1:名無しん迷子 ID:vtC/c3ObR
なんか気づいたら龍門にいたわ
2:名無しの転生者 ID:okbB2scbr
乙
3:名無しの転生者 ID:jfni781bU
どゆこと?
4:名無しの転生者 ID:BSqqbm9H7
いちいちそんなことでスレ立てんなカス
5:名無しの転生者 ID:59wQ5m9Hq
キレてる奴いて草
6:名無しの転生者 ID:Q+dZtaYIG
まぁ、とりあえず情報プリーズ
7:名無しの迷子 ID:mEbhaxc3S
簡単に経歴紹介。ワイ、8年前にこの世界に転生?というよりより憑依か、どっかのループスに憑依する。武装してたのと自分の制服から軍人っぽい。→周囲に死体だらけ(コイツラもワイと同じ制服)→訳が分からず逃げる→職を探して護衛をやったがクビになりトランスポーターの真似事で稼ぐ。→知らん奴らになんか追われてヤバいと感じて逃走→天災に巻き込まれる。→なんか気づいたら龍門にいた。←今ココ
8:名無しの転生者 ID:Q84cp7EbH
えぇ…?
9:名無しの転生者 ID:H87E9ZtSr
何もわからん、解散
10:名無しの転生者 ID:W74uJN8G7
流石にこれはイッチが悪い
11:名無しの転生者 ID:h5StvUva0
どうしてそうなった
12:名無しの転生者 ID:tBNhRftMu
こいつ終わってます
13:名無しの転生者 ID:oaAq38eLW
ん〜これは無能
14:名無しの転生者 ID:IlbeM77mN
龍門って言っても広いぞ、どこにおるん?
15:名無しの転生者 ID:VsHl2BBHP
そこ本当に龍門?
16:名無しの迷子 ID:HLKbPynty
間違いないよ、街並みとか、もらった紙幣も龍門幣だったし。
17:名無しの転生者 ID:y7AO4XPyd
もらった?あっ…ふーん
18:名無しの転生者 ID:jTCQ3Mb6y
やってんなぁ。てか街並みて、根拠薄すぎだろ。来たことあんの?
19:名無しの転生者 ID:PZwIVrsrn
お巡りさーん!こいつです!
20:名無しの迷子 ID:YL/Zdhxk4
いや、待て本当に貰ったんだって。
21:名無しの転生者 ID:ulknog10L
誰に?
22:名無しの転生者 ID:eBgFFxBFv
何で?
23:名無しの転生者 ID:pgOMNyXQC
どのようにして?
24:名無しの転生者 ID:PL2rsbeid
5w1hやめろw
25:名無しの転生者 ID:8Uyv2pkW0
こいつら息ぴったりかよ
26:名無しの迷子 ID:/H1/kXrTP
なんか、顔に傷のある男に金を渡された。ここ本当に龍門で合ってるかなと思って、誰かに聞こうと思ったら、ちょうど中年の男がベンチに座って新聞を読んでたから、とりあえず世間話から始めようと思って、いや、今日は冷えますねーって言ったらいつの間にか低い声で、喉が渇いたって言われて。会って早々やばい奴だなと思っていたら、急に渡された。
27:名無しの転生者 ID:rOkcSsbid
えぇ、それやばいやつなんじゃ
28:名無しの転生者 ID:IB4oJ7wTl
それ受け取るのもどうなのよ
29:名無しの転生者 ID:fH5AgV8ab
どっちもやばいやつで草、そんな金危ないから捨てなさい
30:名無しの転生者 ID:0uxGDgtHe
✖️やばい→確実にyabai
31:名無しの転生者 ID:om7YBZXwr
またしてもイッチの無能が露呈する。あのさぁ…
32:名無しの転生者 ID:TM4NeCw5C
いや、待て、それ逃げた方が良くないか?
33:名無しの迷子 ID:qQFwCqjcE
なんていうか、早く受け取れ的な圧を感じたんだよね。遠慮したら睨まれたし。
34:名無しの転生者 ID:zGVK9rRz5
絶対になんかに巻き込まれてて、何か勘違いされていると思う
35:名無しの迷子 ID:tuHQYCElN
そうかなぁ
36:名無しの転生者 ID:tbA+tOJpU
そうだよ
37:名無しの転生者 ID:5fT+gIsrj
こいつ危機感なさすぎだろ。
38:名無しの転生者 ID:4i/GVFI2D
まじでやばいと思う、イッチを誰かと勘違いしたんだったら、もしそれが人違いだって分かったらお前を殺しにくるぞ
39:名無しの迷子 ID:OsjkFZpTb
やばいじゃん!
40:名無しの転生者 ID:DpnW0yDiK
ようやく気づいたか
41:名無しの転生者 ID:mii6bCU1M
遅えんだよ!
42:名無しの転生者 ID:p2OaFUrA3
これは護衛もクビになるわ
43:名無しの転生者 ID:kS6uMN0u8
納得
44:名無しの警察 ID:gJEZ99Jnt
突然すまん、その男ってこんな顔だった? 【画像】
45:名無しの転生者 ID:jLAaTdNwt
何だ、このむさいおっさんは
46:名無しの転生者 ID:wzATY4Cpm
突然のおっさん画像は原石爆弾テロ
47:名無しの転生者 ID:IRABOdeCA
こいつは?
48:名無しの転生者 ID:5dczGn0i9
んーどっかで見たような…?
49:名無しの警察 ID:YUR77dgLd
テロリストだ。龍門に潜伏した可能性があるとして、我々法務執行連隊が調べていた。
50:名無しの迷子 ID:Uaxyilfl6
こいつです!
51:名無しの警察 ID:mmrI+MiV5
君は今どこにいる?
52:名無しの転生者 ID:B1h/zqOT8
返信早い
53:名無しの転生者 ID:g9uUwO1ux
はっや
54:名無しの転生者 ID:pjRxQbchQ
脳内にスパコン乗ってんのかーい
55:名無しの迷子 ID:giuF829Lx
えーと、ケーキ屋の前あたりですかね。
56:名無しの警察 ID:JdQueldx9
よしわかったそこから動かず待っていてくれ。
57:名無しの転生者 ID:yyr7vf/3N
もう打ち込んで待機しいてるだろこれ
58:名無しの転生者 ID:wCwG5exaI
え?
59:名無しの転生者 ID:28uw6NM66
お?
60:名無しの転生者 ID:/HsWU87AT
まさか?
61:名無しの転生者 ID:yLl/qbTwR
これは…?
62:名無しの警察 ID:Xq6+WLLIi
今から向かう
63:名無しの転生者 ID:B6q9BD0b8
キタァァぁぁ!
64:名無しの転生者 ID:co9lSvYFh
やっぱ掲示板といえばこれでしょ
65:名無しの転生者 ID:00j+WqzU0
法務連隊ニキは近くにいんの?
66:名無しの転生者 ID:s+QA6WRui
これは掘られる(経験談)
67:名無しの警察 ID:H+GCrLk+1
ああ、車で30分もあれば着く。
68:名無しの転生者 ID:l6N1iX1Al
65 ヒエェ
69:名無しの転生者 ID:pe7TNVZnh
良かったなイッチ
70:名無しの迷子 ID:qj3L4RfhW
逃げます
71:名無しの転生者 ID:NfE0o72kg
おいこら
72:名無しの転生者 ID:bWcA9WYXC
待て、 に が さ ん
73:名無しの転生者 ID:B0Uodw/b6
お前もホモになるんだよぉ!
74:名無しの警察 ID:+mqM00UOp
いや、掘らないからな…?
75:名無しの転生者 ID:oN7BrxAvd
とか言って、も〜
76:名無しの転生者 ID:g1nsagPjg
旦那ぁ、分かってますって…ヘヘ
77:名無しの警察 ID:P2P0sjfqk
何だこいつら
78:名無しの転生者 ID:mH+0FFsGB
ホモです
79:名無しの転生者 ID:c3Xw+X3Zk
ホモ以前にチンピラで草
80:名無しの転生者 ID:3CJKYv8rY
ホモ(サピエンス)
81:名無しの転生者 ID:omyCOsHXV
80 もう違うんだよなぁ
82:名無しの転生者 ID:+YVRJyUH7
そういえばそうだった
83:名無しの転生者 ID:XeQ7v8a+s
悲しい
84:名無しの転生者 ID:MFcoOLoRU
ここにいるとつい今を忘れそうになるな
85:名無しの転生者 ID:iJGKMPErY
ここの居心地がいい
86:名無しの転生者 ID:iGx9gWCpc
というより、外が過酷すぎる。
87:名無しの転生者 ID:JK2dTguho
辛すぎるっッピ
88:名無しの転生者 ID:p3q/lF2J7
テラくんさぁ…加減しよ?
89:名無しの転生者 ID:4uVlvPVc/
もっと優しくなってどうぞ
90:名無しの転生者 ID:xKuxZU3WE
テラくん「いやです ざーこ 死んじゃえ 」
91:名無しの転生者 ID:hDMnneCxF
このガキィ!もう許さん
92:名無しの転生者 ID:ItvoQY6gy
テラはメスガキだった…?
93:名無しの転生者 ID:OFVLPQcXG
なら耐えられるな、メスガキであれば今までの全てを許そう。メスなればガキに、ガキにあらずはメスにあらず
94:名無しの転生者 ID:XuCd+gWWI
おいどーすんだよ、変なの湧いてきたって
95:名無しの転生者 ID:ALzcK9+o/
元々この宗派自体はいた
96:名無しの転生者 ID:iIVmTna8R
この世界終わってる
97:名無しの転生者 ID:2lWGC7MHg
元からです
98:名無しの転生者 ID:fMmMqePKo
テラくん メスガキ理論完成→宗派誕生
99:名無しの転生者 ID:18CO46nlN
いや、テラ【くん】ってことはつまり、つまりついて…?
100:名無しの警察 ID:xxZhg03sl
ついたぞ
通信が切断されました。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
————なんかとんでもないタイミングで通信が切れた気がする。
と、機動捜査部高等法務執行連隊。
その連隊長である、スェイ三級警監は掲示板の切断に言い知れない不安に襲われた。何かとんでもない誤解を孕む発言をしてしまった気がする。
しかし、回線が切断された今となっては訂正のしようもない。
大人しく復旧を待つしかないだろう。
法務執行連隊は最高防務委員会隷下に位置する治安維持機構、龍門近衛局。
その外局であり、龍門司法省直属の実働部隊として、テロや犯罪組織に対する事前的予防を目的とした専襲攻撃のために設立された公安機構。
通称、法行連隊
隊員は特別司法職員という区分に指定され、限定的な裁判権、現場における即時の判決と執行の権限を有する。
スェイがこの部隊の隊長となるまで、様々な部署を転々としてきが、今はこのポジションに収まり5年が過ぎようとしていた。
————まぁいい、それよりもイッチをどうやって探すかだな。
こんなことなら事前に両手をあげておけとでも言っておけば良かった。とスェイはスレを見てから職場からかっ飛ばしてきた、自分以外誰もいない警察車内で悪態をつく。
まさか、一人一人にイッチですか?などと聞いて回るわけにもいくまい。
警察がそんなことをしていると知れた日には何を言われるかわからん。
まぁ、ぶっちゃけ単純にやりたくない気持ちの方が強いだけだが。
なぜ服装や特徴を聞いておかなかったのか、と今更ながらに後悔する。
前線を退いてもう長い。だいぶ判断力が錆びついてきているようだ。
はぁとため息をつく。
どうしたものかと、スェイは頭を悩ませながら、脱力して後ろの背もたれに倒れかかる。
シートは深いブルーの革製で、長時間のドライブでも疲れにくいように設計されていた。
が、スェイの疲労は別のところからくるものなので、今はなんの役にも立っていない。
掲示板のネットワークはたまに調子が悪くなるということは知っていたというのに…
そう気落ちするが、時間が経てば経つほど不利になる。なによりイッチ…彼がずっと待っているとも限らない。
そう思い直したスェイはスモーク加工の施された黒い窓ガラス越しに外を見る。
車内の静寂とは裏腹に、窓の外は活気に満ちていた。雪の下、都市の賑わいが広がっている。街灯の光が、行き交う人々の足跡や息の白さを照らし出し、近くで、ストリートミュージシャンのギターの音や歌声が心地よく響いており、それが時折、笑い声や会話の断片と交じって、一つのハーモニーを作り出していた。
店のネオンサインが鮮やかに輝き、その光が雪に反射して幻想的な雰囲気を放っている。人々は、この雪の夜を楽しんでいるようで、カップルや家族連れ、友人同士が、冬の景色の中で思い思いの時間を過ごしている。
そこに、「テラはメスガキ」と日本語でデカデカと書かれた看板を掲げる、ループスの男が居た。
無意識のうちにタバコに手が伸びる。だが、一応この車は警察車両なので耐えた。
いや、よく考えればいい案だ。あれを読めるのは日本人だけだし、内容も先ほどのスレを見ていた者になら分かる特徴的なモノだ。
スレの連中は無能と言っていたが、錆びついた自分とは違って、柔軟に対応できる人間のようだと感心する。
その行動力は立派なものだ。
最も、それがなければ死んでしまうのがテラなわけだが。
さておき、よくみると看板は木の棒に紙を貼り付けただけでできており、脆そうだ。
しかも事務用の薄いただの紙で、目を凝らしてみると案の定、積もった雪が溶けて紙がシナシナになっていた。
ループスの男はそれを慌てて何とかしようと、紙を引っ張り、そして破いてしまっていた。
————んー?柔軟…なのか?
とにかくあまり長くあの状態にさせておくのはまずい、本人は気づいていないのだろうが、見つかればすぐにでも連中に殺される可能性もある。目立つ行動は避けるべきだ。
いやまぁ…もう十分目立ってるとは思うけど。
とりあえず外に出て話を聞かないことには始まらないので、ドアを開けようと右手側にあるサイドドアに手を伸ばす。
握ったドアハンドルは冷たく、金属製のそれには外の冷気が伝わり、纏っていた。その冷たさに外の気温を想像し、一呼吸置き、ゆっくりとハンドルを引き、ドアを開けると、お出迎えとばかりにまずは冷たい風が顔に当たった。
ドアは重厚感を持ってゆっくりと開いていき、その隙間から外の世界が徐々に広がっていった。新雪の白さと、街の光が車内に入り込み、それまでの静けさが一気に変わった。
足を外に出すと、雪の触感が靴底を通じて感じられる。立ち上がる際に、シートベルトが軽く引っかかるが、気にせず雑にそれを外し、完全に外へと足を踏み出した。
冷え切った空気が肺を刺す。しかし同時に、夜の冷え込みを忘れるような、屋台からの香ばしい匂いや熱燗の甘い香りが空気に混ざり合っていた。
都市の夜、絶えず降り注ぐ雪が、視界を白く染めていく。街灯の光は、雪の結晶をキラキラと輝かせ、世界を銀色に染めるようだ。
少し遠くでネオンサインの色彩が、視界に降り注ぐ雪のカーテンを通してぼんやりと見える。そして、その中にひときわ目立つ姿があった。そう、這い蹲って破れた紙を必死に集めるループスの線が細い男だ。
集め終わったのか、あるいは諦めたか、彼は近くの壁に寄りかかり、腕を組んだ。
その存在は、この寒空の中で独特の…雰囲気を放っていた。
いや、未知の言語で書かれた看板を掲げていた時点で何を言ってるんだという話だが
その男の貼り付けたような微笑みは、その高い顔面偏差値と相まって、何か悲しい、深い事情を連想させるものがあった。
勿論そんなものはない。ただの迷子だ。
服装は深緑のロングコートに黒のスラックス。足元は黄色のブーツで、首に巻いた厚手のマフラーが彼の白い息を柔らかく包み込み、頭には黒のフェドラハットを深くかぶっていた。その組み合わせは雪景色の中であっても特に違和感はない。
ただ急に龍門に飛ばされて来たにしては服装が冬物としラフすぎる気がした。天災に巻き込まれるような状況であの格好のままだったというのなら流石に間抜けがすぎる。
だから恐らく、待っている間に手持ちの龍門幣で買い揃えたのであろう。その時に紙やらペンやらも購入し、あの脆い看板を作ったと…
スェイは流石に貰った方の龍門幣を使ったとは思いたくなかった。
————大丈夫だよね?そこまで馬鹿じゃないよね?
ーーーーーーーーーーーー
バカだった…
男を後部座席に乗せて、話を聞いてみると、
最初は普通の好青年だと思った。
ただその印象は話し始めてすぐに覆されることとなる。
いや、別にすごく感じが悪いとかそういう訳ではなく、なんというか、ただただバカだった…。
しかもこんな甘いマスクで、さも悲劇を語るかの如き口調で話すモノだから、一瞬飲み込まれて同情しそうになってしまった。
話をまとめると、青年、レイフォードは怪しい男から貰った方の金で服を買い、飯を食い、看板の材料を買い、さらには偶然出会った知り合いのサンクタに飯を奢ったらしい。
じゃあそいつの家に泊まらせてもらえよと思ったが、なんでもそいつはトランスポーターで、ここに家を持っていないらしく、さらにはすぐに立ち去ってしまったそうだ。
使った額は全体からすれば微々たるものだが、ウチが証拠品として押収する際には、アタッシュケースに入ってる以上、パンパンに敷き詰められた紙幣の一部が無くなっていれば余計な詮索を招くだろう。
お前どうすんだよ、これ、とスェイはキレた。
こいつが渡された紙幣は不正な方法で集められた金である可能性がある。偽造弊の可能性だってなくはない。そんな得体の知れないモンで経済を回されるのは行政側である、スェイからしたら絶対にやめておいて欲しいことなのだが、こいつはやった。
そもそも、この金の存在を無かったことにする。もしくは懐に収めるという考えもなくはない。しかしそれはリスクが大きい。
どこぞの真面目な上級警司に目をつけられたくはないし
なにより、実のところスェイにはこの金の出所には心当たりがあったのだ。
一ヶ月前、スェイはある警察幹部にある頼み事をされていた。というのも彼の金が盗まれたらしいのだが、あまり公にできない金の類であるらしいのだ。
勿論、直接そう言われたわけじゃない。ただ彼の給料とは到底帳尻の合わない額が強奪されたのだというのだから、その出所はある程度出世競争に身をやつした人間ならば察せるというもの。
ただでさえ上官たる一級警監に組織を特定して紙幣を取り戻せと言われているのに、その半分にも満たない量の紙幣と、使った痕跡。素直に報告すればレイフォードは消されるか、情報を得るためにひどい拷問にかけられて死ぬだろう。
当然ながら、この金がそうである確証なんて何もない、唯の状況証拠だ。
しかし、一級警監にも余裕がない。この一大事には法を無視して、リスクのあるあらゆる手段をとってくるだろう。
今の彼は神経質になっている。完璧な証拠隠滅をしないと気が済まないだろう。例え、消す方がリスクが高かったとしても自らの精神安定のためにそれを行うとする可能性が大きい。
加えて、少しでも手掛かりが欲しい欲求にも駆られることだろう。
一度その衝動を持ってしまえば、彼を止めることは相当な内容がないとできないとスェイは感じていた。
向こうにとって白はない、あるのは黒か黒に近いグレーだ。
何よりまずいのはこいつの今の立場である。よりによってこいつはレストランでウェイターの目の前でアタッシュケースを開き、そこからひと束会計に使ったらしい。
そんな目立ったことをすれば当然全員の記憶に残るし、例の額に傷のある男の組織による聞き込みが行われた際に追跡者に見つかる可能性も跳ね上がる。
何よりこれでこいつの特徴が相手に伝わってしまったかも知れないのだ。これが一番まずい。
服装だけなら誤魔化せるが、こいつの面はとんでもなくいい。イケメンすぎてもう全員の印象に残っていることは確実である。
周りにアタッシュケースから金を出すヤバい奴と思われるよりも、そちらのほうが致命的だった。
これでは永続的に狙われる可能性があるということだ。
スェイは同じ日本の同志として、できるのであれば救ってやりたい。
しかし…相手がバカだと取れる手段も少ない。
スェイがそれらの事情の全てをこいつに伝えると
「お願いしまずぅ、助けてくださぃ!」
と甘いマスクをボロボロに破いて泣きつかれた。面がいいと何だか悪いことをしている気分になってくるスェイ。
と、そこで掲示板が復活していることに気づく。このままこうしていてもいい案が浮かびそうになかったのと、精神安定のためにそこに書き込む。
101:名もなき転生者 ID:F4EuT+p9T
お?書き込めたか?
102:名もなき転生者 ID:G5v3EGmY0
復活してるじゃん
103:名もなき転生者 ID:x1hy+uZ5F
やったーーーー!!!
104:名もなき転生者 ID:GKPCSMPP9
自由だ!自由だ!
105:名もなき転生者 ID:vzZQ59NFa
戦争は平和!自由は奴隷制!無知は力!
106:名もなき転生者 ID:1YkWtWEcZ
東京特許許可局局長今日急遽休暇許可却下
107:名もなき転生者 ID:1niOEjXn8
テンションあげぽよー!
108:名もなき転生者 ID:zAzInxJKa
スレが復活したと思ったら、今度はスレミンがなんか壊れていた件
109:名もなき警察 ID:+hStkGg/S
合流したんだが、事態は複雑だ。
110:名もなき転生者 ID:jzizzAT+I
どした?イッチが女だったとか?
111:名もなき転生者 ID:bvnxq/QJ5
それはないでしょw ないよね?
112:名もなき転生者 ID:uIkzJCiMq
ファ⁉︎許せないンゴね そんなの認めないぞ俺は
113:名もなき転生者 ID:xrMvKkuuz
ガキにあらずはメスにあらず…
114:名もなき転生者 ID:rjrUHi5vf
またヤバいのが湧いてきたよ
115:名もなき転生者 ID:tr1UnBNwc
もうお前コテハンつけろ
116:名もなき転生者 ID:Tsl4fpRRF
あまりにも雑いコテハン推奨 俺じゃなきゃ見逃しちゃうね
117:名もなき警察 ID:wzp5CvBey
話 進 め て も い い ?
118:名もなき転生者 ID:tW85c/NsC
はい、すいません
119:名もなき転生者 ID:d3bh1i3Cb
すみませんでした。
120:名もなき転生者 ID:jzRXnm4kW
メスガキ…いや、オスガキ…?
121:名もなき転生者 ID:Mc9+SYLic
1人意識飛んどるやつおるって
122:名もなき転生者 ID:d8xQjjRAW
ウホwやばい進化遂げてますねぇ
123:名もなき転生者 ID:538sg+5fr
はい、状況を簡単に説明すると。警察幹部が不正で稼いだ金が盗まれる→盗んだ奴らはテロ組織で軍資金の調達と思われ→イッチが使ったその金はその組織から受け取ったかも知れない→警察に報告したら、仲間かもという可能性を疑われて情報入手のためにその警察幹部から拷問受けた後死亡or普通に逮捕からの終身刑
124:名もなき転生者 ID:BtO+7gx4j
Oh…
125:名もなき転生者 ID:2EKP4peqO
草
126:名もなき転生者 ID:wsQoTfix8
ど う し て こ う な っ た ?
127:名もなき転生者 ID:LseCkOqDJ
これマジ? 龍門ってそんな厳しかったけ?そういうイメージないけどなぁ
128:名もなき転生者 ID:zjAi3tTkm
マジだぞ。あそこは中国だと思ったほうがいい
129:名もなき転生者 ID:Cxug1OasE
コワイ コワイ こわくない?
130:名もなき転生者 ID:LSHvUvUMH
倫理観が龍
131:名もなき転生者 ID:JTVUOqvtq
これは流石に判断材料が少なすぎる。幾つか質問するから答えてくれ。⒈なぜ拷問を受ける?関連性が薄いとまでは言わないが、拷問というリスクまで取るほどではなくないか?⒉なぜあんたがそれを知っている?⒊不正って具体的にどんな金よ?4なぜそいつらはわざわざ警察の金を盗むんだ?
132:名もなき転生者 ID:3AR3xay8E
131 有能
133:名もなき転生者 ID:cgRhMg51s
確かに妙ではあるな、警察側にわざわざ噛みつきに行ってもいいことがあるようには思えない、裏に思想犯でもいるのか?
134:名もなき転生者 ID:E0YLK1dyT
急にスレのIQが上がってわいついていけない (追いついていけないにかけた激うまギャグ)
135:名もなき転生者 ID:qjhuaNE3X
お前ら本当にさっきまで騒いでた連中か?大丈夫?海の生物に成り代わられてない?
136:名もなき転生者 ID:Pk3aNUv6W
だれが脳筋白髪コミュ障アビサルハンターだボケ!
137:名もなき転生者 ID:1onyXN8gw
そこまで言ってない
138:名もなき転生者 ID:0TOq9HbQb
この反応…もしや?
139:名もなき転生者 ID:g/CcZSaql
女だあぁあーー!囲め囲め!
140:名もなき転生者 ID:PzBX04Qm4
⒈少しでも盗んだ組織の情報が手に入る可能性があるならやる。それくらいやばい金。⒉俺がその警察幹部と知り合いだから。⒊不正に関しては知らないけど、(というか知りたくない)推測でいいなら単純に賄賂⒋多分資金を集める口実、犯罪的に金を増やしたくない、あるいは増やせない状況にある。例えば宗教的に縛りつけてたり、正義を語って組織を結成したのなら金を奪うにしても口実がいる。
141:名もなき転生者 ID:2teDZs5fx
なるほど分からん
142:名もなき転生者 ID:KYtZ5D6Dx
つまりどういうことだってばよ?
143:名もなき転生者 ID:TRuChAFuR
アホは黙ってろ
144:名もなき真宗派 ID:7ESMhexsv
つまり、警察幹部という公職につくものが不正をしているというわかりやすい【悪】があれば【強盗】という悪は薄れ、正義の義賊に早変わり、ということですよ。
145:名もなき転生者 ID:hKi0fDm8O
いきなり誰かと思ったらメスガキの人か 急に賢くなりすぎて無い?なんか理性回復剤とか飲みました??
146:名もなき転生者 ID:seBRoPLv7
あぁメスガキの
147:名もなき転生者 ID:8NvrwD0LT
メスガキね?
148:名もなき転生者 ID:p4xPiJNSI
おいやめろ、その書き方だとそいつがメスガキみたいに見えてくるだろ
149:名もなき転生者 ID:CrZjfvpcS
可能性としてはあり得る。いや、むしろそうであってほしい。
150:名もなき転生者 ID:/VDNhtPEh
ただの願望かよ、金髪碧眼女児金髪碧眼女児金髪碧眼女児
151:名もなき転生者 ID:TMWMerCvz
ぺろぺろぺろぺろ
152:名もなき転生者 ID:8jGDMlcBZ
スレのIQを下げるな
153:名もなき転生者 ID:O53ZCkrQd
何だただのメスガキか…
154:名もなき真宗派 ID:gEXotYAJr
ただのとは何ですか、ただのとは
155:名もなき転生者 ID:pAbgFNGGr
おこちゃって、かわいいんねぇ
156:名もなき警察 ID:Or26cFqub
言っとくけどこの情報知ったお前らのこといつでも逮捕できるから、真面目にやらんとお前らまとめて逮捕するぞ
157:名もなき転生者 ID:DoPZB9/J8
は?
158:名もなき転生者 ID:YkcX3Tqz+
職権乱用定期
159:名もなき転生者 ID:aNWlVEMPV
残念でした、俺ウルサス
160:名もなき転生者 ID:B+ZCMcJQi
俺ラテラーノ
161:名もなき転生者 ID:mNfN1ylt/
ぼくちんカズテル
162:名もなき転生者 ID:9+BUJZq6Q
我 海
163:名もなき転生者 ID:z/AY+3WEb
後半2人が地獄過ぎる…
164:名もなき転生者 ID:yaEAe7ptN
海ニキ成仏してクレメンス
165:名もなき転生者 ID:wD8DkTTCP
【朗報】BSW社長ワイ 勝ち組確定
166:名もなき転生者 ID:3PX++NDZE
は? 就職したいです!
167:名もなき転生者 ID:zjGfmS2Bx
え? 特技はパンツをすぐ脱げることです。
168:名もなき転生者 ID:zsU6Bkduw
お前らみてぇなむさい男のゴミはいらねえよ。ワシはフランカちゃんとリスカムちゃんを秘書にするんだ!デュフフふw
169:名もなき転生者 ID:P6kLW/G5L
原作キャラに手を出すのはNG
170:名もなき転生者 ID:tDf97pB9z
そうか?、割とみんな関わりあるくない?
171:名もなき転生者 ID:j6FBudZeK
は?
172:名もなき転生者 ID:TG4nK+CCj
は?は?
173:名もなき転生者 ID:ePYWbYiHx
はえ?
174:名もなき転生者 ID:/Pdsvei6Z
嘘だろお前え!
175:名もなき転生者 ID:q+Knvdmke
dksくぉwkっwl
176:名もなき転生者 ID:xqtl1ldw+
動揺が文字に現れてら(テラとかけた激うまギャグ)
177:名もなき転生者 ID:pKsUUl2N/
またなんか言ってるよ
178:名もなき転生者 ID:Eosfv/Do/
お?やるか?やるか?
179:名もなき転生者 ID:7BrmRqg0Z
(別にやる必要は)ないです
180:名もなき転生者 ID:l8sgKg/iL
おおぅ、まさかここまで乱れるとは思わなんだ。すまんすまん
181:名もなき転生者 ID:B1qNkjWou
俺なりに話を整理してみたんだが聞いてくれ、まず大前提として金を持ってる今の状況は危険すぎる。ここで個人を特定されたら詰みだ。あとは国外に逃げるしか無いが、それも当然網を張られるはずだ。
今すぐそこを離れて且つ変装しなければいけない。これはどの前提であってもやるべきことだと俺は思う。次にイッチは龍門に見覚えはあるっぽい発言はしてたけど、そんなに詳しい感じでもない。だから法務ニキが保護するべきだ。貰った龍門幣の方を使ってるってことは金もないんだろうし、何より状況を把握しきれなさそうだ。
どの話も結局仮定推定の域を出ない。
今必要なのは身を隠して、辺りを探ることだけど、それができるのが法務連隊ニキしかいない。
182:名もなき転生者 ID:6WrxnfTVh
うーん確かに?
183:名もなき転生者 ID:Xqlquzg7T
変装ってどうすんだよ?
184:名もなき転生者 ID:wghAU02Tk
我 望 女 装
185:名もなき転生者 ID:whJY3YJFk
海ニキの業が深い、海だからか
186:名もなき転生者 ID:tFynD8URw
お前は今日から性癖の海だ。
187:名もなき性癖の海 ID:rlH+gFww/
我 感 謝 名 前
188:名もなき転生者 ID:dIUxya420
おい、なんか喜んでるぞ、大丈夫か?
189:名もなき転生者 ID:xXqeAhv2X
何もしていないのに謎の罪悪感が…
190:名もなき転生者 ID:cxf1cSxLy
イッチの容姿どんな感じなん?
191:名もなき警察 ID:0Dxhk8FOa
これがイッチ 【画像】
192:名もなき転生者 ID:SoXlHPNye
ファ!?
193:名もなき転生者 ID:5/d7A6ORG
イケメンすぎだろ!
194:名もなき転生者 ID:eUgCRaSFb
イッチの顔面イケメンすぎだろ!
195:名もなき転生者 ID:8npjPi4S1
これは女装したら化ける(確信)
196:名もなき転生者 ID:Xpsf+rTFH
むしろしてほしい
197:名もなき性癖の海 ID:28GddPgrD
我 大 歓 喜 凄 楽
198:名もなき転生者 ID:Zh+NlObjP
イケそうだな
199:名もなき転生者 ID:Zm1y/VtVG
楽しみにしておくわ、出来たら画像貼って
200:名もなき警察 ID:vWthISNYe
了解、女装ね。
車は夜の雪景色を通りながらゆっくりと進んでいった。外界の音はほとんど聞こえず、低いエンジン音だけが運転席と助手席の間を満たしていた。
雪が車の窓ガラスに当たり、それに続いてワイパーが窓ガラスを擦る音が響く。
車内の照明は控えめで、ダッシュボードの計器の光だけが二人の顔をほのかに照らしていた。シートベルトが締められていることを示す小さな赤いランプが、静かに点滅している。
スェイの手は、ステアリングホイールを握りながら、時折変速レバーに移動する。その動きは機械的で、ほとんど無意識のようだった。
スェイの目は前方に集中しているが、同時になにか深い考えに耽っている耽っているようの見える。
レイフォードは窓の外を見つめながら、自分の呼吸の音を意識していた。その手はぎこちなく、膝の上に重ねられている。時折、彼の目がダッシュボードの時計に移動し、時間を確認する。
車内の空気は暖かく、エアコンの風がゆっくりと流れている。それにもかかわらず、二人の間には微妙な緊張感が漂っていた。言葉を交わさない時間が長くなるにつれ、その緊張感はより一層高まっていった。
運転席から短く息を吸い込む音が聞こえた。その音の主であるスェイはレイフォードを横目で一瞥する。
彼の表情は少し緊張しており、目が不安げに運転席と窓の間を行ったり来たりしていた。
「レイフォード、君は…その、日本で何をしていたんだ?」
レイフォードは少し驚いたように目を丸くしてから、思い出すように目を細めた。
「えっと、日常的なことをしてました。食事をしたり、友人と遊んだり、仕事をしたり。何も特別なことはしてないですよ。」
スェイはそんなレイフォードの返答に、どこかほっとした表情を見せながら、
「それはそれは、平和な生活を送っていたんだな。」
と頷く。
レイフォードは少し困ったように首を傾げ、窓の外を見ながら
「…はい、それが普通だと思ってました。こちらに来てから色々と大変だったので、あの頃が懐かしいです。」
一瞬地雷を踏んだか、と思ったがレイフォードの表情は穏やかなモノで、その顔には僅かに喜色さえ滲み出ていた。
車はゆっくりと雪を踏みしめながら進んでいき、二人の間には再び沈黙が流れる。ただ、その沈黙は初めての出会いの緊張から、少しずつ理解し合おうとする気配を感じるものに変わっていった。
車体が時折雪をかき分ける反発に揺られながらも、そうして白く覆われた道路を走っていると、レイフォードが問いかけてきた。
「これ何処に向かってるんです?」
「あーそういえば言ってなかったな。知り合いのところさ、あいつなら化粧とか得意だし、服もたくさん持ってるはずだ」
そこでまた会話は途切れるかのように思われたが、突然レイフォードは言った。
「あー敬語なしでもいい?そういうの苦手でさ、お互い掲示板仲間なわけだし…その…」
そのあとは結構盛り上がった。お互いにちゃんとした形で実際に掲示板仲間に会うのは初めてだったのと、生身で思いっきり前世ネタを使って騒げるのは言い知れぬ開放感を与えたようだ。
そうして時間は過ぎてゆく。
ヘッドライトが粉雪を照らして道を明るくし、その光が雪結晶に反射してまばゆく輝く。雪結晶が付着した車窓から見える道の両脇には、雪に覆われた樹木や、一部の古びた建物や小さな店舗からは屋根を起点に垂れる大きなつららがあり。それらが風景として流されていく。
かれこれ15分程車を走らせて、ようやく目的地に辿り着いた。ハンドルを切り歩道に面した道の横脇に停める。駐車違反だがこの際気にしない。
車から降りて、車内に向かって手招きをするとレイフォードもすぐに降りてきた。
地面には白い足跡がくっきりと残っていた。
スェイはそれを確認してからキョロキョロと辺りを見回している
龍門はいいところだが、ここら辺ではあまり露骨に辺りを見回さない方がいい。特にレイフォードは線も細いし、面がいいから狙われやすそうなのだ。
だからスェイは、レイフォードの手を掴み、流れ込むように脇道へと体を滑り込ませる。
ーーーーーーーーーーーーーーー
裏通りは、雪に覆われ幽寂な雰囲気を纏っていた。狭く曲がりくねった道は、表通りを襲う寒風を遮り、古びた石畳が新雪で白く覆われ、スェイとレイフォードが上を歩く度に二つの靴が雪を踏みしめる音が響く。裏通りには2人以外の人影はなかった。
薄暗いガス灯が、雪に覆われた裏通りをぼんやりとオレンジ色に照らし、壁には雪を纏った苔やツタが這い、白い重量で重たくなったツタが壁から垂れ下がっていた。
少し歩いた通りの途中に、ひときわ目を引く建物が立っていた。一見すると何の変哲もない古びた木造の建物だが、赤くペイントされた扉とその横に吊るされた小さな提灯が、ここがバーであることを示している。提灯には、「Moonlit Rose」とと筆で書かれており、
入口には、一般的なひさしよりもはるかに広いモノが取り付けられている。その広さは小屋程度の面積にも及ぶもので、その下にある空間を歩いて一歩二歩と踏み込んでも、庇の傘下であるほどだ。
庇の下側は、年月の重みでわずかにたわんでおり、雪の日には、このひさしの上に積もった雪が、ふわっとした白いカーテンのようになって、ポーチの端からは垂れ下がる。
それが落ちたら危ないからと、ここの店主、この場合はスェイの会いにきた目的の人物なのだが、雪かきを手伝えと言われて、断りきれずになぜかスェイは何度かここの雪かきをさせられたこともあった。
その傘下に収まるようにして、下部に小さなテラスのような空間が広がっている。
木製の床板が敷かれ、周囲を低い手すりが取り囲んでいて、庇はその柵の四隅から伸びた木製の間柱で支えられているようだ。
テラスは地面より一頭高いようで、階段で繋がっている。
その階段までの道のりには、足跡がいくつか残されており、それは店の中へと続いていた。
数段しかない薄い木の板の階段を登る。
扉に近づくと、中からはジャズの音楽や賑やかな笑い声がくぐもって聞こえてきた。
レイフォードを連れて店の鉄扉を開ける。
すぐに、店内からはジャズの生演奏が流れ出てきた。
そして懐かしい香りがスェイを包み込む。
古い木材、革の椅子、そして高級リキュールの複雑な香りが混ざり合ったものだった。
店の中はムーディーな照明で包まれ、黒と赤を基調としたインテリアが、シックな雰囲気を醸し出していた。天井は低く、今やアンティークなシャンデリアがキラキラと輝いていた。壁にはモノクロのジャズミュージシャンの写真や、時代を感じさせる絵画が並べられていた。
中央には小さなステージがあり、ジャズトリオが情熱的な演奏を繰り広げている。
ステージを中心とした四方には、赤と金を基調としたブース席が並び、カップルやグループが談笑しながら楽しんでいるようだ。
それぞれのテーブルには緑のテーブルクロスと真鍮の照明が置かれている。
よく見るとブース席にいる金髪の女性がオールバックヘアーの男性にキスされていた。
そして、入ってすぐ右手にあるL字型のバーカウンターは、黒と金のモザイクタイルで覆われており、その上には、ガラスのシャンデリアが輝いていた。カウンターの背面には、アンティークの銅製のレジスターや、古い時計が、
そして奥の棚には赤色でライトアップされた、様々な種類のリキュールやウィスキーのボトルが整然と並んでいた。
その奥には、シルバーの髪の女性が立っている。彼女は黒のロングドレスに金のネックレスを身に着け、どこか妖艶な雰囲気を放っていた。
そしてスェイを見るなり、彼を迎え入れるように手を振った。
スェイがカウンターに寄りかかると、彼女はカウンター越しにスェイに視線を寄越し、微笑みながら言った。
「久しぶりね、隊長。どうしたの、こんなところに?」
煙草をくゆらせながら、低くハスキーな声色がスェイに向けられる。そこには旧懐や親愛の感情が弾んでいた。
「自虐か?アイリーン、手間をかけさせるが、彼をちょっと変装…あ〜女装させてもらえるか?」
スェイは親指で背後にいるレイフォードを指した。
「はぁ?ハァ…まさかあなたそういう趣味なの?」
アイリーンは一瞬目を見開き、唖然とする。
しかしすぐに呆れたように紫煙混じりの息を吐き出した。
「違う、訳ありなんだ」
最初は、胡乱げにスェイを見つめていたアイリーンだったが、スェイが真剣に頼み込むと、それが伝わったのか、顔つきが変わり、レイフォードを興味深げに見つめた後、微笑んで言った。
「このイケメンを女装させるの?面白そうね。」
彼女はカウンター裏の部屋に向かって手を振り、「こっちよ」とスェイ達を誘導した。
ーーーーーーーーーーーーーー
スェイが指で数えるほどしか入ったことがないドアの向こう側、衣装室は昔とは異なった雰囲気を持っており、スェイに時の流れを感じさせた。
奥の部屋の天井にはシャンデリアが吊るされていて、部屋全体を柔らかな光で包んでいる。窓はなく、壁が分厚いのか先ほどまでの喧騒は一切聞こえない。
外の光や音が一切入らない、男の立入が御法度な雰囲気の部屋だった。
アイリーンの導く先は、バーカウンターの奥、暗紫色のヘビーカーテンで仕切られたエリアだった。
そのカーテンは、当然ながら外から中を覗くことができないように作られていたが、わずかに覗く生活感が中に入る前から秘密的な魅力とでもいうべきか、一種の妖しささえ感じさせた。
アイリーンがカーテンを横にスライドさせると、そこは小さなドレッシングルのような空間になっていてモーブ色の壁には、大きな鏡が取り付けられ、その周りには明るい電球が並んでいた。
鏡の下には、化粧品やアクセサリーを整理するための小さな引き出し付きのテーブルが置かれている。
部屋の右側には、部屋の片隅には、衣装ラックが数本並んでおり、シルクやサテン、レースやベルベットなど、色々な素材が見受けられる。
そこには様々な時代やテーマの衣装が掛かっていて、古典的なバラエティーショーのようなキラキラしたドレスから、シンプルでモダンなデザインまで、幅広く揃えていた。
左手前には、ウィッグや帽子、マスクなどの仮装用のも、さらにはハイヒールやブーツまでもが並んでいた。
そんな部屋でアイリーンはレイフォードを中心にグルグルと回り込み、彼の体型や顔立ちをしっかりと見て、
「うーん、どれにしようかな?」
とつぶやいた。
彼女の目は、真剣なもので、レイフォードを女装させるのに最適な衣装を選ぶための計算が始まった。
だがまぁ…そこには少女然とした高揚感と玩具を見るような感情が覗き出ていたことは認めよう。
「さて、あなたを変身させるための衣装を選ばなくてはね」
とアイリーンが言いながら身を翻し、丁寧にハンガーにかかるドレスやアクセサリーを眺め始める。レイフォードは少し戸惑った様子で、アイリーンの動きをじっと見つめていた。
「まず、このドレスはどうかしら?」
と彼女が鮮やかな赤のミニドレスを取り出して示す。ドレスはシンプルなデザインで、胸元には大きなリボンがついており、スカート部分はフリルで飾られていた。
レイフォードはそのドレスを見て、顔をしかめた。
「正直、自分がそれを着るなんて想像できないんですが…」
アイリーンは微笑みながら、
「大丈夫よ。最初はみんなそう思うもの。ちょっと試してみて。意外と似合うかもしれないわ」
と言った。
困惑した様子のレイフォードを見て、呆れたようにスェイが口を挟む。
「パーティに行くわけじゃないんだ、普通の服で頼む」
「あら、そうなの?でもきっと似合うし見たくなぁい?」
「結構だ」
そう言いながらもアイリーンは既に次の服を選ぼうと顎に手を当てて思考していた。…スェイはちょっと面白そうだから見てみたいかもと思った。
彼女は長い指で衣装ラックを辿り、レイフォードに似合いそうなモノを探していた。
といっても元々レイフォードは線が細く、女性的な骨格でもあるようなので、本来はそこまで選定に頭を悩ませる必要はないのだが…まぁそれだけ真剣なのだろう
逡巡の後、その指が止まったのは、深いカーキ色のウール製のロングコート。これは細かい織り目が見受けられる上質なもので、表面には微細な起毛が施されており、触れる者を暖かく包み込むような感触があった。
ウエスト部分の細めのベルトは、皮革製で、金のバックルがきらりと輝いていた。
次に彼女の視線が向けられたのは、ダークグレーのスキニージーンズ。このジーンズは非常に細かい縫製が施されており、特に膝の部分には立体的なカッティングが施されていた。これは動きやすさを追求するためのデザインであった。
「靴は...」
アイリーンの声が響くと同時、彼女はブラックのレザーブーツを持ち上げた。これは、つま先が細く、シルエットが非常にシャープであった。また、ヒール部分はやや高めで、女性らしい曲線を持っていた。
彼女の指が、ふわりと柔らかそうなカシミヤのマフラーを取り上げる。そして、頭部には、ブラックのフェドラハット。ハットの縁はやや広めで、シルバーのリボンが巻かれていた。このリボンは、ハットのシンプルさを引き立てるアクセントとなっていた。
彼女は最後に、深い茶色のレザー製の手袋と、大きめの黒いサングラスをレイフォードに差し出した。サングラスは、縁がゴールドで飾られており、レンズの色も濃いものであった。
「本当に着なきゃダメですか?」
レイフォードは少しだけ困った顔をしたが、隊長の視線に気づき、頷く。
「分かりました、それでいいです。」
アイリーンはニッコリと微笑みながら、
「それじゃあ、こっちでお着替えを。私たちは外で待っているわ。終わったら声を掛けてね。化粧をするから」
と言ってさらに「化粧室」と書かれた、左奥の部屋を開けた。
芝居掛かった動作で、軽く腰を曲げてエースコートするように手を部屋に向かって伸ばしている。
ーーーーーーーーーーーーーーー
どうやら奥の部屋は、アイリーンのプライベートスペースとしての趣が強く、その内装には彼女の個性や軌跡が色濃く反映されているようだとレイフォードは推察した。
床は深い赤紫の厚手のカーペットで覆われ、部屋の壁際には左右ともに大きな鏡台が並べられていた。鏡台の上には、数々の化粧品やブラシが整然と並べられ、その脇には香水瓶が少し乱雑に散らばっていた。
それらの中には、アイリーン自身が昔使っていたものもあったのか、少しだけ時代を感じさせる品もあった。
かれこれ推察しながら着替えていると、いつの間にか着替え終わっていた。
考え事をしているといつも無意識になってしまうのがレイフォードの癖だった。
ちなみに、流石にサングラスは掛けていない。室内だからと言うのもあるが、あまり露骨に顔を隠すと逆に印象に残ると思ったからだ。
着方がこれであっているかどうかも分からなかったが、とりあえず着替えたんだからいいだろうと、レイフォードは扉の外に向かって呼びかけた。
「終わりましたー!」
ーーーーーーーーーーー
すぐに扉が開き、部屋にアイリーンだけが入ってきた。
「あら、思ったよりもずっと良いわ!でも、まだ足りない…」
と言いながら、彼女はレイフォードが着替えている間に用意していたのだろう、ショルダーバックからメイク用具一式を取り出した。
「これで、完璧に変身させてあげるわ。」
レイフォードは戸惑いながらも、頷く。
その様子を見てからアイリーンは
「でもその前に…」
アイリーンは一瞬、ウィッグのコレクションを眺めた後、長めの黒髪のウィッグを選び出した。その髪は、滑らかで光沢感があり、レイフォードには本物の髪のように見えた。
まず、ウィッグキャップを手に取り、レイフォードに向かって
「これで髪を固定するわ」
と説明した。
ウィッグキャップをレイフォードの頭に被せる前に、彼の髪を丁寧にとかし、頭の後ろで低い位置で束ねた。その後、キャップを前から頭にかぶせ、耳の位置を確認しながら、しっかりと固定していく。
次に、ウィッグを手に取り、内部のネットを広げながら、レイフォードの頭の上から静かに被せていった。ウィッグの前髪部分を整え、サイドと後ろの髪の流れを確認しながら、自然な位置にセットした。微調整を行いながら、髪の毛を耳の後ろに掛け、髪の流れを整えていった。
「ウィッグの位置は大丈夫?」
とアイリーンが問いかけると、レイフォードは鏡で自分の姿を確認し、少し驚きながらも頷いた。
「それじゃあ、そこに座って?」
レイフォードの背後から肩を掴んで、鏡の前に押し出していく。
そのまま流されるままに座ったレイフォードの顔を鏡台の左右に並んだハリウッド風の丸い電球が明るく照らす。
---
アイリーンは次に、レイフォードの顔をしっかりと観察した。彼の肌のタイプ、色、目の形、口の形…すべてを頭に叩き込むように見ていった。
「まずは、肌の調整から。」
アイリーンはハイドレーティングプライマーを取り出し、レイフォードの顔全体に均等に塗り広げていった。これにより、ファンデーションがよりスムーズにのり、持続性も上がる。
次に、彼の色味に合ったリキッドファンデーションを選び、ブラシを使って中心から外側へと塗り広げていった。特に目の下や鼻の周りなど、色ムラやシミが気になる部分はコンシーラーでカバー。
眉毛は、彼の骨格に合わせてナチュラルなアーチ形にトリミング。その後、ブロウパウダーとペンシルで眉の形を整え、ナチュラルに仕上げた。
アイメイクは、彼の目の形をより大きく、立体的に見せるためにマットなヌードカラーのアイシャドウをベースに、そして目の際にはダークブラウンを薄くのせてグラデーションをつけた。アイラインはブラックのリキッドタイプで細く、目尻は少し上げてキャットアイ風に。マスカラは上下のまつげにしっかりと。
頬は、ピーチピンクのチークを頬骨の少し上から斜めにのせ、顔に立体感を出すためのハイライトとシェーディングも忘れずに。
最後に、彼の唇の色に合わせたローズピンクのリップを塗り、その上から少しグロスをのせてみずみずしさをプラス。
「ほら、完璧よ」
とアイリーンは鏡をレイフォードに差し出した。
それとほぼ同時に扉の外に向かって呼びかけた。
「終わったわよ!」
すると、そこにスェイがやや不機嫌に見える表情を貼り付けて入ってくる。
そのまま「レイフォードさっさと行くぞ」と言おうとして…
「レイフォー…ド…」
スェイの声は最後まで正常に発されなかった
スェイは、レイフォードの変身を目の当たりにした瞬間、一瞬息をのんだ。元々レイフォードの顔立ちは女性的で、その特徴がウィッグとメイクによってより強調されていた。
長めの黒髪のウィッグは彼の額を柔らかく覆い、髪の束は彼の肩に流れるように落ちていた。前髪は彼の眉に僅かにかかり、その下にある瞳は蜂蜜色に輝いていた。
滑らかで艶やかに見える唇は、鮮やかな赤色に彩られ、それが彼の白い肌と相まって、まるで雪の中の一輪の花のように映った。ウィッグの長い黒髪が彼の肩に流れる様子は、まるで古典的な美人画の中の女性を彷彿とさせた。
彼から醸し出される女性的な魅力は、スェイの心を強く捉えて離さなかった。
彼の目はレイフォードの姿を飲み込むように見つめ、呼吸も忘却し、目の前に突如として出現した美人に見惚れていた。
いや、レイフォードの美しさに完全に打ちのめされたと言う表現が的確か、
先ほどまでの気安い感情、それが今、少なくともこの一瞬、新しい色彩を帯びた。
それは絶対に他人には言わないが、スェイにも自覚はあるだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーー
着替え終わったレイフォードが扉をくぐって騒がしいバーに戻ると、多くの客たちが一瞬、彼の方に目を向けた。
その中でも特に一組のカップルの片割れ、若い男がレイフォードの姿に目を奪われていた。
端正な顔立ちの若者で、先ほどカウンターで恋人といちゃついていた若者だった。
彼の隣には、豪華なワンピースを着た金髪の女性が座っている。
女性は彼女の若者がレイフォードの美しさに目を奪われていることに気づき、不機嫌そうに彼の腕を掴んだ。彼女の瞳には隠しきれない不満と焼きつくような嫉妬が宿っており、口元は薄く硬く結ばれていた。彼女は恋人の耳元に口を寄せ、何事かを掠れた声で問い詰めた。
男性は彼女の質問に答えず、ただ見つめるレイフォードの美しさから目を離せなかった。彼女はさらに気を悪くし、男性の顔を自分の方に向けようとして、彼の顎を掴んだ。声を強めた様子で何か言った。彼女の指先からは、彼に対する所有欲と、レイフォードに対する嫉妬が伝わってきた。
しかし若者はまぁまぁと強引に話を打ち切ってレイフォードに向かって歩み寄ってきて
「こんばんは、初めて見る顔ですね。こちらにはよく来るのですか?」
と声をかけてきた。
レイフォードは答えようとしたが、男の声で女装がバレるのを恐れて言葉に詰まった。その時、スェイが彼の手を引き、間を割って入った。
「申し訳ないが彼女は私の特別な恋人です。今夜は彼女の誕生日を祝うために来たんです。」
と嘘八百を並べ立てた。
若者は少し驚いたような表情をした後、笑顔で
「申し訳ありません、失礼しました。お二人の大切な時間を邪魔してしまいましたね。」
と謝罪し、彼の隣に座っていた女性の方へと戻っていった。
レイフォードはスェイの方を見て、彼の胸に頭を寄せ、
「ありがとう」
と小さく声を出して感謝した。
「いいんだよ、レイ」
咄嗟に返事をするが、あまりにもおざなりな偽名になってしまった、というかただの愛称だな。と、スェイは自分のネーミングセンスに苦笑した。
そのまま、店から出ようとスェイはレイフォード…レイの腰を抱いたまま出口へと向かう。
一瞬出る時にドアの隙間から見えた若者は何者かに首を絞められていた。
レイはそのすぐ隣で金髪の髪が乱れるのを見た気がした。
スェイに関しては虚無の表情で首を締め上げる金髪のアサシンの鮮やかな手管をしっかり目に入れた。
そして二人は思った。
女って怖くね?と
世界観複雑すぎぃ! 法務執行うんぬんはデタラメ