白球に込められた野球魂   作:シアン・シンジョーネ

18 / 21
死んだと思った? 残念、生きてたよ!

いやぁ、更新が長らく止まってしまってすいません。
理由としては、前回の更新でゴタゴタが重なって(文化祭やらテストやら社会見学とかバイトのキャンペーンとか)とか、単純にやる時間と、それに伴う野球愛の沈静化が原因です。

でも、ようやく片付いてパワプロのアプリやり出したらフツフツとやる気が滲み出て……。
書きたくなったけど、設定がいちいち思い出せないからメモ帳引っ張り出して内容の把握と、持ってるパワポケ全部を徹底的にやり直してました。

以上、言い訳でした。
実際はこの合間合間にときメモやらグラディウス、それに遊戯王とKONAMI製品のゲームやってました。
今までと違って気まま更新になると思いますが、それでもお付き合いください。


第十七話 オレタチノタタカイ

試合はワンアウトのまま五番打者

急な交代にも怯むことなく、小波はマウンドを踏み込む。

血だらけで意識朦朧。しかし全力で投げるその様は、本能をむき出しにした獅子の牙にも見えなくもない。

抉りにえぐって、残り二人を全力ストレート六球で三振をもぎ取った。

 

 

「っしゃぁああ!!オラっ!!」

 

 

野獣のごとき雄叫びをあげると、小波はマウンドを降りる。フラつく足取りで小波はベンチに降りると、意外な人物が早急に手当てを始めた。

石のようにゴツゴツと鍛えられた男らしい手。本物の肉体美として磨き上げられたであろう筋肉を持つ洗谷が包帯やらで応急処置をとる。

 

 

「すまないな、洗谷」

 

「心配するな監督。こういうことにもなるだろうと、薄々感づいてはいた」

 

 

「ほう」と紫杏は眉を細めて見渡す。最初に目があったのは“ダークスピア”こと茨木和那だった。

和那は背もたれ代わりにしていた特注の槍から離れると、生まれ変わったBH団を睨みながら言った。「紫杏。『具現化』やで。ウチらがマトモにやりあえるにもちと荷が重くあらへん?」

 

 

「わかっている。今考えてるところだ」

 

 

相手は神高グループだ。何がきてもいいように身構えていたものの、さすがにこれは読めなかった。

神高自身すら淡きふためく様子からして、これは本人で起こしたものではないのが察せる。

だとしたらーー。そこで紫杏のポケットが着メロの軽快な音と共に震える。電話のようで、そこに表示される発信者の名前は犬井と表示されてる。

しばし溜めて五回目のコールで通話ボタンを押すと、紫杏は冷徹な瞳を覗かせて低い声で聞く。「なんだ」

 

 

『神高グループの裏には、予想通りデウエスがいた』

 

 

紫杏は舌打ちをして、頭を掻き毟る。「やはりあいつか」

 

 

「ちょっと紫杏、今は共闘中よ。電話の内容はみんなに伝えて」

 

「それもそうだな」

 

 

浜野の言葉に、紫杏は同意を示してスマートフォンをベンチに座るみんなに向ける。画面の設定を変更し、スピーカー状態にすると、電話越しから犬井が『いきなりですまないな』と、まず謝罪の言葉を漏らす。

 

 

『まずここで何があって、どういう経緯でここに来させたか。そしてその黒幕……手短めで言えば、黒幕はデウエスだった』

 

「そんな……!?」

 

 

友子は記憶にある人物の名を言われて、動揺を隠せなかった。

意味がわからない。“ジャジメント”の一員である彼女が、同じく“ジャジメント”の位置である紫杏を含めた私たちをこんな危険な場所に誘導した?

それを言及しようと紫杏から強奪する勢いで近づくが、武力交渉で奪い取る前に犬井は経緯を語り始めた。

 

神高グループすら利用したデウエスの目的。

デウエスの一言一句をその場にいる全員は聞いて、最終的には各自冷静になって犬井の話しを耳を傾けていた。

 

 

『……以上がデウエスの目的だと思われる。純粋なしあわせに対する願いと、あいつ自身の狂気が今回のように大勢を巻き込んだ』

 

「まぁ、理解はできなくはないわね。誰だってなりたいものになれる力。夢のようだわ」

 

 

白瀬は呆れた口調で話し始めた。そこには関心もなければ、感動もないただの感想としてデウエスのことを言う。

 

 

「普通に考えればアウトもアウト。ただでさえ、神高グループの伝説選手のクローン技術はレベルが高いのに、それ以上?しかも人工物でしょ?」

 

「武力制圧されてる国に、この技術が提供されたら戦争の火種どころじゃなくなるのが目に見えている」

 

「だろうな。私もそう思った」

 

 

白瀬と紫杏が話し合うなか、未だ話の内容が五割しか把握できてない小波は、この事態に一番詳しそうな甲斐に聞いてみた。

あっさり返ってきた答えは「浜野が言っていた」の一言だけだった。

 

 

「……抑止力のことか?」

 

「……よくわかったわね。ここまでの話で」

 

 

珍しく関心の態度を見せた浜野は、言葉とは裏腹にため息をつきながら言った。「言いたくはないんだけどね」

 

 

「ここまで知られたら話した方が良さそう。フォローお願いねリーダー、カズ」

 

「よっしゃ、任せとけ」

 

「……わかった」

 

 

芹沢と和那は浜野の頼みにすぐに応じると、一回深呼吸をして浜野は言う。

 

 

「あんた、アイアンマンとかスパイダーマンとかは知ってるよね?」

 

「いやぁ、そりゃ知ってるけど」

 

 

いきなりの映画の話に、小波は戸惑いながらも答えた。

 

 

「私たちはそういう物なのよ。超人的なパワーと能力を持つ怪物……だけど、これは先天性のものじゃない」

 

「まぁ、細かいことを抜きに言えば、後付け設定ちゅうことや」

 

「そういうことができるということは、どこかしらにそれを実現させる科学力は存在する。そして私とカズは元は“ジャジメント”所属……」

 

 

小波はその言い回しに、すぐさま気づいた。実現させる科学力を持つのが“ジャジメント”なのだと。

それを口にすると、浜野ではなく紫杏が「その通り」と肯定した。

 

 

「私自身はそこまで関与したことはないが、“ジャジメント”は今や世界トップの企業。その背景には、その科学力を駆使した『戦争ビジネス』があるんだ」

 

「戦争ビジネス……!?」

 

 

とてもマトモとは思えない言葉だ。

“ジャジメント”には深い闇があると聞いたことはあるが、その一環にこんな背景があるとは予測することはできなかった。

 

 

「そう。戦争を代行するんだ。圧倒的軍事力なんか関係ない。私たち“ジャジメント”には、それを薙ぎ倒す“超能力”がある」

 

 

それは疑惑にはならず、小波の中で事実だとすぐにわかった。

くだらないこととはいえ、桃井に百連敗ジャンケンのこともあり、それに似た力は既に存在しているのはもう知っている。

 

 

「だがな、そんな力が一つの会社にしかないとなれば、いつ“ジャジメント”が全世界を敵に回しても不思議じゃない」

 

「…………そこで私たちの出番」

 

 

ここで小波は抑止力の意味を把握する。

その為のヒーローなのだと。

 

 

「今回は共闘してるが、実際は互いににらみ合ったままだ。ヒーローの実力は、私たち“ジャジメント”でも荷が重い連中ばかりだからな」

 

 

「まぁ、それよりも」とそこで紫杏は一区切りし、浜野に向けて言った。「三番、浜野」

 

 

「は……?」

 

「仲間に感謝しとけ。私たちの話のために、何十球もファールにしてたぞ」

 

 

そういえば今は試合中だ。小波達がいかに話し合っていようと、あのBHと刺繍されてる連中は野球を止めることはない。

じゃあ、ここまで長い間話し合えたのは、誰かが野球のルール上で問題ない方法で遅延しといてくれたのだ。

おそるおそるベンチの入り口を見ると、バットを杖に這いずる桃井の姿があった。

 

 

「あいつの球……軌道おかしいって。私じゃなかったら、確実に三球三振になってたわよ!」

 

 

努力して投手であるアスワンのことを教えてくれようとしてくれたのだろうが、生憎と誰もが話に夢中で聞いてなかったと思う。

紫杏以外のみんな桃井から申し訳なさそうに目を離して、各々自分の世界に浸る。マスク越しで何考えてるかわからないレッドすらも桃井から目を合わせなかった。

 

 

「お、おつかれ」

 

 

小波からはその一言が伝えることができず、浜野は「ありがとう」の言葉を伝えて打席に立つ。

そしてぎこちなくも、しっかりと構えた打撃フォームを構えるが、次の瞬間驚愕する。

 

 

『ストライクワン』

 

 

電脳に沈んだような景色に残された測定器。無情のストライク判定は、浜野の目を疑うには十分だった。

そして電光掲示板に表示される球速。165キロという大谷すら超える豪速球には、もはや人の為せるものかとすら思う。

 

それは小波の神経を大きく揺さぶった。

165キロの豪速球。同じ豪速球だが、大谷とは何もかも遥かに違う。

ノビも球威なんか違いすぎる。何より違うのは、出処が分かりづらい研ぎ澄まされた投球フォームだ。オーバースローで投げてはいるが、まるで何かの癖を隠すようにその動作には幾分かの重みがある。それが出所をわからなくさせた。

 

 

 

「驚くのはまだ早いから」

 

 

桃井の言葉の意味はすぐさま現実となる。

第二球、大ぶりの投球。一度めとは違い、アンダースローから転じ、そこから飛び上がるようにオーバースローに変わる。そこから放たれた投球も飛び上がるように打者に向かい、誰もがボールゾーンと思うだろう。しかし、そこからがこのアスワンという男しかできない魔球だった。

いきなり捻じ曲がったように不規則な軌道でボールゾーンからストライクゾーンへと叩き落とされる。

誰もが目を疑った。今のはなんだ?と。

ストライクかボールか判断する測定器すら、十数秒沈黙してようやくコールした。『ストライクツー』

 

 

「ファントムだ……!」

 

 

小波はボロボロの体を起き上がらせて言う。

昔、見たことがある。一度だけあのフォームを。

それは雨崎が大好きだった漫画『アストロ球団』というのに出てくる。

全巻持ってると豪語する雨崎と一緒にその本を読み進め、その主人公『宇野球一』はとんでも投法を身につけて投げるシーンがある。

 

それが先ほど小波は言ったファントムだった。いくつかある投法と変化球から放たれる一つの魔球、その名は『ファントム大魔球』

 

 

「気をつけろっ!!今のは『ファントム大魔球』だ!他に『スカイラブ投法』や『七色の変化球』……それに『三段ドロップ』も使うかもしれない!!」

 

「……ふ〜ん。わかった」

 

 

「おい!」と小波は怒鳴る。浜野はまるで聞く気がないみたいで、アスワンこと宇野球一を見つめる。

 

あいつ、アスワンがどれほどヤバいのかわかっているのか?そう思う小波の肩に、和那の手が置かれた。「大丈夫や」

 

 

「な、紫杏」

 

「そうだな。それだけあれば浜野には攻略できる」

 

 

紫杏の意味深な言葉とともに、アスワンは投球モーションに移った。

右手上げ、右足をあげる。そこから大きく一回転するというマヌケな絵が見えるが、あれは小波が恐れる『スカイラブ投法』の構えだ。常人では打ってもバットを木っ端微塵にされる殺人威力を持つ投法。

 

 

「浜野、避けろ!当てなくていい!それは試合中に二回までが限界の投球だ!」

 

 

ここで当てても当てなくても、ストライクをもぎ取るのに決まってる。だったら見逃して『スカイラブ投法』の貴重な一回を安全にやり過ごしたほうがいい。

しかし浜野は打った。バットは予想通り粉々になるが、そこからは違う。高くゆらりとうち進む打球は、一塁線ギリギリのところで観客席に入る。

ホームランだ。小波は驚き、紫杏は自慢げに言う。「大丈夫だと言ったろ」

 

 

「あいつはその『アストロ球団』を読破している。常人では無理でも、超人のこいつらならいくらでも打開策はある」

 

 

「だいだいバレバレの投球フォームで何投げるかはわかるからな」という紫杏。

納得する小波だったが、最後に心の中で呟く。「それでも無理だろ」と。

 

 

 

 

 

「あれは……?」

 

 

一方、犬井はデウエスから逃げるように通路を走っていた。電話から少しして、デウエスが勝負を吹っかけてきたのだ。

勝負内容は至って簡単。『ヒーローとBHのどちらが勝つか』というものだ。

どっちがどっちに賭けたかは説明せずともわかるであろう。だが、犬井はすぐに考えた。「このままだとヒーローはBHには勝てない」と。

 

そのためには決定的なキーカードが足りない。それを何とかするために、犬井は走り続けていた。

しかし、道中で気づく。通路の奥に進むにつれて積もる死骸の山。切り裂かれたように二つに別れた体、ミンチ状になった肉塊、骨すら剥き出しに崩れる異様な光景は、常人なら吐き気を起こすだろう。

その中に一つ、泣き崩れる少女の姿があった。

いや、少女といえるのだろうか。自らの背から艶めかしい触手を床へと這い蹲る様は、とてもじゃないが人とは思わせない。十人十人が化け物と答えるだろう。

 

 

「貴様、名はなんという」

 

 

犬井は刃を突きつけて問う。

 

 

「……あんた神高?」

 

「質問の意図がわからないな。それにこっちも質問も答えろ」

 

「いいから答えて!!」

 

 

少女、いや千羽矢は剣幕な表情で犬井に詰め寄る。武器を突きつけられようともお構いなしだ。

 

 

「……違うとは言っておく。だとしても、正義の味方ではないが」

 

「そう……だったら、今すぐ彼を助けて!」

 

 

言葉の脈絡なく千羽矢は言う。「このままじゃあ、私のせいで彼の人生を奪っちゃうの!!」

 

 

「待て。とりあえず落ち着け」

 

 

犬井は冷静に聞く。「彼とは誰のことだ?小波のことか?」

その問いに千羽矢は驚きを顔に出すが、すぐに目にためて泣きじゃくる。「お願い、助けて」

 

 

「私には何もできない!小波を助けられるなら、どうか助けて!」

 

 

「何でもするから」という千羽矢の言葉まで聞き、犬井は制すように言う。「わかった。それ以上言うな」

 

 

「だとしたらこちらの頼みごとを二つ引き受けてほしい」

 

 

怪訝な顔など一切せず、何でも受け入れる覚悟ある瞳で千羽矢は犬井を見つめる。

 

 

「一つ、この施設のどこかで中央サーバーは見たか?」

 

「私がそんなことわかるわけないでしょ。それに、ここら一帯全部ぶっ壊したんだから、わかったとしても残ってるかどうか……」

 

 

いや、デウエスが無傷でこの大企業『神高グループ』を管理してる時点で、ここのサーバーは無事なはずだ。

千羽矢の証言を逆に考えれば、ここら一帯には無いと考えるのが自然だ。

犬井は「わかった」といって、二つ目の頼むごとをする。

 

 

「お前は携帯を持っているか?」

 

 

いきなり意味がわからない事を聞かれたが、千羽矢は素直に言う。「あるわよ。逃げるついでに持ち出してきたから」

そう言って千羽矢は携帯を差し出す。もちろん現代の主流スマートフォンだ。

 

 

「……よし、これならやれる」

 

「言ってる意味が全然わからない」

 

「……お前のがソフトバンク製で良かったってことだ」

 

 

珍しく犬井は笑うと、そこで初めて千羽矢の名を聞く。「お前の名前は?」

犬井はとっくに気づいている。この少女が、小波が探し求める雨崎千羽矢だということに。

 

 

「雨崎千羽矢」

 

「……さっき何もできないといったな。だが、お前のおかげでこの窮地を脱することができそうだ」




【補足コーナー】


Q.BHってなに?
A.パワポケ14のラスボス、『ブラックホールズ』のこと。全員揃って超得能持ちで、エグい実力を持ってる。特に描写されてる通り、アスワンの変化球と球速が場合によるとエグすぎて勝てない。ここである人物のルートでやると、もっと勝てない。たぶん、パワプロを入れても全シリーズ最強チーム。


Q.途中でクローン云々の話が打ち切られたが?
A.紫杏が有耶無耶にしたけど、まぁそんな技術ができちゃったらパワーバランス無くして全世界戦争し放題だよね。ってこと。


Q.ピンク頑張った。
A.なお意味がなかったもよう。


Q.アスワン強くね?
A.アスワンが強いというか、アストロ球団がおかしい。


Q.アストロ球団って?
A.1972年に作られた超次元野球マンガ。やってることがイナイレとキャプテン翼、それにパワポケのフリーダム差を合わせて二乗にしたようなとんでもなさがある。ちなみにこの漫画を探すのにも時間を使ったのも遅れた原因。結局近辺にはどこにも無かったが。


Q.アスワンこと『宇野球一』って?
A.アスワン球団の主人公。エース兼四番と猪狩的存在。意味不明な投球から放つ白球は、とても人間的じゃないし、ルールに沿ってない。ジャッジー!(小並感)


Q.犬井と千羽矢合流。その打開策とは?
A.いずれわかるさ、いずれな。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。