白球に込められた野球魂   作:シアン・シンジョーネ

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更新遅れてすんません!!
諸事情が重なり、遅れてしまいました!
しかも上編ではなく、終編にもなりましたし、本来挿れるはずの挿絵もなし!

超反省です!


第十二話 たった一日、されど一日【終編】

確かに芹沢の『暗黒イズナ流星落し』はホンフーをとらえた。足にはしっかりと人の感触があったし、視界の向こうでホンフーは直撃した肩に手を添えている。

 

 

「…………っ!!」

 

 

なのに何故自分のほうにダメージがあるのか、それだけが一連のすべてを矛盾させる起因だった。

足ならまだわかる。芹沢だって、たまには『暗黒イズナ流星落し』を失敗して足に痛みを患う時もある。

しかし、問題は激痛が走る部分が足ではなく『肩』だということだ。ホンフー同じ右肩、芹沢はすぐにこの現象の答えはわかったが、それは不可能だというのもすぐにわかる。

何故ならこの現象を可能にするには、ホンフーが持つ『超能力』が使えなければならないからだ。『ESPジャマー』がある、この状況で『超能力』を使うからくり。それが芹沢にはわからなかった。

 

 

「わけがわからない、と言いたげな顔ですね。私の能力はコピー……その中の一つ“カルマミラー”を使っただけですよ。もしかして『ESPジャマー』が起動中、とか思ってます?海に何度も入ったのに、機械が耐えられるとでも?」

 

「…………防水加工されてる。それにこれは“ジャジメント”が作った、その程度で壊れない」

 

 

「そうでしょうか?」と言ってホンフーは、手のひらを上にして芹沢に確認を進める。暫時、警戒をしたものの敵意がないと思った芹沢は、服の中から『ESPジャマー』を取り出し、その現状に驚いた。

ジャマーは起動していない。水が滴っているのはわかるが、この程度で動けないというのか。芹沢は何度も『ESPジャマー』のスイッチを押すが、無情にもジャマーは反応を示さない。

 

 

「やはり壊れてるじゃないですか。壊れたものは……もう必要ないでしょう」

 

 

ホンフーは芹沢からジャマーを取り上げると、すぐさま海へと放り捨てた。小さくチャポンという水を弾く音が聞こえると、その姿を海の底へと眩ました。

 

 

「『すべては小鬼のおもうがまま』……“グレムリン”の能力ですよ。機械をすべて無効にする、お分かりいただけました?」

 

「…………ジャマーを発動する前に“グレムリン”を使った?」

 

「ええ。別にドゥームチェンジと言わなくても能力は選べるんですよ、私の気分だけですから」

 

 

「やられた」それが芹沢が第一に思ったことだった。

あの時、ホンフーと芹沢が一緒に降下している最中に、自分の『超能力』を“ダークスピア”から“グレムリン”に変えたのだ。起動させる瞬間だけ“グレムリン”に変えれば、『ESPジャマー』の効力は発動することはない。

 

そしてしばらく芹沢の思うがままにされたのも、“グレムリン”を発動していたのを悟らせないため。悟らせず、芹沢の最高威力を誇る『暗黒イズナ流星落し』を“カルマミラー”で跳ね返す。

 

だから素直に芹沢の猛攻を受け続けた。だが、そのためにはホンフーが意識を持ち続けることが肝になるが、そこはまた別の『超能力』か、中国特有のそういう漢方やツボを押したと考えるのが妥当だろう。

何故なら相手は『あらゆる能力をコピーする超能力』を持つ“ハヌマーン”のような人知を超えた存在なのだから。

 

 

「しかし“カルマミラー”はダメージを返すだけですから、肩に違和感があって不便ですよ。中身のないダンボールを運んでる気分になります」

 

 

迎撃しようにも“カルマミラー”の能力で、馬鹿みたいな威力を叩き込んだ『暗黒イズナ流星落し』のダメージが芹沢の体を蝕む。

 

 

「…………まだ終わってない」

 

「そうですが、それは今ではありません。然るべき場所にて、あなた達と私は戦うでしょう」

 

「…………うっ」

 

 

激痛が芹沢の次の言葉を吐き出させない。今にも倒れてしまいそうだが、ホンフーに聞きたいことは山ほどある。

しばし痛みに耐えると、芹沢は今最も聞きたいことを率直に聞いた。

 

 

「…………何のために彼女を攫うの」

 

「あぁ、あの千羽矢という子ですか。私も最初はわかりませんでしたが……能力を見てわかりましたよ。あれは彼女が欲しがるわけだ」

 

 

『彼女』その言葉が芹沢に引っかかった。

確か“九百龍”の社長は男だったはず。ホンフーはそれの直属に近いはずなのに、出てきた言葉は女。

いったい誰のことを言っているのか。それはすぐにホンフーが答えてくれた。「“神高グループ”」

 

 

「埼玉にあるそこで再び会いましょう。今度は依頼などを抜きにして」

 

「…………今度は負けない」

 

「そうしてください。ですが、依頼主の要件なのでこれだけはさせていただきます。『私のことは存分に言っちゃってください』」

 

 

芹沢はそこでホンフーに関わることがすべて封じられた。ホンフーが最も愛用する能力“デスマス”によって。

 

 

「それではブラック……再見(サイチェン)」

 

 

時はもう遡らない。

 

 

 

………

……

 

 

 

「……その後、バイト帰りだった“ピンク”と遭遇。事情を察したピンクはブラックに小波を任せ、私達と接触……と言ったところかな?」

 

「…………より正確に言えば、ピンクが“浜野朱里”を通して“ジャジメント”に伝えた」

 

 

外で行われておる“ダークスピア”とホンフーの交戦が、埼玉アリーナを揺らす。“ダークスピア”は『自分と自分の物を落とす超能力』だが、その自分の物というのが狂っている。

 

 

「…………逃げたほうがいい」

 

「……以下にもヤバそうな雰囲気醸し出してるしね」

 

 

その自分の物というのは、私服や自ら持つ槍だけに留まらない。彼女は自らが持つ『自己暗示』というのが、人一倍強く、ほとんどの物を自分の物と思うことができる。

それゆえに支配欲も強く、自己暗示に集中するために自己中心的なところもある。

 

長く語らなければこうだ。『“ダークスピア”はホンフーとの戦いに夢中になりすぎて、周りへの配慮を忘れている可能性がある』ということだ。

さらに言えば、先ほどから揺れが激しくなる埼玉アリーナの現状から考えて、彼女は今ここを『落とそう』と思っているのかもしれない。

 

 

「…………やり過ぎ」

 

「やり過ぎで済むようなこと!?私はシルバーとあなたと違って、能力以外は普通の人間!死んじゃうから!」

 

 

激しく怒鳴り散らすトモ。それを聞いた芹沢は、無表情を少しだけ動かして驚いたような感じを見せた。「…………そうだったの?」

 

 

「……あなたって、意外と表情でわかりやすいね」

 

 

トモが呆れた口調で言うと、芹沢は「ありがとう」と意味も理解してるのか怪しいまま彼女は笑った。

「褒めてないよ」とトモは言いながら、シルバーのほうを向いて聞いた。「これからどうする?」

 

 

「……一度出ましょう。このままだとトモだけ死ぬし」

 

「随分私の命って軽いんだね、一応親友だよ?」

 

 

「興味ない」とシルバーが言うと、近くの窓から空を見落とした。

もう一度言おう。空を見落とした。

 

 

「……えー」

 

 

見上げれば抉れた地上。

 

 

「……なんで私達も『超能力』が適用されるかな〜」

 

「…………どうする?」

 

「こうなったら“ジャジメント”に協力してもらおう!私も自分の命は惜しい!」

 

 

時代遅れな携帯電話から近未来的『超能力』を呼ぼうとするトモ。ダイヤルを一つ押したところで、芹沢から手を掴まれて操作を止められた。

 

 

「…………ダメ。それに助けてくれる」

 

「誰が!?こんな地球の重力に反して落ちてる現象から誰が助けてくれるの!?“ワームホール”でも居なきゃ無理な状況を!?」

 

 

そしてついに三人は空を見上げ、地上を見下ろした。

 

 

 

 

 

「これは中々気を使いますね……!埼玉アリーナを持ち上げるだけでここまで行くとは……!」

 

 

凄まじい衝突音とともに、残骸となって果てた埼玉アリーナ。かつての面影は残さず、剥き出しとなった鉄柱とスタンドライト。

それを見据えるものが二人。ホンフーと“ダークスピア”が、埼玉アリーナ跡地にて互いの武器を構えた。

 

 

「ウチの『超能力』はそんな甘いもんじゃあらへん……」

 

「ちょっと。私を放っておいて話を進ませる気?」

 

 

傷だらけの“ダークスピア”に声を掛けたものがいた。“ダークスピア”が降り向くと、そこには芹沢より少し背がある女の子がいた。

南瓜のようにふっくらとした暗い金髪、耳のところもマシュマロのように軽く髪を巻いている。メガネを掛けた童顔は、ちょっと大人びようと無理してる姿にも見えなくもない。

服装は薄汚れた黒いジーパンと深緑のパーカー。中にシャツを着込んでいるが、その風格からどれほど着込んだのか考えさせられる。そんな女の子がバレエにでも使われそうな桃色のリボンを持っているのが、唯一の違和感なのだが。

 

 

「あなたは“浜野朱里”……どうしてここに?」

 

 

芹沢の味方であり、また“ダークスピア”の味方でもある浜野がそこにはいた。

 

 

「“ジャジメント”に協力しろ、ってピンクが言うくらいだからね……わざわざ自腹切って埼玉旅行と言ったところかしら」

 

「ですが……あなた一人が増えた程度で私を凌げるとでも……」

 

「…………増えたのは一人じゃない」

 

 

この声、息遣い、間違いなく埼玉アリーナの中でシルバーとトモと共に散った芹沢のものだった。

いったいどこから?そう思って辺りを見渡すと、芹沢はホンフーのすぐ木の下にいた。いるのだが、その妙な光景にホンフーよりも“ダークスピア”が腹を抱えて笑い出した。「な、なんやあれ!おかしぃ〜!!」

 

 

「あの……一つ聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「聞かないで。我ながら不恰好な状態だから……」

 

 

なんと、芹沢だけでなくシルバーもトモもそこにはいた。ただし木にある枝の下で、芋虫状に浜野が使っていた桃色のリボン垂れ下げられているのが、非常におかしな光景だが。

トモが「頭ぁ……頭がぁ……」と貧血を訴えるが、気にせずにシルバーと芹沢はリボンを切って地面に足を着く。

これで芹沢、浜野、シルバー、“ダークスピア”の四人がホンフーの前に立ちはだかる。

少々分が悪いとホンフーは感じたのだろう、すぐに「ドゥームチェンジ」と言うと、その場から姿を消した。

 

 

「っ……!逃げられた」

 

「あら“ワームホール”に近い『超能力』やな。自分が行ったことのある、または見たことあるところに移動することができる」

 

 

「もしくは」と“ダークスピア”が前置きして言った。「ウチのリーダーの能力か」

 

 

「大丈夫よ、“カズ”……近くにピンクを置いてるから。姿を消しただけなら彼女が迎撃する」

 

「おぉ〜、さすがは相方や。ウチの尻拭いもしてくれて、ありがたやありがたや」

 

 

カズと呼ばれた“ダークスピア”は剽軽な態度をとって、浜野と話す。芹沢も不思議と楽しそうな顔をしており、隣にいるシルバーに至っては普通に溶け込んでいる。

 

 

「お、降ろして……」

 

 

トモの存在を思い出したところで、正義の味方はその場から解散。夜の速報ニュースにて『埼玉スーパーアリーナ』の特集が組まれたが、みんなの悲痛な声は「ラブラブビッグバ〜ン!」と「奈々様ぁああ!!」の脂肪率が高めなのがほとんどだった。

 

 

 

………

……

 

 

 

「はぁ……つまり、俺をそのホンフーって奴と関わらせたくないがために、シルバーさんも揃ってドッキリ大会ってこと?」

 

 

時刻は既に二十五時だ。深夜アニメ『装甲車バトルディッガー』とか、最近好評のホラーアニメ『怪奇ハタ人間』などが放送され、しかも再放送枠として『スペースキャプテン』がやっていたりと様々だ。

そんな時間帯に小波はネットカフェで芹沢達と話をしていた。いるのは芹沢、シルバー、トモ、それに浜野、ミーナの五人だ。

 

 

「ええ。ホンフーは強敵よ。私達が立ち向かっても策無しならやられるでしょうね」

 

「そこはどうでもいい!じゃあ、何だったんだよ!ミーナさんの最もらしい説明とか……シルバーさんが“ジャジメント”側とかぁ!!」

 

「あぁ、それ事実」

 

 

あまりに平然と答えたシルバーに、思わず小波は「えっ」とつまらない声を発した。芹沢は「事実」とだけ言って、ホンフーとシルバーとの戦いのせいか、疲れた顔で横になった。

 

 

「私は“ジャジメント”所属の戦闘員。シルバーは任務上のもので、本名は“白瀬芙喜子”」

 

「当然私も“ジャジメント”関係者。“トモ•コモリー”は偽名で、本名は“森友子”!」

 

「ちなみに私も“ジャジメント”関係者。名前は浜野朱里」

 

「この場にいませんけど、ヒーローであるカズこと“茨城和那”さんも“ジャジメント”所属です」

 

 

今度はわけもわからないまま進行する。小波はもう呆れるしかなかった。

実はヒーローの大半は、目の敵にしていた“ジャジメント”だったというのは気が重い。というか、千羽矢が攫われた恨み云々をすべて白瀬にぶつけていた。今後はどこにそれをぶつければいいのか、それに悩む小波だったが、今は目の前にいる自体に怒りをぶつけた。

 

 

「結局、千羽矢はどこなんですかぁ!!それに“ジャジメント”とあなた達の関係性って!?それに白瀬さんは、何のために阪神にいるんですか!!」

 

「順を追って説明します。まず千羽矢さんはどこにいるか?」

 

 

激情に振るいあげ怒鳴り散らした小波を宥めるように、トモこと友子は優しく言った。

 

 

「それは芹沢さんから教えていただきました。彼女は今、ここ埼玉にある“神高グループ”の関係施設で拘束されているかと」

 

 

ひとまず千羽矢の詳細が聞けただけで心底安心する小波。それだけで足の力が抜けて、崩れ落ちるように椅子に座った。

 

 

「第二の質問。私達と“ジャジメント”の関係性……。一言で言えば抑止力」

 

 

はぐらかすように浜野は言う。

 

 

「最後の質問。私が何故阪神にいるか……?それは後々わかる」

 

 

白瀬もまたはぐらかして言った。

どうにも釈然としない小波だったが、千羽矢の情報だけでもう精神的に安心して聞き返そうとは思えなかった。

それに寝不足や精神的疲労で体はガタガタ。疲れもあって小波は聞いてすぐに寝に入った。

 

 

「……彼にこれ以上闇の世界に触れさせるわけにはいかない」

 

 

浜野が重く口を開くと、芹沢は頷きながら言った。「彼女を取り戻したらどうする?」

 

 

「まぁ、最低でも記憶は消さないとね」

 

 

ごく当たり前のように言う残酷なことを言う浜野だったが、彼女はこの場の誰よりも先を見ていた。

今回の一連の事件は千羽矢とホンフーが密接に関わってきている。答えはもう出かかっている。だが、一つだけ気になり続けることがあった。

 

何か、一つ忘れていると。




【補足コーナー】


Q.カルマミラーって?
A.ダメージを跳ね返す超能力。ダメージだけを跳ね返すのがミソ。


Q.グレムリンって?
A.機械を発動させない超能力。ESPジャマーを発動する前に発動することで、ESPジャマーの発動を止めた。


Q.神高グループだと!?
A.今回の事件は実はパワプロシリーズの組織が絡んできます。神高グループはパワプロ8より、伝説最強戦や短気あおいちゃん150キロ相当の珍現象を生み出したりと名作。欠点は彼女が作れない。


Q.バイト帰りのピンク。
A.生きるにはお金も必要。


Q.芹沢VS白瀬。芹沢は疲労してるのに互角?
A.前回の話にもありますが、白瀬はある事態のせいで今日はグロッキー状態です。おかげで二人は絶不調。互いに五割の力しか出してない設定。


Q.埼玉スーパーアリーナァァアアアアア!!
A.後日“ジャジメント”が直してくれました。


Q.浜野朱里って?
A.パワポケ10より登場。パワポケ11では彼女候補でもある。性格はキツイが、原作でのプレイで彼女の境遇に笑いと愛苦しさを持ったら、私とお友達。


Q.“ワームホール”って?
A.パワポケ11より登場。能力は書かれてる通り。実は今のところどこにも本人を登場させる気がないという寂しい立ち位置。今回ホンフーが使ったのとは別。


Q.ラブラブビッグバ〜ン!
A.ラブラブビッグバ〜ン!


Q.奈々様ぁぁぁああああああ!!
A.某紅白の方。


Q.深夜アニメのタイトル……。
A.見ての通り裏サクセスだらけ。


Q.ヒーロー達の身長って?
A.完全脳内設定です。和那は195cm、芹沢は151cm、浜野は159cm、ピンクは156cmです。ミーナは163cmという感じ。参考基準にあおいちゃんは167cm。あおいちゃんは公式です。
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