傭兵甲虫スパイトルコ   作:庭鳥

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 戦車とか戦闘機よりも、輸送機とかジープ、偵察用バイクなんかにロマンを感じる方であります。スパイトルコはそのような要素の強い作品だと思います。



砂漠を徘徊する鉄蜘蛛

 

 

 

 鉄で出来た蟲……それ以外に適切な表現も思いつかない機体が砂漠を疾走していた。四本の足をシャカシャカと動かして砂をかき分ける姿は、人間の生理的な嫌悪感に働きかける、ある種グロテスクな姿をしていた。だが防塵布を垂らしていて、さらに蜘蛛の頭とでもいうべきか……機体の上部には獲物を狙う重い銃が備えられているところを見ると、人工物ではあるようである。……と、その鉄蜘蛛に後ろから銃弾の雨が浴びせかけられる。そのほとんどは装甲で弾いているようであるが、数発、関節部にあたりミシミシと嫌な音を立てる。パイロットの男が顔を覆う防塵ゴーグルと防塵マスクで彩られた奥で、舌打ちをした。

 

「追い立てろ!そのまま弾幕をはれ!この砂漠での()()()は命取りだと教えてやれ!」

 

「……遊んでなどいない。」

 

 その鉄蜘蛛がワイヤーを突然前方に射出した。まさしく蜘蛛の如く、である。それは砂漠の中の岩場に刺さった。途端ワイヤーが巻き取られ始め、蜘蛛は加速した。さらにその勢いのまま、岩場を中心に振り回されるように急ターンをした。機内には意識が飛びそうなほどの遠心力が働いているはずであるが、パイロットの男は呻き声一つ出さない。砂山の陰に隠れていた三体の複座式人型機体の中で、数人がどよめいた。

 

「な、なんだアイツ!こっちに向かってきます!」

 

「狼狽えるな!隊列を崩すな!組み付けばこちらの方が数は上だ!」

 

「そ、そうか……。よし!」

 

 彼らは決意を決めたようであった。途中までマシンガンを乱射していたが、近づくと一斉にマシンガンを捨て、機体の腰元から鈍く光る鉄棒を取り出した。スタンロッド、機体の破壊よりもパイロットにダメージを与えることに主眼を置いた非殺傷兵装……であるのだが、充電式という点が評価され、しばしば金のない非合法組織が利用するという……。それを取り出した!

 

 彼らのど真ん中に、その鉄蜘蛛が突っ込んでくる!

 

「今だ!かかれ!」

 

「「うおおおあああああああ!!」」

 

 二体の人型が同時にその鉄蜘蛛に組み付こうとした。自身にも電撃は来るだろう。しかし、そんなもの自分たちは意識が飛ぶ程度で済む。だが一機だけの敵は別だ!そのような考えの元、彼らは突進していった。

 

「……くるか。」

 

 その言葉と共に、蜘蛛の銃口が火を吹いた。鉄蜘蛛のヘビーマシンガンが一体を捉えた。

 

「うわあ!?か、回避を……!」

 

 彼らは蜘蛛の銃弾の餌食にあって悲鳴を上げきる間もなく爆散した。突進していたもう一体は舌打ちと共に、その蜘蛛に飛びかかった。途端、蜘蛛のワイヤーが伸びた。ワイヤーとすれ違いざま、ジャコン、という何かの作動音が響く。その数秒後、蜘蛛はワイヤーを巻き取りながら再び急加速をしていく。その緩急のある動きには対応できず、飛びついた一体は重い機体のタックルで弾き飛ばされた……。と、思った途端、尻もちをついた人型機体が唐突に爆散した。

 

(な、なんだ!?何の兵器を使われた!?)

 

 後方に控えていた一体はそのように思いながらも、側を通り過ぎた鉄蜘蛛を睨み据えた。彼だけは腰もとにビームセイバーと呼ばれる光子で出来た、大戦争でも使われた近接兵装があった。その機体は最早消耗など気にせず、ブーストを噴かしビームセイバーの刀身を伸ばして蜘蛛に躍りかかった。

 

「蟲風情があああああっ!!」

 

「…………。」

 

 くるり、そんな音と共に()()()()()()()。走行する脚部はそのままに、運転席と武装の備え付けられた砲塔がそのままひっくり返ったのだ。それはまさしく、死んだ蟲のように……しかし、その銃口は敵機を捉えていた。

 

「な、蜘蛛が裏返りやがっ……!」

 

「最後の、一機……。」

 

 鉄蜘蛛の頭部のへビーマシンガンが余りにも無情に、その人型機体を穴だらけにしていく。直ぐにその機体は火だるまになった。

 

「う、うわああああああああ!?た、隊長、助け……!」

 

「……撃ち過ぎたか。……無暗に殺すつもりはなかったが……手加減は、やはり難しいな。」

 

 引火し爆発する機体を横目に、その鉄蜘蛛は再び胴体をひっくり返しながら砂漠を走行していく。だが操縦席の通信機に、青色の光がニ、三度灯った。パイロットの男は生真面目そうに、ためらいなくその通信のスイッチを入れた。通信機越しにノイズ交じりの男の声が響いた。

 

「またそんな事を言っているのか。手加減など不要だ……。相も変わらず、ガルヴァン、お前は甘い男だ……。」

 

 どこか偉そうな声色である。どこかでパイロットの男の独り言を聞いていたらしい。ガルヴァンと呼ばれたパイロットは、しばしの間無言であったが、やがてゆっくりと口を開いた。

 

「……無暗に殺さない、それだけだ。」

 

「ふん、まあ自由にすれば良いさ。お前が死ぬまではな!……暑い!さっさと迎えに来い!」

 

「了解……。」

 

 その鉄蟲は方向を変えて砂漠を疾走していった。

 

 

 彼らは砂漠を疾走する鉄塊。仕事を求めてさすらう砲弾。彼らに通り名などないが、その機体はスパイトルコと呼ばれていた。

 

 

 

 ~傭兵甲虫スパイトルコ~  ─砂漠を徘徊する鉄蜘蛛 終─

 

 

 

 





 次話のストックとかは全然できていないので、まああんまり期待せずにお待ちください。

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