空は酷く澄んでいる   作:アールワイ

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もう無理書けん


ソレア*テラー

 

 カタコンベで見つけたガラクタの荷車を引いて歩く。荷車に乗っているのは四つの死体。死体を運ぶ自分はさながら死神である。じゅくじゅくと胸の中を蝕む痛みに体が強ばる。誰も知らない場所を探して、一歩、一歩と進んでいく。

 

『皆が危機に晒された時、必ず助けに行く』

 

 そんな言葉を発した自分の無責任さが苛立たせてくる。つまらなくも呆気ない最期を迎えたであろう四つの未来(結末)。赦されるならヘイローを粉々にしてしまいたくなった。

 

「ごめんなさい……」

 

 カタコンベの外はもう陽が昇っていた。明るさに慣れてきた視界に広がる空は、この世界が正常で平和でなんの問題も起きてないと何食わぬ顔をしているみたいに澄んでいる。

 

 

――――――――――

 

 

 風はなだらかに、丘の上に四つの御影石が立つ。

 

 何もする気が起きない。腹は絶えず空腹であると主張してくるが、だからなんだと思考を放棄する。眠気だけに身を任せて雨風に晒されているもんだから、自分の身なりは決して綺麗とは言えないだろう。

 一向に訪れる気配のない自分の死を、長いこと待ち続けた。色彩の無いモノクロのような世界で、独り結末を望む。

 

「君……誰?」

 

 ある日、一人の生徒が自分に声をかけた。その子はピンクのショートヘアとオッドアイで、アビドスの生徒証を持っていた。

 

「私……誰なんだろうね」

 

 その子の目は自分と同じだった。何があったのかなんて興味はないけど、彼女と自分は似たような形に傷付いたことは分かった。二人はお互いの空いた穴を舐め合うように堕ちていった。共依存で生を肯定し、相手の体温を感じることで安心を得た。

 

 アビドスに後輩が入る頃には、()()を取り繕えるまでになった。自分は連邦生徒会に、ホシノは対策委員会にそれぞれしたいように活動した。

 

「ソレアー、おじさんと一緒に昼寝でもしよーよ」

「うん、ホシノ」

 

 ホシノは少し変わった。髪を伸ばして口調もゆったりとして、別人になりきったみたいに。それでも、自分とホシノが三年になった今でも自分達の関係は変わらなかった。

 

「みんな……」

「ユメ先輩……」

 

 抱きしめ合って、同じ悲しみを擦り付ける。世界に一人だけの、お互いを慰め合う人。理解者とまで言わないが必要な人()()()()()

 

 

――――――――――

 

 

 シロコから聞いた時はそれこそ耳を疑った。殺せなかった連邦生徒会長の失踪に伴うキヴォトスの混乱の沈静化。忙殺されていたなんて言い訳に過ぎないのは自分自身よく知っていた。

 

「先輩」

 

 結果、アビドスはシロコだけが残った。カイザーは依然と土地を奪い。連邦による救済もない。やって来た先生も何もできやしなかった。

 

 

 ホシノを失った自分は、その代わりをシロコに求めた。より一層依存し、過保護に、脅威の可能性全てを()で消し去った。最期に温もりを感じれるなら、きっと幸せな最期だと思っていたんだ。

 

 

 翼は飛ぶことを忘れ、蒼い目は色素が薄れ、純白は濁りに濁りきった。()()()()()()()()を、シロコは心配してくれたが、これは《シロコの死期》に合わせて死ねるようにしたから。

 

 

 

(もう眠い。やっと……死ねる)

 

 

 

 だから、《色彩》の襲来なんて予想外だった。

 

 

~~~~~

 

 

 反転した自分は、世界(キヴォトス)を破壊し尽くした。シロコがやったことなんて、精々建物の破壊のみ。この方舟にあった命という生命は、全て自分が枯らした。

 罪悪感なんてない。もうどうでもよかった。いつか来る終わりが思ったより早く、誰も望まない形で訪れただけだから。シロコは死の神に、先生は嚮導者に、自分は堕落の神に成って世界を滅ぼした。

 

 自分の手が赤く汚れてるのに気付く。それを服で拭いとると手は綺麗になった。血で穢れた自分を気にもせず、手が綺麗だと錯覚した自分は満足して水溜まりと屍を踏んだ。

 

 

――――――――――

回想終わり

 

 

 

 

 

 

 最後の決戦。この世界の先生は自分達の世界が零してきた奇跡を全て紡いでいる。アビドスから始まり、ミレニアム、トリニティ、SRT。先生に救われた生徒が今、持ちうる力を掛け合わせて世界の危機に立ち向かっている。

 

「もういいよ。シロコ」

 

 やっぱり、シロコは敗けた。先生のサポートがあっても力及ばなかった。無論、シロコを責めるつもりはない。敗北という事実を受け入れよう。

 

「私たちの敗けだ」

「先輩……」

「さあ、先生。この世界の勝利だ。私たちの処遇を好きに決めるといい。命を絶つも嬲るもご自由に」

 

 

「ただし」

 

 振り絞る力で刀を作って刀先を突きつける。

 

「シロコに酷いことはさせない」

 

 シロコを庇う形だけの抵抗。先生がそんなことすると微塵も思ってないけど、生徒は別。ここでシロコの裁権は先生にあると周知させたかった。

 

“大丈夫、そんなことはしない”

 

 嗚呼、良かった。シロコのこれからが少なくとも悪い方向に向かわないことに安堵して、刀を下ろす。

 

 

──パチパチパチ。

 

 

 拍手の乾いた音が広々とした空間に響き渡る。観測者は次元の穴を見せつけるかのようにゆっくりと、その奇怪な異形の姿を曝け出す。

 

「ドクトゥス!?」

「おやおや……、待ち焦がれましたよ」

 

 表情の無い鉄の仮面がケタケタと笑う。今目の前で不快に笑ってるのは自分の怨敵。欺き、唆し、()()()()()()()()()()()()敵だ。

 金属と毛の掌を自分に向け、確信めいた態度で奴はほくそ笑む。

 

「漸く……この時が……」

 

 心臓が跳ねたと思うと猛烈な頭痛が襲う。普段の平衡感覚が乱れ、覚束ない足取りで頭を抑える。

 

「こっちのソレアには細工が効いてますね。すぐに記憶は消去され器だけになるでしょう」

 

“ドクトゥス!!”

 

 先生の叫ぶ声と、地面を蹴る音が聞こえた。プレナパテスと先生はカードを構え、あっちのソレアが発砲しながら自分を背に走ってる。先生らとあっちのソレアだけが動けた。

 

「さあ、運命の傀儡よ。《崇高》を証明し、計画を次のステージに移行させましょう」

 

 忌々しい声だけが脳へと伝達。自律した精神を失った自分は、自分を守るもう一人の自分の心臓目掛けて手を伸ばした。

 硬い背骨を無理やりズラし、肉を裂きつつ臓を掴む。管を引きちぎって血が漏れる。神経も絶たれた心臓はそれでも独りでに鼓動を続け、心拍と共に光沢する。《色彩》に汚染された心臓。《崇高》の《心核》を手に取る。

 

 

“ソレア! どうして?!”

 

 

 先生──無責任な大人。私は……あなたが……

 

 

 

 

 

 

 

 

大嫌いでした。




何とか終わらして単品の曇らせします。

書く気なかったけどハッピーエンドいる?

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