ミーシャの目の前に現れた扉は時が経つにつれだんだんと大きくなり、人一人通れるサイズへと変わる。
刹那、その空間の裂け目から一つの人影が現れた。
「創造と破壊の秩序。この二つの秩序は互いに相反する存在であり、決して出会うことは無い。それは秩序であり、決して一介の魔族が破れるものではない」
裂け目から現れた神族は、その歩みを止めることなく一歩、二歩とミーシャ達の元へと向かって行く。
「それなのになぜ、諸君らは共に行動している?否、諸君らはこの世界の秩序に囚われていない。要するに不適合者だ。しかし、諸君らはその身に秩序を宿し、根源は我らと同じ神族のもの。これをただの不適合者と看做しても良いのだろうか。否、これらのことには何かしらの理由があると考えるべきだ」
その親族は言葉を一旦区切ったかと思えば、サーシャ達を見据えて言った。
「では、問おう。神でありながら不適合者である諸君らは、一体何を求めて創造神アイミレユーミを探している?返答次第では、諸君らは滅ぶ運命にある」
その質問に対し、一拍置いてミーシャが答える。
「私たちはただ彼女に会って話をしたいだけ。それ以上を望むつもりはない」
この返答に対し、目の前の神はギラリとその神眼を光らせたかと思えば、数度瞬きをし、その眼から警戒が消えた。
嘘はないと判断したのだろう。
目の前の神は一拍置き、口を開く。
「どうやら嘘はないようだ。しかし話がしたいか。話をしたくらいで何かが変わるとは思わんが、まぁいい。折角だ、我が創造神の元まで連れて行ってやる」
なかなかどうして、神族にしては礼儀正しい奴のようだ。
そう思えば、目の前の神族が二人の足元に魔法陣を描く。
<
魔法陣に魔力が込められると、二人の視界は純白に染まった。
◇
俺は空に浮かぶグラハムを見据えて言った。
「久しいと言ったな、グラハム。なかなかどうして、俺は記憶力には自信があったのだが、貴様の根源に見覚えはない」
俺はグラハムを名乗る男の深淵を覗くが、その根源から一切の虚無を感じられない。それどころか、その根源はただの人間と何ら変わりもないのだ。
「しかし貴様は俺が知っているある男に似ている。そいつは虚無の根源を持っていたが、今はいない。俺が滅ぼした」
「虚無は滅びの先にあるものだ」
俺の言葉に続くように、グラハムが呟く。
「虚無を滅ぼすことはできない。例え滅んでも、ただ虚無へと還るだけで、その現象はなんの意味も持たない。君が滅ぼしたと思っている虚無は、世界を渡って転生した。もう一度言おう、アノス。僕はグラハム。勇者を演じていた時もあれば、君の父を演じた事だってある、君の知っている唯一のグラハムさ」
そう言ったグラハムを俺は鼻で笑って言った。
「さて、存外自分をグラハムだと思い込んでいるただの阿呆かも知れぬ」
それを聞いたグラハムは一瞬驚き目を丸くすると、アハハと笑い言った。
「なら、試して見なよ」
「無論、そうするつもりだ」
俺はグラハムの周りに魔法陣を100門描くと同時に地を大きく蹴る。
描かれた魔法陣から<
グラハムの体から黒き粒子が七重の螺旋を描く。
「<
奴の根源の深奥で滅びの魔法を発動させた。
奴が本物のグラハムか否かはさて置き、問題なのは奴が虚無の根源を持っているかどうかだ。
もし持っているとすれば、例え奴が本物でなくてもその存在は厄介極まりない。
俺はグラハムの根源に向けて眼を凝らす。
奴の根源は溢れ出す滅びを抑えきれず、その体から暗黒の火の粉が弾ける。
やがて根源はその力を使い果たしたかのように瞬く間に滅びた。
だが、滅びたはずの根源から微かに魔力が溢れる。
「僕を滅ぼすことはできない」
目の前には根源が復活したグラハムが立っていた。
「ふむ。なるほどな」
俺はグラハムにゆるりと近づき、〈
「貴様は虚無の根源など持っておらぬ。先ほど根源が復活したのは〈
俺は握りつぶしたグラハムを名乗る男の根源を再生する。
「さて、弁明があるなら聞くが?」
根源か再生したグラハムは不敵な笑みを浮かべる。
「確かに、僕は虚無の根源は持っていない」
「だからと言って、僕がグラハムでないとどうして思えるんだい?虚無の根源を持っているからグラハムなのか、グラハムだから虚無の根源を持っているのか、答えはそのどちらでもない。アノス、君なら分かるはずだ」
「さて、な」
俺はグラハムの言葉を聞き流す。
「君は夢を見てここにやって来たんだろう?あれこそが僕がグラハムである証拠だ。君の中にある僕の根源は虚無だ。例え滅ぼしても僕との繋がりは存在し続け、僕はそれを通して君に夢を見せた。君は泡沫世界という小さな枠組みを超えた先ですら、未だその孤独を埋めることはできていない」
「ブラウ・アルヴィローゼ。君が夢で見た彼は本物の彼とは違う点が三つ存在する。まずは彼に会うといいよ。彼は君によく似ている」
グラハムはそう言うと<
俺は〈
『聞いたか?どうやら夢で見たブラウの情報には間違いがあるらしい』
『分かった』
『カカカ、なかなか面白くなってきたじゃないか』
ミーシャとエールドメードが答えた。
『エールドメード、何か収穫はあったか?』
『たった今、城の周りの街をぐるりと見てきたところだが、なかなかどうして面白いことになっている』
俺は街へ視線を向ける。
「これは……」
その街並みは、2000年前のミッドヘイズとよく似ていた。
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あ、そういえばアニメの2クール目が始まりましたね。
え?それよりももう原作の15巻が発売されてる?
時の流れとは非情なものですね。
それではまた次の話で