 

 すれ違い様に軽い挨拶を試みるも、その人は顔が見えないくらい俯いたまま無言で通り過ぎて行った。病院だしそんな人もいるだろうと気にもせずにそのまま便所に向かおうとして、膝を着く。

 

「……?」

 

 疲れが出たのかな、と立ち上がろうとして……また倒れる。病衣が濡れた感覚に手をあてると、何かの液体が横腹に付いていた。暗くて分からなかったそれを目を凝らして見ると、血?のような……。

 

「死ねよ」

 

 すれ違ったさっきの人がマウントポジションになる。手には見たことがある気がするナイフ。

 

「死ねよ!」

 

 躊躇なく振り下ろされたナイフは自分の肉を裂いて内臓を潰す。

 

「死ね、死ね!」

 

 ナイフは普通、物を切る為だけにある物だ。部隊装備のナイフはあるがそれはサバイバル用、殺傷能力は期待されてない。だって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から。

 

「死ね!!」

 

 衝撃が体を押し潰す度、痛い。入院時に貧血気味って言われたのに……。流れた血は、肉体の機能を維持することが出来なくなる量を超えている。

 

「……ぁ…………」

 

 助けを呼ぼうとするが出ていくのは血ばかり。呆気なく、簡単に、自分は死んだ。

 

 

 

――――――――――

 

 

 今日は、朝から病院全体が騒がしかった。何があったのか看護師に聞いても病室から出ないでの一点張り。先生とソレアに半分強制的に入院させられて元気な私は、好奇心から廊下に出てしまった。

 

「……?」

 

 誰かが倒れてた。白い翼に白い角、白髪の人。私の知るその人によく似ていた。

 

「??」

 

 ソレアだ、ソレアが倒れている。大きな血痕の真ん中に倒れてる。もっと近くで見ないと……見間違いかもしれない。

 

「すみません、ここは現在閉鎖されてまして」

「……関係あるよ」

「え?」

 

 何処ともしれない誰かが私を止める。数人の白い制服を着た人がソレアを隠そうとする。

 

「あ、ちょっと聞いてますか!」

「通して」

 

 邪魔な障害を掻き分けて、ソレアに近寄る。見間違いじゃなかった。ソレアが死んでる。なんで?

 多数の刺傷と失血による生命停止。争った形跡は無し。

 

「ねえ、なんで?」

 

 翼に触れると、表面張力の膜が溶けたみたいに崩壊していく。

 

「え…………」

 

 大切な人が全部消えてしまう。止めたくても翼は砂になって崩れて、角も同様に崩れた。翼と角が無くなったソレアは髪色が茶色に変色する。崩壊は止まらず足からも始まった。

 

「誰か、誰か止めて!」

 

 私の最初の家族、私の…………大好きな人、愛してる人。

 恐る恐る抱き抱えて、せめてもと口付けをする。死体なのに羽のように軽い……もう頭しか残ってないからか。

 

「姫!」

「サオリ……?」

 

 ああ、もう全部消えちゃった。全部砂になっちゃった。

 

「ソレアが……」

「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!! また救えなかった? どうして私は……私は」

 

 ブツブツと独り言をして、サオリも壊れちゃった。全部終わったのに、ソレアの全部無くなっちゃった。

 

「集めないと」

 

 ソレアを手で集める、まるで砂遊びみたい。全部集めないと無くしちゃいそう。

 

「また花を育てよう。何がいいかな? ピンクのセザンカ、アイビー、黄色いスイセンもいいね。きっと綺麗に咲くよ」

 

 

 

 この結末に、救いは無い。

 

 

――――――――――

 

 

「おや? ……おやおや、これは想定外でしたね。仕方ありません、今回は特別ですよ。先生」

 





まだ砂が残ってて良かったね。肥料にすればきっと綺麗に咲くよ。エンジニア部が頑張ればクローンくらい作れるかもね。ティーパーティーは思い出の品を大事に抱えて眠って……あ、ミカのは燃やされちゃったんだっけ?ヒナとサオリは一生曇ってて♪リンちゃんは犯人探し頑張ってね。

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