というか、今更思いましたけどお気に入りと感想数、比べたら感想のほうが多いという謎な自体が発生してます。これは愛読者に期待されているということですかね?
サンキュー、カッツ!(要約:いつも感想ありがとうございます、ハムカツさん!)
サンキュー、ショック!(要約:いつも感想ありがとうございます、暴飲暴食さん!)
サンキュー、ミンナ!(要約:他の人も感想ありがとうございます!)
これからも頑張っていきます!!
「正義の味方……?」
「…………うん。ヒーロー」
ただでさえ気分が崖っぷちでキツイ状況なのに、目の前にいるブラックという女性は自分のことを『正義の味方』だの『ヒーロー』だの意味不明なことを言い出した。
怒りやら何やらを通り越して、笑うしかなくなった小波は相手にするのはよそうと思い、すぐにスマートフォンの通話機能を開いた。
「…………ダメ。敵に見つかる」
「ヒーローごっこは公園でやれ!千羽矢を探すなら、警察に通報して事情を……!」
少しでも早く画面をタップして警察に電話しようとした時、小波が持っていたスマートフォンが消え、なす術もなく目の前で木っ端微塵に握りつぶされた。
「ごめんなぁ〜!ちょーっと手荒やけど……!」
「うぐっ!?」
わけもわからないまま、小波はブラックとは違う誰かに腹部を殴られた。
掠れゆく意識の中、小波は確かに見つめる。上下ガードマンのような黒スーツを着て、手元にはバットよりも遥かに長い突起物。それを持っているのは、目測だけでもわかる小波より大きな女性だ。
俺、182なんだけど。沈みゆく意識に、小波が最後に伝えたのはこの言葉だった。
………
……
…
「あのさぁ……俺にはこの弁当に書かれている消費期限というものが、既に一週間も過ぎてる気がするんだが」
次に小波が目を覚ました場所は、薄暗くてホコリが溜まった廃墟だった。空間が一定の割合で区切られていることから、元は工場かビルかと推測できる。だが、それと今の状況はまるで関係ない。
「…………大丈夫。私の友達が「別に平気」って言って食べてた」
「そりゃ、賞味期限だからな。今出されてるのは消費期限!」
どうしてこうなっているのか、それは小波でもよくわからない。
起きたら亀甲縛り。目の前には異臭を放つ焼肉弁当。無情にも匂いとは裏腹に美味しそうな見た目が、小波の食欲を刺激して涎と胃袋を垂らす。おまけに空腹の音、ロイヤルストレートフラッシュの役に小波が勝てるわけがない。
「……いただきます」
何が悲しくて、こんな物を食べさせられるのか。こうなるんだったら、千羽矢と一緒に外食を済ませるべきだった。
そう思いながらもブラックから手渡された弁当を小波は平らげ、女性は満足そうな雰囲気で帰って行った。
せめて無表情を崩したりしたらどうだ、と悪態をつく小波だったが、思考の中央でいつまでも揺れる女性の姿のことは忘れられない。
「(千羽矢……いったいどこにいるんだ?)……って、俺のスマフォ返せよ!」
「…………壊れた物は直らない」
「そんな達観したことが聞きたくて言うと思うか?」
「どうやら無事みたいですね」
これのどこが無事に見えるんだ、千羽矢がいないのですら相当気が滅入るのに、さらには消費期限切れの弁当に唯一の連絡手段であるスマートフォンが壊されたのだ。
そのことを大声にして言おうとした時、目にした褐色肌だけで冷静になった。
「武内ミーナさん……!?」
その人はシリーズ序盤で木村家で出会ったジャーナリスト、ミーナであった。
前にであった時と比べて衣服は泥と汗が混じった汚らしいものであり、腕元に見える古傷から考えて大分長い間この状態で過ごして来たのがわかる。
「…………知り合い?」
「はい。以前、インタビューで有意義な情報を聞かせて貰いました」
「有意義な情報?」
それを聞いて小波は頭を悩ました。
こう見えても、小波は毎日スポーツ新聞などの情報メディア関連は欠かさず見るタイプだ。経済や流行には敏感だし、大谷が二刀流として今期は大活躍してるのも知っている。
今日も車のラジオなどやコンビニの新聞などで情報を見ていたが、自分がミーナに話したことは一度も見たことがないし、チームメイトからも聞いたことがない。
そのことが小波にとって不思議なことだった。情報メディアに載せられていないのに、どうしてそれが有意義な情報なのかと。
「ほら、小波さん質問したじゃないですか。阪神に三人の外国人選手について」
「しましたけど……俺が話したのって、結構普通のことなんじゃあ?」
「いいえ」とミーナはすぐさま否定した。
「むしろ普通すぎなんです。ゴメス、スンフォン、シルバー……ワタシの経験からすれば、そういう新戦力の活躍は最初は批判を受けるのが相場なんです」
「……そういえば一度も聞いたことがないな。でも、それって今と関係ありますか?」
「大有りです」と、またしてもミーナはすぐに答えた。
「別にこの三人だけではありません。他の新外国人も見事に批判を耳にしてないんです。これは今まで野球史で初です。……逆に言えば、今年起きた何か大きなことが起因している考えるのが妥当でしょう。では、今年何か大きな報道や事件には何があったでしょう?」
「……ベイスターズが“ジャジメント”に買収された」
「そうです」とそこで初めてミーナは小波に肯定した。
しかし、ベイスターズが買収されただけで、千羽矢とどういう関係性があるのか。
疑問に満ちた小波の顔が面白かったのか、ミーナは軽く笑う。
「より正確に言えば“株式会社DeNA”をまるごと買ったんです」
「…………DeNAは野球だけに注目されがちだけど、他にもモバゲー、アニメやドラマとコラボしたニュースアプリなど、機械的に関しては他の球団とは群を抜いて優れている」
「今やパズドラ、モンスト、黒猫といったソーシャルゲームは若者の常識。大半の人はやってます……ワタシはやりませんけど……」
童顔な顔をしょんぼりさせながらミーナは話す。話しの前後からして自分は若者ではない自虐してるのだろう。
千羽矢以外には察しは悪くない小波には、それが見てわかる。
「それも今のと関係あるんですか?」
「はい。ブラックが言ってましたが、DeNAは情報メディアと関わりがあります。その分野に“ジャジメント”が資金を回せば、少ない年月でどこよりも優れた検索ソフトを作れるでしょう」
「……よくわからないですが?」
「ここからは少し話が長くなるので、お茶を持って来ましょう。……消費期限とかは大丈夫ですよ?」
「ありがたい」と感謝を述べた小波に、ミーナは笑顔を浮かべてお茶っ葉を探す。
元々この廃墟に取り付けられてたであろう台所の棚からすぐにお茶っ葉を見つけると、すぐにガスコンロの火をつけ水を入れたヤカンを置く。
電気が通って無いからそういうのは使えないのか、と小波は思ったが、そこでようやく自分の状態を思い出した。
「ブラックさん。いい加減この亀甲縛りを解いてくれない?」
「…………忘れてた」
無表情のままだが、かなり分かり易い態度で驚いたブラック。こいつ嘘は苦手だな、と小波は確信しながらも縛りが解かれるのを黙って待つ。
しばらくすると体や腕の締め付けが緩くなり、開放感をその身で感じる。今まで動かせなかった肩や腕をパキポキと鳴らすと、落ち着いた様子で小波は胡座をかいた。
「ありがとうは言わないぞ」
「…………しょんぼり」
「……まぁ一応感謝はしとく。千羽矢に対して積極的みたいだし。君の名前は?」
「?…………ブラック」
「そういう正義の味方みたいな呼び方じゃなくて、本名のほう」
「…………“芹沢真央”」
意外にもすんなりと教えてくれるブラック、いや芹沢の警戒心のなさに、小波は「詐欺に合うタイプだな」と確信したところでミーナがお茶を持ってきた。
お茶は人数分あり、ミーナは丁寧に小波と芹沢の前に置く。色鮮やかなだが、深くて底が透ける緑色。いかにも美味しそうと言わせる色合いだ。
「…………熱い」
猫舌な芹沢を置いて、ミーナは先ほどの話を続けた。そしてその詳細に小波は驚きの連続だった。
まとめればこうだ。ネットワーク、つまりウェブは今の情報源となっている。探したい物が探すことができ、それだけに限らずネットゲームなどができる魔法の箱。
表側には出せないニュースから根も葉もない噂、間違った情報、危険な情報と箱の中身はパンドラのようになっている。
しかし、ネットだってわざわざ危険な情報を見せたりはしない。例えば『自殺』や『死にたい』と入れれば、真っ先に上がってくるのは自殺防止センターの紹介だ。そこが今回のミソだとミーナは言う。
そういうのを優先してくるのは検索アプリのプログラムからなる物だ。それを支配できたらどうする?それを利用しようとしたらどうする?
答えは簡単だ。情報が思うように操ることができ、相手にとって都合の悪いことを大手を翳して晒し、自分にとって悪い情報は電子の海に沈ませる。
「……だったらソフトバンク買収したほうが良くないですか?」
「ソフトバンクはあくまで携帯機器の会社。検索ソフトとは関係はありません。だったらインターネットに干渉しやすいDeNAを買ったほうが効率的ですし、ベイスターズは成績不振ですから親会社が買われても、少なくとも不思議ではありません」
「先にベイスターズを手放すと思いますけど……」
「“ジャジメント”は世界的に技術と資金がトップクラスにあります。そんな“ジャジメント”がベイスターズを渡すだけでDeNAと合併してくれるって言ったら……どうします?」
どんなことはいえ、小波だったら絶対に合併するだろう。
野球で例えるならば、歴代プロ野球選手で最強クラスの“イチロー”“王貞治”“長嶋茂雄”“野村克也”などいった選手を燻ってる二軍連中とトレードしてくれると言ってるようなものだ。
結果的にDeNAは“ジャジメント”にほぼ吸収されてしまったが。
「中々面白い話でしたけど……そろそろ、それと外国人助っ人との関係性を話してくれませんか?」
「わかりました。そういう事情を踏まえてワタシは調べました……そしたら、ある選手にだけ不可思議な点があったんです」
「それは?」と小波が言うと、ミーナは乾いた喉を潤すために少し冷えたお茶を飲んだ。
「外国人としてはあまりにも日本的な情報が多すぎる。そのことにワタシは気づきました」
「誰ですか?」という小波の質問に、躊躇いながらもミーナ答えた。「シルバーです」
「あまりにも成績が詳細過ぎる……化け物染みてる成績はイチローとかがいるので、大きくは触れませんが……それでも気にすべき点であるのは変わりありません」
「ちょっと待ってください!」
ミーナの発言に小波は怒鳴った。怒りというもので口にしたものではない。その事実を受け入れたくないように小波は悲痛に叫ぶ。
「シルバーさんはタイガースの仲間だ!それに“ジャジメント”が買収する前から俺はその活躍を新聞で知っている!どうやったら疑いのある人物に変わるんですか!」
「ジャーナリストの勘です」
キッパリハッキリというミーナの態度は、とても自身に満ち溢れたものだった。まさに今までの経験と直感という説明のできない力説に、思わず小波は押し黙ってしまう。
「それにワタシは新聞もこの一ヶ月で調べましたが……そんな記事、どこにもありませんでした。彼女の記録は0と1の狭間にしかない」
「でも……!」
「それに記憶は本物と言えるのでしょうか?本物という確証がないから記録があるんです。ですが……記録は真実とは言えません。また記憶は真実と言えません。真実はいつも今にしかありません」
ミーナの言葉は、小波の心に大きく突き刺さった。
心にクッポリと空いた穴。埋められない虚無感に、小波は戸惑うしかなかったが、そこで大切な人物が思い浮かぶ。
ーー『思わず嫉妬しちゃうな』
ーー『イチャつくな〜!』
ーー『……面と向かって言われると恥ずかしいじゃない』
ーー『ヒーローへのご褒美だよ』
「…………シルバーさんは“ジャジメント”の一員で、その“ジャジメント”が千羽矢を攫った……そういうことですか?」
「その千羽矢というのを攫ったとは限らないけど……時期的に考えて、千羽矢と“ジャジメント”は少なくとも関係はある。ワタシはそう思ってます」
「…………どうする?選ぶのは君」
「……信じます。俺はあいつのヒーローだから」
【補足コーナー】
Q.スマートフォン木っ端微塵。
A.握力は100近いんだって。チンパンジーだね。
Q.身長182の小波より大きい女性。
A.それって本当に女性ですかね?
Q.消費期限一週間過ぎ。
A.???「鍋の用意じゃ!」
Q.小波、亀甲縛り。
A.そうだね(便乗)
Q.芹沢真央って?
A.パワポケ7で初登場。ペットの猫はスキヤキという名前。
Q.武内ミーナって?
A.パワポケ10で初登場。以降のシリーズでも登場するが、表立って目立つことはそうない。実は30代だったりする。
Q.芹沢「…………壊れたものは直らない」
A.壊したものは直しなさい。
Q.芹沢真央、猫舌。
A.マオだからね。
Q.DeNAとジャジメントの合併。
A.頭の悪い私なら、よく考えずにするでしょう。
Q.シルバーさん……!?
A.次回明らかに……!?
【雑談コーナー】
次回はついに第十話。ですが、同時に色々やりたいことが多過ぎて今回以上の走り気味な文章で書いちゃってます。
ですので、次回の読み辛さは仕様です。(駄目じゃん)
ある程度落ち着いたら文字を増やしてまとめていきたいと思います。
以上、次回への注意書きでした。