心操人使とサキュバスの同級生 作:雨天結構
「よしよし、ちゃんと発情してるね」
ふかふかとした上等なベッドの上、ニタリといやらしい顔で下半身にテントを張ったまま寝ている中年男性が一人と、その横に座った高校生くらいの少女が一人。
ここが様々な「プレイ」が繰り広げられる場所とはいえ、異質な光景であった。
少女が男性の頬に手を当て、呟く。
「じゃ、貰いますよー」
そして、少女が男性の「精気」を吸い取る。
搾精。この場合、物質的な方ではなく、精神的な方。
身体の中に入ってくる
「ご馳走様でした♡」
これにて、少女の
「あ、もしもし店長。はい、終わりました。あとは
これであとは眠らせた男性達の
(にしても、個性が「サキュバス」と診断された時はどうしようかと困ったけど、案外何とかなるもんだな……)
101号室から312号室までビッシリ自分の顧客で埋まったラブホテルの中、彼女は久しぶりに今までのことを振り返る。
これはとある男性の話だ。20歳、大学二年の夏のこと。風呂上がりに強烈な立ちくらみに遭い、そのまま転倒。初恋の数百倍の胸の苦しさに耐えきれず、気絶。起きたら転生していた。
彼はこれと言った持病もなかったので、俗に言う、神様の手違い的なやつで殺されたというものなのかもしれないし、そうでないのかもしれない。真相は神のみぞ知る。
転生ガチャの中の数ある生物の中から「人間」という大当たりを引いた彼だが、そこで運を使い果たしたらしく、性別という2分の1の確率に負けた。
結果、前世で男子校から工学部に進学したが故に女子との縁がこれっぽっちもなかった彼の切実なる願い、「女の子にお近づきになりたい」は「俺自身が女の子になることだ」という驚きの方法によって成し遂げられたのであった。
彼が生まれ直した世界では「個性」という超能力が殆どの人に配られていた。世界人口の八割が個性を持っていて、なおかつ世代を跨ぐごとにその割合は増え、彼、もとい彼女の世代では無個性の人は1割もいない。
初めは戸惑った彼女だったが、「転生なんてファンタジーがまかり通るのならば個性なんてものがあっても受け入れるしかない」と納得した。
そもそも、彼女が生を受けてからの十数年という時間が、「個性」という概念を否応なしに受け入れさせたわけだが。
彼女の「個性」の発現はだいぶ遅かった。平均的には5歳程度で発現するのだが、彼女の場合は小学生になっても無個性のままだった。
いや、正確には「個性不明」だった。医者曰く、「個性因子が見られたから何らかの個性は有しているはず」とのことだが、それが分からなかったのだ。
発覚したきっかけは、小学校3年生の体育だった。運動神経抜群だった彼女はよく「お手本」として先生に指名され、皆の前で逆上がりをしたり跳び箱を飛んだりしていた。
それで倒立のお手本を見せていた時に、彼女の足を掴んでいた先生が
そうして、彼女の個性は「サキュバス」であることが判明した。
個性の説明としては、「サキュバスっぽいことは大抵できる」が最適だろう。今回の事件はこの個性の能力の一つ、「彼女に魅了された相手に触れることで淫夢を見せる能力」が無意識に発動した結果だった。
(体育教師おめぇロリコンじゃねぇか)
さてこの個性、非常に面倒なところがあった。いや、存在そのものが厄介極まりないのだが、それは置いておくとして。
この個性の能力の一つに、「触れた相手の精気を吸い取る」というものがある。この「精気」というのは、ゲームで言うところのいわゆるMP的なもので、サキュバスの能力を使う時はこの精気を消費することになる。
そして、この精気が枯渇すると、凄まじい飢餓感に襲われるのだ。
彼女は一度、精一杯我慢してみたことがあった。そして二度とやらないと誓った。
飢餓感というのはあくまで比喩。食欲とは違う、その隣の欲、性欲が抑えられなくなるのだ。
(あれは本気でキツかった。巷に転がっているドM向けr18の寸止めボイス・ASMRの数倍辛い状態が24時間続くからね。最終的に正気を失ってそこら辺の男を襲いかけた)
厄介なのが、この精気はただ普通に生きているだけで少しずつ消費されてしまうことだ。
サキュバスの能力「美貌」は常時発動型だ。宇宙レベルの美少女になれるが、代償として男から精気を搾り取り続けなければならない。
最初のうちは、彼女の親や祖父母、友達などから貰っていた。
しかし、個性が成長するにつれてそれだけではたりなくなってきたのだ。
「精気」は淫なるチカラだ。絞り取る対象が淫らであればあるほど、ムラムラしていればしているほど効率よく吸うことができる。が、当然親が子に発情などする訳もなく、効率は非常に悪い。具体的に言えば、父から彼女が必要とする一日分の精気を貰うと、体力満タンだった父が膝に手を突いて息切れするほどに消耗してしまう。
女性からも吸い取れるので、父と母とついでに祖父母から少しずつ貰って負担を分散していたが、限界はすぐそこまで見えていた。
そうして、中学1年の夏、彼女は遂に決意した。
デリヘルをやると。
これは、個性のせいで身売りをせざるを得ないなんて可哀想!みたいな話ではなく、むしろ個性利用で儲けちゃおうという彼女のしたたかな思惑のある話だ。
彼女の個性なら、彼女に対して発情した相手は触れるだけで眠らせることができ、そして好きなように淫夢を見せられる。
これを使うことにより、
そして、夢が終わると同時に何食わぬ顔で客を起こして、笑顔で「お時間になりましたね。今日はここまでです。ありがとうございました!」と告げるだけでいい。ピロートークすら夢の中で済ませられるのだ。
客は夢を現実と勘違いし、ついでに精気を吸い取って貰ったことでスッキリして帰れる。
彼女はご飯にありつけるしお小遣いも貰える。
彼女は中学1年の時から身長は155cmあったし、大人びていたので18歳と嘘をついても通った。
そんな訳でワケありデリ嬢「ピーチ」ちゃんの誕生である。彼女の今生の名前である
それから彼女は、週1の搾精だけでお腹が満たせるようになった。やはりギンギンに発情した男の精気は密度がパないのだ。
それに合わせて少しずつ家族から吸い取る量を減らして行って、「個性の制御ができるようになってきた」と嘘をつくことで何も疑われずに家族からの「搾精」は止めることができた。
こうして彼女は、完璧な解決策を編み出したのだ。
……が、またもや問題が起きた。今まで「精気」に関して栄養失調気味だった彼女がここに来て大量に上質なそれを手に入れたせいで、ある程度自重していた「個性」がなりを潜めなくなったのだ。
髪は艶やかで、靡くだけで全ての人の視線を釘付けにするような輝く黒。
瞳はルビー。見つめられるだけで動悸が起きるような深く底のない深紅の赤。
肌は透き通るほど白くキメ細やか。
長いまつ毛も柔らかに微笑む唇も全てが君を美しく彩る……
というのは、当時の詩人、もとい同学年の男子から貰ったラブレターからの抜粋だ。
彼女の身体はより魅力的に成長したのだ。
身長も一瞬で伸びて160cmになり、その分脚がスラリと伸びて、おっぱいがとてもデカくなった。
その美貌は、今でもたまに鏡を見ては「うわっ……私の容姿、綺麗すぎ……?」と引きながら自画自賛するほど。
その結果、無駄に告白されたり逆に女子から嫉妬されて仲間はずれにされたりと様々な弊害が生じた。
そして、それよりも大きな問題が発生した。
それほどの急成長、一体どこからエネルギーが出てきたのか。
当然、お客さんから吸い取った精気である。
お察しの通り、彼女の精気はまたも枯渇した。
熱中症の危険がある時に水を一気飲みすると、ほとんどが尿として出てしまうため却って熱中症の予防にならない、みたいな話だ。*1
栄養失調状態だった彼女の個性は、潤沢な精気を与えた瞬間に瞬く間にそれを消費しだした。
結果、彼女はまたも飢餓感に襲われることとなり、週1だったデリヘルのバイトが週2になり、週3になり、一日に何人もの客を捌くようになり……。
そんなことを続けていたら、バイト先の、デリヘル派遣会社の社長の目に止まった。平日の放課後だけで一日6人相手をしたことがバレて、「え……いや、どうやってるのそれ……?」と聞かれたのだ。
仕方がないので彼女が経緯を含め素直に話すと、社長の目が光った。儲け話の匂いがしたのだ。ウルトラ超絶美少女が実質無制限に男の相手をできるというのだから、活用しない手はない。客寄せとしても単純な収益としても非常に良いものが見込めるのだから。
それで生まれたのが今の体制だ。週に1、2回、ラブホを貸切にして一気に客の相手をする。
万が一客の間で、同じ時間帯に彼女が複数人の相手をしていたという矛盾が発覚したとしても、その時は「これは秘密にしているんですが、私は分身という個性を持っていて……」と説明することで誤魔化す。そのせいで淫夢の中で一人二役の3Pとかをする羽目になっているが、彼女の負担にはならないので問題はない。彼女はお客さんの性癖がどう歪もうが知ったこっちゃないのだ。
ちなみに、協力してくれている社長のことは「店長」と呼ぶことになっている。これで万が一聞かれてもバイト先の店長ということで誤魔化せるからだ。彼女の学校はバイト禁止だが、デリ嬢とバレるよりは100倍マシだろう。
「っと、そろそろ時間だ。起こしに行かないと」
(いやぁ、なかなか良い落とし所にたどり着いたんじゃないか?
親に心配をかけず、ついでにお金まで稼げて、やることはオッサンを寝かしつけるだけ。一応、最初の段階でお客さんを魅了する必要があるけど、そんなものは少し露出が多めの服を着るだけであとは私の美貌が何とかしてくれる。
まさに完璧だ……!)
中学から始まり、彼女が高校生になった今でもこのシステムは上手くいっている。お陰様で精気は沢山集まり、彼女の美貌は留まる所をしらない。今となってはその美貌が一周まわって学校内の高嶺の花ポジションになり、無謀な男子の告白やら嫉妬した女子からの嫌がらせやらもなくなった。
(いやー、今月もバイト代が楽しみだなー!)
彼女が今日の仕事を終え、そんなことを考えながらラブホを出たところ。
「えっ」
「あっ」
彼女の学友、心操人使にバッタリ出くわした。
「……」
「……」
(……バレたああああああああ!!)
彼女は戸惑いと困惑の中、先程搾り取ってきた精気エネルギーをフル活用して頭を回す。
(ああダメだヤラシイことしか思い浮かばねぇ!使えねぇなこの個性!
ええと、どうしよう。えと、えーっと……)
「と、とりあえず、抜こうか……?」
完全にダメになった彼女のピンク色の脳みそが何とかして絞り出した答え。
右手の人差し指と親指で輪っかを作り、口元に持ってきて、左手で受け皿を作りつつそう提案したところ、帰ってきたのは沈黙だった。
(ど、どどど、どうしよう……!!)
言い忘れていたが、これは割とポンなサキュバスが雄英高校普通科でなんやかんやする話である。
・桃色’s能力
「淫夢」
魅了した相手に触れることで好きなの淫夢を見せられるぞ!
「搾精」
魅了した相手、もしくは同意を得た相手の精気を吸い取れるぞ!