「艦これ」いつかあの海で×ドリフトスピリッツ 2023 -いつかあの路で- 作:カービィ改二
遂に時雨にニューマシンが差し出されます。
私がこの小説でやりたかったことの1つが叶いました。
寄木峠の刺客の一人、「夢の国のアリス」とのバトルから3日が経った。
バトル後に現れた神風のトオルから「車の用意が出来た」と言われていた時雨。
この日、トオルからピット伝手に連絡を受けた時雨は新車の納車をピットで待っていた。
遂に現れる時雨の新たなマシン。
この車が、時雨の運命を左右することになる…。
―――カーファクトリーピット、店内。昼過ぎ
「で、今日トオルが車を調達するって話だけど…」
「おせぇなトオルさん、約束の時間から15分も経つぜぇ?急用でも入ったのかな…」
奈美子とヒロシは交互に呟いた。
予定の時間より既に15分も経っていた。
流石に遅いと言わざるを得ない。
「まあまあ。お茶持ってきたので飲んで待っててくださいよ」
そう言ってハルカは宥めるように、トレーに4人分の麦茶を持ってきた。
「……」
お茶を飲みながら、時雨は考え事をしていた。
新しい車が用意できたとトオルから伺っていたとはいえ、その詳細は謎に包まれていたのだ。
そう、新しい車が用意されたこと以外は一切の情報を聞くことが出来ていないのだ。
自分の仕事やトオルが電話に出なかったこともあり、意思疎通が取れていないのである。
車種は何なのか、どんな車なのか。全てが謎だった。
そして渡されたとしても、自分が本当にその車を操ることが出来るのか。
時雨には疑問と不安が入り混じっていた。
するとその時だった。
「あれ…この音は?」
「まさか!」
奈美子が気づいたのは、ピットの近くの道路から響いてくる大型車両のエンジン音。
そのエンジン音は、ピットの整備ガレージ前で止まった。
時雨たちが音のもとに向かうと、そこに止まっていたのは赤色の大型トレーラーだった。
「な、何…このトレーラー…?」
「……」
「でけぇ…って、あ!」
「ようお前ら、待たせたな!」
4人が愕然とする中、トレーラーの運転席から降りてきたのは見覚えのあるテンガロンハットを被った男だった。
「と、トオル!?」
「トオルさん!!」
「この車で来たんですか!?」
「まさか、このトレーラーが…新しい車?」
「違う違う違う!このトレーラーに車が入ってるわけよ」
奈美子、ヒロシ、ハルカ、時雨がそれぞれ反応する中、時雨の質問に軽く突っ込みを入れて車の用意に取り掛かる。
「そこで待っててくれよ」
「う、うん」
そう言ってスイッチを押しにトレーラーに戻ったトオル。
だがスイッチを押したのと同時に、すぐ降りてきた。
トレーラーの荷台における、パネル側面が上に上がっていく。
どうやら車の正体が暴かれる時が来たようだ。
トレーラーにおける、アルミの箱で覆われている荷台のパネル側面が上に上がっていく。
ゴウンゴウンと音を立てる中戻ってきたトオルは、時雨に対してこう問いかけた。
「時雨…最初に言っておくが、俺はこの車をタダ同然でお前にプレゼントするわけだ…」
「……」
「この車ははっきり言ってかなり速い。プレゼントする分、この車で皇帝を探し出してみてくれ。俺との約束だ。あとこの車にはポテンシャルがあるが、無理な走りをして壊すんじゃないぞ!」
「トオル…」
「わかった…約束する。大事にするよ」
きりりとした表情でそう断言した時雨。既に覚悟は決まっているようだ。
その言葉に「いい顔だ」と言わんばかりにどこか表情がにやけたトオルは、荷台に乗り込む。
銀色のカバーにかけられていた車が、トレーラーの中には止まっていた。
そしてトオルがその車に近づき、カバーを掴んだ。
「さあ、この車を…受け取ってくれ、時雨!」
トオルがカバーを巻き上げ、「贈り物」が遂にベールを脱ぐ。
その正体は…
「これは…」
「…!」
青色のワンエイティだった。
だが、時雨が知っているワンエイティとは何もかもが違っていた。
「へへっ、どーよ?」
「す、すごい…」
「うおお……おいおいこりゃあ…」
「(何だろう…僕の知ってるワンエイティとは、雰囲気が全然違う…!)」
周りが口々に反応する中、そう時雨は思っていた。
マシン内部には大型のロールケージが装着、車全体もワイドボディ化されて外付けのGTウィングを装着された事によって重武装による戦闘力強化の印象が強くなったワンエイティ。
時雨が思い描くワンエイティとは元の車が同じとはいえ、ノーマルとは全く異なるものであった。
見た目はいかつく、非常に攻撃的な外観にも思えた。
「車をトラックから下ろすから、ちょっと待ってろ」
「……」
トオルは時雨たちにそう言った。
しかし当のトオルでもここまでワンエイティが武装できるとは思ってもいなかったようだ。
そして時雨もただただ、その車が持つ勢い…魔性みたいなものに呑まれていた。
こんな車がまさか自分の新しい車になるとは。
勢いに呑まれている間にも、トオルはトレーラーの床板を動かして地表に接地するように操作した。
床板に固定されていたワンエイティは、トオルがロックを外すことでその封印から解き放たれる一歩前になっていた。
「どうだ?この車。これでも元となっているのは、時雨…お前が求めたワンエイティなんだぜ」
「これが…ワンエイティ……?」
時雨が疑問に思うように反応した。
傍から見れば180SXだ。だがここまで重武装されていると、もはや180SXである事を忘れてしまいそうな感覚だった。
「これって、一体…どういう改造をしているんだい?」
「内側は色々と改造はされているが…まあ外観について絞れば、特定のエアロパーツセットだけなんだ。」
「エアロパーツセットで、こんな形にっすか!?すげぇ…」
ヒロシがそう声を上げた。
「こんなにも車の印象というのはがらりと変わるんだ。全く、面白いもんだよな。車ってのは…」
「…あれ。何か書いてある…ろ…くえっと…ばにー…?」
車の全体をぐるぐると回るように見ようとした時雨。するとリアバンパーに「Rocket Bunny」の文字がある事に気が付いた。
「ろ、ロケットバニー…!?」
「んぁ?」
「ハルカちゃん?」
時雨の言葉を聞いて、ハルカが驚愕するように言った。その顔は驚きに満ちていた。
「トオルさん、ロケットバニーって…あの!?」
ハルカがトオルを見て疑問を投げかける。
「お、嬢ちゃん気が付いたか。まあ正体を言っちゃえば、この車は180SXのロケットバニー仕様。まー色々とチューニングが施されているコンプリートカーが限定生産で売りに出されていてな…それの抽選に当たったってわけだ」
「……」
スポンサーとも言うべき存在からの新たなマシン…その正体は外装をロケットバニーブランドのパーツで武装された、コンプリートカーの180SXだった。
ロケットバニー…それはTRA京都というエアロパーツメーカーが販売する、同社の「パンデム」と並ぶ一大ブランド。1970~1980年代の不良テイストを取り入れたワークス仕様のオーバーフェンダーが評判となり、今やその独特のスタイルは世界で人気となっている。どれくらいの影響力があったかと言えば、このブランドが大きなきっかけで現実でもオーバーフェンダーブームが巻き起こったほどである。
このワンエイティも例に及ばず、フロントは派手なオーバーフェンダーといかつく改造されたワイドボディ、空力と軽量化が重視されたと思われるカーボンミラー、そしてマフラーがほぼ剥き出しの状態なリアには一目でロケットバニーであることがわかるであろう、派手なリアバンパーとバーチカルGTウィングという文字通り至れり尽くせりのエアロパーツセットが装着されていた。
おそらく高速走行時の安定性や、空力の面でもかなりの性能を誇るのだろう。
「これが……僕の、新しいワンエイティ…」
時雨はただただ茫然とするしかなかった。
如何せん時雨が知るワンエイティとは外観も雰囲気も違いすぎたのだ。
まさかエアロパーツセットでここまで車の印象が変わるとは…時雨にはそう思うしかなかった。
車は新品そのもののようにピカピカで、蒼く透き通っているようにも見えた。
それだけでも驚愕するのに、自分が乗りたいと言った車を本当にトオルが用意してくれるとは。
頭が下がる思いだった。
するとトオルがドアを開け、レバーを引いてボンネットを開ける。
「お前ら、見てみろ」
エンジンを皆がのぞき込んだ。
「エンジンは勿論SR20だが…タービンの大口径化とエアクリーナー交換が施されている。色々と話すと長いからあとで改造一覧を紙にまとめたものを渡すが、まー文字通り満遍なくチューニングされているって感じだ。」
「すげぇ…こんなに1から10まで揃ってる車、初めてっすよ…」
ヒロシがただただ驚いてそう呟いた。
「はっきり言ってコンプリートカーだからこそ、最初から仕上がっているんだよ。あとは元々持っていたニトロキットを取り付けるくらいか」
「パワーとしてはどれくらいなんですか?」
「一応、ニトロ抜きで425馬力と聞いてるな」
「425馬力ィ!!?や、やべぇ…俺のハチロクちゃんなんて目にないじゃないっすかトオルさん…」
「以前のワンエイティより、2.5倍近くもパワーがあるんですね…」
「でも馬力を聞くだけでも、とんでもなく改造されてるのがわかるわ…!コンプリートカーってすごいのね」
ヒロシ、ハルカ、奈美子がそれぞれ驚愕するように言った。
「それだけじゃないんだぜ…。時雨!」
「何?」
時雨をトオルが呼び止めた。
そしてワンエイティのドライバーズシートのドアを開け、指を指す。
「ちょっと、運転席に座ってみろ」
時雨はその言葉に従うように、車のドライバーズシートに乗り込んだ。
すると、はっきりと座り心地が今までとは異なる事に気が付いた。
「椅子の座り心地が、今までと全然違う…」
「セミバケットシートだ。軽量化されてサーキットのレースとかにも対応できるシートだぜ」
今までの単純なふかふかとしたノーマルシートとは異なり、こちらのシートは座っているとどこか体が固定されるような感覚になった。
だが、この感覚の方が高速走行をするとなるといいだろう…時雨はそう思った。
体が揺れるというのは、自分としても気が散ってしまう。
このシートであれば激しいドリフトの時も体が横揺れしすぎないで済むかもしれない。
それでもリクライニング機能がある分汎用性は高いとも思えた。
更にこのバケットシートは時雨のような女性でもガッチリと固定されるようになっているようだった。
「シートは一応女向けのヤツにするように注文しておいた。お前の体格にも合うとは思ったんだが…どうだ?」
「大丈夫…問題ないよ」
「ならいい。…あと、他に気づいたことはあるか?」
「…ハンドルも、普通のそれより小さいし…メーターも、たくさん増えてる」
シートの次に気が付いたのは、ハンドルが通常のものより一回り小さいという事だった。
「Rocket Bunny Racing」と書かれていたそれは、間違えなくロケットバニーブランドのものなのだろう。
速度計に至ってはアナログとはいえ、なんと240キロまで表示できるようになっている。
しかもこれまで殆どメーターが無かったダッシュボードには、速度計だけでなく後付けの水温計、油温計、ブースト計まで装着されているではないか。
「…あれ?」
今まではオートマチックのマシンに乗っていた時雨。だが、ここである事に気が付いた。
「これは…?」
ハンドルの後ろに取り付けられていた、2本のパドル。見慣れないものだった。
「え、これって…パドルシフト!?」
奈美子が気が付いたかのように言った。
「ああ、そうだ」
「パドル、シフト…?」
「時雨、ギアを見てくれ。今はパーキングレンジに入っているが、何が書いてある?」
「え…?P、R、N、D、…M?」
ギアを見ると、そこに書かれていたのは見慣れない文字だった。
PからDはまだわかったが、Mは初めてだ。
「そこのMってあるだろ?それはマニュアルレンジって言って、自分でギアを上げ下げできるんだ」
「…この両方のレバーで?」
「ああ。右レバーでギアを上げて、左レバーでギアを下げる。お前の車はオートマだったが、これでマニュアル車にも近いことが出来る」
「そうすると、どうなるの?」
「例えば時雨、お前はコーナーを抜けた時に加速がイマイチ伸びないと思った時が無いか?」
「…言われてみれば」
今までのレースでも立ち上がりが伸びないと思った時は何回もあったことを時雨は思い出していた。
「エンジン回転数とミッションの値…1速とか2速とかが合っていない事が大きな要因だ。パドルシフトなら、仮に立ち上がりの時に加速が伸びないと感じた時は左レバーを引けばギアが下がって、加速が良くなると思うぜ」
「そうなんだ…」
「勿論、オートマのままでいいなら普通にDレンジに入れればいい。それだけだ」
「……」
「くそ~っ、羨ましいぜぇ時雨ちゃん!!まさかトオルさんからこんな怪物マシンをプレゼントされるなんてよぉ!!」
「お前も腕を磨けば、少しは金を出してやってもいいんだぜヒロシ」
「い、いやそれは…ちょっと…ね、うん」
「しかしまあ…ここまで改造しちゃ、もはや反則級だよな」
戸惑うヒロシの前に、トオルはそう呟いた。
そう呟くと、時雨がドライバーズシートから降りてきた。
「トオル…」
「時雨、この車は改造してある分、単純な寿命は普通の車より短い。パワーを求めるということは、長期的に見れば半ば寿命を縮めること同然だ」
「……」
「だからこそ、だ。ピットの嬢ちゃんの手を借りてでも、この車のメンテナンスを怠らないようにしてくれよ。そして望まずして力を手に入れたお前は、はっきり言えばかなりラッキーであるという事も…自覚しておいてくれ」
「…わかった。大切にするね」
「私からもお礼を言っておくわ。色々やってくれて本当にありがとう、トオル」
時雨と奈美子はそれぞれトオルにお礼を伝えるのだった。
「さて、お前らが満足してくれたところだがまだ続きがある。これから3日間は慣らし運転をして、走りこんでこい。この車の感覚を掴んでみろ」
「…!」
「今のお前の実力なら、あの時の姉ちゃんのようなガールドラッシュの連中は勿論のこと、280馬力級のマシン相手でもアッサリと倒しちまうことが出来るだろう。だがそれでも、パワーだけに乗せられている奴は決して速いとは言えない。実力も伴ってこそ、真の速いヤツだ」
「どんなに戦闘力がある車でも、乗りこなせないと意味がないって事かな…」
「ああ…それに、いずれもう一人の四天王にも会う事になるだろうからな。そして最終的には…」
「―――皇帝」
「そうだ。相手は如何せんGT-Rだしな。いくらこの車にチューンが施されているとはいえ、相手は500馬力級。乗りこなせなければ皇帝には勝てないだろう。それまできっちりと腕を磨いて、この車を乗りこなすんだ」
時雨はトオルの言葉にこくりと頷いた。
この車を速く走らせられるようにして、皇帝に近づいてみせる…そんな思いを、胸にしながら。
「じゃあ時雨、早速この車で慣らし運転に行ってみない?」
「え…いいのかな?」
「走ってきてくださいよ時雨さん!これもいい経験になると思います!」
時雨の言葉にハルカが「よろこんで」と言わんばかりに反応した。
「じゃあ…行ってこようかな」
「お、オレも行くぜぇ!」
「じゃ俺も少しだけ付き合うか」
そう言って時雨と奈美子は、ヒロシやトオルと共に慣らし運転がてら半日かけて箱根をめぐる事を決めた。
そしてトオルから…マシンのキーが手渡された。
エンジンキーを鍵穴に入れ、エンジンを始動させる。
ブオオオオオオオン……
「―――――!」
CA18エンジンからSR20エンジンに変更されている…つまり元からエンジンが違うこともあるが、タービンが大きくなったことで、エンジンは以前よりも大きな音を生み出すようになっていた。
その音は非常に攻撃的。ハイトーンの爆音が耳を貫いた。
試しに空ぶかしすると、赤いアフターファイアがマフラーから発生していた。
これだけでもかなりチューニングされている事が時雨でもよく理解できた。
「と、トオル…」
「すごい…」
「ば、バケモノかよこの車ぁ…」
「ハッハッハ!まぁ最初はビビるよなぁ流石に!俺もビビったしな」
トオルは奈美子、ハルカ、ヒロシの反応をせせら笑うかのように反応した。
だが
「……これなら」
「ん?」
時雨は驚かず、冷静だった。
どんなに割り切っても自分のワンエイティなのである。
そう考えれば、時雨は何も恐れる事はなかった。
速いのならば自分がこの車を乗りこなせるようにすればいい。
この車を乗りこなしてみたい。
そう時雨は思っていた。
「…じゃあ、走りに行こうか」
時雨はトオルたちに言い、車を動かそうとした。
この後、3人は箱根中を巡って低速域とはいえ慣らし運転を実施したのだった。
―――ワンエイティの納車から4日が経った。
既に手続きなども終わり、正式にハルカ名義とはいえ…例のワンエイティは時雨のマシンとなった。
第一寄木峠、往路スタート地点駐車場。
時刻は22時5分前。
そこには、先日あったばかりの「諜報員のミサオ」、「夢の国のアリス」、そしてミサオが率いるチーム「シャドウズ」のメンバーたち数名が待っていた。
「ミサオさん…」
「ああ、あと5分か」
アリスの言葉に、腕時計を見てミサオは呟いた。
エンジンブローで大破したワンエイティの代わりとなる、新車の存在。
その存在にミサオは多少期待しているところがあった。
既にどのような車を手に入れたのかという情報は既にミサオは持っていた。
ワンエイティであるが、どうやらかなり改造された逸品だという。
強い相手なら強い相手程尚更高揚する。それがミサオの魂胆だった。
「(早く来い、時雨!私は…お前たちと戦いたい!)」
体の内側からテンションが上がっているのが、ミサオ自身でもわかった。
「ミサオさん、来ました!」
「!」
チームメンバーの一人がそう呼び、覚悟を改める。
そして駐車場に、時雨と奈美子が乗った「ニューマシン」、そしてそれにつられてアフロのヒロシの赤黒ツートンのAE86が入ってきたのだった。
「(これは……)」
エンジンが唸りを挙げ、フロントとリアをオーバーフェンダーで武装され、マシン後方にもフェンダーが装着されている。
更にリアには派手なバーチカルウィング、そして車内にはロールケージ。誰がどう見てもこの車はかなりの武装がされている事は言うまでもなかった。
エンジンやタイヤなどの細かなパーツに至るまでピカピカの新品だと思われる。
「(なんだ…この、威圧感は)」
冷静を装いながらも、心臓のどこかではその高揚を抑えられなかった。
見るからに重武装されている、「新車」。
車自体もかなりチューニングされていると思われる。
そんな存在を見るあまり、ミサオは高揚感を抑えられなくなっていた。
ミサオたちの前でその車が止まり、2人の女性がマシンから降りてくる。
そのマシンから降りてきたのは…
「待たせたね」
「…時間通りだけど、どうかしら?」
「ついに来たか。待っていたぞ」
二人の言葉に、ミサオは歓迎するようにそう言った。
そして次の言葉を続ける。
「早速だが、私のチーム『シャドウズ』のメンバーが相手をしよう。時間も限られている…スタートラインに行ってくれ。こちらでメンバーを指名しておく」
「……」
時雨はこくりと頷いた。
二人は再びワンエイティに乗り込み、ゆっくりとスタートラインに移動していく。
そしてミサオはチームメンバー一人に視線を当て、こう言った。
「ではリサ、お前が出ろ」
「は、はい!」
ミサオに指名された女性ドライバーが準備を始める。
そしてワンエイティに乗り込んだ時雨と奈美子もスタートラインにマシンを静かに移動させたのだった。
―――vsリサ
相手の車はグレーのFC3S。
コースは往路。
左レーン、ワンエイティ。右レーン、FC3S。
FCのドライバーからすれば、ワンエイティは明らかに自分の想像以上のパワーを持っているように思った。
だが、案外見掛け倒しの可能性もなくはない。
何にせよ自分の力を発揮するまで…そう、FCのドライバーは思っていた。
「……」
ドライバーズシートで4点式シートベルトに縛られていた時雨は、不思議と緊張していた。
何回かは走った峠とはいえ、夜の真っ暗な峠。
ドリフトラインは光っていてわかっているとはいえ、バトルとなると初めての車である。
マシンのフロントライトは第1コーナーを既に映していた。
初めてバトルをした時と気分が同じように思えた。
推奨BGM:DING A LING 2006(from SUPER EUROBEAT vol.167)
「(最初から…やり直すんだ)」
そう時雨は決心していた。
いくら同じワンエイティとはいえ、今までが下級クラスなら今回からは上級クラス同然。
中級をすっ飛ばして一気に速いマシンを手に入れてしまった以上、今までの走りは間違えなく通用しないかもしれない。
だったらもう一度ゼロからやり直す。時雨はそう思っていた。
カーナビのカウントが始まり、アクセルを軽く踏み込む。
「―――――!」
空ぶかしをするために多少踏んだだけで、今までと明らかにエンジンの音が違った。
SR20エンジンのタービンを大型化したものとはいえ、動物に例えるなら今までが扱いの楽な小型動物であったなら…今回は得体のしれない怪物と言ってもいいくらい、獰猛な音を響かせるのだった。
かなり車に手が加えられているとはいえ、ここまで違うとは思わなかった。
慣らし運転の時点で色々勘付いていたとはいえ、この車は…恐ろしい何かを持っている。
改めてとんでもない贈り物を受け取ってしまった…そう思ってしまった。
一度ミスを犯せばすぐこの車は自分を裏切ってしまうだろう。
そう思うと、余計に手足に力が入った。
ハンドルを握る両手とペダルを踏む両足に、汗がじわりと噴き出た。
カーナビを確認すると既にカウントが始まっている。
エンジンを吹かし、ロケットスタートが出来るように調整する。
3
2
1
GO!
「っ!」
「…!」
ギアを1速に入れ、加速するFC3S。
マフラーからアフターファイヤーが吹き出た。
だが
「!?」
FC3Sのドライバーはある事に気が付いた。
ワンエイティの加速が、遅い。
どうやらスタートダッシュに失敗したようだ。
少しだけFC3Sがリードを取る。
最初のコーナーである左ヘアピンが迫る。
「っう…!」
FC3Sのドライバーはサイドブレーキを引いて、リアタイヤを滑らせる。
ドリフトラインでハンドルを思い切って曲げ、ドリフトさせる。
だがコーナーの角度がきついこともあり、内側レーンであってもマシンがアウトに膨れていく。
必死にハンドルを曲げるも、マシンはコーナーのクリッピングポイントからかけ離れたセンターポールギリギリのラインを駆け抜けていた。ハンドリング性能が明らかに低いと思わざるを得なかった。
ブレーキを踏んで速度を調整しながら、必死にコーナーを駆け抜ける。
そして出口のドリフトラインでハンドルをニュートラルして、アクセルを踏み込む。
判定…「Good! -1.20m」。
どうやらタイミングが多少速かったようだ。
だが、これでもまだ余裕はあった。
相手がスタートダッシュに失敗した事で、自分はまだ先行できている。
FCのドライバーはアクセルを踏み、トンネル内の第2コーナーに迫る。
トンネルの照明がドリフトラインを示していた。
トンネルに入った直後に存在する第2コーナーは高速右コーナーである。
「…っ!」
軽くブレーキを踏み、タイヤを滑らせる。
ハンドルをきっちりと右に曲げ、スライドした直後にはハンドルを同じ程度左に曲げてスピンしないようにする。
直ぐにコーナー出口が迫る。
ハンドルをニュートラルにする中でアクセルオフにする。
そしてドリフトラインを踏みつけた瞬間、アクセルを再び踏み込んだ。
判定…「Excellent +0.45m」。
多少遅かったがそれでも判定上完璧だった。
「(いける…!)」
FCのドライバーは自信があった。今日は不思議と速く走れている。
そう思っていた。
この勝負は確実に勝った…彼女がそう思うのは言うまでもなかった。
「(むこうは最初の立ち上がりに失敗したし…あれ?)」
だが次の瞬間だった。
「―――!!?」
突如自分の車を暴風が襲ったかのような感覚に陥った。
後ろに迫るはまるで獲物を喰らうべく迫る狼。
FCのバックミラーに映ったライトがどんどん大きくなると思いきや、1秒もしない次の瞬間にはその透き通る青のボディが自分の真横にいる。いや…「いた」と言うべきだろう。
ワンエイティは、まるで自分を相手にしていないかのようにあっさりと追い抜いていった。
巨大な波が自らのマシンを一飲みする感覚。あっという間に追い抜かれてしまった。
「(は、速い…!!)」
あまりにも速すぎる。
コーナー2つであっという間に逆転された。
それどころか、第3コーナーの右高速コーナーでもその距離差はみるみる広がっていった。
相手のドライビングが巧みであるのは言うまでもないが、マシン性能もとんでもないものなのだろう。
あっという間に振り切られかける。
どんなに踏み込んでもワンエイティには全く太刀打ちできない。
それくらいあの車は速かった。
「(そん、な……!)」
第4コーナーの突入時点で、ワンエイティのリアは完全に見えなくなった。
ここまでやられたら意気消沈してしまったのは言うまでもなかっただろう。
―――勝者、時雨。
そのタイム差は、時雨のミスがあったとしてもなんと3秒以上だった。
◇ ◇ ◇
―――第一寄木峠、往路スタート地点駐車場。
「―――何、だと?」
タイム差を聞いたミサオは愕然とした。
たった6つのコーナーで、30秒にも満たないコースで4秒近くの差が出来ていた。
しかも報告によると相手はスタートダッシュに失敗していたという。
これはひょっとしたらとんでもない大捕り者を相手にしてしまったのかもしれない。
そうミサオは思わざるを得なかった。
「まさかここまでの戦闘力とは…だがまだこちらにもメンバーはいる。誰か、仕留めろ!」
部下たちに時雨をしとめるように促すミサオ。
次のドライバーが名乗り出て、時雨へ勝負を挑んでいく。
「誰だっていいよ。相手にするまでだからね」
一方の時雨は、余裕そうにそう言うのだった。
―――30分後。
時雨と奈美子は「シャドウズ」の殆どのメンバーを打ち破っていた。
残っているのはミサオだけだった。
どのメンバーも、時雨とのバトルでは最低でも3秒以上は差を付けられたという。
「シャドウズのメンバー相手にここまでやってくれるとは…」
「どう?勝負してくれる?」
奈美子が問いかけた。
「…いいだろう。こうなれば、私の『スニーキング走法』で決着をつける!気配を消して影のように忍び寄り、一瞬のうちに抜き去る奥義だ…。覚悟する事だな!」
「何だっていいさ。勝負しよう」
ミサオの言葉を軽く促すかのように時雨はそう言い、奈美子共々再びワンエイティに乗り込むのだった。
そしてそれを追いかけるかのように、ミサオも愛車に乗り込んでスタートラインへと移動していく。
◇ ◇ ◇
―――vs諜報員のミサオ
推奨BGM:THIS LOVE(from SUPER EUROBEAT vol.168)
相手の車はダブルXセリカ。
コースは復路。トンネル内の右直角コーナー、左、右と連続で存在する高速コーナーを抜けた後、2回のトンネルとそれぞれのトンネル内…2個目はトンネルを抜けた直後まで、ドリフトラインがある。そして最終右ヘアピンを抜けたところで、ゴールとなる。
左レーン、ワンエイティ。右レーン、ダブルXセリカ。
2台が並び、エンジン音を轟かせる。
「……」
ミサオは横に並んだワンエイティの迫力に威圧され気味だった。
いくらチューンが施されているとはいえ、まさかここまでとは。
そう思わざるを得なかった。
だが、決して勝機がないわけではない。
チャンスがあるならいくらでも挑んでいく。
そのつもりでいた。
「……」
両手を見つめ、両手をグーパーさせる時雨。
既に彼女には自信がついていた。
ここまでドライバーたちをほぼ全員、ノックアウト同然で倒してきた。
幾ら今回の相手がチームリーダーとはいえ、絶対に速いとは限らない。
今までのやり方で、車を乗りこなしながら確実に勝ちに行く。
そのつもりだった。
彼女を強い意志が取り囲んでいた。
2台がアクセルを踏んでエンジンを回転させるのと同時に、カーナビのカウントが始まる。
3
2
1
GO!
2人がギアを…ミサオが1速、時雨がDレンジに入れた。
アクセルを踏み込み、アフターファイアが2台から放出する。
最初の加速勝負、その時点で差は歴然だった。
一気に加速するダブルXセリカを横目に、ワンエイティはダブルXを全く寄せ付けないかの驚異的な加速で一気に差を付けた。
「なっ…!」
ミサオはそう言わざるを得なかった。
もはやスポーツで遊ぶ小学生の子供と、プロの選手並みの…それくらい格が違いすぎる速さだった。
これまでスタートダッシュを決めてこなかった時雨だが、ここに来てようやく感覚を掴むことが出来た。
車間距離は1台分、2台分とあっという間に広まっていく。
「(こうなった以上、一気に振り切る…!)」
そう時雨は心の底で決めていた。
速度計は既に140キロまで加速していた。
ダブルXという旧車、それに対してかなりのチューニングが施されている自分のワンエイティ。
そんな有利な条件で先手を取ることが出来た以上、この差を開き続けて相手の心を折る。
時雨はそうも思っていた。
そう思っているうちにトンネル内部の第1コーナーが迫る。
このコーナーは右直角コーナーだった。
「(ここは…譲れない!)」
速めにアクセルオフ、そこから左足でブレーキを掛けてマシンを適正速度まで調整する。
速度は120キロだった。
ブレーキを離してアクセルとブレーキがニュートラル状態で、ハンドルを数度だけ左に向ける。
そしてドリフトラインを踏みつけた瞬間、アクセルを踏み込んでハンドルをくいと90度程まで右に曲げた。
お得意のフェイントモーションが、このワンエイティでも出来た瞬間だった。
しかも以前よりも更に高速でドリフト出来るようになっている。
サスペンションやブレーキといった類もかなり強化されている…正に鬼に金棒と言ってもいいレベルだった。
左にハンドルを切ってカウンターを当てながらドリフトしていくワンエイティ。
そしてそのままコーナー出口が迫る。
「―――!!」
ビュン、という風切り音が聞こえたかのようにマシンは加速する。
あっという間にマシンは130キロまで加速し、直ぐに第3コーナーの左高速コーナー、第4コーナーの右高速コーナーが迫った。
まるで今までと見ているものも周りが動く速さも何もかもが異次元だった。
100キロ台で冷や汗をかいていたのが一体何だったのかと問いただしたくなる。
だが、それでも自分はこの車に順応できている。
これも4日間の慣らし運転の存在が多きというのは言うまでもない。
周りの速さに必死に目を追いつかせる。
何とか周りの動きに自分の目は追いつくことが出来ていた。
超大逃げの暴れ馬と化しているワンエイティを、何とか時雨はコントロールが出来ていた。
第3コーナーが迫る。
ブレーキをフラッシュさせたかと思いきや、即座にハンドルを右に曲げてマシンをスライドさせる。
マシンが秘めるパワーによるスライド…高速域でのパワースライドが自然とできていた。
「(時雨は…まさかこんなにもハイパワーなマシンを、もう操ることが出来ているって言うの!?)」
「(多少勢い任せでも…この車なら、いける!)」
奈美子が茫然とする中、時雨はそう確信した。
秘めたる力を持つこの車なら、間違えなく今までとは違う、多少力任せな走り方でも…今までは出来なかったことが出来てしまう。
だが、最低限基本は守らなくてはいけない。
入口のドリフトラインではハンドルをカーブの方向に曲げ、アクセルを踏み込む。
出口のドリフトラインではハンドルをニュートラルにした上で、アクセルを踏み込む。
この基本だけは大前提である。
そしてコーナーの突入速度の調整もより一層必要である…
車が2倍も3倍も速くなってしまった以上、その車の速度では曲がらないコーナーが増えてしまったという可能性もさらに増えてしまった。
だからこそ、より速度調整の必要性が増したのは言うまでもない。
時雨はそれを、運転しながら痛感していた。
「(まだだ…僕はもっと、もっと速くなれる…)」
独走するワンエイティの中で、時雨はそう思った。
だが次の瞬間には
「(乗りこなしてみたい…この車の、本当の速さを僕が引き出してみたい!)」
そう時雨は思ったのだった。
そしてそのまま第4コーナー、第5コーナーを抜けて最終ヘアピンが間近に近づいていた。
「(ついていけない…速い…。いや……速すぎる…!)」
ワンエイティが第4コーナーを突破している頃、一方でダブルXは第3コーナーの入口にいた。
もはや、スニーキング走法をやるとかそういう次元ではなかった。
スニーキングする相手が速すぎて、スニーキングが出来なかったというべきだろう。
やむなくニトロを使って追いつこうにも、第4コーナーと第5コーナーの間のストレートでも一切ワンエイティに追いつく気配は全くもって存在しなかった。
「(もしあの実力を再び発揮されたら、あとの二人はおろか…イズミさんすら危うい……!)」
そう思いながらも、第5コーナーにおいてドリフトするダブルXを操縦するミサオ。
だが、勝敗はこの時点で明らかだった。
第5コーナーの時点で、ワンエイティは最終ヘアピンを抜けたバックストレートにいたのである。
もはや格の違いが明確になったのは言うまでもない。
「―――くそっ」
完敗だった。
ミサオは背筋が凍るような感情を抱いていた。
―――勝者、時雨。
結果から見ればタイム差は4秒近くあった。
―――寄木峠往路スタート地点駐車場。
「すげぇ…」
「ま、まさか…!」
駐車場で待っていたアフロのヒロシと、夢の国のアリスがそう号哭した。
まさかミサオがこんなにも完敗するとは思ってもいなかったのである。
ゴールしたワンエイティは、力が有り余るかのように駐車場の一角に止まっていた。
「お疲れ!まさかこんなにも差が開いちゃうなんて思ってもいなかったわ」
「……」
車を止めた時に出た奈美子の言葉に、時雨は軽くこくりと頷くことしか出来なかった。
時雨は何とか有り余るパワーを制御できたが、逆にあまりにも差が付きすぎて「本当にこれで良かったのだろうか?」と疑問に思うほどだった。
今までの車と戦闘力が違う以上、ドライバーに要求される体力も精神力もよりさらに必要とされるのは言う間でもなかった。
この車の戦闘力は今までのものと一線を画しすぎている。
超ハイパワーな、峠を攻める為に生まれた戦闘兵器。
時雨にとってはそう思ってしまった。
そしてそんなマシンで相手を捻り潰すということは…何となく申し訳なさすら感じていたが、己の未熟さも時雨は感じ取ってはいた。
だがここは峠。速い者が全て。
勝者である時雨には主導権を握る権利があった。
「み、ミサオさん…!」
「…まさか、ここまでやられるとは」
駐車場にダブルXを止め、運転席から降りたミサオは諦め気味にそう呟いた。
タイム差で言えば3秒以上。
明らかに今までのドライバーと格が違った。
すると、奈美子と時雨がミサオに近づいて話しかけてきた。
「僕たちの勝ちだね。じゃあ、話を聞いてくれるかい?」
「…仕方ない。いいだろう」
そうミサオが言ったところで、奈美子が質問を投げかける。
「あなた、諜報員って言ったわよね?もしかして、色々『皇帝』の情報を掴んでいたりするの?」
「勿論だ。しかし、前から言っているようにクライアント…つまりリーダーの許可なしには情報は絶対に伝えられない。それがルールだ」
「…やっぱりそこの話は、リーダーを通さないと無理なんだね」
「悪いがそういうものだからな」
「じゃあ別の質問、リーダーのイズミは何をしている人なの?」
そう奈美子が質問すると、ミサオが神妙な顔をしてこう言った。
「…あまり大きく話さないと約束するか?」
どうやらかなり訳ありのようだ。
そう思った時雨と奈美子は顔を合わせ、軽く頷いたかと思いきやミサオの方を向いて互いにこう言った。
「大丈夫、僕たちは口外しないよ」
「ええ、約束する」
すると、その言葉を聞いてアリスがこう断言した。
「…イズミさんは目下売り出し中のアイドル、『マキノイズミ』という名で活動されていますわ!」
「え、マキノイズミ!?」
観戦に来ていたヒロシがそう声を上げた。
「ヒロシ?」
「あんた、知ってるの?」
疑問を口にした時雨と奈美子に対し、ヒロシが言葉を続ける。
「知ってるも何も…今要注目のアイドルだぜ!最近はテレビとかも結構出てるし…何より俺様、ファンなんだよ!峠のドライバーだったのか…!」
「そうなんだ…」
「…車のバトルは彼女の一環だからな。バレると彼女の活動に支障が出る。間違っても吹聴は避けてくれ」
「お願いしますね」
アイドルと聞いて多少前に出るヒロシ。
一方でミサオとアリスは時雨たちにそうどこか懇願するように言った。
「わ、わかった」
「も、勿論だぜぇ!俺様は節度あるファンだからな!」
時雨とヒロシはそう反応し合った。
すると奈美子が言葉を続けてこういった。
「お願い!…私たちはどうしても『皇帝』の情報が欲しいの!あなたからもリーダーに会えるよう取り計らってもらえないかな?」
その言葉に対し、ミサオはある方法を示した。
「…計らうこと自体は出来る。だが、会えるかはマネージャーのトモミ次第だ」
「マネージャー…」
「じゃあ、まずはそのトモミという人に引き合わせてもらえないかしら?お願い!」
奈美子はミサオに対して頭を下げた。
そしてそれに応じて時雨も軽く頭を下げた。
「…トモミが仮に許可しても、イズミが『皇帝』について早々口を開くとは思えないが…それでいいか?」
「構わないわ。とにかくお願い!」
「僕からも、お願いするよ」
ミサオの言葉に奈美子と時雨はそう互いに反応するのだった。
「では、私の方からトモミに連絡しておく。連絡が付き次第『ピット』に電話するから、数日程待ってくれ」
「わかった」
「ありがとう。じゃあ、お願いね」
そう言ったところで、この日のバトルはお開きとなった。
時刻は深夜0時前だったこともあり、この日の峠はクローズとなった。
ガールドラッシュと皇帝の間に何かがあったことは間違いがないと思われる。
その謎を追うべく、時雨と奈美子は新たなマシンと共に再びバトルに身を投じるのだった。
パワー有り余るトンデモマシンとなったロケットバニーワンエイティ。
果たして時雨は皇帝と対峙するまでに本当に乗りこなすことが出来るのか?
疑念が残る中、新たなマシンとのバトル漬けの日々が再び始まった。
(第15話End)