空は酷く澄んでいる   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

前回より早いペースで嬉しい。
この章は今回で終わりです。

ではどうぞ


教義は乖離し白と壊れる

 

 

 

 

 

 

七つの古則

ジェリコは嘆く

 

箱舟の中

証明は成される

崇高は与えられた

畏怖と教義は完成する

 

見放された者

羽を拾いて翼を得たり

壊した礫で角を得たり

翼は空を飛ぶ、傲慢にも高く、神と思いて

角は破壊する、光悦として、獰猛とした悪

飛んだ先に太陽を見た、近付けば、羽を失い焼け落ちた

破壊尽くした末、振り返れば何も無かった、大切も全て

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ……」

 

 目を開けると、何処かの病室だった。どうやら、自分は生き延びたらしい。身体を起こすと、誰かに手を握られているのに気付く。

 

「先生……」

 

 髪もボサボサで、服は汚れてて、それでもこの人はずっと此処にいたんだと確信できる。疲れているのか、かなりぐっすり眠っている。

 

「ありがとう、先生」

 

 自分の《未来》の可能性、それを信じられなかったらきっとあの時自分は死んでた。先生が自分を信じたから、自分も信じられた。生きていたいと思えた。

 

「調印式にミサイルが飛んでくるなんて異常事態以外の何物でもない。裏で誰かが動いてる」

 

 未来感知をして、目を細める。

 

(主犯はアリウスか……)

 

 恐らく、自分がミサイルを阻止したのがだいぶ効いたのだろう。調印式の被害は奴の想定より遥かに少ない。複製を手にしたとはいえ、現在衰退中。ゲヘナとトリニティ、特にトリニティに混乱を誘いたかったんだろうけど、ナギサやサクラコが無事なお陰で統制は崩れてない。ただ、これを機に宣戦布告を望む動きが激しくなっている。

 

(ナギサとサクラコが居るから心配はいらないな)

 

 でも、アリウスは動いてくる。次は[教義]を使ってくるだろう。マエストロの奴め、面倒なことをしてくれる。

 

「早く制圧して……」

 

“ソレア!!”

 

「おはようございます。先生」

 

 先生が泣きそうな、いや泣きながら抱き着いてくる。

 

“よ"か"……よ"か"っだぁ”

 

「ちょ、……はあ、心配かけてすみません」

 

 ようやく落ち着いた先生を離して向き合う。まだ騒動は終わってない。シャーレとして、速やかに解決しなくては。

 

「事態は何となく把握しました。これからアリウススクワッドを止めます」

 

 そう言ってベッドから立ち上がると、バランスが取れなくて転けそうになる。見れば、グチャグチャだった左腕は肩までがスッパリ切断されてて、右翼も結構根元辺りから無くなってた。角は……罅が凄い。よく生きてるな自分。全身包帯でグルグルだ。

 

“無理しちゃ駄目だよ。今は安静に……”

 

「いえ、事が大事になる前に可能ならシャーレだけで収めたいです」

 

 まだ、まだアリウスもティーパーティーも救える。シャーレ所属の自分と先生だけでなら、後始末や隠蔽も容易い。

 

“でも、ソレアはボロボロじゃないか”

 

「戦闘に関しては大丈夫です。片手と両足があればいけます」

 

 片腕と片翼を失ったのは痛いが、足が残ってるのは幸いだ。まだ……まだ自分は戦える。

 

「新しい《未来》を見ました。下手するとキヴォトスからトリニティとゲヘナが消えかねません。私一人でも戦線に復帰します」

 

「駄目です」

 

 氷室セナが言いながら病室に入ってきた。鉄面皮な彼女だが、その表情は明らかな不満が書かれてる。

 

「あなたはまだ回復してません。それに、…………腕と翼を失ったのです。……もうあなたが戦う必要はありません」

「久しぶりだねセナ。ごめんだけどそれは聞けないかな」

「…………」

「私がやらないと」

「あなたは変わりませんね。そうやって自分だけ背負って。……重体のあなたを見た私の心中がわかりますか? 大切だと思ってる人が血を流して死にかけている。あなたの死体だけは見たくないです。あなたが傷だらけの姿もです。…………これ以上、私に心配をかけさせないでください」

「無理だ」

「っ! どうして!? どうしてあなたはいつも……。もう十分戦った! なら、後は他の人に任せていいはず!」

 

 感情を剥き出しにしたセナに胸倉を掴まれる。セナの気持ちも分からなくもない。でも、これは自分が処理することだ。助けがなくとも……

 

『ソレア』

 

 脳裏に■■■の姿が過ぎる。……そうか、自分は貴女と同じことをしようとしていたのか。駄目だな、多分血を失い過ぎて頭が回ってない。

 

“ソレア”

 

 そうだよな。自分一人で出来ることなんてたかが知れてる。いつから思い上がってたんだ。■■■の傍に居たからよくわかる。こういう人種は大変だって、学習は学生の本領なのに、生徒失格だな。

 

「……やっぱり頼ろうかな」

 

“ソレア!”

 

「……どうしても、ですか? どうしても戦うって言うんですか?」

「うん。次の戦闘、私は絶対に必要になる」

「先生、あなたからも何か……」

 

“? ソレアが言ってるから大丈夫でしょ”

 

「え……」

 

“ソレアがまだ生きてる。だから大丈夫”

 

 ……先生の様子に少し違和感を感じる。()()()()()()なら言わない台詞だ。

 

「先生、声掛けれる所に要請をお願いしていいですか」

 

“うん、わかった”

 

 

「……行くんですね」

「セナの前で完治してないのに行くのは気が引けるけど、行かなきゃ」

「どうせあなたは止めても行くのでしょう」

「よくわかってるね。それで、ヒナは?」

「実は行方が……」

「あー、わかった。私が行くよ」

 

 自分は残ったセナに身体を支えてもらいながら歩き始める。

 

「セナ、ちなみに此処は?」

「トリニティの救命騎士団に部屋を借りてます」

「…………車の運転お願い」

「はい」

 

 時間的猶予は……あまり無い。

 

 

――――――――――

 

 

 セナの運転する車に揺らされて自分が向かったのは、ヒナの自宅だ。インターフォンを鳴らして扉が僅かに開いて、少しやさぐれたヒナが顔を覗かせた。

 

「やあ、ヒナ」

「っ、ソレア……」

「少し話したくて……上がっていい?」

 

 

 中に招かれて、懐かしさと悲しさを感じながら座る。

 

「…………その腕」

「ああ、もう手遅れだったから、綺麗に切ってもらった。翼も同じかな」

「……そう」

 

 普段から起伏のないヒナだけど、今は特に元気が無い。

 

「それで、話って?」

「いや、そんな大それたもんじゃないよ。ただ、お礼と報告だけさ」

 

 本当は一緒に戦って欲しかったけど、今のヒナにそんなこと言えない。戦いたくないなら、戦わなくていい。その為に自分がいるのだから。

 

「私が倒れてる時、先生と私を守ってくれてたんだって? ありがとう」

「気にしなくていい……。それが私のやるべきことだから」

 

 やるべきこと……ヒナも同じだったんだ。責任感が強くて、寂しがり屋のヒナ、自分と同じだ。

 

「ヒナは頑張った。それはもうとっても」

「……っ!」

 

 誰かに褒めて欲しかった。誰かに甘えたかった。自分達は似た者同士だ。

 

「もう休んでていいんだ。後は私が終わらせてくるから」

「ま、待って……。………私は……小鳥遊ホシノみたいには、なれない」

「ホシノ?」

「私はあの、アビドスの副会長みたいな……強い人じゃない……。アビドスの生徒会長……その遺体を発見したのは、小鳥遊ホシノだった。すごく、ものすごく大切な人だったはずなのに……。」

「…………」

「あれだけの苦しみを味わっておきながら、彼女はまだアビドスで戦ってる……私には、そんなことできない……」

 

 

 

「ヒナ」

 

 そっと彼女を抱きしめる。自分よりも体躯は小さいけれど、大きな責任と義務が彼女を苦しめていた。

 

「お疲れ様、ヒナ。よく頑張ったね」

「……うぁ」

 

 静かに涙するヒナ。しばらく抱きしめ続けてた後、ゆっくりと顔を上げた。

 

「ありがとうソレア。もう大丈夫」

「そっか、じゃあもう行くよ」

「待って」

 

 服を摘まれて止められる。ヒナの顔はいつもの風紀委員長に戻っていた。

 

「私も行く。あなたのことだもん、どうせそんな重傷でも戦いに行くんでしょ」

「全部お見通しって訳か」

「私がどんだけあなたのこと見てたと思ってるのよ」

 

 笑いながら、自分らは部屋から飛び出す。これ程心強い人が傍に居ること、とても感謝している。

 

 

――――――――――

 

 

 アリウススクワッドは予測通り。古聖堂の地下に姿を現した。……アズサが単独行動してるのは先生から聞いてたけど、独りでスクワッドと戦ってたのか。

 

 

 風紀委員会、正義実現委員会、対策委員会の包囲網は配置済み。アリウススクワッドは袋の鼠。……と、皆は思ってるだろう。

 

 

 

「私たちの、青い青春(ブルーアーカイブ)を」

 

 

 阿慈谷ヒフミ、自称平凡な補習授業部部長。ブラックマーケットに頻繁に出入りし、水着覆面団のリーダーであるファウストの一面を持つ。モモフレンズのペロロが絡むと狂人のような行動をとる。……こいつが平凡とか詐欺じゃん。

 

“ここに宣言する”

 

 ヒフミら補習授業部がアズサを救出して、先生が声高らかに宣言する。

 

“私たちが、新しいエデン条約機構(ETO)

 

 先生が出した結論は、アリウスと同じことをやり返すこと。解釈を歪曲し、連邦生徒会をシャーレが代行してエデン条約を締結する。これによりエデン条約機構が二つ存在した。戒律であるユスティナ聖徒会の複製はその定義から不安定になる。

 

“生徒たちの夢を……その実現を助けるのは、大人の義務だから”

 

“私は生徒たちが願う夢を信じて、それを支える”

 

“生徒たち自身が心から願う夢を”

 

 

 無線で先生の言葉を聞いて、自分も準備を終える。

 

「権限認証」

 

 片腕で大太刀である乖白刀を扱うのはきつい。肩に装甲板を着けたから、担ぐ格好で移動することになる。腰の後ろと右にカエルムとシグヌスを、リロードするための弾帯を腰と足に付けてる。

 

 

(例え、この命を燃やし尽くしても……)

 

 

 刀を握る力が強くなってるのに気付いて冷静になる。今の思考はかなり危なかった。

 

(はぁ、まだ本調子じゃないな)

 

 先生と相談した結果、自分は単独行動となった。これまで単独での任務が多かったから、正直一人の方が強い。刀を地面から抜いて移動を開始、作戦を決行する。

 

 

 

~~~~~

 

 

 複製とアンブロジウスを片っ端から殲滅していく。オーバーテクノロジーウェポンである乖白刀は不可解である複製に対して神威で優位をとる。つまり、片腕だろうと一振で消せる。ユスティナ聖徒会の複製(たかがこの程度の雑魚)で戦況をどうにかできると考えてるなんて、サオリも鈍ってるに違いない。

 

(今ある手札は潰した)

 

 他の皆も、上手く制圧していってる。後は地下の()()だけだ。

 

(さあ、終わらせよう)

 

 

 覚悟を決め、地下に踏み込んだ。

 

 

~~~~~

 

 

 自分が地下に着いた時、丁度アズサとサオリの決着が着いた頃だった。

 

「う、くっ……。アズ、サ……」

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

 軍配が上がったのは先生が居るアズサか。いや、殆ど相討ちに近い。

 

「よく頑張ったなアズサ」

「あ、えっと……」

「会うのは二度目……、いや、あの時助けてくれたから三度目になるのかな」

 

「ソレア……」

 

 サオリは自分の登場に酷く動揺する。苦しそうに歪ませた顔は真っ青だ。

 

「久しぶりサオリ」

「生きてたのか……」

「無事ではないけどね」

「……すまない」

 

 腕と翼があった場所を見て、絞り出すように謝ってくる。銃も持たず、ただ裁きを待つ罪人のように項垂れる。

 

─カツ、カツ。

 

 新しい足音が近付いてくると、音の方に視線が集中する。争う気がないことをアピールするように両手を上げた秤アツコだ。常時着けるようにされた仮面は半壊して、隠されていた素顔が見えている。

 

「……」

「アツコ……」

「姫、どうして逃げなかった……」

「私たちの負けだよ、アズサ」

 

 

 

 

 

「……サオリ、アツコ、私と一緒に来てよ」

 

 連邦生徒会長の隣に居た頃、■■■■■(カタコンベ)を調査してもアリウスへの戻り道はわからなかった。……言い訳は辞めよう。自分はあの時、サオリ達を捨てたようなものだ。あの時……サオリ達には自分と一緒に行くと言っていた。その勇気を振り払って自分勝手に飛び立った自分に、今更と言われても仕方ない。罵詈雑言の限りを浴びされても受け入れたい。でも、今はシャーレがあって、先生が居る。

 

「シャーレに来てよ。そろそろ仕事が回らなくなってきたんだ」

「ソレア……」

 

 無責任に希望だの何だと説いた癖に、中途半端に放り投げた。でも、でも……それでも自分はみんなに手を伸ばしたい。

 

 

 

――――――――――

 

 

「素晴らしい……」

 

 ソレア達の居る場所から離れた小さな空間。木製の人形の異形が呟く。ギギギとぎこちなく動く姿はまさに怪異だ。

 

「知性と品格、礼儀と信念、そして培ってきた経験と知恵……」

 

「先生……そなたならば、私の[崇高]を理解してくれるに違いない……!」

 

 ゲマトリアの一人、芸術家のマエストロは先生と……アリウススクワッドに手を伸ばすソレアを見て激しく昂る。特にソレアには、長い間探していたのもあって感極まっている。

 

「それに……完全なる“崇高”よ。そなたが理解してくれるのは承知している。なら、そなたは他の[崇高]を一体どのように解釈してくれよう!」

 

 

――――――――――

 

 

 突然に地下空間が震える。突如として出現した強烈な威圧感に、サオリ達は立ち竦んでしまっている。

 

「[教義]が来る。先生、サオリ達を頼んだ」

 

 乖白刀を構えて自分は迫ってくる[教義]から庇うように立つ。あれを()()()のは自分だけだ。本調子じゃない今の状態では……よくて片足、悪くて相討ちか。

 

「皆は下がってて。あれは……私の相手だ」

 

 ヘイローが忙しなく回転し、能力もフルに使用する。常時流れ込む《未来》に脳が悲鳴をあげるが、使用中は相手の攻撃を完全に知っているから被弾を無くせる。問題は、超短期決戦でしか脳が負荷に耐えられないこと。

 

(鼻血か……早いな)

 

 血を垂れ流しながら、一歩、まだ一歩と進んで行く。

 

 [教義]……詳しい名称は不明だが、四本の腕、後光を表してそうな装飾、ラテン神父のような亡霊……いや複製(ミメシス)。あのマエストロの所業にしてはあまりにも不完全だが、確かにマエストロの複製だ。顕現したのが地下でよかった。あれを地上に放てば、キヴォトスは近年最大の危機に襲われていた。決して見逃しては置けない。

 

“待って”

 

 疾走しようと踏み出しかけたその時、先生の手が自分を静止させる。先生はいつもの優しい笑顔で、その内に確かな怒りを宿して懐から一枚のカードを取り出した。

 

「先生、それは駄目だ」

 

“いや、今だよソレア。今しかないんだ”

 

「待──」

 

 見ていない《未来》に戸惑いながらも、先生が大人のカードを使うのを止めようと手を伸ばす。しかし先生の手のカードは既に光を発して、(かたち)を創っていく。■■■に聞いた話では、あのカードは先生の時間を代価にあらゆる万物事象を生み出す代物。他の生徒は知らなくても、知っている自分だけでもその使用は阻止しなくてはいけない。

 

 

(……なっ!)

 

 

 先生がカードを使った瞬間、《未来》が急速に不安定になっていく。()()()()()()がだだっ広く広がっていく。先生の意図しなかった急激な負荷に目を細める。

 

“みんな、頼んだよ!”

 

 呼び出された光の塊とも影ともとれる部隊が先生の指揮の元、行動を開始する。よく見れば、呼び出された六人に何処か見覚えのあるものを感じる。恐らく、シッテムの箱に記録された生徒の情報を元にした戦闘媒体。マエストロの複製とは似て非なるもの。

 激しい頭痛を堪えながら先生の隣に移動して、自分も指揮下に入る。

 

「先生、私も行きます」

 

“……もう十分だよ”

 

 先生の目には暗闇のトンネルから出口をやっと見つけたかのような安堵、漸く終わるという安心があった。

 

“後は先生に任せて”

 

「無理です。戦闘に参加します」

 

 先生が召喚した部隊の攻撃はあれに有効に見える。でも、自分はあれを()()しなくてはいけない。最後の一太刀は、自分でなくてはいけない。それが“崇高”である自分の責務であり、■■■と交わした■■だから。

 

「後でめいいっぱい説教して下さい」

 

“あ、待って!”

 

 先生の静止も聞かずに走り出す。先生の部隊は既に戦闘を開始しており、その邪魔をしないよう隙間を縫って[教義]に接近する。流石は先生、この短時間で[教義]は既に手負い、丁度自分の一太刀で終わりそうだ。最後の抵抗なのか、[教義]が杖を着くとユスティナ聖徒会の複製が出現する。

 

「シッ……」

 

 一息で自分の進路上の複製だけ斬り捨てていく。片翼と片腕が無いから姿勢制御が大変だ。重心だって狂ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからどうした?

 

 

 

 

 腕が上がらなくなるまで戦った。翼が一ミリも動かなくなるまで戦った。銃身が熱で歪むまで戦った。視界がぼやけるまで戦った。立つことすら難しくなるまで戦った。

 

 潜り抜けてきた修羅場の数々が自分を強くした。この程度、ハンデにもならない。それに……

 

 

“ソレアの援護を!”

 

 先生が守ってくれる。だから自分は()()()いける。何の障害もなく、ただ真っ直ぐに[教義]の懐に入り込んで、乖白刀を握りしめた。

 

 

「はああああぁぁぁぁ!!!」

 

 

 会心の一撃。[教義]を()()し、その贋作の“崇高”を抹消する。()()()()()ように()()()()()()()()[教義]を見収めて、刀を手放す。

 

 

“ソレア!”

 

「大丈夫……ちょっと無理しただけだから」

 

“よかった……”

 

 

 

 目尻に涙を零しながら先生は自分に駆け寄ってくる。心配してくれるのは嬉しいけど、その……強く抱き締めないで、傷が開く。

 

 周囲を見渡しても、サオリとアツコの姿は無かった。あの様子ならアリウスに戻ってはないと思う。自分の手を取って欲しかったけど、まだ彼女たちにあの時のことを許してもらえてないんだ。まずはそこから、何処に行っても必ず見つけて償い続けてみる。()()に見つからないことを願うばかりだ。

 

 残った二人の泣き喚く声と、身体疲労と脳疲労のため息だけが、謎で満ちた地下空間に響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、早く来なさい。私の“崇高”」




楽園のバッドエンド編 END

バッドエンドが2つだけで物足りない? 大丈夫、次章は最低4つは用意してます。ソレアの秘密に関しても次章で開示できそう。
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