白球に込められた野球魂   作:シアン・シンジョーネ

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どうも、ハーメルンで初投稿させていただきます。
あらすじには書いていませんが、なんj用語も頻繁に出てきますので、後書きにてそういう部分を補足したいと思います。


第一話 ペナントレース開幕!

『さぁ、やってまいりました。2014年の東京ドーム。因縁の対決となる阪神と巨人戦。解説にはロッテの元守護神“早川あおい”さんが来ています』

 

『どうも、早川です。阪神と巨人……野球好きなら見逃せない一戦だね』

 

『見逃せないとは?』

 

『今までだったら“猪狩バッテリー”の前に、阪神は完封負けしてましたが、今年の阪神は開幕投手を任された超大型バッテリーと外国で手に入れた選手が三人もいますから』

 

 

早川の腑に落ちない解説に、実況は疑問を抱く。だが、球場では早川が話題に出した“猪狩バッテリー”の投手、“猪狩守”が番長顔負けの眼光を光らせると、東京ドーム全体が冷気に包まれた。

試合開始告げるブザーに一気に場内は湧き、熱気を帯びた叫びは選手の心に火をつける。

 

 

『先頭打者は鳥谷。去年とは違い、打順を変えて来ましたねぇ』

 

『彼の選球眼は球界でもずば抜けてるから。先頭打者としての素質は持ってるし、ボールを振らせる、または凡打させる私には苦手な相手だよ』

 

 

猪狩守の一球目。高めを抉る直球。鳥谷は振らない。判定はボール。

一回表の一球目だが阪神サイドは安堵する。その凄まじさは舞う砂煙が物語らせ、電光掲示板が数字として記録させた。時速154キロ。

 

 

『猪狩守、一球目から全力ストレート!その様はまさに大砲!あまりの球威に手が出ない打者も少なくはありません』

 

『全力ストレートを高め……様子見のボール球ですけど、まだ変化球と切り札がある』

 

 

捕手とのサインを終えて、猪狩守の二球目。今度は内角低めのスライダー。

鳥谷はバットを振り、スライダーを打つ。だが内野の白線を超えファール。これで黄色と緑の光が掲示板に一つずつ点滅される。

 

 

『それに守君は、僕とは違って三振で抑える力の投球。甘い球を見定める鳥谷にはちょっと相性が悪いかな?』

 

 

早川の言葉通り、鳥谷は三球目を見逃してストライク。四球目のキレのあるカーブ球に手が出て三振。

その後も少ない投球数で阪神の二番と三番を抑え、一回表の攻撃は終わる。

二者三振、立ち上がりとしては上々過ぎるものだ。

 

 

『三者凡退。去年のクライマックスシリーズから好調を維持し続けてます。しかし、日本シリーズであれほど大暴れした猪狩投手ですが、今日もそれを見せてくれるのか?楽しみですねぇ』

 

『日本シリーズは名勝負だったよ。マー君こと田中投手と守投手の投手戦。互いに七回まで容赦なしのフル投球でバテバテ。最終的にはセーブに橘投手が出て、0-1で楽天が日本一。私も出たかったよぉ〜』

 

 

可愛らしい猫撫で声に、生配信されてるネット動画で早川を愛して止まないコメントが流れるのを見た社長がいたが、それは今は関係ないお話。

 

 

『さぁ、阪神も三者凡退で抑え込めるのでしょうか?阪神の開幕投手は“開拓高校”からやって来た速球派!誰がつけたか、その環境で戦う姿はまさに『逆襲球児』!』

 

『その名も“小波”です!』

 

 

その瞬間、ドームは阪神に限らず巨人までもが雄叫びをあげた。

マウンドの立つ黒い帽子。左手で整えると、手汗を拭って試し球を投げる。球速147キロ。

軽く投げたようなフォームから放たれる速球。全力で投げれば、どれほどの球威があるのか。阪神ファンの期待は大きく広がり、虎の威嚇は一気に咆哮へと昇華されるのを小波はその身で感じた。

 

 

『さて、その小波の球を受ける捕手は“混黒高校”の四番。類稀に洗礼させたリードで投手を引っ張る“雨崎優輝”!今回の打順でもルーキーから早々に五番という大事な場所を任されています』

 

 

実況の声がかき消されるように阪神ファンの愛ある罵倒がマウンデへと伝わる。高卒ルーキー。しかも開幕投手を任されるという大義名分。能見、メッセンジャー、藤浪よりも早く立つマウンドの感触は不思議と心地がいい。

 

 

「制球が定まらないようだったら、左足でマウンドを一回だけ蹴って。後は僕がどんな暴投も捕るから」

 

 

小波は今とても落ち着いている。親友である雨崎がアドバイスをくれるが、その心配はない。いつも通りの平常心。

肩も肘も指も手首も腰も足も問題ない。体のバランスも悪くはない。むしろいいぐらいだ。

そして小波は敵となる相手の打者を見た。“猪狩バッテリー”の捕手、投手である“猪狩守”の弟“猪狩進”。前年での成績は3割3分9厘、34打点、16本塁打の化け物染みたものだ。

 

 

『おぉっと、一球目は内角ストライクから外れる高速スライダー。進選手は見事に見抜きました』

 

 

身体中の血液が湧き上がるのが感じる。この舞台、プロという誰もが憧れる舞台で大打者と戦える喜び。感動のあまり涙が出て来そうにもなる。

 

 

「いくぞ……優輝」

 

 

グラブ越しに呟いた独り言だったが、その声に雨崎は答えてくれた気がした。

ここからが小波の全力投球。一球一球に相手を屠る力を込めて、身体中を銃にして今弾丸を撃つ。

ど真ん中直球。誰もが失投と思うであろう悪投球。しかし、その力強い小波の背中に、球場は一気に静まり返る。

背に誇られる13。その数字は今日一度もマウンドを去ることなく君臨し続けた。

 

 

………

……

 

 

「本当にすいません!最終回で一点取れれば阪神の勝ちでしたのに……」

 

「気にするなよ、お前が小波をリードしたから延長戦にもつれ込んでも無失点で行けたんじゃないか」

 

「むしろ感謝するぐらいだ。これは俺が明日勝つとするかぁ?」

 

 

試合時間四時間超え。阪神が使う控え室に、雨崎はチームメイト全員に頭を下げていた。新井兄は雨崎をフォローし、明日の先発となる能見は明るい笑顔で笑っていた。

 

 

「それに雨崎はツーベース打ったじゃないか!そこに続けなかった……福留が悪い」

 

「先輩に対して随分といい口するなぁ、新井ぃ!!」

 

 

「痛い痛い」と悲鳴を上げる新井兄。

横目で見ていた上本も「ゲッツーでしたからねぇ」と代打で出た新井兄の残酷な成績を言って、聞く耳立てていた小波は「聞かなかったことにします」と言った。

 

 

「でもありがとうございます。上本さんと、鳥谷さんのファインプレーで満塁のピンチをトリプルプレーで抑えられましたから」

 

 

「もちろんゴメスさんも」と雑な送球を取った一塁手にも感謝の意思を忘れずに小波は頭も下げた。

 

 

「まぁ、今日は開幕記念だ!俺のおごりで夜の街で明け暮れるぞ!」

 

「ノウミサン。ミセイネン」

 

 

マートンの言葉に能見は「そうか」と悔しげな顔を浮かべた。

 

 

「気持ちだけで結構です。それに……この後、上の人達に呼び出されてますから」

 

「小波もか。実は俺も呼ばれてたんだ」

 

 

新人バッテリー二人の事情を知り、その場にいる全員が了承した。雨崎は「すいません」と謝罪の言葉を残して、小波と共に部屋を後にした。

 

 

「優輝はどう思う?」

 

 

東京ドーム特有の質素な関係者通路を二人は歩く。小波の真剣な眼差しに雨崎は本心をそのままぶつけた。「もしかして“ジャジメント”からだったり?」

 

 

「ありうるな!“ジャジメント”は今年に“横浜DeNAベイスターズ”を買収して“横浜ジャジメントベイスターズ”にしたからな」

 

 

二人が話す“ジャジメント”とは、世界でもっとも売上がある世界的大会社だ。一時期、食品や草野球チームの問題などで信頼をなくしたが、同じ資産がある“オオガミ”との合併などで技術を進展。二つの力でできた新しい科学は、全世界を震撼させて、今や“ジャジメント”とその他大手会社と言われるほど社会に貢献する企業に成長したのは、まだ人々の記憶には新しい。

 

 

「お父さんは元“オオガミ”だからね……」

 

 

だが、その大きさゆえに黒いところがある。噂では自ら作った科学の力を証明するために、小規模な戦争を起こしたり、その力がどれほどの影響力を持つのか政府に脅しをかけているというのがある。

そんな中、雨崎の父親は“ジャジメント”が合併する前の“オオガミ”で生物化学をしていた。しかも重要な役割を任されていたらしい。

 

 

「でも、意外といい話かもしれないぞ。阪神と横浜の超大型トレードとか」

 

「横浜には“田中山太郎”のショート。それに現横浜エース“天道翔馬”がいるから大型はないと思うけどなぁ〜。捕手の“六道聖”だって欠かせない女房役になってるし……」

 

 

「じゃあ、何だろうな」と小波は言って自分達が関係しそうな話題を探すが、一考に思いつかない。それは雨崎も同じであり、顔を歪ませてはしかめっ面を繰り返す。

今日は近所でお祭り騒ぎ。花火音と参加者の声が、やけにうるさく聴こえた。

 

 

 

 

 

『甲斐。わかっていると思うが、今回は事務的な内容だ。くれぐれも無駄なことは言うなよ』

 

「了解しました、紫杏社長。ではまた後日」

 

 

『任せたぞ』という言葉を最後に電話が切れた。

“ジャジメント”社長室で佇む女性が一人。彼女の名前は“上守甲斐”。“ジャジメント”の日本支社社長にて先程の電話相手“神条紫杏”の秘書だ。今は日本支社での代理社長をしている。

社長である紫杏は“ジャジメント”本社へと急遽足を運んでおり、その詳細は秘書の甲斐でさえ知らない。

 

 

「ふ〜ん……で、私を呼び出した理由はなに?」

 

 

社長室にある対談用のソファに座る甲斐とよく似た女性がそう言った。違いがあるとすれば、髪型が全体的に逆立っているのと、社長室には場違いなカジュアルな軽装してるぐらいだ。

甲斐は一息置くと、その女性の名前を言った。「“白瀬芙喜子”」

 

 

「あなたには今日から外国人助っとして入団してもらいます」

 

 

甲斐からの意外な言葉に、白瀬は飲んでいたコーヒーをテーブルに吐き出すと、怒鳴り散らすように言った。「ふざけてる!?私は女性よ、女性!どこから見たら屈強な男性に見えるの!?」

 

 

「大丈夫です。前例に楽天には“橘みずき”が、ロッテには“早川あおい”が、ソフトバンクには“小山雅”が、そして我らベイスターズには“六道聖”と前例がありにあります。それに外国では“アンヌ”という女性選手がいるとかどうとかありますし……」

 

「聞いてみると意外といるのね。って、それ関係ない!もっと根本的な部分!あたしは野球をやったことない!」

 

「安心してください。専属トレーナーを手配してます」

 

「ひ、と、の……話を聞けぇぇえええええ!!」

 

 

 

 

 

「どうも、今度阪神でお世話になる“シルバー”の専属トレーナー“トモ・コモリー”です」

 

「外国人ですよね?その割りには日本語ペラペラ過ぎませんか?」

 

 

阪神の上役が集まる会議室。そこで小波と雨崎はオーナーの話を聞いてきた。

オーナーの話は単純なものだ。阪神に入る三人の新外国人。一人はゴメス、もう一人は“シルバー”の紹介というものだけだった。

それだけ言うとオーナーは「私事で話したいこともあるだろう」と理解できない言葉を言って会議室から早々に出て行った。

 

 

「あの〜、私事って言っても俺たち初対面です……よね?」

 

「いいえ。私と小波君は一度会ってますよ」

 

 

「そうかな?」と小波は呟く間に、雨崎が食いつくようにトモに話しかけた。「シルバーって、あのメジャーリーグ最高の女性リリーフですよね?」

 

 

「知ってるのか、優輝」

 

「寧ろ知らないの?“シルバー”はメジャーでリリーフながらも平気で二回、三回のイニングを毎日消費する伝説クラスの大投手。WHIPも1点台を維持したりと、名球会入り間違いなしの女性だよ」

 

 

「ですよね」と尋ねる優輝の声に、トモは何かに驚いた様子で「えぇ」と言った。何事かと思う優輝と小波だったが、目線の先にあるタコ焼きのポスターを見て、日本食に惹かれていたのだと気づいた。

 

 

「今度、シルバーさんが来たらみんなとタコ焼きでも……」

 

「それもいいけど……本当に知らないの?シルバーのこと。テレビとかで見ると思うけどなぁ〜」

 

 

トモの発言に小波はすぐに「開拓高校にはテレビとかなかったからなぁ」と返答した。

暫しトモは頭を悩めると、頭の電球がついたような笑顔を浮かべて小波の顔を見ながら言った。「じゃあ、新聞で見たことは?」

 

 

「新聞……あるような、ないような……」

 

 

記憶を掘り起こす小波。浮かんでくるのは、開拓高校時代の同級生の顔ばかり。次に浮かんだのは雨崎の妹と、同級生で愛称『ブサエ』の異名を持つ“木村冴花”の顔だった。

次々と思い出を思い返すなか、ふと流し目で見た新聞の記事を思い出す。見出しは『イニングイーター・シルバー』だった。

 

 

「あぁ……あぁ、あぁ!思い出した!イニングイーターの異名を持つシルバーさんのことか!」

 

「やっと思い出してもらえた……」

 

 

「でも、それって意味あるんですか?」という小波の素朴な疑問に、トモは笑って答えた。「彼女、自分の活躍が耳にしてない人物がいると傷つく人だから」

 

 

「それで調子崩されたら困るでしょ?」

 

 

「そうですね」と投手である小波は、トモに言い分に共感を覚えた。六日のローテーションで先発が回ってくるが、その間は休憩などは取りはしない。休憩というなの調整で、次の登板日までにコンディションを整える。それと同じだ。

体の調子は心身によって影響するもの。精神的であれ、肉体的であれ、それがマイナスになるとなれば途端に投手の実力は発揮されなくなってしまう。

そのためのと言うなら、投手として仲間としてそういうのは理解しないといけない。それがチームプレイとしての一環でもある。

 

 

「では、また後日お会いしましょう。シルバーは明日にでも現地で集合するようです」

 

 

それだけ言ってトモは会議室から出て行った。

同時に二人からはため息が出てきた。緊張がとれたせいか、足は妙にくたびれ、雨崎に至っては肌年齢が少し増えたのではないかと疑うぐらいやつれていた。

 

 

「……俺たち、呼ばれる意味あったのかな?」

 

「わかるか」

 

 

どっと疲れて二人は東京にある自分の実家へと帰って行った。その夜、二人は爆睡。

後日、巨人は内海、阪神は能見の二日連続投手戦。六回表までは互いに1-1の同点だったが、村田のタイムリーツーベースで3-1。能見はそこで降板、外国人助っ人として入った“シルバー”こと白瀬の活躍でピンチを凌ぐが、ゲームは動かず3-1で巨人の勝利。

しかしその日の白瀬は二回2安打ピッチングという好投で、イニングイーターとしての存在感を放つ見事なものだったのをここに記述する。




【補足コーナー】

Q.猪狩さん154キロ?
A.中身はアフロモード。


Q.あおいちゃん引退。
A.ゲームでも確か五年ぐらいで引退してたので。あおいちゃんは大好きです。


Q.レ・リーグは?
A.効率悪すぎ。


Q.紫杏が生きている!?
A.あらすじの通り、設定改変。


Q.甲斐とフッキー、奇跡の共演。
A.上記と同じ。


Q.トモ・コモリーって?
A.パワポケ12を買おうね!


Q.シルバーって?
A.パワポケ9を買おうね!


Q.新井兄「福留が悪い」
A.なんj用語。「新井が悪い」の改変。


Q.生配信されてるネット動画。
A.ニコ生。


Q.田中山太郎って誰だよ……。
A.バス停前高校のエースであり顔。作品によっては遊撃手を務める。
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