魔王学院の不適合者と泡沫世界の魔王   作:川野甘味

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※この話は時系列的には14章の後の話です。


プロローグ 魔王

真っ白に輝く黄金の神殿の中、一人の神と大勢の人間や魔族がいた。

 

しばらくして神が口を開く。

 

「諸君、今から私が神の言葉を授けよう。神の命令は絶対だ。不適合者、ブラウ・アルヴィローゼを…」

 

殺せ───。

そう神が言い切る前に神の喉にブスリと腕が突き刺さった。

 

「不適合者ブラウ・アルヴィローゼ。一体何の用だい?」

 

神は視線を変えずそのまま言葉を続けた。

 

不適合者ブラウ・アルヴィローゼ、と呼ばれた男はクハハと笑いながら言葉を返す。

 

「何、ここで面白そうな話をしていると聞いてな。少しばかり覗きにきた」

 

「覗きに来ただけなのなら大人しく見ているといい。今から彼らに神の言葉を授けるところだ」

 

神はそう言うと一段下がった場所に跪いている大勢の人間と魔族を見る。

 

「天父神ミルドエイベスが命じる。神は不適合者ブラウの消滅を決定した。もうまもなくその為の秩序が誕生する。神の命令は絶対だ」

 

刹那、バタリと跪いていた人間たちが倒れた。男が眠らせたのだ。同時に彼は腕に魔力を込める。

 

「<獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)>」

 

天父神を名乗る神の首に漆黒の太陽が現れ、その身体を焼く。

 

「例え神の言葉でも聞いていなければ意味がない」

 

男はミルドエイベスの首を貫いている腕を引き抜き、そのまま頭を鷲掴みにする。

 

「俺からも魔王の言葉をくれてやろう。貴様に俺は滅ぼせぬ」

 

奴の頭をドカンと地面に打ちつけた。

 

更に追加で魔法陣を一〇門描き<獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)>を打ち込む。

 

「そうか、そう言えば君は魔王だったね」

頭を鷲掴みにされ、地面に押し潰されながら彼は言った。

 

「だが君は私を傷つけられない」

そう言うと彼はブラウの手からゆるりと抜けた。

まるで最初からそこにいなかったかのようだ。

首に空いた穴も、地面に打ちつけられた時にできた傷も全て治っていく。

 

「それが秩序だからだ」

 

「くはは。冗談はこの炎を避けてから言え」

 

先ほど打った<獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)>がすでに奴の頭上にあった。すでに見てから避けられる距離はない。

 

しかし彼は避けようとする素振りすら見せず、そのまま立ち尽くしている。

 

「炎で私を傷つける事は出来ない。それが秩序だ」

ミルドエイベスは落ちてくる<獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)>を避けることなくその身に当てるが、しかし傷一つない。

 

男はそれを気にも留めず更に<獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)>を打ち込んだ。

 

「私の言葉を聞いていなかったのかい?私に炎で傷をつけることは出来ない。それが秩序だからだ」

 

ミルドエイベスの身体に再び<獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)>がぶつかる。

やはり傷はつかない。

 

「神の命令は絶対だ。秩序に逆らうことは出来な…グガァッ!」

刹那、彼の身体は藁についた火のように大きく燃え上がった。

「なっ!?これは一体…!?」

 

ブラウはそれを見てニヤリと笑う。

「秩序だからといって俺が従うと思ったか」

 

そこには真紅に燃え上がった神の火だるまがあった────。

 

 

 

 

 

「さすが、魔王と呼ばれるだけのことはあるね」

火だるまの中からミルドエイベスの声が聞こえる。

 

「しかし、秩序から逃れることは出来ない」

奴がそう言うと、バサァと彼を包んでいた炎が消え失せた。

見れば身体のあちこちに少しばかりの傷ができているが、どれも致命傷とは至っていない。

 

「君は確かに今、秩序に傷をつけた。だがそれはあくまで一時的なものだ。時間が経てば秩序はその全てを修復する」

奴の傷がみるみる内に治っていき、まるで何事もなかったかのように元の傷一つない身体に戻った。

 

「さて、それは本当に秩序か?ひょっとしたらそう信じ込ませる為の嘘やも知れぬ」

 

「信じないなら、別にそれで構わないよ」

奴はそう告げると、魔法陣を一つ展開する。

 

「<転移(ガトム)>」

 

辺りが白い光に包まれ、天父神はどこかへ転移していった。

無論、追いかけることもできるが今はそれよりもすることがある。

 

ぁぁあ…ここは…

しばらくするとそんな声とともに先まで神の前で跪いていた人間と魔族たちが起きた。

 

まだ一部のものは目が覚めていないようで、ぐったりと倒れている。

 

起きた者は目を凝らし、目の前にいる人物をボーッと見つめる。

すると彼らは驚いたように口を開けた。

 

「ま、ま、魔王様!?何故こんなところに…!」

そこまで言って、彼らは何故自分たちがここにいるか思い出したようだ。

 

まぁ無理もない。彼らは洗脳されていたのだ。

 

「安心しろ。既にあの神は退けた」

 

そう言ってやれば何人かがホッと胸を撫で下ろす。

 

しばらく待っていると全員が目覚める。

 

「ふむ。既に聞いた者もいると思うがあの神は退けた。安心して帰っていいぞ」

 

男がそう声をかけると、彼らは次々に転移していく。

 

全員が転移したのを確認し、彼も<転移(ガトム)>を使い魔王城へと戻った────………。

 

 

 

 

「<獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)>」

俺がそう呟けば、ドアがバタっと開き金髪の少女が慌てたように走ってくる。

 

「サーシャ、どうした。朝から慌てて」

俺は走ってきた金髪のツインテールの少女、サーシャに声をかける。

 

「どうしたもこうしたも、またアノスが寝ぼけて魔法を使ったと思ったからじゃない!」

 

「起きてて良かった」

後から入ってきた銀髪の少女、ミーシャが俺に声をかけた。だが、どうやら少し慌てていたようだ。その表情には少しばかりか、安堵の表情が浮かんでいる。

 

「なに、例え寝ぼけていたとしてもこのくらいならなんとかなる」

 

俺は構築された<獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)>の魔法陣を<破滅(はめつ)魔眼(まがん)>にて睨み滅ぼす。

 

「例え使ったとしてもここはパブロヘタラだ。浅層世界の魔法など取るに足らぬだろう」

 

「それにお前たちもいる」 

俺はサーシャの頭に手をポンと置く。

 

「夢を見ていた?」

ミーシャが俺の深淵を覗きこむようにして口を開く。

 

「あぁ」

 

別に隠すつもりもない為正直に答える。

 

「魔王と呼ばれていた男の夢だった。天父神ミルドエイベスとやらと戦っていた夢だ」

 

「その魔王ってアノスことじゃ…ないわね。天父神ミルドエイベスなんて聞いたことないもの」

俺の手を頭に置かれたままのサーシャが口を開き呟く。

 

少なくとも俺が戦った天父神の名はノウスガリアだ。ミルドエイベスなど知らぬ。

 

「アノスの前世?」

ミーシャが首を傾げながら俺に問う。

 

俺の前世というのは、俺の根源が深層世界のものであったという仮説に基づくものだろう。

 

「そうも考えたがな。それにしては弱かった」

そう言ってやればサーシャがむむむと唸りながら口を開く。

 

「<獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)>を使ったって事は泡沫世界…?」

 

「かも知れぬ」

 

どちらにせよ、ここにいては答えは分からぬ。

 

俺は魔法を使って服を着替え、外へ出た。

 

外へ出ると朝から威勢のいい声が聞こえる。

 

「カーカッカッカッ!ん?どうしたお前ら!そんなものでは魔王の足元にも及ばぬぞ!どれ、この俺が直々に教鞭をとってやろうではないかっ!」

 

エールドメードだ。

 

その視線の先を見れば、やつれた顔の生徒たちがフラフラとしながら立っていた。

 

ちょうどいい、エールドメードに今朝の夢の事を聞いてみるとするか。今回のこれはアイツが好みそうな話だ。その間、生徒たちもしばらく休憩できるだろう。

 

そう思い俺はエールドメードと魔王学院の生徒たちの方へと足を向けた──────────………




初投稿です。
十五章がなかなか出ないので勝手に続きを書いてます。
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