忙し過ぎです。
周り体調崩しまくで心配ですね。大丈夫ですか?
自分はマイペースにやってきますよ。
ではどうぞ
「……引き金から指を離してくれない?」
「…………断る。私達を捨てたクセに、私に命令するな!」
「…………ごめん」
サオリの言ったことは本当のことだし、今更仲間面するなんて図々しい真似は出来ない。
自分は口を固く閉ざし、カエルムの銃口をサオリの顔に向ける。
「先生は、私が護る」
「…………ッ!」
帽子とマスクで顔の大部分は見えないが、それでもサオリが驚いたのは伝わった。サオリは目を細めて自分に怒鳴る。
「私達を捨てるだけに飽き足らず、更に邪魔しようって言うのか?! 姫は、今でもお前のことを信じているのに!!」
「アツコが? ……そっか」
次の瞬間、躊躇いのない弾丸が二人の間で交差する。サオリの髪が少量だけ宙を舞う。サオリの回避方向に腕を交差させてシグヌスで撃つ。
「ぐぅっ!」
「前にも言ったよね、サオリ」
サオリの行動の後手後手に引き金を引く。サオリが拳銃をホルスターから抜くと感じて、グリップに弾丸を撃ち込む。サオリの手から離れた拳銃を足でどこかへ飛ばす。
「戦闘の基本は、現状対応じゃなくて優勢誘導だって」
サオリのアサルトライフルを軽くさばいていく。普通の物より大きくとも自分の持つ物はハンドガン、アサルトライフルと近距離の取り回しが優位なのがどちらかなんて明白。でもサオリは鬼気迫る様子で自分に噛み付いてくる。
「……サオリ達が先生を狙う以上、私は貴女を撃たなくちゃいけない。サオリ、降参して?」
「こと……わる!!!」
一足で後方に跳びながらアサルトライフルを構えるサオリ。自分はサオリが跳んだと同時に距離を詰める。翼で身体を浮かせて、回し蹴りでサオリの手ごとアサルトライフルを飛ばす。
「おやすみ、サオリ」
自分を見上げるように尻もちを着いてるサオリに二つの銃口を向ける。カエルムとシグヌスならこの距離で気絶まで持っていくのは容易だ。自分は引き金を引こうと指を動かして、
「ここだよね? ヒヨリ」
仰け反って右後方からの狙撃を躱す。狙撃地点を見ると、ヒヨリが短く叫ぶ。
「ヒッ!?」
「もうヒヨリからでいいや」
「うわぁぁぁん! ソレアさんが雑に処分しようとしてきますぅ!」
「待……がぁ!」
サオリの両脚に一発ずつ撃ち込んでヒヨリの隠れた瓦礫に走る。ヒヨリも自分の接近に焦って移動を始めるが、自分の方が速い。
「うわぁぁぁん!」
「ごめんねヒヨリ」
足元を撃ってヒヨリの動きを止める。射程圏内に入った所で、降り注がれる多弾頭ミサイルに遮られる。弾切れで全弾対処はできない、空を飛んで回避行動を取る。その隙に花型ドローンがサオリとヒヨリを回復させる。
「久しぶり、みんな」
「今更どの面下げて……」
携帯式対空ミサイルを持つ戒野ミサキ、ドローンを操る秤アツコ。ハハ、とミサキの毒言に苦笑いする。これでアリウス時代に最も交流のあった全員と再会した。……気分は最悪だ。
―スっ、スっ。
(今まで何処行ってたの、か)
「色々……かな。心配かけてごめんねアツコ。私は皆に会えて嬉しいよ」
リロードしながら状況を確認する。敵対してるのは三人、他にアリウスはいない。サオリが指揮してるのが見えたから、多分彼女たちは下っ端じゃない。
「改めて言うね。先生から手を引いて。そうすればあなた達を撃たなくて済む」
「……先生は殺す。それに、この状況でいつまでその余裕な表情を保てるかな?」
「何言って……」
アツコの後ろから複数の幽霊のような人陰が自分に銃を構える。明らかに人では無いそれらに、自分は覚えがあった。
「
旧いシスターの姿にガスマスク。恐らくこの古聖堂から目覚めた複製。こんな芸当ができるのは奴しか居ない。
(マエストロの仕業か)
ベアトリーチェにマエストロ、二人のゲマトリアを相手取るのは流石にキツい。確かにサオリの言う通り余裕は無くなった。だから、本気を出す。
背負っていた白い箱を地面に突き刺す。
「権限認識、パージ」
箱が分解し、顕れた乖白刀を右手に取る。水と鏡を共鳴させたような音で地面からその刀身は一閃する。
複製の数は数百から……。うん、数百以上は居るのがわかる。
「もう手加減無しでいくよ」
~~~~~~~~~~~~~~~
「ねえ、本当に降参してくれないの?」
無限にも思われたユスティナ聖徒会の
「私も疲れてきたんだけど……。ねえ、聞いてるサオリ?」
複製を片手間に斬り伏せるソレアのオッドアイが私を貫く。
「先生に危害を加えない、ただそれだけが私の望み。サオリ……お願いだよ」
白い怪物。味方だった時はあんなにも頼もしかった人を相手にすると、こんなにも絶望するのか。
そもそも、ソレアが相手に居る時点で私達に勝ち目なんて無かった。
(でも……家族を守る為に……)
他人がどうなろうと関係ない。姫を……みんなを守る為に……先生を殺さなくてはいけない。
(…………ッ!?)
手に何かが触れた。マダムが『必要があれば使いなさい』と言って渡してきた〈ヘイローを破壊する爆弾〉。
そうだ、牽制するだけでいい。シャーレの先生は銃弾一発で死ぬらしいじゃないか。一瞬でもソレアの気を逸らせれば十分じゃないか。
“ソレア!”
「なっ!?」
丁度その時、シャーレの先生が姿を現した。ソレアは完全に先生に意識を向けている。今しかない、そう思って、手に取った爆弾をソレアに投げ付けた。
「!!?」
シャーレの先生に拳銃を撃とうとしたが、爆弾を視認したソレアは弾かれたように
(やられる……!)
もう抵抗する力も残っていない私は目を閉じた。
――――――――――――――――――――
或る日、或る場所。
「ねえ、大丈夫?」
貧民街の路地裏で、私はソレアと出会った。白い翼、白い角、白と蒼のオッドアイ。服装から、外から来たことはすぐに分かった。
私を覗き込むその顔に、一瞬だが目を奪われる。
「私はソレア。ただのソレアだよ」
にっ、と笑うソレア。私にはソレアの持つその輝きが嫌に眩しかった。
~~~~~
「ねえねえサオリ」
「どうしたソレア?」
「此処から出たら何したい?」
最初は二人だけだったのに。気が付けばヒヨリとミサキ、姫と共に日々を過ごしていた。〔ヘイローを壊す訓練〕、人殺しにさせられていく毎日でも、ソレアは常に明るく《未来》を語っていた。
「……またそんなこと言って」
「ミサキ。生きることは苦しむことと同じくらい、幸せになるということなんだよ。虚しいだけなんて生きてる意味も理由も無いでしょ? だからいい加減自傷行為やめなよ。意味も理由も無いなら、私と一緒に探していこうよ」
「……考えとく」
その日から、ミサキが自傷行為をしてるのを見なくなった。
「でも、こんなこと話してるのバレたら懲罰ですよね……。痛いですよね、苦しいですよね……」
「バレなきゃ大丈夫! ヒヨリだって美味しい物食べて、怯えることなく安らかに寝たいでしょ?」
「うわぁん! ならいっそのこと自由に雑誌も読みたいです……」
その日から、ヒヨリはボソボソと欲望を呟くようになった。
―スっスっ。
「うん。また今度種を持ってくる。次はどんな花が咲くんだろうね? 楽しみ!」
皆で一緒にソレアが何処からか持ってきた花を育てたこともあった。
「サオリ。いつもありがとう」
「何だ急に」
「リーダーとして、責任を負ってるでしょ? 私達にとって責任は慣れなくて重たいものだから。だからありがとう。感謝は伝えないと伝わらないからね」
「……そうか」
お前が居れば……いつの日か…………。
~~~~~
「ソレアはあなた達を裏切って連邦生徒会に逃げました」
「………………は?」
「密かに計画を練っていたそうです」
「バカな! ソレアが裏切るわけない!」
「……私が嘘を言ってると?」
「……!?」
「ソレアはアリウスの裏切り者です。もし見つけたら、
「ソレア!!」
「サオリ、それに皆……!?」
カタコンベの入口でソレアをギリギリ見つけることが出来た。病衣なのが少し気になったが、そんなことよりソレアと話すことがある。
「何処に行く?」
「…………遠い、遠い《未来》がある場所」
「ッ?!」
あの時見たソレアは、今まで私達が知っていたソレアと何かが違っていた。
「なら……なら! 私達も一緒に行く! 前から言っていたじゃないか、此処から出るって。今がその時なんじゃないのか!?」
自分でもこの口から出た言葉が信じられなかった。ただ必死に、ソレアに置いていってほしくなくて。別れを告げるのが堪らなく嫌で……。
周りの三人も驚いたが、すぐに同意するように頷いた。
「…………ごめん。一緒には行けない。でも、
「だから…………」
私達四人は見ていることしかできなかった。ソレアはゆっくりと大きな白い翼を羽ばたかせて飛び立つ。
「さようなら」
――――――――――
「サオリ!!!」
ソレアの手には刀も銃も無かった。ただただ、必死になって私を突き飛ばす。さっきまで戦っていたのに、初めてソレアの顔をしっかり見た気がした。
ソレアの綺麗な瞳は…………死人のようだった。
私の手は無意識に起爆装置を押し、投げた爆弾が起動する。私は勝手にあの爆弾を手榴弾規模の爆発を起こす物と勘違いしていた。しかし、予想以上の爆発はソレアを飲み込む、私は突き飛ばされて無事だったが、ソレアは直撃した。
「ぁ……」
〈ヘイローを破壊する爆弾〉、ヘイローが壊れることは、死を意味する。
爆発の砂煙が消えた時、私が居た位置にあったのは、倒れたソレアだった。
「ソレア!」
外傷は見当たらない。でも、抱き起こしても、呼び掛けても、生気を感じない。
「ソレア……ソレア!」
何度も、何度も何度も何度も何度も何度も呼び掛ける。
「ソ……レ、ア?」
半壊のヘイローがソレアに現れる。罅だらけで今にも壊れそうだ。もう……助からない。
「サオリ……無事?」
「どうして庇った!?」
「ふふ……、変な……こと聞くんだね」
「家族なんだから……当たり前なのに…………」
家族……。そうだ、私達は家族だった。突然ソレアが来て、みんなに手を差し伸べて助け合って生きてきた。みんなで過ごした日々は……楽しかった。
「虚しくなんか……ない。そもそも……私は燃え堕ちる運命なんだ」
「だからね……サオリ……」
まだ光が残ってる蒼い眼が私を見る。
「笑って…………」
心臓の鼓動が痛い。まるで最期の言葉のように、穏やかな表情でソレアは言う。
“ソレア……!”
「先生…………頑張ってね…………」
ソレアのヘイローが静かに砕けた。その事実が両腕にのしかかる。私は、殺したかったんじゃない。牽制だけでよかった。そもそも、さっさと降参すればよかった。
「先生。私は一体……どうすればいい?」
自分で殺しておいて、私は先生に縋り付く。
「もう……何をすればいいのかわからない」
家族を守る為に銃を取るのに、家族を殺す為に引き金を引いてしまった。
vanitas vanitatum. et omnia vanitas.
全ては……虚しい。
『虚しくなんか……ない』
私にはもう何もわからない。
こんなこと……望んでない。
――――――――――
キヴォトスは救われた。
2
約束は守られた。必要だったのは一つの命と少しの勇気。
手を伸ばしたのは、誰かの手を求めていたから。
良かったことは、あなた達が無事なこと。
幸せでした……
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