首輪付きの山猫、赤い銃に繋ぐ   作:飴玉鉛

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ヴェスパー部隊迎撃 2/2

 

 

 

 

 

 この局地戦に於ける勝敗の行方は、実質的にこの二機に委ねられた。

 

 アーキバス・グループ強化人間部隊ヴェスパーの首席隊長、V.Ⅰフロイト。

 ベイラム・グループ専属AC部隊レッドガン所属、G9ラスティ。

 螺旋軌道を描く二機の激突は、余人の立ち入る隙がない熾烈な空中接近戦(ドッグファイト)を繰り広げる。

 漆黒のACロックスミスを駆るフロイトは、蒼黒のACスティールヘイズの機体構成と機動を見て、意味深な笑みを口許に湛えて敵機を称賛した。その口振りには余裕が多分に滲んでいた。

 

『ホワイトユニコーンに似ている。お前にそれが乗りこなせるのか?』

『――似ているのは機体だけだ、私を通して別の誰かを見るのはやめてもらおうか!』

 

 上を取ろうと上昇しながら放つロックスミスの近接射撃を紙一重で躱し、お返しとばかりに連射した速射型リニアライフルの火線が、掠りもせずに回避される。ブースターとジェネレーター出力の限界か、ブースターから吐き出される火が弱まり降下していく中、ロックスミスの両肩から12基ものドローンが射出される。狙いは当然、ラスティのスティールヘイズだ。

 ラスティは腰部から接続した神経を通じ、機体を我が身と同様の感覚で自在に操る。蒼黒のACは一度強く橙色の火を噴射し、漆黒のACから距離を取るなり細かく左右に振らした。そうすることで自動誘導のレーザードローンの包囲射撃を躱そうとしたのだ。しかし、11基のドローンのレーザーは見事に躱せたが、残り一基の不自然な射撃をコアに受けてしまった。

 

『ッ!? チィッ……!』

 

 強烈な負荷に機体が悲鳴を上げる。舌打ちしながらも、ラスティは止まらない。凄まじい火線が繰り返されるのを回避しつつ、ラスティの目は不自然な動きを見せたドローンを注視する。フロイトの正確な射撃をなんとか凌ぎつつも目を逸らさない。すると視認できた、役目を終えたドローンが地面に落下して溶けるように消える中、その一基のドローンだけは主の許へ帰還したのが。

 瞠目する。地面に二機のACが着地する直前、ロックスミスの足元にバズーカを放って爆炎に巻き込もうとしながら更に後退。フロイトのロックスミスは余力を当然残しており、QBによって機体を後方へ一気に下げ、バズーカの爆炎を無傷でやり過ごす。そうしながら両手を腰にやって武装を交換、レーザーハンドガンを二挺握り、二条の火線を繚乱と乱れ撃つ。

 右腕の速射型リニアライフルと、左腕に握ったバズーカで応戦しながら、ラスティはフロイトの兵装を分析する。両肩のレーザードローン格納器。そして両腕のレーザーハンドガンと、両腰にマウントした新型レーザーライフル、パルスブレード。この内レーザーライフルはハンドガン並の速射を可能として、チャージしての射撃はライフル並の火力があるのは見て確かめられた。

 問題はレーザードローンだ。普通は放てば最後、使い捨てるだけの鉄砲玉として追尾してくるが、フロイトのそれは通常規格のものではない。正体を見極めようとするラスティに、答えを開示するかの如く一基のドローンが解き放たれた。

 

『これは……ッ!?』

『コイツを作らせる為に、スネイルの機嫌を伺う羽目になった。高く付いたんだ、自慢させてくれ』

『戦いの中で遊ぶとは、アーキバスの品位も知れるというものだなッ!』

 

 放たれたドローンを撃ち落とそうとするも、それはラスティの射撃を巧みに躱す。明らかにおかしい挙動を目の当たりにしてラスティは確信した。

 このドローンは――正確には両肩から展開されたものではない。背部に格納ユニットがあるはず。そこから射出されたドローンは、システム任せの自動制御ではなく、フロイト自身がどうやってか操っているのだろう。レーザーを放ち終えても使い捨てにせず、再度格納して再展開を可能にしている。

 恐るべき兵装だ。ラスティは手を抜いているつもりはないが、意識が明確に切り替わる。戦いの中で遊ぶとは、気に入らん。だがその強さは本物だ、全力で撃墜しに掛からねば己が危ない。

 

 しかしラスティとフロイトの意識はすれ違っていた。ラスティは敵を墜とさんと戦意を滾らせているのに対し、フロイトの方には是が非でもラスティを撃墜しようという気迫がなかったのだ。

 

『うん? 凄いな、そういう動きもあるのか……』

 

 ラスティの魅せる機動は、さながら地を走り力強く跳ぶ狼を彷彿とさせる。高速機動で撹乱し、新型のドローンをレーザースライサーで切り裂いた敵機にフロイトは感心したが――

 

『――フロイト、何を遊んでいるのです! いつまでも些事に構ってないで仕事をなさい!』

『ああ、そうだったな。今回はお前の指示に従う約束だった。……そういうわけだ、これからもっと面白くなりそうだったが……こちらはお前にだけ構っていられるほど暇じゃないんでね、悪いが適当にあしらわせてもらうぞ』

『なんだと』

 

 スネイルの苛立った声に、フロイトは興醒めとばかりに反応する。

 意識の違いがここに出た。ラスティは敵機を抑え込むのが自らの役割と弁えて、それを成してみせようと敵機に向かっていたが、フロイトにはラスティに拘泥するつもりは微塵もないのだ。

 明確にロックスミスの機動が変化する。エゴの塊であるフロイトは、己の愉しみを優先する精神性を有していた。だが何年も前から彼の関心は一人の男が独占している故に、エゴが表に出にくい精神状態へ変化している。それは彼の卓越した技量を、参謀の求める作戦行動へ注ぎ込ませる結果になっていた。今のフロイトは、スネイルが理想とする最高の戦力なのだ。故に、

 

『G9ラスティ、だったか? お前のような面白い男が、今の今まで隠れていたのは予想外だった。だが残念だ――俺は、お前より遥かに強い男を目指している。年季が違う、という奴だ』

 

 フロイトはラスティの腕を認めた。彼を速攻で撃墜するのは諦め、その脅威を自身が張り付くことで押し留めながら、周囲の敵機へと狙いを変えたのだ。

 明らかに攻撃の手が緩んだことで、ラスティが反撃の猛攻を加えはじめたというのにフロイトへ有効打は全く決まらない。飛び込んでのアサルトアーマーを展開をする隙もなかった。

 

 これが意味するのは、フロイトが今のラスティよりは上手だということ。技量は近い、されど拮抗もせず上を行かれている。戦闘の経験値、積み上げた努力と、その向け先の差が如実に現れた。片手間にあしらわれていると悟ったラスティは奥歯を噛み締め、胸中を過ぎる屈辱を食い潰す。

 

 フロイトは白い悪魔を目指すにあたって、自身の腕だけを磨くのではなく、機体構成そのものにも拘るようになっている。その結果、対リンクスを見据えたフロイトが導き出した結論は――手数だ。単機からなる圧倒的な火力、どれほどの超絶技巧の持ち主でも躱せぬ弾幕に活路を見い出した。

 フロイトの駆る新型ACロックスミスは、アーキバスの技術の粋を集めて設計されたフラグシップ機と称するに足るもの。コア理論から逸脱してはいないが、明らかに()()の機体である。

 彼は()()タイプが有りならば、()()タイプも有りだろうと嘯いて。ただでさえ扱える者の少ないドローンの数を増やし、更に自身で操作する新型ドローンも増設し腕を四本に増やしていた。

 ()()()()()()が腰のレーザーライフルとパルスブレード発生器を握り、ラスティを牽制しながら四方八方へ二挺のレーザーハンドガンを乱射し、自動制御のドローンを12基放つ。

 この数年間の研鑽の中、機体構成を確立したフロイトが磨いたのはマルチタスクだ。一度に行える作業量を増やしたフロイトの手数は一人軍隊へ進化を遂げ、対多数戦に於いても圧倒的な猛威を振るう。超人的な視野の広さを獲得したフロイトの空間認識能力は、白い悪魔の影を踏むまでに至っていた。

 

『なっ――ぐぁぁぁ!』

『G7! 無事か!』

『なん、とか……! ですがッ』

『G8、G10、G13、反応ロスト……そ、総長ォッ!?』

 

 縦横無尽に駆け回る12基ものドローン。並の使い手すら稀な中、フロイトほどの技量と空間認識能力の持ち主が操れば、下手なMTよりも格段に脅威度は跳ね上がる。夥しい火線の繚乱に、続け様に消え去るレッドガンの正規パイロット達が、フロイトの用いるドローンの力を示していた。

 彼らはヴェスパー部隊の精鋭相手に、数の利を活かして優勢に戦闘を行なっている最中だった。そこをフロイトが横合いから突き刺したのである。次々に撃墜される味方を見てG11とG12が悲鳴を上げる。士気が下がれば必然、精神的支柱の英雄に縋りたくもなるだろう。だが……。

 

『フフ……情けない部下を持って苦労しているようだ。流石の貴方でも苦しいのでは?』

 

 ACオープンフェイスを駆る、針金めいた相貌の男が冷笑する。

 

『うろたえるな、バカ者共……! 俺はこの陰険なインテリ気取りとその取り巻きの相手で忙しい! 殺られるのが嫌なら尻尾を巻いて下がっていろ!』

 

 ――ベイラムの歩く地獄、ミシガンは複数のACを単機で相手取っているのだ、とてもじゃないが援護してやれる余力はなかった。

 彼が対峙しているのは、V.Ⅱスネイル、V.Ⅵメーテルリンク、V.Ⅶスウィンバーンである。個々を見ればミシガンに及ばないが、連携を取る三機の手練に苦戦しないわけがない。

 特に最も手強いスネイルを中心とするフォーメーションには隙がなく、ミシガンが単機で彼らを抑えていたからレッドガンは優勢であったのだ。レッドガンは八機、ヴェスパーも八機で、内二機が後方のMT部隊の抑えになっているならば、ミシガンが三機抑えられているのは大きなアドバンテージになるはずで。フロイトがいなければ、最悪ヴェスパーは数の差で制圧されていた。

 

 互角だったのだ。ヴェスパーとレッドガンは、イレギュラーを除けば拮抗した力関係だった。しかし稀代の超人がイレギュラーの領域に踏み込んだことで天秤が傾いている。

 

『クッ……これ以上やらせるものか!』

『どうかな?』

 

 ラスティがフロイトを抑え込めさえすれば、こんな苦境には陥らなかった。口輪を嵌められた狼のエンブレムが遠吠えをしたように、ラスティは乾坤一擲の気構えでフロイトへ突貫する。

 アサルトブーストによる突撃に合わせ、レーザースライサーを展開し斬撃を見舞わんとするスティールヘイズ。それを見て取るやパルスブレードを展開して適当に振り回し、牽制することで致命的な間合いへの潜入を阻んで絶妙な位置を堅持するフロイトは、ラスティの技量に内心感嘆の念を覚えていた。

 しかし、だ。

 フロイトのエゴに満ちた精神は、仮に己の死に際に至ろうともブレるということがない。脳を焼かれた強化人間さながらに、動揺という感情の揺れとは無縁だ。冷静に狼の猛攻を躱しながら、彼は口煩いスネイルのご機嫌伺いの為に一射を放つ。機械よりも正確な射撃――ラスティの被弾覚悟の急接近を受け手数が一気に減ったが、依然として周囲の状況を見定める眼力に曇りはない。

 スネイル含む三機のACを相手取るミシガンは、背後からの一射の『直撃』を受け、強烈な負荷により機体が硬直してしまう。唸る老雄に対し、ヴェスパーの次席隊長は上機嫌に笑った。

 

『グゥゥウ……!』

『流石は我らが首席隊長殿だ。普段からこれぐらい真面目にやってもらいたいものです』

『畳み掛けます、スネイル閣下!』

 

 動きが止まれば砲火が集中するのは道理。三機のACから放たれる青白い火線がライガーテイルに次々と着弾し、負荷に押し負けた左腕部が根本から弾け飛ぶ。ミシガンは機体の負荷限界時に自動で発動するコア拡張機能、『ターミナルアーマー』が自機の周囲を囲うのを見て()()であると判断した。

 

『えぇい! やむを得ん、愉快な遠足はおしまいだ! 撤退しろ! 役立たず共!』

『させるとお思いで?』

『させるのが上官の役目だ!』

 

 周囲を囲うバリアが健在な内に態勢を整え、ミシガンは自身を殿にしての撤退を命じる。

 だがその命令を聞かない者がいた。大破寸前でなんとか持ち堪えていたG7ハークラーは、ミシガンの機体を押しのけるように前に出たのである。

 

『ッ、貴様、なんのつもりだ!』

『下がってください、総長! 殿はこの死に損ないが引き受けます!』

『おいおい、G7! テメェだけに良い格好はさせないぜ!』

『ここで下がったらホントの役立たずになっちまう。死ぬ順番にまで年功序列を持ち出さんといてくださいよ、総長!』

『貴様らァ! さっさと下がらんか、邪魔だ!』

『邪魔は総長でさぁ! 総長が残ってたらオレらまで帰れねぇ、さっさと撤退してくれよ!』

 

 G7だけではない。G11、G12までもミシガンの危機に粘りを見せる。

 とても数分前にミシガンに縋り、情けない声を出した者とは思えない。だがレッドガンに弱卒なし、自身らの慕う英雄の危機を察するや肝が据わり、精鋭としての矜持を発揮した。

 命令違反だ。彼らの覚悟を悟ったミシガンは歯噛みする。

 

『……帰ったら指導してやる、しこたま殴りつけてやるから覚悟しておけ!』

『了解!』

『お手柔らかに頼んますぜ』

『泣きが入ったらもう一発だって? やっべ、急に帰りたくなってきた』

 

 軽口を叩きながらスネイル達に向かう三機のACに、とうのスネイルは鼻を鳴らす。

 彼らの目的はあくまでミシガンだ、こんな死に損ない共に構っている暇はない。後退していくミシガンを追う為に、スネイルは冷酷に部下達に命じた。

 

『フン、逃がすわけがないでしょう? メーテルリンク、スウィンバーン、さっさと片付けなさい』

『了解』

 

 敵機の機体状態は劣悪、被撃墜寸前。果たしてろくに時間稼ぎも叶わず、爆炎を上げて沈んだ。

 脱出レバーは、三人とも引かなかった。一秒でも長く持ち堪えようと火砲を放ち、些少の損傷と引き換えに散ったのである。背後で爆発し、反応の消えた部下達にミシガンは顔を赤くした。

 

『貴方は手強かった、だがその華々しい戦歴もここまでだ!』

 

 高揚して叫ぶスネイルがミシガンに迫る。しかし――両機の間に撃ち込まれたキャノンの爆炎に、咄嗟に反応して減速した。その反応速度は伊達にヴェスパー上位ではない証左である。

 予想外の横槍に苛立ち、スネイルは射角から射撃してきた敵機を見つける。そして目を剥いた。

 

『――ハッ、日頃威張り散らしてやがんのに、なんてザマだぁ? ミシガンのクソ野郎』

『これで俺らは命の恩人ってな。ちったぁ感謝してくれてもいいんだぜ?』

 

 G5イグアス、G4ヴォルタ、来援。

 G6レッドはMT部隊を蹂躙する、二機のヴェスパーの横っ面を殴りつけていた。

 スネイルは目を瞠り、ミシガンはギロリと生意気な部下達を睨みつける。

 

『援軍だと……あの忌々しい害獣の護衛に付いていたはず、もう戻ってきたというのか……!?』

 

 こんなに早く戻ってくるということは、情報漏洩したのは昨日今日ではない証拠だ。

 驚愕しながらもスネイルは冷静だった。不手際を晒した諜報部への苛立ちは脇に退ける。ヴォルタとイグアスは確かに手強い敵だが、元より犠牲が出るのは覚悟の上なのである。

 スネイルはメーテルリンクとスウィンバーンに命じた。

 

『二人とも、あの二機は任せましたよ。私はミシガンを追う!』

『りょ、了解……!』

 

 比較すると、この二人はヴォルタ達に劣る。敗死するのは目に見えていた。

 だがこの二人よりもミシガンの命の方が遥かに価値がある。ミシガンの機体状態を見るに、スネイル一人でも撃墜するのは容易だ。

 突貫する二機に、ヴォルタ達は専心した。スネイルを素通りさせて阿吽の呼吸で迎え撃つ。呆気なく自分を通す敵機にスネイルは違和感を覚えるも、自身の目的を達する為に疾駆した。

 

 だが、嫌な予感がした。そうした非科学的な感覚はスネイルの嫌うところであるが、本能的な畏れが彼の理性を振り切りレーダーを使用させる。

 慎重で用意周到、神経質な性格が、ヴォルタ達の不自然な態度を無視させなかったのだ。それは間違いなくプラスに働き――高熱源体が急速に作戦領域に迫るのを探知してしまう。吹かしていたブースターを止め、無意識に振り返ったスネイルは見た。

 

『な……なんだと?』

 

 この砦の外壁上に、一機のACが着地した瞬間を、彼は目撃してしまった。

 排熱の為に煙を吹き、銃を構えるそのACは、通常規格よりも大きくて。そして、()()

 分厚い装甲、厳つい頭部を有するのに、全体のシルエットは流線的。放たれるプレッシャーの圧力は心の芯を殴りつけ、ぐらぐらと脚を震えさせそうな威力を宿している。

 未確認機。だがスネイルは理解した。彼だけではない、他の全員が、敵味方の区別なく認識した。

 

 オープンチャンネルで、その声が言葉を紡ぐ。

 

 

 

『――随分好き勝手してくれたようだな。

 今の僕は機嫌が悪い、生きて帰れると思うなよ、ヴェスパー』

 

 

 

 G3リンクス、来援。余りにも早すぎる、予想外極まる存在の帰還。

 それを受けてレッドガン部隊の士気が爆発的に跳ね上がった。反対に、ヴェスパー部隊は焦燥する。盛り上がっているのはエゴイスト、フロイトだけだ。

 

『リンクス……! 新型か! フッ、胸が踊る、楽しくなってきた……!』

 

 しかし興奮するフロイトに対し、スネイルは頭から冷水を浴びたように冷静だった。

 計算ではどれだけ急いでも白い悪魔の帰還は間に合わないはずだった。なのに間に合っている、ということはあの新型の性能が想像を凌駕している事実に繋がる。判断は迅速だった。

 何もかも謎のヴェールに包まれた、白い悪魔の新型機。これと交戦する愚を悟ったのだ。

 

『……全機、作戦は中止です! ただちに作戦領域から離脱しなさい! フロイト、貴方もですよ。消耗した状態でアレと交戦するのは避けるように!』

『む……詰まらん。が、道理だな。まあいい……楽しみは次に取っておこう』

 

 言うなり機体を翻し、撤退を開始するスネイルに追随できたのはフロイトだけだった。彼はアサルトアーマーを展開して、撤退に転じた隙を潰し、芸術的な撤退を実現したのだ。

 ラスティはフロイトを追う。追撃のタイミングを逃したとはいえ、あの危険な男をみすみす逃がすわけにはいかないと判断したのだ。しかし、やはりスネイルはやり手であった。彼が撤退の進路として選んだ道には、取り残されたスウィンバーンとメーテルリンクがいたのである。

 

『スネイル次席隊長閣下!?』

『な、私達を捨て駒に……!?』

 

 イグアスとヴォルタを相手にしていた二人に余裕はない。背を向ければ死ぬのが分かっていた。

 故に、結果としてラスティはその戦闘が邪魔になり、まっすぐにフロイトを追うことはできず、引き離されてしまう。舌打ちしたラスティは取り残されたヴェスパー二名に標的を変えた。

 この二人以外は、まんまと離脱している。戦況は優勢だったのだ、難しい撤退ではなかった。

 

 外壁上の白い機体は敵の撤退を見送る。一応、申し訳程度に射撃をしていたが本気ではない。

 なんだ……? スネイルは覚悟していたよりも手緩い追撃を躱しながら不自然さを感じる。

 だが白い悪魔の圧力と、作戦が根本から崩れた衝撃、苛立ちで不自然さの正体へすぐには思い至らず。気づいた時には手遅れで、激怒した。

 

『行ったか。危ない危ない……燃料が尽きてたんだ、動けないのに気づかれなくてよかった。幾らなんでもギリギリを攻め過ぎたな……体も節々が痛むし、眠い……誰か回収してくれ』

 

 悪魔はたとえ動かず、ただの置き物になっていても役に立つ。

 メーテルリンクとスウィンバーンが撃墜され、コアから引きずり出されるのを眺めながら、リンクスは強行軍で得た疲労に身を委ねて気絶した。

 

 ――斯くしてレッドガンとヴェスパー、双方に被害は出た。

 

 レッドガンからはMT部隊26機、AC部隊はG7からG13までの6名。実質半壊だ。

 そしてヴェスパーからはAC3機。V.Ⅳ、V.Ⅵ、V.Ⅶから犠牲が出た。

 被害の規模で言えば、誰が見てもレッドガンの判定負けだろう。

 しかし、ヴェスパーは最大目標の達成に失敗している。

 

 この戦いがどこまで尾を引くかは――報復に燃えるミシガンの命令で、捕虜にしたヴェスパー部隊の二人から絞り取る情報量に左右されるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 




現状だとフロイト>ラスティ。
原作だとこの時点で互角寄りでもラスティの方が強いと予想しますが、本作だとモチベMAXで腕を磨き、乗機も我儘を言って作らせたワンオフ機なので、流石にフロイトの方が上です。
ラスティもリンクス以外に遅れを取ったことで、更に訓練を積むことで強くなるでしょう。

四脚がありなら四腕もありなはず。扱いきれるかは別として。
ACのくせにアイビス(デスキュベレイ)みたいなファンネルを三基積んでるロックスミス君。両肩のレーザードローンとは別口。おまけに腕が四本で、レーザーハンドガン二挺とレーザーライフル一挺、パルスブレード一本を装備。…ニ○ータ○プかな?

リンクスの専属オペレーターをそろそろ出したい。誰がいい?

  • オリジナル
  • ベイラムMT部隊のオールバニー
  • フィオナ・イェルネフェルト
  • 霞スミカ
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