飲み干せ、グラスに残った全てを   作:夕俐

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ここから先は、ありえたかもしれない未来。

認識番号 Rb 23 識別名レイヴンと、ルビコニアンのエアが辿った、数奇な運命から枝分かれした一つの可能性。

世界の真実を認識し、ネタバレ、設定崩壊、キャラ崩壊、死亡キャラ生存、その他諸々を含む二次創作のバーリトゥードであることを理解した上での閲覧を推奨します。


宜しいですか?

本作品は、あなたの閲覧を歓迎します。



お待たせしました。


ようやく・・・あなたと並んで出番がありそうです。


飲みすぎたのはあなたのせいよ

 人々の戦場は変わっていく。

 古くは石と拳とが飛び交う戦場であったという。

 その後広まった血と鉄と命とが星々のように散っていく戦場は、人類を大きく飛躍させた。

 そして今、ルビコン3で最も熱い戦場(宴会場)では酒と野次()が飛び交い始めていた。

 

 

 アーキバスのV.Ⅳ (ヴェスパー第4隊長)ラスティは戦友との久しぶりの再会を心待ちにしていた。

 鉄と火が爆ぜることはなく、また一発の弾丸と命の価値が等しくなることもない場で顔を合わせるのは初めてである。

 企業(アーキバスとベイラム)共同事業に関する発表(プレスリリース)以来、自身とてACのコアに収まっているよりもデスクワークの時間が増えた。

 ホワイトカラーとは何ぞや、と言わんばかりのブラックな業務量を抱えることもあるが、おおむね平穏であると言っていいのだろう。

 自分が意外にもこういった作業を嫌いではないという新しい発見もあった。

 しかし連日の仕事に少々の疲労を感じていたことも事実である。

 今日という日を用意してくれたことに関してはV.Ⅱ スネイル(第2隊長殿)に感謝しよう。

 

「やあ戦友、久しぶりだな。 こうして顔を合わせるのはアイスワーム討伐以来か。 あの時は見事な手並みだった」

 

 ラスティは、かの戦いを振り返る。

 自身は役割上、最前線にこそ出なかったが、照準器(スコープ)の先で戦友(レイヴン)が繰り広げたあの闘争に思わず心が躍ったことを、はっきりと記憶している。

 おとぎ話(フェアリーテイル)の勇者の如く、獰猛にして無慈悲な暴力の具現(技研の負の遺産)に臆さず挑むあの姿をだ。

 化け物退治(ジャイアントキリング)とは斯くあるべし。

 こんな見世物を前にポップコーンとコーラがないのか、ちくしょう、と、狙撃チームのスタッフの一人が嘆いていた程である。

 あの時の自分の仕事に必要なことは”その瞬間”まで平静(クール)でいることであり、自分はそれができる人間であるという確かな自負もあった。

 しかし、あれだけの闘争を魅せられて昂らない程、ラスティは冷めた男ではなかった。

 意思に反して(たぎ)ろうとする心と身体を巧み(クレバー)に制御し、然るべき時に引き金(トリガー)を引いたのだ。

 あの時の神業的偏差射撃(超長距離からの動体への狙撃)の業の冴えは、ラスティ自身をして最高のパフォーマンスであったと振り返る。

 Ms. カーラ(スポッター兼エンジニア)をはじめとしたスタッフの補助はあったが、あれが出来たのは戦友の姿があったからこそだ。

 あの高揚感は得難いものだった。

 人生でも数少ない、宝石のような煌めきを感じたひと時であった。

 

 戦友に出会うまでのラスティは、立場、所属、そして自らの理念に縛られ、自由というものを感じたことがなかった。

 勿論それは自身が望んだ選択であったことは間違いがない。

 目的のために自らを律し、鍛え上げ、任務に忠実な企業の走狗に成済(なりす)ます為ならば仲間をこの手で斃すことすら厭わなかった。

 だからこそ、憧れたのだ。

 何物にも縛られることのない力の持ち主(独立傭兵の力)に。

 そして歓喜した。

 自身と共に立てる強者の存在に。

 

「ハンドラー・ウォルターも健勝のようだな」

 

 ラスティは懐かしくも楽しい思い出をそっと胸に仕舞い、戦友の隣に立つ人物とも挨拶を交わす。

 

「ああ、そちらも変わらぬようだ」

 

 ウォルターは相変わらずの表情で応えた。

 

「そうでもないさ。 批判を受けて企業の方針は一転、柔和路線だ。 前線部隊の我々はその矢面に立たされてしまったからね。 お姫様がいなければどうなっていたことか」

 

V.Ⅳ(ヴェスパー第4隊長)ともなれは苦労が多いようだな」

 

「第2隊長殿ほどではないがね。 なんの心変わりか知らないが、彼女のことをいたく気にかけていたよ」

 

「そうか。 こちらとしては歓迎だが。 招待された件も感謝している」

 

「まさか第2隊長殿が私費で催す(ポケットマネーを出す)とはね。 なかなか不敵なことをする」

 

「なにか思惑があるのかもしれんが、現状、打てる手は多くないのだろう」

 

 

 ウォルターはラスティの言葉を受け、スネイルがこの場をセッティングした意図を思索する。

 V.Ⅱ (ヴェスパー第2隊長)スネイルは慇懃無礼にして尊大ではあるが、無駄なことをする男ではない。

 この集いの参加者を見るに、この場で自分達(621達)に危害のあるようなものではないと思うが、念のため調査が必要か。

 ウォルターはこの件を、笑顔の得意な”友人”にも依頼することを考える。

 

 

「さて、堅苦しい話はこれくらいにしておこう。 戦友、あらためて乾杯しようじゃないか」

 

 

 洋上レストラン”ざいれむ”、喧噪溢れるその会場の一角で、柔らかに触れ合うグラスの音が響いた。

 

 

 V.Ⅳ (ヴェスパー第4隊長)ラスティは、ハンドラー・ウォルターの子飼いの傭兵(C4-621)を戦友と呼ぶ。

 なぜか。

 狼は鼻が利く。

 幾度かの戦場を共にしたことで、猟犬(戦友)から自らと似た”匂い”を悟ったのだ。

 自らの定めた規範の為ならば、自身を兇刃と成してどこまでも鋭く、そして”切り捨てる”ことが出来る人間の匂いを。

 

 最も、今の自分達はその牙を向ける相手を失った状況にある。

 企業は自身の身を守るために手を取り合い、ルビコニアン(現地人)にも協力を仰いだ。

 勿論全ての確執が消えることはないだろう。

 燃え残ったものは確かにある。

 しかして、禍根を残し続けた先に未来はないという事を誰もが理解しているのだ。

 そういった意味では、今日この場は燃え殻に火をつけるに丁度良いのかもしれない。

 この場の誰もが同じ屋根の下に住み(ルビコンで過ごし)、誰もが同じものを口にしている。

 今は、これがはじまりの篝火(かがりび)となることを祈ろう。

 

 

「ところで戦友はいける口かい?」

 

「あまりこいつ(621)に飲ませようとするな」

 

 

 

 

 G.4 (ガンズ4)ヴォルタは辟易していた。

 

 ミシガン(クソ親父)に社会勉強なるものとして挨拶回り(顔繋ぎ)とやらの供をさせられているからだ。

 当のクソ親父はBAWSやらエルカノ(グループ外企業)の連中のところへ顔を出して何やら小難しい話をしている。

 クソ親父がぶん殴ってくるから(教育的指導により)最初に頭だけは下げているが、クソほど退屈なことは変わりない。

 一応聞いている振りをしているが、ヴォルタの心は先ほど食べかけて置いてきた皿の上に残ったままだ。

 あの肉は実に美味かった。

 レッドガン部隊の連中に食いつくされてはいないだろうか。

 奴らに腹八分(ほどほど)にしておくというような知能指数の高さは期待できない。

 喩え手足が捥げようと、仮に腹が破裂しようとも、口が動く限り喰らい続けることだろう。

 何故ならば今日は他人の金(スネイルのおごり)で飲み食いできるのだから。

 もし料理が残っていなかったら、次回のMT部隊の扱き(仮想敵)には自分が立候補してやろう、などと部隊内の連携(パーフェクト・コミュニケーション)について考えていると、クソ親父はまた「ついてこい!」と、でかい声で言ってのしのしと歩いていく。

 ヴォルタは「へいへい」などとやる気なく返事をしてついて行く。

 イグアスの野郎はうまいことサボりやがったな、と、思う。

 気付いた時には姿を消していた。

 まあ、どうせ後でクソ親父にボコボコにされる(わからせられる)ことになるだろうが。

 

 

 

 

 G.5 (ガンズ5)イグアスはジョッキ片手に、憎きあんちくしょうたる野良犬に目にもの見せてやろうという意気込みで会場内をのしのしと歩いていた。

 時折ひと際大きな声が聞こえてくる。

 ミシガンである。

 どこにいても騒がしいジジイである。

 そちらに行くのはやめておこう。

 普段ボコボコにされている恨みもあるが、挨拶回り(退屈な老人介護)を抜けてきたのは単純にさっさと目的を果たしたかった(野良犬を酔い潰したい)からである。

 後でクソジジイボコボコにされるだろうが、扱きは最早いつものことだ。

 肉体の痛みなど既に慣れている。

 自分はそれよりも耐えられぬ感情(この想い)に従うことにした。

 こんな機会(皆が集まる飲み会)は滅多にないのだ。

 後の我が身を差し出す価値はある。

 前日はしっかりと眠った。

 朝食と昼食もちゃんと摂った。

 少し前までは耳鳴りに悩まされることもあったが、近頃はそれも治まっている。

 改めて確認しても体調は万全である。

 そう考えながら会場内をうろついて(徘徊して)いると、目標の姿を見つけた。

 

 イグアスは初めて野良犬(621)と絡んだ仕事をしたときから、G.13 (ガンズ13)のコールサインで呼ばれる独立傭兵のことが気に食わなかった。

 最初は数合わせの野良犬のラッキーパンチ(単なるまぐれ)が当たっただけだと、そう思っていた。

 しかしその後、ちょっとした小遣い稼ぎとして依頼を受けたグリッド086でもまた辛酸を舐めさせられた。

 極めつけは化け物(アイスワーム)退治である。

 あの戦いはイグアスの中で鮮烈な記憶として残っている。

 ブリーフィングの時のイグアスは、程ほどにやって抜けるつもりだった。

 重要な戦いにおいてミシガン(クソジジイ)に指名されたことは結構であるが、やる気が出なかったのだ。

 喧嘩(命の奪い合い)は楽しいが、一方的に蹂躙されかねない場に誰が好んで行きたいものか。

 また、その面子(メンツ)も気に食わなかった。

 V.Ⅱ スネイル(偉そうな現場監督)にRaDの案山子(かかし)、そして何よりもあの野良犬だ。

 クソジジイは野良犬のことを気に入っているようだった。

 イグアス(ガンズ5)ではなく野良犬(ガンズ13)に”最新鋭の兵器(玩具)”を持たせて最前線に送り込んだのだ。

 そして、その選択は正しかった。

 鉄の怪物(モンスター)

 触れたもの全てを等しく削り取る技研の遺産と相対し、イグアスだけでなく現場監督(スネイル)案山子(RaDの人形)も次々と堕とされた。

 イグアスは戦場で、大地を割き、悪意をばら撒く圧倒的な暴力の化身の存在を見た。

 そのような怪物を前にして、アーキバスの虎の子(スタンニードルランチャー)を携えて真っ向から殴り込みに行くなど、イグアスをして気狂い(イカれている)としか言い表しようがなかった。

 しかし、野良犬はそれを成したのだ。

 ()()うの(てい)でACコアから脱出したイグアスの目に、その姿が確かに焼き付いた。

 自身の命を賭す(オールインする)ことに何ら躊躇いをみせず、薄氷を躍るように舞い、アーキバスのすかした第4隊長(V.Ⅳ ラスティ)と連携して淡々と役割を果たした(仕事をこなした)野良犬の姿が。

 野良犬と初めて仕事をしたとき、そのブリーフィングでミシガン(クソジジイ)は言った。

 野良犬(ガンズ13)はお前たちの”安いおまけ”であると。

 それが今やどうだ。

 怪物を前にして、あっけなくやられてしまったのはイグアス達であり、最後まで一人で立ち向かっているのは一体誰だ。

 あの時、あの場において主役は確かに野良犬(雇われの独立傭兵)であった。

 これでは自分が、自分達の方こそが”ただのおまけ(フリービー)”ではないか。

 

 イグアスは口惜しさと腹立たしさで一杯であった。

 自身の敗北(実力不足)からくる口惜しさではない。

 ミシガン(クソジジイ)に信頼されなかったことに対する腹立たしさでもない。

 イグアスが何よりも一番堪えられなかったのは。

 

 

 イラつくぜ・・・。

 この俺が、野良犬に憧れたんだ・・・。

 

 

 自身の奥底に確かに湧いた憧憬と妬ましさ、イグアスはその感情に蓋をする。

 今夜は絶対に俺の方が酒に強いとわからせて(酔い潰して)やる。

 大いなる決意を新たに、イグアスはチンピラ宜しく目的の人物に絡みにいった。

 

「よぉ、野良犬」

 

 そしてイグアスは、振り返った人物の(あか)い双眸に射抜かれたのだ。

 野良犬(621)の目は、こんな色はしていない。

 

「な・・・!? 誰だ、てめぇ・・・!」

 

 イグアスに問われ、彼女は口を開いた。

 

「あなたは・・・」

 

 

 

 

 酒と罵声と、そろそろ皿が飛び交いそうな戦場(楽しい宴会の場)で、V.Ⅱ スネイル(ヴェスパー第2隊長)V.VII スウィンバーン(使えない部下)を再教育センター送りにすることを心に決めた。

 自らを落ち着かせるために上等な酒を舐めるように口に含む。

 樽香が鼻を抜け、酒精の強さで喉が微かに灼ける。

 良い酒である。

 

「それはそうと閣下におかれましては本日も見事な装いですな! そのお召し物はもしや新しい仕立て屋(テーラー)の仕事でしょうか?!」

 

 再教育センターではなくファクトリー(愉快な実験場)送りにすべきか、と、スネイルは思案した。

 

 




私の見間違いでなければ、稚作が日刊ランキングに載ったり載らなかったりしているようです。
閲覧、お気に入り追加、また過分な評価を頂きありがとうございます。
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