心操人使とサキュバスの同級生   作:雨天結構

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 桃色夢麻の個性がサキュバスとバレた翌日。

 

「おはよう」

「ああ……おはよう」

 

(うーん、心操くんが硬い……)

 

 桃色と心操の間には、例えるなら、告白してフラれ、「私たち友達のままでいましょう」と言われたけれど、それ以来意識して友達であろうとしてしまい却ってギクシャクしてしまう男女みたいな距離感があった。

 

(まあ、突然重い話聞かされたらちょっと引きずるよね……)

 

「なんだなんだ、心操お前、桃色さんと喧嘩したのか?」

「なんで嬉しそうに聞くんだよ」

「そりゃあお前、男女のいざこざは面白いと相場が決まってる」

「なんだそれ」

 

「なになに、桃色さん、喧嘩?」

「違うよー。なんというか、こう、むしろ進展?」

「きゃー!!なにそれ詳しく聞かせて!!」

 

 そんなこんなでクラスメイトからいじられまくり、結局この日、二人は学校でろくに話すことはなく過ごした。

 

 

 

「……それで、話って?」

 

 放課後の教室に男女が二人。某18禁ヒーローがこの場にいたのなら「ンンッ、青春ね!!」とでも叫んでいたことだろう。

 向かい合うのは、桃色夢麻と心操人使だ。

 

「私の個性の話」

「……まあ、予想はついてたけど。もしかして口封じに殺される?」

「まさか。でも悩殺ならしちゃうかもよ?」

「それは困る」

 

 割と真剣に困り顔を浮かべる心操をスルーして、桃色が本題を切り出す。

 

「あの後色々考えたんだけどさ。私、もうクラスのみんなに個性明かしちゃおうかなって思うんだよね」

「……それは、なかなか思い切った話だね」

「ふふ、実はこれ、心操くんが後押ししてくれたんだよ?君が、私と同じ、周りから差別されかねない個性でも、堂々と自分から明かして受け入れられたから」

「……そうか」

「もちろん、デリヘルバイトのことは明かさないけどね。それは2人だけのひ・み・つ♡」

「……」

 

 桃色が人差し指を立て、唇に当てながらそう言う。*1 

 心操は無意識にその柔らかな唇へと目線が吸われた。

 

「……それにしても、わざわざリスクを負ってまで明かす必要はないんじゃないか」

「ま、普通ならそうなんだけどねぇ。これが案外、隠すことすらもリスクなんだよね」

 

 桃色はそう言うと、徐に制服に手をかけた。ブレザーを脱ぎ、ネクタイを外し、ワイシャツのボタンを上から一つ一つ外していく。

 

「お、おい、いきなり何して……」

 

 心操の制止の言葉は途中で止まった。

 その目線は、ワイシャツの下から出てきた白色のキャミソール、形と大きさが露わになった二つのメロン……ではなく、その背中に生えたコウモリの様な翼に向けられた。

 

「ま、こういうこと。ついでに言うと、ほら。普段は腰に巻いてるけど、尻尾も生えてる」

 

 スカートの下からスルリと出てきたのは、先端がハート型になった、紐のように細い黒の尻尾。コウモリの翼と合わせて、その姿は創作物の中で「サキュバス」と呼ばれる悪魔そのものであった。

 

「……スカートで、尻尾を出すのは止めた方がいいよ」

「……えっち」

「ぐぁっ!?」

 

 尻尾でスカートが捲り上がり、眩しい太ももが顔を出したその姿は心操には過激すぎたらしい。赤面し、目を逸らしながらそれに関して注意をするも、セクハラ扱いされ追加でダメージを受ける。

 なお、桃色は完全に彼のリアクションを面白がっている。

 

「ま、そんなわけで、これから先、プールの授業とか修学旅行のお風呂だとかで、結局バレちゃうと思うんだよねぇ。あと、夏はワイシャツが透けて翼が見えちゃうと思う」

「……ああ、そうだな」

 

 心操が何とかして精神を落ち着かせ、桃色の方に向き直る。相変わらず凄い格好で座る彼女が目に入る。犬が西向きゃ尾は東、リンゴは枝から離れれば地面へと落ちる。当たり前のように万乳引力に引っ張られ、彼の視線は谷間へと向かい……。

 

(しっかりしろ、俺……)

 

「……もういいだろ。そろそろ服を着たらどうだ」

「酷いなあ。それじゃあまるで私が露出趣味があるみたいじゃないか。というか君も男ならもう少し有難みを持ちなよ」

 

 前世男ならではの忠告を零しながら、桃色がそそくさとワイシャツを着ていく。

 

「あ、見て見て。これ、下に何も履いてないように見えない?」

「いいから早く着てくれ……」

 

 その間心操の顔から火照りが取れることはなかった。

 

「……それで、いつ打ち明けるかなんだけど」

「いつでも変わらないんじゃないか?」

「ふふん、いい?こういうのはタイミングが大切なんだよ。わざわざ隠してきた以上、明かすにしてもそれなりの理由、場所が必要なの」

「理由に、場所ね。何か候補はあるの?」

 

 心操からの問いに、今しがた着替えの終わった桃色が、待ってましたと言わんばかりに微笑み、ババーンと両手広げて宣う。

 

「雄英高校体育祭!どう、ここなら私の個性のカミングアウトに相応しいと思わない?」

「……なるほど。たしかに、体育祭で結果を残すためという妥当性はあるな」

「それにさ。君、体育祭本気で勝ちに行くんでしょ?友達がガチでやるっていうのに、私だけ観客気取りで応援なんて寒いことしたくないじゃん!」

「桃色……」

「手伝わせてよ、私にも。心操くんの下克上!」

 

 雄英高校体育祭。心操がガチで勝ちを狙いに行くのなら、それを最大限サポートしたい。それが桃色の純然たる本心である。

 友達だから、というのもそうだが、もっと単純な話。

 

(心操くん、超いい人だから普通に報われて欲しいんだよね)

 

 もし仮に、自分が「洗脳」という能力を得たらどうするだろうか。

 ギャンブルでイカサマ。街中でパンチラ。嫌いな奴を操って全校集会時に壇上で全裸ソーラン節を踊らせる。

 まともな善性のある人間であろうと、真っ先に思い浮かぶのは悪用であろう。それなのに、彼はこう言った。

 

『立派なヒーローになって、人の為に使いたい』

 

(良い奴過ぎるわ。あまりに人が出来すぎている。なんかもう惚れた。一生ついてきます兄貴)

 

 桃色は心操こそヒーローに相応しい人間だと考える。しかし、ヒーロー科の実技試験は「対ロボットの戦闘」だったため、彼は個性を生かせずに落ちた。

 

(何やってんだよ雄英高校!!こいつがヒーローにならないで誰がヒーローになるんだよ!!

 まあむしろ、それすら主人公っぽいけどね。初めは評価されなかったけど、実は……的な)

 

 頑張っている人は報われて欲しい。善人には幸運が訪れて欲しい。優秀な能力は然るべき場所で生かされて欲しい。そんな、誰もがある程度は共通して持つであろう願いの元、桃色は心操を応援するのだ。

 

「……ああ!よろしく頼む、桃色!」

 

 サキュバスに洗脳、個性故の苦悩を分かち合い乗り越える若人たちの手が今組まれた。

 夕日は少年少女の心のように赤く燃え、その影を青春の1ページとして教室の壁へ刻む。

 そしてそれを隠れて見ていたミッドナイト先生が強すぎる青春の香りに絶頂する。

 

 こうして、桃色夢麻と心操人使は雄英高校体育祭での活躍を共に目指すこととなった。

*1
桃色は個性の影響で無意識に言動がえっちになっているぞ!




・桃色’s翼&尻尾
普段は服の下に隠しているぞ!精力を込めたり、興奮したりすると大きくなる。もちろん性感帯。
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