魔王学院の不適合者と泡沫世界の魔王   作:川野甘味

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続きを更新しました。え?もう6月?




二人の不適合者

ミーシャの目の前に現れた扉は時が経つにつれだんだんと大きくなり、人一人通れるサイズへと変わる。

 

刹那、その空間の裂け目から一つの人影が現れた。

 

「創造と破壊の秩序。この二つの秩序は互いに相反する存在であり、決して出会うことは無い。それは秩序であり、決して一介の魔族が破れるものではない」

 

裂け目から現れた神族は、その歩みを止めることなく一歩、二歩とミーシャ達の元へと向かって行く。

 

「それなのになぜ、諸君らは共に行動している?否、諸君らはこの世界の秩序に囚われていない。要するに不適合者だ。しかし、諸君らはその身に秩序を宿し、根源は我らと同じ神族のもの。これをただの不適合者と看做しても良いのだろうか。否、これらのことには何かしらの理由があると考えるべきだ」

 

その親族は言葉を一旦区切ったかと思えば、サーシャ達を見据えて言った。

 

「では、問おう。神でありながら不適合者である諸君らは、一体何を求めて創造神アイミレユーミを探している?返答次第では、諸君らは滅ぶ運命にある」

 

その質問に対し、一拍置いてミーシャが答える。

 

「私たちはただ彼女に会って話をしたいだけ。それ以上を望むつもりはない」

 

この返答に対し、目の前の神はギラリとその神眼を光らせたかと思えば、数度瞬きをし、その眼から警戒が消えた。

 

嘘はないと判断したのだろう。

 

目の前の神は一拍置き、口を開く。

 

「どうやら嘘はないようだ。しかし話がしたいか。話をしたくらいで何かが変わるとは思わんが、まぁいい。折角だ、我が創造神の元まで連れて行ってやる」

 

なかなかどうして、神族にしては礼儀正しい奴のようだ。

 

そう思えば、目の前の神族が二人の足元に魔法陣を描く。

 

転移(ガトム)>の魔法陣だ。

 

魔法陣に魔力が込められると、二人の視界は純白に染まった。

 

 

俺は空に浮かぶグラハムを見据えて言った。

 

「久しいと言ったな、グラハム。なかなかどうして、俺は記憶力には自信があったのだが、貴様の根源に見覚えはない」

 

俺はグラハムを名乗る男の深淵を覗くが、その根源から一切の虚無を感じられない。それどころか、その根源はただの人間と何ら変わりもないのだ。

 

「しかし貴様は俺が知っているある男に似ている。そいつは虚無の根源を持っていたが、今はいない。俺が滅ぼした」

 

「虚無は滅びの先にあるものだ」

 

俺の言葉に続くように、グラハムが呟く。

 

「虚無を滅ぼすことはできない。例え滅んでも、ただ虚無へと還るだけで、その現象はなんの意味も持たない。君が滅ぼしたと思っている虚無は、世界を渡って転生した。もう一度言おう、アノス。僕はグラハム。勇者を演じていた時もあれば、君の父を演じた事だってある、君の知っている唯一のグラハムさ」

 

そう言ったグラハムを俺は鼻で笑って言った。

 

「さて、存外自分をグラハムだと思い込んでいるただの阿呆かも知れぬ」

 

それを聞いたグラハムは一瞬驚き目を丸くすると、アハハと笑い言った。

 

「なら、試して見なよ」

 

「無論、そうするつもりだ」

 

俺はグラハムの周りに魔法陣を100門描くと同時に地を大きく蹴る。

 

描かれた魔法陣から<獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)>が放たれると同時に、俺は<深源死殺(べブズド)>にて漆黒に染まった手でグラハムの根源を掴んだ。

 

グラハムの体から黒き粒子が七重の螺旋を描く。

 

「<界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)>」

 

奴の根源の深奥で滅びの魔法を発動させた。

 

奴が本物のグラハムか否かはさて置き、問題なのは奴が虚無の根源を持っているかどうかだ。

 

もし持っているとすれば、例え奴が本物でなくてもその存在は厄介極まりない。

 

俺はグラハムの根源に向けて眼を凝らす。

 

奴の根源は溢れ出す滅びを抑えきれず、その体から暗黒の火の粉が弾ける。

 

やがて根源はその力を使い果たしたかのように瞬く間に滅びた。

 

だが、滅びたはずの根源から微かに魔力が溢れる。

 

「僕を滅ぼすことはできない」

 

目の前には根源が復活したグラハムが立っていた。

 

「ふむ。なるほどな」

 

俺はグラハムにゆるりと近づき、〈深源死殺(べブズド)〉にてその根源を握りつぶした。

 

「貴様は虚無の根源など持っておらぬ。先ほど根源が復活したのは〈根源再生(アグロネムト)〉によるものだ。大方、それにて俺を騙そうとしていたのだろう。虚無の根源は滅びに近づけば近づくほど本来の無と帰す。そこから魔力が溢れることはない」

 

俺は握りつぶしたグラハムを名乗る男の根源を再生する。

 

「さて、弁明があるなら聞くが?」

 

根源か再生したグラハムは不敵な笑みを浮かべる。

 

「確かに、僕は虚無の根源は持っていない」

 

「だからと言って、僕がグラハムでないとどうして思えるんだい?虚無の根源を持っているからグラハムなのか、グラハムだから虚無の根源を持っているのか、答えはそのどちらでもない。アノス、君なら分かるはずだ」

 

「さて、な」

 

俺はグラハムの言葉を聞き流す。

 

「君は夢を見てここにやって来たんだろう?あれこそが僕がグラハムである証拠だ。君の中にある僕の根源は虚無だ。例え滅ぼしても僕との繋がりは存在し続け、僕はそれを通して君に夢を見せた。君は泡沫世界という小さな枠組みを超えた先ですら、未だその孤独を埋めることはできていない」

 

「ブラウ・アルヴィローゼ。君が夢で見た彼は本物の彼とは違う点が三つ存在する。まずは彼に会うといいよ。彼は君によく似ている」

 

グラハムはそう言うと<転移(ガトム)>の魔法を使いどこかに転移していった。

 

俺は〈思念通信(リークス)〉を使い情報を共有する。

 

『聞いたか?どうやら夢で見たブラウの情報には間違いがあるらしい』

 

『分かった』

 

『カカカ、なかなか面白くなってきたじゃないか』

 

ミーシャとエールドメードが答えた。

 

『エールドメード、何か収穫はあったか?』

 

『たった今、城の周りの街をぐるりと見てきたところだが、なかなかどうして面白いことになっている』

 

俺は街へ視線を向ける。

 

「これは……」

 

その街並みは、2000年前のミッドヘイズとよく似ていた。

 

 





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あ、そういえばアニメの2クール目が始まりましたね。
え?それよりももう原作の15巻が発売されてる?
時の流れとは非情なものですね。

それではまた次の話で
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