向日葵の暗躍   作:黒色の向日葵

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残業中だった主人公が思わず妖怪になっちゃう展開


第1話 出会いは唐突に

 ここはいったいどこだろう……? 

 

 俺はさっきまで残業中だったはずだが……明るい雑木林の中で心地良い風に吹かれて、思わず手に持っている日傘を握りしめてしまう。え? 日傘? 日傘なんて俺は持っていなかったはずだが、なぜ持っているんだ? 

 

 というか先ほどから気になっているんだが、俺の体がやけに軽いような……あと髪の毛も長くなってないか? 

 

 そう思い思わず頭に手を置くと、ミディアムショートっぽい手触り……はぁ?? 

 いやいやと思い、思わず身体を探ると大きな胸に当たるし、性別が男性ならあるべきものがない。え、女性の身体じゃないか! どうなっているんだ!? 

 

 混乱した俺は、近くにある水溜りに目をやる。そこには緑色のくせ毛のあるミディアムショートに、真紅の眼に大きな胸、そして白色のカッターシャツと赤色のスカート、更にその上から同じく赤いベストを羽織っている女性の姿があった。カッターシャツの首元には黄色いリボンをネクタイのように結んでいる。スカートとベストにはチェック模様があり非常に印象的だ。

 

 

 というかこれ「風見幽香」じゃねぇか。

 

 彼女は『東方project』に出てくるキャラで、花を愛し、春は春の花、夏には夏の花、秋には秋の花、冬には冬の花を愛でる『四季のフラワーマスター』。そして……「花を操る程度の能力」を持つ妖怪だ。

 

 これが所謂「転生」で「憑依」というヤツか? 一応前世というか以前の世界の記憶は保持している。だが、先ほどから花を愛し、様々な花を保護し、慈しみたい欲求が溢れてくる。

 

 しかし、まさかこの俺が転生、それも『東方project』の世界に転生とはな。ということは、この雑木林は『東方project』の主な舞台である「幻想郷」なのか。風見幽香は幻想郷にある太陽の畑と言われる草原地帯を主な活動場所にしているが、四季折々の花を求めて幻想郷中を動いているし、この雑木林を歩いているのも花を求めての行動だったのだろう。

 

 いやぁ、あの作品で最も好きなキャラに転生したのは本当に嬉しいし、何より所謂「幻想入り」したのも嬉しい。主人公の博麗霊夢や霧雨魔理沙だけでなく、様々な魅力あふれるキャラを眺めてみたいぜ。

 

 「触れ合う」のではなく眺めてみたいのには訳があるが…まぁそれは今はいっか。何はともあれ幻想郷を踏破してやるぜ!

 

 

(少女歩行中…)

 

 

 数時間ほど歩いているが、さすが妖怪ボディ。全く疲れないし、食欲も湧かない。本当に便利だ。おまけに時おり発揮される怪力も凄い。獣道を塞いでいる大岩もワンパンで粉々に粉砕されるし、倒木を日傘でつつくと瞬時に枯れた。「花を操る程度の能力」どころか「植物を操る程度の能力」になっていないか、これ??

 

 東方旧作シリーズや、西方project、『東方花映塚』で活躍しただけあって、本当に凄いキャラなんだなと再認識。かなり険しい山の中や森林を何㎞も歩いているが汚れもしないし、汗もかかない。暑さは感じるが、全く苦にならない。

 

 歩いている途中で様々な植物を見かける。どうもこの辺りは険しい山岳地帯で、ブナ、ミズナラ、シナノがあると思えば、降っていくにつれてコナラ、クリ、ケヤキが分布している。前世ではほとんど植物に詳しくなかったのに、風見幽香に憑依してからはどんどん植物の知識や花の種類や花言葉が溢れてくる。

 

 内面の変化に思わず苦笑いを浮かべると、開けた道に出た。アスファルト舗装された文明の香りを感じる。妖怪の身になっても前世の残滓からか、文明圏の安心感に浸っていると、ふと恐ろしいことに気が付く。

 

 幻想郷にアスファルト舗装された道ってあるのか??????

 それもご丁寧に「長野市まであと13㎞」と書かれた青看板付き。

 

 え、え、え、え(少女混乱中…)

 

 いやいやいやいや、え、俺って幻想郷に転生したんじゃないの?少なくともこの身体は間違いなく「風見幽香」だし、また先ほどから感じるように、人間ではなくなっているので、風見幽香にコスプレした人間の女性に転生したわけでもない。正真正銘の妖怪「風見幽香」である。

 

 だからこそ、俺は『東方project』の世界、それも幻想郷に転生したのだと思ったのだ。

 

 しかし、ここは明治期くらいの文明圏である幻想郷では考えられないアスファルト舗装され、現代日本でよく見かける片側一車線道路。更に無駄にアップした視力で遠くを見ると、向こう側から自動車もやって来る。

 

 

 …まさか風見幽香の身体だけで普通の世界に転生したのか?じゃあここは前世…というか今世で、俺が変化しただけなのか?じゃあ俺の元の身体はどうなっているんだ???

 

 突然の現実の恐怖に慄き、思わず呆然としていると、先ほどからこちら側に向かって走行中の自動車がスピードを落とし、やがて俺の目の前まで来ると停止した。そして助手席側の窓が開き、運転中の男性がこちら側を心配そうに見ながら声をかけてきた。

 

 

「おい、そこの日傘を持ったねぇちゃん、アンタぁこんな所で何やってんだ?」

 

 それは浅黒い隻眼の大柄な男性で、長い髪を後ろに束ねた如何にも怖そうな男だった。

 

 なんか見覚えがあるなぁと思ったが、親切な対応をしてもらったので、返事をしないわけにはいかない。

 

「あら、心配してもらってありがとう。でも大丈夫よ。」

 

 どうやら風見幽香の身体に引っ張られて、出てきた台詞は女性の口調で、しかも少々尊大というか、少なくとも見た目の関係上目上の人に対する対応ではなかった。

 

 しかしながら、この親切な大男は俺のあんまりな対応には全く気にせず、なおも心配気味に話しかけてくる。

 

「といってもよぉ、こんな山の中の道に若い女がたった一人で、それも軽装で歩いているなんてほっとけねぇよ。家出か?それとも…まさかとは思うが、事件か事故に巻き込まれたのか?」

 

「あら、まるでお巡りさんみたいね」

 

「まるでも何もそのお巡りさんだ。まぁ今日は非番ですらない完全な休日だが…」

 

 なんとこの大男、こんな恐ろしい見た目で警察官だったのだ。確かに犯罪者からすれば恐ろしく、市民からすれば頼もしい見た目だ。それに初対面の人間(今は妖怪だが)に荒々しくも親身に接するのは警察官らしい。

 

 そんな思いを抱きながら、どうしたものかと考える。ここは現代世界で、近くの看板から察するに長野県長野市近辺の山なのだろう。そしてこの大男はおそらくは長野県警の警察官。どうやってここは穏便にやり過ごそうかと思っていると、ふと先ほど抱いた既視感に再度思考が及ぶ。

 

 この大男、やっぱ見たことあるんだが、前世で長野県警に知人なんて皆無だし、知っているわけがないんだよな。

 

 そう思い、とりあえずお互いの自己紹介を提案する。

 

「お巡りさんならお名前を教えてくれるかしら?もちろん私もちゃんと名乗り返すわ」

 

 そう言うと、その大男は苦笑いしながら返事を返した。

 

「なんか職質受けてるみてぇだな…まぁいいや、俺は敢助。長野県警の大和敢助だ」

 

「…私は幽香。風見幽香よ」

 

 

 

 大和敢助…大和敢助だと!?

 

 大柄な隻眼の浅黒い男で「大和敢助」と名乗る長野県警の警察官…間違いない、この人あの『名探偵コナン』のキャラだ!

 

 

 

 え、じゃあ…俺って『東方project』ではなく、『名探偵コナン』の世界に転生したのか!?

 

 




実は名探偵コナンだとベルモットと越水七槻、榎本梓が好きです。
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