「サーシャ」
俺は目の前ですやすやと眠っている彼女に声をかけるが、一向に反応がない。
彼女の頭に手をやり、ゆらゆらと揺らす。
俺はその手の揺らすスピードを少しずつ早めた。
「さっさと起きるがいい。さもなくばその首が吹き飛ぶぞ」
そう言ってやると、サーシャが一瞬、パッと目を開いた。
しかし、次の瞬間には瞼は再び閉じられ、彼女はうっすらと目を開ける。
「……?アノ……ス?泡沫世界の魔王の夢にどうしてアノスが……」
どうやら、まだ寝ぼけているようだ。
「起きろ。もう昼だ」
「…やっぱり、夢だわ…」
聞いておらぬ。なかなかどうして、厄介なものだ。
「夢ではない。また抱いてやれば起きるか?」
俺はサーシャを軽く持ち上げ、そのまま両手で抱き抱えた。
するとサーシャは、再びうっすらと目を開ける。
「……あれ……アノス……?」
俺の腕の中にあるサーシャが瞬きをして、じっと俺のことを見つめた。
焦点があっていなかった目が次第にしっかりしてきて、彼女は言葉をこぼした。
「……もしかして……もう……朝……?」
いや、昼だ。
「あれ?ミーシャたちは?どこに行ったの?」
サーシャが辺りを見渡しながら言う。
「ミーシャなら母さんの手伝い、アルカナならファンユニオンたちのところだ」
「それじゃ、アノスはずっと私のこと見ててくれてたの?」
「そうだが、何か問題か?」
「いや、別に、何にもないけど…」
サーシャはそう言うと、どこか恥ずかしそうに俯いた。
「言いたいことがあるならはっきり言うといい。俺を誰だと思っている」
「……いや…別に…特に何にもなんでもないから……」
「ふむ。そうか。ではいらぬ詮索をしたな」
俺はサーシャをおろしてやると、足元に魔法陣が描かれた。
それが頭上へ上がっていく毎に、サーシャのネグリジェが制服へと変わっていく。
一瞬で彼女は着替えを終えた。
俺たちは、母さんやミーシャのいる方へ向かい歩いていく。
「そういえば泡沫世界の魔王についてはどうなったの?」
サーシャが夢で見た記憶を辿りながら聞いた。
「泡沫世界の場所なら、もう目処はたった」
「もう分かったの?いくらなんでも速すぎない?だって、見つけるも何も、魔力線すら繋がってなかったんでしょ?」
「夜、寝ている間、つまり、俺たちが夢を見ている間のみ魔力線で繋がっていたのだ。一体どうやって繋げたのかまだ分からぬが、これを辿って行った先に繋がっていた泡沫世界を見つけた。だが、どうやらただの泡沫世界という訳ではなさそうだ。何か、裏で仕組んでいる人物がいるとしか思えぬ。銀灯が働いていないはずの泡沫世界から、銀海を通って、パブロヘタラまで魔力線が繋がるはずがないからな」
つまるところ、相手はかなりの実力者だいうことだ。相手が例え泡沫世界の住人ではなく、深層世界の者だったとしても、そこからここまで魔力線を繋げられる者だ。存外、不可侵領域にも引けを取らない存在やもしれぬ。
しばらく歩いていると、母さんや、ミーシャたちの姿が見えた。
「あっ、アノスちゃん!おはよう!」
母さんが気付き、俺に抱き寄ってくる。
「相変わらず、あなたのお母様ってお母様らしいわよね」
サーシャは、パンを焼いているエクエスを見ながら言った。
「お陰で、希望のパンがよく焼ける」
「いや、そういうことじゃないんだけど…」
恐らく、エクエスの扱いに何か感じるところがあるのだろう。
これでも一応、ミリティア世界を滅ぼそうとしていたのだからな。
「そういえば、アノスちゃん。この前からずっと出かけてばっかだけど、お仕事忙しいの?今日も帰るの遅くなる?」
母さんが俺を心配するように聞いてくる。
ふむ。心配をかけさせていたか。
確かに、ここ最近帰ってこない日が多くあった。
これ以上母さんに心配をかけるわけにはいかないか。
「ちょっと待てぇ!」
そう考えていた時、父さんが横から突っ込んできた。
しかし、父さんはそのまま勢いよく壁にぶつかった。
父さんは壁から離れると俺の肩を掴み言った。
「アノス…。お前は強い。俺たちは弱いから、お前が何をしようとしているかや、何をしたのかはよくわからない。けどなっ!俺たちは、お前が悪いことをするようなやつなんかじゃないって知ってる!だからなっ!俺たちの心配なんていらない。お前はお前の好きなようにやればいいんだ。お前には、お前の仕事が、あるんだろ?」
そう言うと、父さんはキリッとした表情をし、俺をじっと見た。
「<
サーシャは二人につっこみながら、頭痛が痛そうな表情を見せる。
二人がその強さを知らぬとはいえ、つっこまずにはいられなかったのだろう。
「アノスちゃん。私たちのことは心配せずに、アノスちゃんは、アノスちゃんのやりたいことをやってね」
母さんも、父さんと一緒に俺の背中を押す。
どうやら杞憂な心配だったようだ。
二人に、これから泡沫世界に行くことを説明しなくてはな。
「母さん、父さん。これから仕事に行ってくる。しばらくの間戻ってこないと思うが、安心して待っているといい」
「なにっ、俺たちは大丈夫だ。安心して仕事に行ってこい!」
父さんは、親指をグッと胸の前で立てる。
安心しろ、という意味なのだろう。
「これから仕事に行くって、今から行くの?まだ起きたばっかりよ?」
起きたばっかりなのは、サーシャだけだ。
「安心しろ。既に魔王列車の準備はできている」
そう言いながら、<
「これから出発する。準備はいいか」
「はいっ!問題ありません!いつでも大丈夫です!」
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俺は<
続いて、ミーシャ、サーシャもやってきた。
俺は<
「しばらくの間、泡沫世界に行ってくる。母さんや父さんたちを頼んだ」
「御意」
俺が居ない間に、襲撃する者がいないとは限らぬ。
念には越したことはないだろう。
俺は周囲を見渡し言った。
「用意はいいか」
俺の言葉に、その場にいた全ての者が頷く。
「では出発だ。目的地は名も知らぬ泡沫世界。各自、配置につけ」
俺がそう命令すると、魔王列車が動き出す。
泡沫世界で魔王を名乗る者や、グラハムを名乗る者。
単なる偶然やもしれぬが、あまりに出来すぎている。
何者かが裏で糸を引いていると考えるのが道理だろう。
だが、例え何が待っていようと俺には関係ない。
我が眼前に立ち塞がるありとあらゆる理不尽など、滅ぼし尽くすだけだ。
魔王列車出発。
一体泡沫世界には何が待ち構えているのか…。
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ここまで勢いで書いたので、次の話からしっかりとプロットを練りたいと思います。なので投稿が多分遅くなります。今年中にもう一回は投稿できるように頑張ります。
こんな駄文ですが、原作を崩さないようにしたいので、何かあったり、疑問点、おかしな点があったら教えてほしいです。
自分にできる限りで改善します。