空は酷く澄んでいる   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

投稿ペース早めたいこの頃……


ではどうそ


神に宿る秘密

 

 

 

 

 翼は大きく風を掴む。風切羽が推力を創り、体を上へ上へと昇らせる。人の姿をしていながら、自分は空を翔ける。

 

 

 自分の翼は片翼最大10mまで大きくなる。本来、科学的にこの大きさの翼で人の体重を浮かせることは不可能だ。だから、()()()ことが自分に発現した()()だと解った。

 

 

 

 

 自分はずっと、この空に焦がれていた。

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 気付いた時には自分は深い迷宮(鳥籠)の中に居た。そこでは、奇々怪々と接触する時間だけが流れる。そこに在ったのは不可解ではなかった。ただ曲解や歪曲された万象の片隅、深淵を覗こうとした所で深淵は自分達を認識しない。

 

 

 そう、あれは()()()()()()じゃない。

 

 

 ゲマトリアは自分の中に()()を求めた。それは泥の詰まった人形に水を入れるような、有った理論を薄めるような行為だ。確かにあった事実は輪郭を失った陽炎へと代わる。そんな中、愚かな一人の貴婦人が《光》への()()を試みた。

 

 ベアトリーチェが行った儀式は自分を依り代に《色彩》を降ろすものだった。ゲマトリアの誰にも悟られず、邪魔されないようアリウス自治区の秘匿された場所で行われたその儀式は、後に失敗と記録される。

 

『何故?! 全ては順調だったはず!』

 

 貴婦人は叫んだ。彼女の失態は、《色彩》に接触したことだ。己が《崇高》に至って()の存在に成ろうとしたこと自体は問題ない。ただし、あの光だけは例外だった。詳しい実態は省くが、あれは世界を滅ぼす性質を持っている。そんなものに触れようものなら命が最低二つ以上は必要だろう。

 貴婦人が至った末路は、《色彩》と繋がった自分に半殺しにされることだった。整えた式場も、蓄えた戦力も、全て自分に壊され、得られたのは精々消えかけの命と《色彩》の恐ろしさを知ったという経験のみだろう。

 

 

 

 

 あの後、自分はアリウスから離れた。《色彩》と繋がった瞬間、自分の頭の中に流れたのは、《色彩》が観測していたキヴォトスの万象(全て)。自分は《色彩》がずっと見ていた事実と、その破滅(目的)を知った。同時に、キヴォトスが()()存在することも知る。

 枝分かれで増えていく時間軸の全てが一度は自分の頭の中に流れた。ちゃんと憶えている。負荷による反動なのか、ベアトリーチェを半殺しにしたのは()()()()()した自分だ。そこで、自分は“神秘”と“恐怖”、“崇高”を理解した。

 

 

 

 だから助けを求めた。

 

 

 《未来》を感知して、自分は()()()()()()に会いに行った。最初は…………彼女を殺す為に。

 

 

 

 

 生えた翼でサンクトゥムタワーに行けば、自分を待っていたのは連邦生徒会長こと■■■。彼女は部下を使わず、その超人的な頭脳で自分を戦闘不能にした。結果、自分の殺人は未遂に終わる。

 

 

 

 すると■■■は、自分に■■■■■■■■を任せた。それからは■■■■■■■の抑制。■■■■■の計画の阻止。■■、■■■、■■■■■の調査。会長が■■■となった自分を■■■■■と■■してくれたり。振り回される日々だったけど、悪くはなかった。長くとも短い■■■だった。

 

 

 

 生徒会長と二人で仕事をしている時、彼女はよく嘆いていた。これで良いのか、もっと他に選択肢は無かったのか。彼女は優秀だった。優秀であるが故に、救うべきものが見えなくなることがあった。伸ばされた手を、払い除ける冷徹さがあった。

 彼女が吐露するのは後悔ばかりだった。それでも、彼女は生徒会長として統治が出来ていた……出来てしまっていた。彼女が色んなものに擦り切れていく様を自分は一番近くで見ているだけ。彼女にかけてやる言葉を、自分はとうとう持ち得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、最後の時(始まりの合図)が訪れる。

 

 

 

「頼みがあります」

 

 

 

「これが最後の、あなたにとっては始まりかもしれませんが」

 

 

 

「……私より、あの人の方が正しかったんです」

 

 

 

「私の選択では、あなたを──────」

 

 

 

「いや、大丈夫です。あの人ならこの捻れて歪んだ終着点とは、また別の…………」

 

 

 

「……あなたに言うことではなかったですね」

 

 

 

「あなたのことだって、あの人は必ず違う未来へと導いてくれるはずです」

 

 

 

「だからどうか、お願いします」

 

 

 

「“先生”を、支えてあげてください」

 

 

 

 彼女は()()した。自分に“先生”を託して、誰にも知らせず失踪した。揺れない“電車”の中で最後に交わした会話。血に塗れる■■■の対面の座席に座って、自分は■■を通して■■した。

 

 

「待■■■■■■。■■■の■■も、■■■■■■■■■」

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 何故、あの会話を思い出したんだろうか。心の奥底で、自分は■■■と会いたがっているのか。寂しいのだろうか。

 

 今一度集中して、目の前の巡航ミサイルを捉えながら自分は乖白刀を手に飛ぶ。接触まで後二秒。

 

(自分は、あなたを“信じます”)

 

 衝撃に備えて、刀を振りかぶる。

 

 

「はあああああああああ!!!」

 

 

~~~~~

 

 

 爆炎がこの身を包む。片腕が、翼が、角が、まるで溶けゆく蝋のように、自分が自分であった形は欠損していく。このまま目を閉じれば、自分は()()()()()燃え尽きる。

 

『“でも、私は望み続けたい。ソレアがこれからも生きていく《未来》を!”』

 

(本当に……罪深い……)

 

 

 燃え残った全てで、まだこの空に抗う。巡航ミサイルの威力はギリギリ致命傷じゃない。現在進行形で自由落下しているこの状況、飛行の推力で地面との追突時の被害を抑えればまだ…………蜘蛛の糸ほどの希望で生存する確率が存在する。

 

 

(貴女は…………本当に……)

 

 

 肉体とはくたびれる程繊細だ。例えば、小指一本失うだけでバランスがガラッと変わってしまうくらい。そんな面倒な肉体の片腕と片翼の欠損、重度の火傷は全身に杭を打つ痛みを与える。放り投げられた空中で必死に翼を動かすが、精々姿勢制御を辛うじてできるだけだ。

 

 何かクッションがあれば、まだマシだと判断する。心臓から遠くて、失ってもいい箇所……。

 

(左腕だな……)

 

 手首の下辺りから上がグチャりと無くなっている左腕を見て、覚悟を決める。

 

(はあ…………賭けだな)

 

 

 近付く地面から視線を逸らさず、左腕を下に自分は地面との強烈な再会を果たした。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

“ソレア!”

 

 

 拭い切れない不安を胸に、私はソレアの元に走る。ソレアは()()()()()()その身を呈してミサイルから古聖堂を護った。最初の繰り返しだ。脳裏にあの光景がチラつく。ヒナの腕の中で、静かに息を引き取るソレア。それを胸に抱いて泣き叫ぶヒナ。

 

“(大丈夫。ソレアを信じてる)

 

 そうやって自分の不安を騙し騙ししながら走る。ソレアが落ちた場所に着いて目にしたのは、最初と同じように全身に火傷を負って、右翼が根元から無くなって。

 

 左腕は最初の時より酷くなっていた。左肩周辺に数本の骨が痛々しく突き出て、医療の素人でももう治ることが無いと確信できるくらいズタズタになっている。

 

“ソレア……?”

 

 体から血の気が引いていくのがわかる。クレーターの中に居るソレアに駆け寄ろうと不安定な瓦礫を踏んだ時。

 

「先生っ! ここはもう戦場になる。早く安全な場所に……」

 

“ヒナ!”

 

 ゲヘナ学園風紀委員長の空崎ヒナが後ろから声をかけてきた。

 

“今すぐに救急医学部を呼んで! 早く!”

 

 僅かな希望に賭けて指示を出す。何が起きているか理解が追い付いてないヒナ。でもクレーターの中心を見た瞬間、目を見開いて即座に行動を開始する。

 

「ソレアっ!」

 

 ヒナはひとっ飛びでソレアを抱えてクレーターから出る。また最初の光景と重なって、背筋に冷汗が流れる。

 

「ソレア、ソレアぁ!」

「………………ヒ……ナ?」

「ッ! 喋らないで。今救急医学部を呼んだから、気をしっかり持って!」

 

 ボロボロのヘイローが頭上に現れて、ソレアの目が開かれる。白と蒼の瞳には、まだ光が宿っていた。

 

「せん……せい……。私…………やりましたよ」

 

“ソレア……。お疲れ様”

 

「はい。……少し……休みます」

 

 ソレアは安心の笑みを見せてからゆっくりと目を閉じる。ヘイローは壊れなかったけど、一刻の猶予も許されない状態だ。救急医学部が早く来ることを……

 

 

 

 

「先生、伏せて!」

 

 複数の銃声とヒナの鋭い声が響く。ヒナが私の前に立つのと同時に鈍い衝撃音が鳴る。

 

「ぐっ……」

 

“ヒナ!”

 

「先生はソレアと安全な場所へ! 早く!」

 

“わ、わかった”

 

 

 ソレアを背負ってこの場から離れる。あのヒナがダメージを受けるほどの狙撃、相手は多分……。

 

 

「ど、どうしましょう……ミサイルは何故か不発。ヒナさんもピンピンしてますし……。要注意だと聞いてたのに、……辛いですね、苦しいですね……」

 

 

 アリウススクワッドの槌永ヒヨリ…………。

 

 

~~~~~

 

 

“ハァ……ハァ……”

 

 

 古聖堂から抜け出て、とにかく走る。救急医学部か救護騎士団にソレアを治療してもらわないと……手遅れになる。

 

「先生!」

 

“アズサ?”

 

 補習授業部の白州アズサだ。元アリウス生の彼女でもこのことは知らなかったようで、かなり焦った様子で私達の所まで走ってくる。

 

「無事……か……」

 

 安否を聞こうとしたアズサの目線は私の背中のソレアに移り、言葉が途切れる。

 

「先生、それ……」

 

“詳しく説明してる暇は無いんだ”

 

 

 

 

「見つけたぞ」

 

 

 重々しい足音と銃火器の金属音が迫り来る。錠前サオリが率いるアリウスの部隊だ。その更に後ろにはユスティナ聖徒会の複製の軍。

 アズサも戦闘態勢に入って銃を構える。

 

 

「アズサか……。そしてシャーレの…………っ!」

 

 

 サオリもアズサ同様、ソレアを見て固まった。これまでの繰り返しの中でサオリとソレアが旧知の仲であることはわかっている。こんな所で戦ってる場合じゃない。ソレアは生死の合間を彷徨っている。

 

 

“サオリ! ソレアが巡航ミサイルを受けて瀕死なんだ”

 

「どうして私の名前を……」

 

“事態は一刻を争う。だから……”

 

「……断る」

 

“な……”

 

「……私はそんな奴知らない。大人しく死んでくれ、先生」

 

 

 サオリは銃口を私に向ける。でも彼女の銃を握る手は、震えているように見えた。

 

 

─キキィ!

 

「先生! こちらに!」

 

 一触即発の戦場に、一台の救急車が横切る。救急医学部のセナが駆けつけてくれたとわかって、急いで車に乗る。

 

「逃がすか!」

 

 サオリの銃口から弾丸が数発放たれる。私はシッテムの箱が守ってくれるけど、ソレアは別だ。まずいと思ってソレアを隠すように盾になろうとしたら、翼が私に向かう弾丸を弾いた。

 

“ソレア?”

 

 背負っているソレアを確認するが、まだ眠っている。無意識でも、ソレアは私を守ってくれた。

 

「先生、早く!」

 

 セナの呼ぶ声にハッとして、車に乗り込む。ソレアを下ろして、アズサもと目を向けると、決意をした目で私を見ていた。

 

 

「サオリは任せて」

 

“お願いアズサ!”

 

 

 セナにゴーサインを出して、車は一目散に戦場から離脱した。

 

 

 




身体欠損だよやったね
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