ルナちゃん「トレセン学園をぶっこわす!」――絶対全員を幸福にする皇帝と絶対改革を完遂する地方ウマ娘――   作:帝都ウマピヤヰ倶楽部

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【閑話】学園生徒会四〇年史に寄せて

 

 

 

〈当時の生徒総会について教えてください〉

 

 

 まだ大講堂がありませんでしたから。グラウンドでやっていたんです。

 ええ。大運動場、トラックの方じゃなくて。今はトレーニング棟エリアになっているところです。

 

(大運動場の写真)

 

 大運動場といっても、広い空き地で、何もない場所でしたよ。総会となると生徒がずらりと並んで。ええ、今よりずっと(生徒数が)多かったですからね。総会は全員出席ってルールにはなっていましたけれど、サボっていた子も多かったんじゃないかしら?

 


 

 

 

〈ルドルフ会長の生徒会では書記だったそうですね〉

 

 

 ええ、でも私は最初のメンバーではありませんよ。むしろ生徒会執行部の発足当時は、(執行部と対立した)総務会議の庶務委員会所属だったんです。私は学園が出来てから入学したのですが、姉が東京レース場付属出身で。その流れで所属していました。

 

 

〈では、庶務委員会で書記業務を?〉

 

 

 実はそうでもないの。にんじんプリンを委員会の先輩に食べられてね?(笑)あの頃は、先輩の言うことは絶対、言い返せるような時代じゃないでしょう? だから、先輩は悪い奴だぞーって言いふらすためのネタを集めていたの。(そういう企みがあったことは)もう時効よね?(笑)

 

 


 

 

(当時の議事録をみせて頂きました)

 

 …………読めないでしょう?

 父が速記官で、私も(速記を)勉強していたの。

 

 それで、こっちが清書した方ね。

 

 


 

 

 ○月△△日(土曜日) 晴れ 大運動場 第4時限

 

 第三回生徒総会(前期)

 議長①(一般生徒より選出)  個人情報保護

 議長②(一般生徒より選出)  個人情報保護

 

 

~~~~~

 

 

【第4号議案:動議提出「学園施設の整備状況に関する質問」】

 

議長「続きまして、第4号議案。一般生徒よりの動議提出です」

 

シンボリルドルフ「はじめまして。中等部のシンボリルドルフと申します。本日は常設委員会、ならびに総務会議構成員の方々に質問したく、動議を提出いたしました。

 

 現在、私たちは学園ならびに学園生徒に対する奉仕活動の一環として、学園設備の清掃活動を行っております。そこで先日○月□日におきまして、ひとつのトレーニング設備に対して同日、同時刻に重複する業者の発注が行われている場面を目撃しました。

 

 学園の維持整備に関わる費用は、生徒の学費から捻出されています。これの無駄遣いは、学費の無駄遣いです。特にこのトレセン学園は広く、残念ながら全ての維持管理を賄うだけの予算はありません。まして今後は、学園の校舎などインフラの修繕費用なども捻出する必要が出てくることでしょう。

 先ほどの第2号議案にもありましたとおり、現在の学園生徒会は多くの繰越金を維持しております。しかし今後、修繕費用などで予算が膨らむことを考えれば、いずれ繰越金は底をつき、学園の設備維持に大きな影響が出ることは間違いありません。だからこそ、今から予算関係の効率化を進めねばならないと思います。

 

 予算効率化は、そのまま生徒会の効率化です。特に4つの常設委員会が似たような担当領域を抱えている現状は(遮られる)」

 

庶務委員長「すみません、シンボリルドルフさん。質問が主旨から逸れているようです」

 

シンボリルドルフ「私の質問は学園の維持修繕に予算が使われすぎているという主旨です。外れているようとは考えておりません」

 

文芸委員長「動議には『整備状況に関する質問』と書かれています。予算の話をすること自体が主旨から外れているとは考えませんか?」

 

シンボリルドルフ「先ほど申し上げましたとおり、繰越金が尽きれば整備を行うことが出来なくなります。予算と整備状況は不可分の問題でしょう」

 

会計委員長「庶務(東京)文芸(京都)もまどろっこしいこっちゃなぁ。ルドルフはん、要はこういう話や。何事もナシよりアリの方がええ、せやろ? 効率化が東京もんの趣味なのはウチかてよぉ知っとるけどな、効率化ゆうたって早々出来るもんやない」

 

シンボリルドルフ「ええ。ですから、抜本的な改革が必要なのです。私はここに(遮られる)」

 

規律委員長「ちょっと時間がおしておりますので、議長。次の議題を」

 

議長②「規律委員長、まだ質問は終わっていません。最後まで(遮られる)」

議長①「以上で第4号議案を終わらせて頂きます。シンボリルドルフさん、ありがとうございました。質問は生徒会総務会議の健全な運営のために役立たせて(遮られる)」

 

発言者不明「意義あり。異議あり」

 

議長①「静粛にしてください」

 

 補足:シスカノホープが前に出てくる。

 

シスカノホープ「生徒会則73条、会議中の緊急動議権に基づいて発言します。発言者はシスカノホープ、生徒番号××××××です」

 

議長①「静粛にしてください。シスカノホープさん、退場してください」

 

シスカノホープ「議長に緊急動議発動を却下する権限はないですよね。では緊急動議を発動します。議題はただひとつ、今の各常設委員長による生徒総会の妨害についてです。この妨害が正当であるかの説明をしてくださいよ、委員長」

 

議長②「シスカノホープさん。下がってください。第4号議案はまだ終わっていません」

 

シスカノホープ「そうなんですか。終わったとそちらの議長は言っていましたが」

 

議長②「言葉の綾です。議題は終わっていません。」

 

シスカノホープ「わかりました。では続けてください。どうぞ」

 

シンボリルドルフ「続けてもよいかな?」

 

議長②「どうぞ」

 

シンボリルドルフ「予算効率化は、そのまま生徒会の効率化です。特に4つの常設委員会が似たような担当領域を抱えている現状は問題でしょう。そこで各常設委員長にお聞きします。今後、担当領域の再分配など、総務会議は現状の改善を実施する余地はありますか?」

 

会計委員長「茶番はやめようや、ルドルフはん。総務会議が滅茶苦茶なのはウチらもよーわかっとる。ここで動議をぶつけて、ウチらを解散させるっちゅーのも1つの手や。せやけどな、それでマシになると思うんか?」

 

シンボリルドルフ「それを聞きに来たのです。私は」

 

会計委員長「卑怯やな。改善策を出さずに質問だけ繰り返す。ウチらが案を出したら、今度はそれにケチをつける気やろ」

 

シンボリルドルフ「そんなことはしません。私からも案を出します」

 

会計委員長「どないするっちゅーねん」

 

シンボリルドルフ「公約で。生徒会長選挙の公約で論戦を戦わせられば幸いです」

 

 

 


 

 

 (議事録を見ながら)

 あの生徒総会は「伝説」になったわ。

 

 あの頃の熱狂を説明するには、「日本中央競走(NCK)」が「ウマ娘レース協会(URA)」になるまでの改革の歴史とか、もしかすると学生運動への憧れとか。そういうのを話さないといけないのかもしれないけれど。

 

(初代生徒会メンバーの写真)

 

 でも根っこのところは、そんな大きな話じゃなくて。今への不満とか、将来への期待とかだったと思うの。

 だからこそ、みんな会長についていこうと思ったんじゃないかしら。

 

 


 

 

〈最後に、今の学園生にひとことお願いします〉

 

 

 私が中央(トレセン学園)に入ったのは、いわゆる「箔づけ」のためだったわ。あの頃は、ちょうど、ウマ娘も働き口が減って、家庭に入るのが普通になっていった時代だったから。時代に逆行して好きなことをやるには実力を示す必要があったの。

 でも、結局レースにも一生懸命になっちゃったわね。書記のお仕事だってそう、最初はにんじんプリンの恨みで始めたのが、気がついたらこんなインタビューになっちゃったわ(笑)なにがどうなるかわからないものね。

 

 だからね、私からあなたに伝えたいとこはひとつだけ。

 「やりたい」と思ったら、素直になんでもやってみて? トレセンにいるからって、レースに関係あることばかりやらなくてもいいの。どんな経験でも、それはあなたの生涯(あし)加速(はやく)してくれるはずよ。

 

 

 


 

 

 

「ありがとうございました!」

「いいのよ。こちらこそ昔を思い出せて、楽しかったわ」

 

 頭を下げる学園生たちに、はにかみながら彼女はお辞儀をする。

 学生の頃に書いた拙い議事録も。生徒会の写真も。いつぶりに見ただろうか。

 

「あの。それともう一つ、聞きたいことがあるのですが!」

 

 昔から変わらない、今では少し古臭くなってしまった制服に身を包む生徒が背筋を正して言う。カメラを止めてから聞くと言うことは、聞きにくい質問なのだろうか。

 

「実はこの写真、写真立てから外してみたら裏に文字が書いてあって……」

「あら」

「これって漢文ですよね。誰が書いたのか、ご存じだったりしますか?」

 

 パカリと写真立てが外され、写真の裏側が見える。そこには鉛筆で書かれたらしい、丁寧な楷書体の漢字が並んでいた。

 

「『吾言即是万人声(吾が言は、即ち是れ万人の声)褒貶毀誉委世評(褒貶毀誉は世評に委す).』……斎藤隆夫からの引用かしら」

 

 だとしたら、そんな文を引用するのは彼女しかいないだろう。

 

「これは多分、彼女の理想ね」

 

 斎藤隆夫――――――己の信念を貫き、民衆からも支持された政治家。

 それを引用して、ましてあの曲者揃いの初代生徒会に突きつけられるのは、きっと彼女しかいない。

 

「シスカノホープ。トレセン学園初代生徒会執行部……いわゆる第1次ルドルフ執行部(政権)の役員」

 

 役職はなんだっただろうか。本人は雑用係と言っていたけれど、あの時の生徒会は組織作りの真っ最中だったから、何らかの役職名はあったはずだ。

 

「どんな方だったのですか?」

 

 後輩たちがそんなことを聞いてくる。さて、なんと答えれば良いだろうか。

 記憶の彼女に尋ねるより早く、かつての生徒会書記は口を開いていた。

 

「それは、自分の目で確かめてみることね」

 

 誰かに委ねるしかないと割り切って、それでも諦めなかった彼女なら。

 答えを他人に求めるな。自分で導けと言うに違いないのだ。

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