白球に込められた野球魂   作:シアン・シンジョーネ

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おっ、みずカスーッ!


第三話 挑戦の時!

五月の上旬。まだ春の名残が残る季節だが、甲子園ではギラつくように太陽の暑さが猛威を振るっていた。

今日は小波が待ちに待った楽天戦。颯斗との初対峙する記念すべき日でもある。

試合の四時間前からブルペンで準備体操として小波は雨崎と投げ込む。自慢の高速スライダーはいつにも増してキレがあり、体感からして140キロ台ではないかと小波は思う。

続いてカーブ。落ち気味のカーブなどで、どちらかといえばドロップに分類させられるような変化球だが、変化としては良くても投げる姿勢に違和感を持つのが最大の弱点だ。ボールのリリースで球種が判断されたらたまったものではない。今回は控えるべきだと小波は考える。

 

 

「五十球投げたし休憩にしよう、小波」

 

「そうしたほうがいいよ〜。結構腕が大変そうだし」

 

 

ブルペンから聞こえた聞き覚えのない声に、小波と雨崎は同時に振り返る。楽天の帽子とジャージ。髪型は動きやすいよう水色のお下げとして纏められている。

 

 

「橘さん!」

 

 

その姿はまごうことなき、プロ野球史上二番目の女性投手“橘みずき”だった。幼そうな外見とは裏腹に、目測で160はまずあるのが伺える。何よりも尻の大きさが冴花と引けを取らないのが、小波が一番驚いたことだった。

 

 

「私のことは親しみを込めてみずきって呼んでいいよ。そういう柄でもないのは自分でもわかってるし」

 

「じゃあ、みずきさん」

 

「……さんもつけなくていいんだけど、まぁいいや。いやぁ、噂は本当だね。文句無しの速球に一級品の高速スライダー。うんうん、普通だったら名投手だろうね」

 

 

ブルペンのマウンドに上がると、そのままみずきはジャージを脱いで、楽天のユニフォームを露わにさせる。

 

 

「でもさ。それ、手の後遺症避けようと肘で無理してるよね」

 

 

貫くのようなみずきの言葉に、小波はただ呆然とし、捕手として受けていた雨崎はただ沈黙する。

二人の反応に「やっぱりか」と言って、サイドスローでの投球練習を始めた。

 

 

「どうしてわかったんですか?小波の怪我は球団も知っていますが、後遺症で無理な変化球はできないって……」

 

「…………似てるの、アイツに」

 

 

悲しそうに言うみずきの姿は、いつもテレビで見る天真爛漫で気分屋のみずき投手ではなく、一人の女性として見せる悲しい横顔だった。

 

 

「速球投げれて、プロに通じるスライダー。見覚えがありすぎてね」

 

「……その人はどうしたんですか」

 

「元々実力があったから、高校の時から酷使の連続。酷使の続きで故障した……。投手としては絶望的な肘の怪我を」

 

 

眈々と言うみずきの感情は、どれほど辛いものだろうか。小波も一度選手生命危うしな大怪我を負った。手に握ったボールの感触が伝わらないぐらいに弱く、弱って行った。

今では利き腕の左は元通りとなり、普通にやる分には問題ないレベルまでには戻ったが、戻らなければどうなっていた?

それが今話しているみずきの話。もしもの話。自分があのまま選手生命を絶っていた場合の最悪のお話だ。

 

 

「彼の腕にもう栄光の二文字はなかった。ただのボロクズとかして、様々な高校から言われてたよ。『スライダーのおまけ』って。どんなに頑張っても……彼の腕には最悪の一言が付きまとった。『スライダーのおまけ』の言葉が嫌なほどに」

 

 

『スライダーのおまけ』その言葉の重みに、二人は口を閉じて何度も意味を唱える。単純に要約すれば、スライダーが無ければゴミなのだ。今までそのスライダーを投げてきた腕もゴミ、一級品にさせるために積み上げた労力と時間もゴミ、治そうと努力する姿さえもゴミ。スライダーが無ければ何もなかった彼は、スライダーを治そうとする心さえも否定されるのが安易に想像できる。

 

 

「……彼は今どうしてますか」

 

「えっ。普通にパシフィックで去年三冠王になったけど。三冠の本塁打で思い出したけど、バレンティンの60本はもうキモいよ。二本も打たれるなんて屈辱的」

 

 

余りにも呆気らかんな変貌に、小波と雨崎はギャグ漫画のように頭から転んだ。

それにみずきは軽く笑うと、誰もいない打席に向かって投球練習をこなし続ける。

 

 

「ていうか、去年の三冠王ってことは、そのアイツとか彼って西武の“友沢亮”選手のことですよね!?」

 

「うん、そだよ。パワスポや読売新聞で記載されたと思うだけど……知らない?」

 

 

「知ってるか?」という小波の問いかけに、雨崎は「知らない」と答える。

一連の行動に、みずきは「マイナーなのかぁ」と言いながらピッチングを続ける。

 

 

「まぁ、そういう感じだから。無理して投げ続けたら、何もかも否定されるよ。逆襲球児だか何だか知らないけど、アイツ以外にアイツの人生を歩める人いないから」

 

 

それは投手として終わったら、そこで野球人生終わりだと言われてるのと同じだ。

それを理解してる小波は「はい」と力強く答えて、ブルペンのベンチで一呼吸おく。

 

 

「あと勝手に持ち玉見てごめんね。お詫びといってはなん……だけど!!」

 

 

力強い踏み込みと、唸るような腕と腰の振り。サイドスローから投げられる抉るような投球。その投球は次第に利き腕と同じ方向に早く、そして鋭く雨崎のミットへと収まった。

 

 

「よく捕ったな……」

 

「いや……今のはキャッチャーミットにボールを入れてきたんだ。しかもスライダーで」

 

 

雨崎の言葉に小波は驚きを隠せなかった。

普通、ピッチャーのボールはキャッチャーとのサインの末にあらかじめコースと球種を教えて投げるもの。どれか一つ欠けたらまず捕れないし、欠けていなくても捕れない時など頻繁にある。

 

 

「これが今年の私の秘密兵器。憎たらしいアイツに頭下げて、二年かけて磨き上げた私だけのスライダー……」

 

 

それをみずきはどうした。キャッチャーとの意思を合わせずに、ただミットを垂れ下げていた雨崎に向かってスライダーを入れた。

あまりにも正確無比なコントロール。それで小波は思い出した。去年から続く橘みずきの信じられない記録を。

 

 

「そういえば……三年連続無四球でしたね」

 

「うん。中継ぎだし、今まで弱小と呼ばれた楽天だから話題にならなかったけどね。記録も地味だし」

 

 

ケラケラと笑うが、みずきのしでかしたことは普通ではない。むしろ誇るべき記録だ。

四球がないだけで、どれほど投手として価値があるか。自らピンチを招くことがないのだから、心境の持ちようが楽になる。四球になったらまずい、という考えはみずきの頭にはない。無四球記録を誇る彼女に、四球という二文字は存在しない。

 

 

「それじゃあ、ナイトゲームでまた。君との投手戦楽しみにしてるよ」

 

 

最後に「バイバイ」と言って、みずきはブルペンから消えて行った。

予想外の技術に雨崎は焦りが募る。今日の楽天の先発はみずきだ。針の穴を通すのではなく、もはや迂回させる次元にまで達した投球は際そう脅威以外の何物でもない。

しかも二年で身につけたスライダー。それに決め球となるシンカー方向の魔球『クレッセントムーン』とスクリューの使い分け。サイドスローから投げられる投球は、出処が難しく打撃のタイミングが合わないというのは、よく聞く話だ。

 

 

「任せたぞ、優輝。今回の勝負は……お前がカギだ」

 

「わかってるよ……俺が打つ!」

 

 

………

……

 

 

『さぁ、交流戦初日。ここ甲子園では、伝統ある“阪神タイガース”と日本一となった“楽天ゴールデン•イーグルス”との試合です。阪神の先発は小波、楽天の先発は橘みずきと先発歴一年目の二人が激突です。今回、解説には元“オオガミ”会長、“ジャジメント”では外交責任者として勤めている大神会長に来てくれました』

 

『どうも大神博之です。高校球児として甲子園は憧れの舞台だったからな〜……こう見てみると、親の都合で大学に行かずに会社についたのを後悔しそうだよ』

 

 

元社長とあろうもののネガティブ発言に、実況担当は渇いた笑いを浮かべながら雑談を話し始めた。

 

 

「いやぁ、おニイがチケットくれてよかったよ。」

 

「でも、部活サボってよかったの?私は大学生だけど、千羽矢はまだ混黒三年生でしょ」

 

「もう学校でしたいことないし、別にいいよ。入った理由なんて小波とおニイ、それにモッチーと野球するためだから」

 

 

甲子園の一塁アルプス席。そこには雨崎の妹、千羽矢と先輩である木村冴花が球場を眺めていた。

近くに売り子が来たので、千羽矢はお金を出して飲み物とつまみを購入。お腹が空いていたのか、早速つまみに手を出し始めた。

 

 

『そろそろ始球式が始まります。今回お越しくださったのは、現在大人気放映中『怪盗レッドローズ』より“紺野美空”さん!』

 

「月夜に散り行く赤いバラ!怪盗レッドローズ参上!」

 

「うわっ……恥ずかしい格好」

 

「ちょっとお姉ちゃん!!堂々と恥ずかしいことやらないで!」

 

「えっ、売り子のお姉さんなのアレ?」

 

 

先ほど購買した売り子が吠えたので、隣にいた千羽矢は若干引き気味に尋ねた。売り子はしばし思いつめると、恥ずかしそうに「はい」と答える。

 

 

「あっ、私は球場スタッフの“紺野美崎”って言います。一応、彼女の妹です」

 

「美崎ちゃん。せっかく手伝ってるだから、ちゃんとして」

 

 

美崎が照れ隠しのように頬を緩ませてる時に、別の売り子が千羽矢と冴花の前に現れる。美崎の明るい紺色とは逆で、純度の高い深い青の髪色の女性だ。

背丈はすらっと高く顔は愛嬌があり、可愛さと美しさをマッチさせたような風貌をしている。その姿に、冴花や千羽矢だけにとどまらず、周りの観客も一斉に驚いた。

 

 

「あなた、名俳優の“温水ちよ”さんじゃないですか!?」

 

「あはは……やっぱり知ってる人はいるか」

 

「はい!あたし、ちよさんのファンなんです!見ましたよ、アカデミー賞をとったファンタジー映画『銀の盾』!マルチナ役として名演技……本当に痺れました!それからそれから……!!」

 

 

千羽矢から言われる数々の経歴に、ちよは恥ずかしそうに顔を俯かせた。そこまで来て、千羽矢は己の失礼を詫びようとしたが、もう遅い。

周りから続々と観客が近寄って来ては色紙を掲げる。こう見えて『銀の盾』でアカデミー助演女優賞を取るほどの実力の持ち主だ。有名でないわけがない。

いまや世界の女優として活躍するちよの姿は、若者の憧れとなり、また人々の注目の的だ。こうなるのは目に見えていたはずだ。

 

 

「はいはい、先着五十人まで〜。後は試合後にサインするから」

 

 

そうなるのもわかっていたちよは、落ち着いた態度で懐からサインペンを取り出す。どうやら彼女にとって必需品のようだ。

 

 

「あっ、失礼なのはわかりますけど……私のもお願いできます?」

 

「いいよ。ファンは大切にしないと」

 

 

………

……

 

 

「明らかに始球式より目立ってる席あるよな、優輝」

 

「うん。千羽矢の席の方だ」

 

 

「何か問題起こしたな」と呟く小波に、背後から「違う」と幼い女性の声がかけられた。

 

 

「多分、私の俳優仲間の温水ちよがいるんだと思う」

 

 

先ほど始球式を務めた美空が、衣装を脱いでそこにいた。

 

 

「マジですか!?おい、優輝!今すぐ千羽矢に電話して俺の分も取るように言ってくれ!」

 

「君もファンなの!?」

 

「お前もか!?」

 

「女優に現を抜かすのはマウンドを降りてからしろ!」

 

 

遠くから監督の声が聞こえ、小波はすぐに向かって行った。雨崎も向かおうとしたが、今時携帯電話でメールを打うと投げすて、その場を後にした。文面は美空からでもわかる不注意ぷり。『ちよさんサイン頼む』と、脱字が見え見えの文面だった。

 

 

「送信されてないし……」

 

 

ボランティア精神で送信ボタンを押してあげると、美空はそのままベンチから立ち去った。

 

 

「では、今日の起用方法を言う。打順は三番だったマートンを五番に、雨崎は九番に行ってもらう。これは昼にも話したが、橘が投げてくる左のサイドスローから投げるクロスファイアー、魔球『クレッセントムーン』に慣れてもらうためだ」

 

「らしいぞ、雨崎。まぁ、この福留様が粘って、みずきちゃんの魔球を焼き付けてやる」

 

「自分で様付けしますか」

 

「しばくぞ、新井ぃ!」

 

 

言ったそばからお仕置きする福留に、鳥谷は「もうしてるよな」と抑揚のない声で言う。

 

 

「一番上本。二番大和。三番鳥谷。四番ゴメス。五番マートン。六番新井貴治。七番新井良太。八番福留。九番雨崎。兄の方の新井は指名打者をやってもらうぞ」

 

「……そうか、俺の打順ないんだ」

 

 

生まれて始めてのDH制に小波は少しばかり戸惑った。

一応開拓時代は打って投げれるエースだったし、阪神に入ってからも九番で打ってきている。さすがに高校の時と比べて凡打の数は山のようにできたが。それでも小波にとって、打撃も楽しみの一つだった。

この打席が来ないことに小波は落胆するが、それだったら今まで以上に気合を入れて投球しようとプラスに考えた。相手には颯斗もいることもあり、俄然やる気が高まる。

 

 

「それじゃあお前ら、打ってこい!新人に二つ黒星なんかつけんじゃねぇぞ!!」

 

『ぉぉおおおっ!!』

 

 

阪神は全員で円陣を組み、そのまま試合開始の合図が高鳴る。先攻は楽天。阪神のメンバーは各々の守備位置につき、小波は今月初めてとするマウンドだ。

楽天の先頭打者、不動の正捕手“岡島”。打撃成績は物足りないものだが、元々ある勝負強さが彼に闘志を大きく見せる。

 

 

『一級目、内角高めのストレート!しかしボール判定。これには打者も慄くじゃないんでしょうか』

 

『あぁ。高めなんて長打力があれば上手い玉同然さ。そこに変化さえあれば凡打にできたりもするけど……ストレートから見て、あれは挑戦状だろうね』

 

 

大神博之の言うとおり、これは小波の挑戦状であり作戦だ。まずはストレートで威嚇行為を含めて、ボール気味で投げて打者のストライクゾーンの高さを意識的に上げ、自分はどこがボールなのか把握しておく。

次の二球目。ボール球からボールのアウトローへの高速スライダー。これで小波も岡島もストライクゾーンがある程度見える。

ここから先はどれだけ速球でストライクゾーンに歪みを与え、緩急を駆使してタイミングをボロボロにするか。そこが重要になってくる。

続く三球目。外角低めの軽いストレート。岡島は様子見として見逃し、判定はストライク。

四球目。今度は内角を抉る高速スライダー。岡島はフォームを崩しながらも打つが、白線を超えてファール。内野フライには至らなかった。

 

 

「(カーブか、スライダーを内角を低めクサイところ)」

 

 

雨崎からのリードに小波は頷き、マウンドを踏み込み投げた。白球は見事な円を描き打者の腹部へと攻まりくる。小波が持つ二つ目の変化球、ドロップ気味のカーブだった。

岡島は辛うじてヒットさせるものの、打球は早めのショートゴロ。鳥谷がしっかりと取り、一塁へ送球。危なげの『あ』の字もなく一人を終える。

続いて二番打者藤田も粘りの九球で、外野への浅いフライ。マートンが捕ってツーアウト。

三番打者に松井稼頭央。かつて“リトル松井”と恐れられた日本の強打者ショート。獲物を屠る野獣の目つきが、今までの戦いの密度を物語る。

しかし、所詮は過去の栄光。何度かスタンドにファウルボールを叩き込まれ焦ったが、雨崎の冷静なリードによって松井は三振。前回と同じく上々の立ち上がりだった。

 

 

「……颯斗が上位打線にいない」

 

 

初回、三人のバッターを打ち崩した小波だったが、そこに颯斗がいないことに気づく。気になり電光掲示板を眺めると、そこには九番に指名打者として颯斗は登録されていた。

 

 

「なるほど。雨崎と同じってことか」

 

「だとしても指名打者はおかしいけどね。俊足を活かして外野手をやってるし……小波、絶対油断するなよ」

 

 

「わかってる」と力強く応じて小波は一度マウンドを降りた。ベンチに座ると、今度は楽天サイドから、今日の先発“橘みずき”がユニフォーム姿とともにマウンドを入れ替わる。

今日見たブルペンと変わらぬ投球フォーム。サイドスローから投げられる変化球とコントロールはどれも天下一品で、投球練習だけでその凄みを醸し出す。

 

 

「……あいつ、苦手なんだよな」

 

 

突如として呟いた鳥谷の言葉に、小波は驚きながらもすぐに反応した。「どうしてですか?」

 

 

「……橘は技術の投球でバッターを倒すんじゃない。並外れたコントロールで、絶妙なところにストライクを持ってくる」

 

「じゃあ、みずきさんは三振を取る力の投手ってことですか」

 

 

小波の発言に、鳥谷は「いや」と気だるくも否定の意思を見せた。

 

 

「……見てればわかる」

 

 

阪神の先頭打者、上本との投球はもう八球目を迎える。ツーツーの圧倒的な投手の攻勢。粘りに粘る上本にみずきの顔は真剣味を帯びた表情だが、どこか余裕そうな顔で九球目。

上本は振る。バットはボールに当てるが、ファールゾーンに吸い込まれる。続く十球目もファールゾーンにライト深めのファール。

 

 

「何で振るんだ……?」

 

 

その二つの投球はどれもクサイところとはいえ、ボール球だった。

 

 

「……無四球記録は知ってるよな」

 

「はい」

 

「……ほぼ毎日中継ぎ登板する橘の三年間無四球の記録は、投球回だけ見れば総計で300イニングを超えている。それが相手にとって重圧となり、逆に橘は投球に余裕が生まれる」

 

 

十三球目。ついに力果てた上本は、低めのストレートを内野ゴロで処理されアウトになる。そして二番目となる大和が打席へと足を運んだ。

 

 

「……四球も出す気が無いから、俺も苦手なんだ」

 

 

そういって次の打者である鳥谷は準備を始める。

鳥谷の説明で大体のスタイルがわかった。みずきは自分に余裕を作り、相手に重圧を与える。心の投球なのだ。

そのスタイルに、小波は思わず笑うしかなかった。あまりにも単純で強力な投球は見習うべきだ。

心の持ちようは、はっきり言って大事なことだ。いつもツーアウト二塁三塁に走者がいて投げるのと、無走者ツーアウトで投げるのとでは全然力の入りが違う。そしてそれが、投手がマウンドに立てる時間となる。わずかな力で投げ続ければ体力がない中継ぎでも長くイニングを食うことができる。逆にどんなにスタミナがあっても全力投球を続ければ、ガソリンタンクの異名を持つ投手でも短いイニングで撃沈する。それが橘みずきの戦い方だ。

 

 

『大和、積極的に振りましたが六球で内野フライ。魔球『クレッセントムーン』に打ち取られました』

 

『あれは正確に言えば、クロスファイアー高速スクリューにツーシームのような投げ方するから、変な軌道を描くんだよ。セ•リーグはパとは交流戦ぐらいでしかマトモに戦わないから、橘の投球にはリズムが合わないんじゃないかな?』

 

 

大神の発言は的を射ている。プロ野球選手足るもの、やはり目指すべきは優勝だ。そのためには何がどうあっても勝つことが前提となる。

首位をとるためには首位を倒すしかない。それが今の巨人だ。球界最高の本格派ピッチャー“猪狩守”。MAX157キロの剛速球は、セパ揃って最高クラスの代物だ。おまけに落差が凄まじい伝家の宝刀カーブ、一級品のスライダーとフォーク。メジャーに行かないのが不思議なくらいな大投手だ。

そのためにセ•リーグは全バッターが猪狩対策のバッティングをしている。おかげで年月が経つに連れて奪三振の記録は影を潜み、防御率も下がって行った。

だが、今度はそのせいでできる弱点がある。それは遅い技巧派の投球には打者のタイミングが合わないという致命的なもの。

 

 

「これは本当に……優輝で試合が決まるな」

 

 

ここで鳥谷がみずきの二球目を捉え、ライトへの渋い当たり。ヒットとなり鳥谷は一塁のベースを踏む。

球場はようやくのヒットに歓声があがり、仲間も「トーリターニ!」と音程ハズレの大合唱で騒ぐが、小波はどうしようかと思い詰める。

結局、一回の勝負は0-0のまま二回へ移る。




【補足コーナー】


Q.みずカスって?
A.みずきちゃんへの愛ある罵称。由来はパワプロ13の気分屋でわがままに加えて、聖ちゃんのぐう聖っぷりで、みずきちゃんの性格の悪さが際立ったせいか?


Q.みずきちゃんの身長は?
A.個人的には165cm。あおいちゃんより気持ち下。


Q.小波の怪我って?
A.パワポケ13買ってね!


Q.スライダーのおまけ。
A.パワプロ2013の壱流高校が言ってた気がする。実際は投手能力は使えないに等しいので、野手転向させた蛇島さんは有能。


Q.みずきちゃんスライダー!?
A.パワプロ14とかで実際に覚えている。


Q.三年連続無四球記録。
A.ください!何でもしますから!


Q.大神博之って?
A.ドルオタスラッガー亮ちゃんより有能な投手。初登場はパワポケ4で、パワプロ10超決定版でも出てたりする。結構強いし、パワポケには真相にまで絡みに絡む。


Q.『怪盗レッドローズ』
A.うっわー、恥ずかしい格好!


Q.紺野美空と紺野美崎って姉妹?
A.公式発表なしだが、髪の色同じだし、姉妹のほうが面白いと思って特に考えずに設定。美空はパワポケ8、美崎はパワプロ2013で登場。美崎は有能。


Q.温水ちよって?
A.パワポケ9登場の劇団員兼彼女。バッドだと枕営業に走り、プレイヤーの心を抉るにくるコンマイの狂気その1。可愛い。


Q.銀の盾って?
A.パワポケ12を買おうね!


Q.雨崎兄妹の女優好き。
A.実はミーハー。小波もミーハー:


Q.リトル松井。
A.なぜメジャー行ったし。メジャーは土も違うし、そもそもバットスイングでの威力も違うんだから、そもそも内野手が行くには不向き。行くならやはり外野手のほうが比較的に楽だと思われる。


Q.両者珍采配。
A.現実だったら代打起用で様子を見させると思う。


Q.総計300イニングは越える無四球記録。
A.ください!何でもしますから!


Q.トーリターニ(大合唱)
A.今回のなんj用語。元ネタはサッカーの『チームがバラバラじゃねぇか!』〜(中略)〜『トーリニータ(大合唱)』
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