ハイスク・最凶の弟・リメイク   作:ノムリ

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第1話

 ライアスは自分が普通とは違うことを幼くして自覚した。

 双子の姉であるリアスは幼く純粋なのに対して、自分は偏屈で屈折していた。

 別にそれを直そうとは思わなかったし、それを理由に他人からそして父親や兄が姉ばかり可愛がるとしてもどうとも思わなかった。

 

 相手が関わることを拒むのなら、此方も関わらない。

 

 相手が敵対するのなら、此方も敵対するのみ。

 

 ただ鏡のようにそして、その中で一握りの関わりを持とうとしてくれる人たちのみを愛し、そして守れば良い。

 それが十歳にも満たないライアス・グレモリーの出した生涯の道とそのあり方を決める決意だった。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 ライアスは人の手の入っていない森の中を獣道を突き進む

 頬や服の袖には木の枝で引っ掛けた跡が無数にでき、一部からは出血すら流れる事もあり彼は気にしなかった。

 いや、気にしている余裕がないと言うのが正しいだろう。

 なぜそんな余裕が無いかと言えば。

 

「待て!小僧!」

 

 その答えは自ら追いついてきた。

 蒼穹の如き鱗を持つ龍。名を五大龍王の一角『天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)』。

 五大龍王最強とも名高く、その強さは魔王と同等とも言われている。

 そんなドラゴンとライアスが戦っているかと言えば、この森にやってきた理由が使い魔を手に入れる事が目的だったことだ。

 悪魔は精霊や妖精などを契約して使い魔とするのが昔からの習わしであり。今日はリアスとライアスの番だったのだ。

 森の管理をしているザトゥージからこの森で一番強いのは五大龍王のティアマット、という名前を聞いた事でライアスはとりあえず声だけかけてみえる事を選び、結果、丁度獲物を取り逃がして機嫌の悪かったティアマトから狙われる事となった。

 

 

 

「運が悪いな」

 ライアスは開けた場所に出ると足を止め後ろを振り返し、頬から流れる血を服の袖で拭った。

 

「観念したか、小僧」

 木々よりも高い全長を持つ巨体、その体を支える四肢と翼、長い首と尾という誰もがドラゴンと聞けばイメージする姿そのものだった。

 だが、恐怖はライアスの中にはなかった。

 いくらドラゴンが強くとも、最強という称号を持つ存在であっても、あらゆる面に置いて最強とは限らない。

 兄である四大魔王サーゼクス・ルシファーが母から受け継いだ『滅びの力』があるからこそ高い攻撃力を誇り、その実力から魔王の名を継いだように、同じ四大魔王のファルビウム・アスモデウスが生まれつき宿していた『絶対的な防御の魔力』から魔王の名を継いだように。

 

「14歳にしてドラゴン最強に挑むなんて、これからの人生が波乱万丈になりそうな予感だ」

 

 手の中に生み出した赤い魔力弾。

 兄や双子の姉と同じくライアスも母よりあらゆる存在を消滅させる特殊な魔力。『滅びの力』は受け継いでいる。その特性として魔力弾であっても基本的に防御が通じず、物理的な破壊力も高い。

 

 ドラゴンの鱗は言うなれば“鎧”だ。

 身を守り続ける盾にもなり、体当たりや尻尾を振るいだけでも矛にもなる。

 ドラゴンを倒す為には龍に対して特攻を持つ武器を用いるのが定石なのもその鱗が硬すぎで生半可な武器は当たれば砕け、魔力であっても弾くか当たっても損傷が低すぎるからにほかならないからだ。だがライアスに関してはこの問題は解決できる。

 消滅魔力の物理的な破壊力は鱗を破壊し、その下にある肉にまで攻撃を通す事が可能な防御貫通の効果がある。

 ドォン!放たれて赤色の魔力弾がティアマットの頭に衝突。

 

「ふん、子供にしては威力があるが、私の鱗を破壊するには足りんな」

 その言葉の通り、ライアスの魔力弾は当たった鱗を僅かに削る程度の損傷しか与えていなかった。

 

 その光景を見て、ライアスは素早く思考を巡らせた。

 

「鱗そのもの硬質性が高いのか。魔力弾は所詮、魔力を固めただけ。魔力の量が限られているのに無駄弾は命取りだ、もっと一撃の貫通力がいる」

 

 ただ魔力を撃つだけの魔力弾が野球のボールを投げているだけのようなもの。今必要なのは貫通力。

 

 手の平をティアマットに向けた体勢のまま、再び魔力弾を生み出し頭でしっかりとイメージする。

 自分の手が拳銃になったように想像する。

 グリップがあり、銃身がある。その中には魔力弾(弾丸)が装填され、あとは引金を引くだけで魔力弾が発射される。

 

 無意識に手の形を子供の頃に銃に見立てて拳を握り、人差し指と中指と親指をピンと伸ばした時と同じ形になった。

 

 人差し指と中指の先端には球体ではなく先端が細く徐々に太くなり最低限の細さを維持した銃弾の中でも高い貫通力を持つアーマー・ピアッシング.日本語で徹甲弾と呼ばれる形状のものだった。

 

 ヒュン!という風切りを音を立てて発射された魔力弾。

 

「うぐぅ!な、なんだこの威力は!」

 着弾したティアマットの頭部の一部を破壊して見せた。

 

 形状が違うのみで受けても問題ないと判断したティアマトの予想に反して自身の鱗を破壊する威力を持つ攻撃だった。

 

「徹甲魔力弾とでも名付けようか、人間の科学は馬鹿にできないよな!」

  

 構えたままの右手と同じく銃の形にした左手の両手をティアマットに向ける。

 

「徹甲魔力弾、連射」

 左右から連射される先ほどティアマトの鱗を破壊した徹甲魔力弾を連続で発射し続ける。

 まともに狙いなど付けずとも巨体な体の何処かには当たり、確実に身を守る鱗を削っていく。

 

「くぅ、舐めるな小僧!」

 流石に不味いと思ったのかティアマットも苦悶の声を上げながら徹甲魔力弾が当たるのも気にせずに突進してくる。

 その巨大な体から想像できない速度で向かってくるティアマト。

 

 この距離では走っても間に合わないと素早く判断を下し徹甲魔力弾を辞めて別の攻撃を使うを決めた。

 

 手の平サイズの魔力弾が銃弾なら、これは砲弾。

 元々、魔力弾は込める魔力が多ければ多い程、弾自体も大きくなり威力も増す。ならば、魔力を大量に使って先ほどの徹甲魔力弾を生み出したらどうなるか……答えは簡単だ、より破壊力のあるものになる。

 

 

 手に平に生み出した魔力よりも大きく先ほどの魔力弾の五倍の魔力を使った大きさのもの。

 徹甲魔力弾と同様に形を変えて狙いをつける。

 外せば巨体からの体当たりを受けて死ぬだろう。

 額から垂れる汗と激しい鼓動を抑えて、頭の熱を無視する。

 五歩、四歩、三歩、二歩、一歩…いまだ!

 ライアスを噛み砕こうと長い首を下げて開いていた口、目掛けて徹甲魔力弾の砲弾版、徹甲魔力砲弾を放った。

 その展開を予想していたのだろう、ティアマットは体を強引ながら傾けて、徹甲魔力砲弾を躱そうとするもその巨大さ故に弾は口ではなくライアスから見て右前足の根本を撃ち抜き、そのままバランスを保てなくなったティアマットは地面を転がっていった。人間や悪魔ですら走っている状態で転べば怪我庇う。それが巨大でしかも森の中なので木々をなぎ倒しながら転がったとなればそのダメージは比例する。

 

 ティアマットが転がって出来た砂煙の中を身構えたまま睨んでいる、その最中予想していなかったものが飛んできた。

 

 水だ。

 それも高圧縮された水のブレス。

 反射的に転がるように避けると立っていた場所から真っ直ぐに圧縮された水は後方へ伸び、後ろにあった大木の真っ二つに両断していた。

 水に圧力をかけるとウォーターカッターとなりそれはコンクリートを切断する事も可能になるというのは有名な話だ。

 想定しておくべきだった。

 ドラゴンならブレスだった吐くし、吐けるのは火だけなんて決まってない。何せそもそも生物が火は吐けるのは進化した結果だ、ならその途中で生物に必須な要素である水を吐くように進化していたって可笑しくない。人間界にも獲物を取る為に水と飛ばす生物もいるのだ、水を高水圧でブレスするドラゴンだったいるだろう。

 頭の中で目の前の光景から予想しておくべきだった事だと叱咤を吐き出しながら体を動かし続ける。

 

「チッ!地上じゃ不利か」

 舌打ちしながら背中から黒い蝙蝠のような羽を広げ、再び襲ってきた水圧ブレスを飛んで回避する。

 地上では平面にしか回避が出来ず、点ではなく線や面の攻撃を受けやすい。

 

 砂煙が収まるとそこには体のあちこちを土で汚しながらもしっかりとライアスを睨むティアマットの姿があった。

 

 折りたたんでいた翼を広げて数回羽ばたくと脚が地面から離れ、飛行し始めた。

 

「あの巨体で飛行が普通とか…悪魔だった羽があった魔力なんて不思議エネルギーを使ってる時点で文句言うなって感じだけどさ」

 

「堕ちろ小僧!」

 

 今度は水をビームのようにではなく塊として撃ち始めた。

 右へ左へと動い飛んでくる水の塊を避けるながらもライアスは焦っていた。

 何せライアスは空中戦というものを数回ほどしか経験していないからだ。

 ティアマットはドラゴンなのだ、空中戦はお手の物だろう。

 

 翼と尾を巧みに動かし宙を舞うティアマットは蒼い鱗がキラキラと光を反射して美しい姿とも言えるが、残念ながら狙われる立場にライアスにその姿に見とれている余裕なんてものはなかった。

 

 ティアマットが翼を目一杯動かした事で辺りの気流が乱れ、その影響はライアスにも及んだ。

 強風によりバランスを崩し、その隙を狙われる。

 ライアスの同じほどの大きさの水の塊をものにぶつけられる。

 強烈な衝撃が全身を襲い、目を閉じて落ちないように懸命に羽を動かす。

 視界の水飛沫が収まるとそこには大きく開かれてティアマッタトの顎があった。

 

「あがぁぁっ!つぅぅ!」

 牙が体に食い込み、咄嗟に盾にした腕の骨を容易くへし折られてのが分かる。

 上顎を折られた左腕で抑え、下顎に右足を掛けて体を支える。

 

 先ほどあった痛みはない。

 痛すぎて頭が壊れてか、それともアドレナリンが出過ぎて感じていないだけか、ライアスはそんな事を考えながらもそれよりも今は目の前のティアマット()を倒す事に意識を向けた。

 

「徹甲魔力砲弾ならダメージが入る。今までは撃つのに手を向けていたけど、そんなモーションすら邪魔だ」

 

 頭の中で高速で今まで習った魔力の操作から魔法の知識を記憶の奥底から引っ張り起こし、今この瞬間に最適な物を組み立てる。

 ティアマットの顎に挟まったままのライアスの背後に生み出されて計十個の徹甲魔力砲弾が円を描くように可動する。

 徹甲魔力砲弾の一発が発射されると円が動き、次弾が発射されると同時に新しい徹甲魔力砲弾が装填される。

 つまり発射と装填をループするように術式を即興で組んだのだ。

 最初に撃った徹甲魔力弾なら弾が小さい分連射もできるが、徹甲魔力砲弾なら弾の準備に時間が掛かるならそれすらも一つのプロセスとしてしまえばいい、それがライアスがこの土壇場で考え抜いた答えだ。

 

 

 ドドドドドドッッ!

 

 

 けたたましい音を立ててティアマットの体を撃ち続ける徹甲魔力砲弾の連射砲。

 一発ですら少なからずティアマトの体にダメージを与える事が出来たものが一呼吸の間に数発撃ち込まれる状態。いくらドラゴンが強靭(タフネス)があるとしても無事では済まない。

 

 背後で徹甲魔力砲弾の連射砲を撃ち続けるなかで、無事だった右腕に徹甲魔力砲弾を生みだし口内に向かって放ち、その爆風を利用してティアマットの顎から抜け出す。

 左腕と右足から牙が抜けて、傷口から血が零れる。

 

 徹甲魔力砲弾の連射砲を二セットで生み出し同時に三発の徹甲魔力砲弾が発射されるようにして、距離を取ったティアマットへ魔力が底を着くまで撃ち続けた。

 

「ぐぁぁああああああぁぁぁ!」

 避けようにも範囲が広く、翼を動かそうとしてのその度に弾が飛んでくるのでまともな飛行を行う事も出来ず、そのまま体勢を崩したティアットは地面へと向かって落下していった。

 

 砂煙が収まった中心にはあちこちを土で汚れ、傷を負い倒れたティアマットが横たわっている。

 獲物と見ていた自分の半分も生きていない悪魔の子供に攻撃され、こうして地面を転がっている。

 油断をしていなかったなら攻撃など受けずに勝っていただろう、と現に空中で噛みついた時点で直ぐにでも顎に力を入れ噛み砕いていれば徹甲魔力砲弾の連射砲をライアスが生み出す事もなく勝っていた事だろう。だが、それはたらればの話だ龍も獣だ、弱肉強食の掟は太古から連綿と受け継がれている。それが五大龍王であっても例外ではない。

 

「あ、起きたか」

 閉じられていたティアットの瞼を開き、ライアスと目が合った。

「小僧、何故トドメを刺さない」

 数秒ほど見つめ合ったまま経過し、堪らずティアマットは疑問を投げた。

 

「別に命が欲しいわけじゃないから。最初に行ったろ使い魔にならないかって、まあ正直言えば使い魔より眷属のほうがありかとも思うけど」

 

 その答えは予想より軽いものだった。

「犬猫ではないのだ使い魔は御免だが、眷属にならなってやってもよい。タンニーンも悪魔になり、ドライグやアルビオンは神器(セイクリッド・ギア)になった。私も外に出てみるのも悪くない。今のは私は敗北した者。生殺与奪は貴様が握ってる」

 

「その割には偉そうだな。まあ、眷属を作れってお母様たちからもしつこく言われてるからいいか」

 ポケットから悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を取り出すと女王(クイーン)の駒をティアマットの頭にコツ、と当てる。

 

 駒が輝くとティアマットの体内に飲み込まれた。この瞬間、ティアマットは龍から悪魔になりライアス・グレモリーの眷属となった。

 

 

 




『徹甲魔力弾』
アーマーピアッシングを見本として生み出した貫通力を重視した魔力弾。
細長く連射できるので便利。



『徹甲魔力砲弾』
徹甲魔力弾の強化、発展型。戦車の弾のように腕ほどの大きさと比例した魔力を使って生み出す。
徹甲魔力弾より威力は高いものの精密射撃には向かず、大きな敵に兎に角撃ちまくる。
『徹甲魔力砲弾の連射砲』
”撃つ”と”装填”を一プロセスとしてプログラムした技。
一度発動すればライアスの魔力が尽きるまで展開した場所で固定して弾を撃ち続ける。


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