「艦これ」いつかあの海で×ドリフトスピリッツ 2023 -いつかあの路で-   作:カービィ改二

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プロローグです。
本作品はpixivでも連載している作品の「BGM差し替え」バージョンです。

pixivの同作品と本作品、お好きな方を選んでお楽しみください。


プロローグ
act.0「Reboot(復活の時雨)」


―――――1945年。

 

南西諸島付近に出現した深海棲艦を撃滅するべく、連合艦隊の一員として出撃した駆逐艦時雨。

熾烈を極める海戦、絶体絶命の中でも援軍の支援を受けながらもなんとか渡り合う。

しかし深海棲艦の物量は想定のはるかに上を行った。

結果としては深海棲艦の撤退までは至らせたが、艦娘たちはほぼ壊滅という状況に陥る。

 

侵食から守るため…その身をほぼ犠牲に…

 

彼女達は、海へ沈んだ。

 

 

そして当の彼女も……その海戦の最中、命を落としたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――幾多の時が過ぎた。

 

世界情勢の変化こそあれど、戦争が行われていない平和な国。

彼女は、そこにいた。

 

しかし…そこは、海ではなかった。

本来海で戦う存在である彼女の足は、地についていた。

 

艤装も過去も全て失い、彼女が立っていた場所は―――

 

 

 

 


 

 

 

 

 

神奈川県、箱根土ノ湖峠。

スタートラインに横並びで止まっている、二台の車。

停車している2台の前で対面する女2人と…男1人、そして女2人の仲間であろう多数のギャラリー。

 

「フッ……準備は万端か…?」

二台のうち、左側のクルマのドライバーである革ジャンを羽織った金髪の男はそう呟いた。

 

「…問題ないよ。これで全てに決着を付けよう」

右側のクルマのドライバーである黒髪の少女―――時雨はそう言い返した。

その目は真剣そのものだった。

 

「バトルの前に、少し昔話をさせてもらおう」

「昔話…?」

 

時雨は不思議そうに言った。

少女の相手となるその男はポツリポツリと話し始めた。

「あるところに…最速のドライバーに憧れる1人の青年がいた。どこにでもいる車好きの、少し内気な普通の青年だ。青年はある日、初めて峠に出かけて無謀にもバトルに挑んだ。その相手は青年より少し年上の女で…彼女は自身を『皇帝』と名乗った」

 

すると

「『皇帝』ですって!?あなたの他にも『皇帝』がいたの!?しかも、女…?」

ギャラリーの中の一人、茶髪の女性が動揺して言い放った。

だが男は気にせず話を続けた。

 

「青年は女に全く歯が立たなかった。女なら『女帝』だろう、と青年が突っ込んでも女は『皇帝の方がカッコいい!』と天真爛漫に笑う。そんな『皇帝』に青年は憧れた…」

「……」

時雨はただその話を聞いていたが、内心は穏やかではなかった。

 

「ある時、女は青年に語った。『いつか皇帝の名を箱根中に轟かせたい』と。無謀とも言えるその目標は、いつしか『皇帝』と…青年の夢になった」

「もしかして、その青年というのが…」

メカニックの女性がそう呟きかけたところで皇帝は再び遮るように言った。

 

「…しかし蜜月の日々は長くは続かなかった。『皇帝』は…病に侵されていたのだ。そして病床で『皇帝』は青年に明るく笑った。『あなたに皇帝の名を譲ってあげる』と」

「……」

「『皇帝』は翌日逝った。青年はその日から2代目『皇帝』を名乗り、女との夢を叶える事に躍起になり、ただひたすら盲目に走り続けた…」

 

「それが今の『皇帝』が生まれた…つまり、君が『皇帝』になった経緯という訳か…」

メガネをかけた医者の男はそう呟いた。

しかし『皇帝』はそのつぶやきを一蹴するかのように、あるいは嘲笑するかのようにこういった。

 

「フッ…他愛のない思い出話だ。あんな輩には『皇帝』の名を渡せない…ただそれだけの話だ」

「ケガを負わされた復讐じゃなく、ただ『皇帝』の名を悪用する奴らを許せなかったというわけか…って、アンタ記憶が戻っているのか!?」

ギャラリーの1人である女が声を荒らげる。

皇帝はそれを全く気にするかのように時雨と話を付ける。

 

「…おしゃべりが過ぎたようだ。さあ本気のバトルと行こうか…全てはバトルが教えてくれるはずだ!」

「―――――!」

バトル…車同士の、決闘。

速い者が全て…それこそが、峠に集う走り屋のルール。

その先に、答えがあるであろうことは時雨もある程度理解はしていた。

 

 

「お願い…時雨!どうかこのバトルに、勝って…!」

助手席に座るパートナーの女性が時雨にそう懇願した。

時雨はこくりと頷いた。

「―――ここは、譲れない!」

時雨の答えは迷いのないイエスだった。

 

「さあかかってこい。俺はこれからも『皇帝』として、頂点に君臨し続ける…!」

『箱根の時雨』と呼ばれた少女と、皇帝との最後の戦いが遂に始まる。

 

推奨BGM

 

互いの車のエンジンが唸りを挙げる。

それこそまさに、龍と虎が向かい合う構図だった。

 

「よっしゃあ、カウントいくぜぇーーー!!」

スタートライン手前にアフロの男が立つ。

互いのクルマのエキゾーストから爆音が箱根にこだまする。

 

「ゴー!ヨン!!サン!!ニー!!イチ!!ゴーーーーッ!!!」

 

アフロ男のカウントと共に、スタートダッシュで駆け抜けていく2台のマシン。

その姿はあっという間に見えなくなった…。

 

「ついに始まっちまった…」

「時雨さん…奈美子さん…!」

「…あの二人、本当に勝てるだろうか」

「何を言っている!私が認めた超一流のあの二人なら、今なら皇帝にも勝てるはずだ!!」

「そうだ!私たちを破ってきた時雨だろ!?勝つに決まってるよ…!」

「だが今のところ走りは五分って感じだな…さすが伊達に皇帝と呼ばれてるだけあるぜ、ありゃあ」

 

峠を駆けるエンジン音とスキール音がこだまする中、ギャラリーが共々に声を掛け合う。

勝敗を知るのは当事者たちのみ。

箱根の峠を、2台はギャラリーの想像を遥かに超える猛烈な速さで駆け抜けていく。

 

 

 

読者の皆さんには疑問に思うだろう。

かつて佐世保の時雨と呼ばれた彼女は、なぜ「皇帝」と呼ばれるドライバーと戦う事になったのか?

どのようにして、皇帝と対峙するまでに至ったのか?

それについては、彼女がどのようにして走りの世界に飛び込んだのかを0から紐解いていく必要がある。

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