向日葵の暗躍   作:黒色の向日葵

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東方projectの世界に異世界憑依転生したのかと思っていたら、まさかの名探偵コナンの世界に転生した主人公。
人間の身ではなく、妖怪の身で、この世界にどのような影響を及ぼすのか。


第2話 奇妙なドライブ 前編

 まさか名探偵コナンの世界に転生したとはな…。てっきり東方projectの世界に異世界転生し、いわゆる「幻想入り」したのかと思ってたわ。

 

 というか、どうやって目の前の名探偵コナンのネームドキャラを無難に躱そうか…

 

 これが東方projectの世界なら、人里以外の場所で会った人間相手なら割と適当に(それでも主人公の紅白巫女の逆鱗に触れないよう)立ち回ることが出来る。しかし、名探偵コナンの世界は前世の世界とほとんど変わらない「普通の現代社会」だ。それも週刊少年誌が原作で、夕方に何十年もアニメを放送しているだけあって、基本的には少年主人公達が善人側で、敵対勢力や犯罪者達は悪人側だ。

 

 主人公達と敵対した「犯罪者」は捕まったり、社会的な制裁を受ける。少なくとも主人公達や少年少女に嫌われたり、敵対関係になった場合は間違いなく最終的には破滅を招いてしまうだろう。

 

 目の前にいるこの大和敢助は長野県警の警部で、作中でも非常に頭のキレる人物だ。なんせ主人公と「名探偵」毛利小五郎の関係性を早期に見抜くほどの推理力や、報告書と現場検証の矛盾にも気付く観察眼も持っている。俺が適当な事を言うと、怪しまれる可能性がある。

 

 これは「風見幽香」にとって、あまり良くない展開になりえる。というのも「とある幻想郷の書籍」での妖怪風見幽香の危険度・人間友好度指標が、当時の紹介されている妖怪種では「唯一」「危険度・極高」「人間友好度・最悪」となっているのだ。

 

 幻想郷に転生しても東方projectのキャラ達と触れ合うのではなく、眺めてみたいと思ったのはこれが理由なのだ。これでは主人公達どころか人間社会全体と相性が良くない可能性も出てくる。

 

 しかも名探偵コナンの世界は、同じ原作者繋がりで『YAIBA』という作品と同じ世界観を一部共有している。星すら破壊する魔剣やら、妖怪討伐が可能な魔剣や聖剣がゴロゴロある世界だ。人間という種族の敵対者になると、俺自身が物理的に討伐される可能性すら出てくる。化け物を倒すのは、古今東西人間なのだ。

 

 とはいえ、先ほどのとある幻想郷の書籍でも紹介されているように、風見幽香は人里にも普通に買い物に出向いているし、人里の人間達とも温和に会話しているので、選択や立ち位置さえ間違わなければ名探偵コナンの世界でも生存は可能だろう。肉体的にも精神的にも妖怪種は人間種よりも頑丈なのは変わらないし。

 

 ここで先ほどの大和敢助の質問に立ち返る。俺が正直に「いやぁ残業中に東方projectというゲームに出てくる妖怪キャラに転生し性別も変わったんすよ!ガハハ!」と言っても、まぁ怪しまれる…というか病院に送られるか、正式な職質をされ詰む。とはいえ、適当なことも言えない。

 

 そこでその場しのぎではるが、風見幽香の能力を活用した設定で切り抜けよう。能力自体は本物だし、これにすがるしかない。そうだな…とある大学の農学部で植物学や園芸学を学んでいる学生の設定でいこう。フィールドワークを実施中だったが、実習が終わり自分の好奇心を駆り立てる植物を調べていたら、大和敢助がやってきた、という設定だ。うん、無理があるが、これくらいしか思いつかない…。

 

 まぁ後はもう一つ設定を追加しよう。この世界である程度信用度が初対面でも高く、またある意味では誰でも名乗ることが可能な職業がある。それは…

 

 

 

(少女説明中…)

 

「大和…さん、先ほど私が何をやっているのかと聞いたわね?」

 

「…なんかアンタにさん付けされると変な感じだな…まぁいいや。そうだ」

 

「複数の目的があるわね。まずは私はとある大学の農学部で植物学や園芸学を学んでいるのだけれど、フィールドワークをやっていて、それが終わってからここの植物を調べていたの。この時期には珍しい花だしね」

 

「言われてみれば素人目にも多様な花が咲いてんな…。んで、複数と言ったが?」

 

「まぁ警察官の貴方からすれば苦々しいかもしれないけど…実はとある依頼を解決中の『探偵』なのよ、私」

 

「なっ…探偵だァ!!??」

 

 そう、この名探偵コナンの世界では探偵は重要なファクターだ。一部の例外もあるが、基本的にこの世界の探偵は犯罪者と対峙する存在で、主人公も該当する。また主人公の周りにも存在し、基本的には主人公勢力であり、あるいは主人公勢力の味方だ。もちろん先ほど例外といったように犯罪者と成り果てる探偵もいるが、そこは今はいい。

 

 ここで主人公達の強力な味方である長野県警の大和敢助警部に探偵アピールをしておけば、万が一主人公達と遭遇しても伝聞で比較的印象が良くなるかもしれない。可能性レベルではあるが、この世界で主人公達と敵対したら身の破滅なのだ。適度にポイントを稼がんとな…。

 

 ここで俺の説明を聞き終えた大和敢助の反応を伺うと、苦い顔していた。まぁそりゃそうか。「名探偵」である毛利小五郎にも最初からやや懐疑的だったし。まぁ「日本警察の救世主」とまで言われる主人公こと工藤新一ほどになれば大丈夫なんだろうが、やっぱ一般的に警察はそこらの探偵には少々煙たく思っているのだろう。気持ちはわかる。

 

と、俺がとりとめのない感想を抱いていると、大和敢助から思いもよらない提案をされた。

 

「アンタ女子大学生探偵だったのか…まぁいいや。長野市まで車で送っていくぜ?」

 

「あら…新手のナンパかしら?それに長野市なら方向が正反対のようだけど?」

 

「ハッ、ナンパするにしちゃアンタは若すぎるな。あと非番ですらない休日にヒマだったんでドライブしてただけだし、別にたいして目的地もねぇよ」

 

 なんとこの男、わざわざ逆方向に俺を送り届けてくれるらしい。まぁ確かに客観的にみれば若い女が車やバイクもなく山の麓にポツンと1人だけでいれば、そりゃそういう対応にもなるか。何よりも名探偵コナンの世界の警察官なのだ、この男は。毎週夕方に放送される作中の善人側のキャラだし、こういう展開になるのも仕方ないのかもしれない。

 

 あと先ほどナンパと冗談を飛ばしたが、彼は部下で幼馴染の上原由衣と両想いなのだから、まぁそれは絶対にあり得ないだろう。この名探偵コナンの世界、幼馴染が絶対的圧倒的完全無欠に恋愛勝利者なのだから、その辺りは信頼できる。いろんな意味で。

 

 というかさっきから風見幽香の身体や内面に引き寄せられて、出てくる言葉が女性っぽくなっているし、奇妙な感じだ。まぁそのうち慣れる…のかもしれない、多分。

 

 まぁその辺はいいや。風見幽香の身体に憑依転生したからなのか、深山幽谷や深い大森林地帯、雑木林や草原地帯も好きになってしまってはいるが、一応前世の残滓が人間が住む都市部も行ってみたいと訴えている。ここは渡りに船だ。ツールは自動車だけど。

 

「まぁいいわ。お言葉に甘えて長野市まで送って頂けるかしら?おじ様」

 

「おじ様はやめてくれ。寒気がする。まぁ送り届けますぜ、お嬢さん」

 

 アホなやり取りの後、俺はとりあえず助手席に座る。大和敢助はちょっと意外そうだった。あー確かに後部座席のほうが良かったか?助手席だと事故の際に危険度が後部座席より高いもんな。でもまぁ妖怪…それもあの風見幽香の身体なのだ。物理的衝撃なら余裕ですらないレベルで無意味だろう。あと助手席の方がドライブ時の風景が良いのだ。

 

シートベルトを着用し、いざ長野市へ!

 

 

(少女相席中…)

 

 この男、見た目とは裏腹に運転が丁寧だ。まぁ警察官だし、そりゃ安全運転するか。「銀白の魔女」と語り継がれるマツダ・RX-7乗りの警察官もいたような気はするが…まぁ今はいいや。気のせい気のせい。

 

 とある「魔女」を思い出していると、運転中の大和敢助が気を利かせてからか、話しかけてきた。

 

「ちょっと汚い車ですまねぇなぁ。まさかわけぇ姉ちゃんを助手席に乗せるなんて思いもしなかったから、割と中は掃除をサボってたんだ」

 

「あら、そこまで酷くないわよ?ただ、汚れというか、むしろちょっとの間使っていなかったような気もするけど」

 

「驚いた。そこまで分かるか。さっき名乗った探偵っていうのも噓じゃあなさそうだな」

 

 そう、この車少しだけ運転をしていなかったようなのだ。運転技術が完璧な分、アイドリング音や助手席どころか運転席にも少し溜まっている埃が目立つ。それに…

 

「ところでこの車、割と古いタイプなのかしら?フラップタイプのドアノブなんて結構久しぶりよ?」

 

 そうなのだ。自動車に乗る段階で気が付いたのだが、今なら普通に取っ手部分がバー状のグリップタイプが主流なのに、この車は板状のプレートを引き上げるフラップタイプなのだ。もちろん近年では逆にドイツの某社がフラップタイプのシンプルなドアノブを復活させ、凹凸部分を減らし空力性能向上を見込めるフラップ復権がトレンドらしいが、この車の見た目からして良くも悪くも古いタイプの日本車。中途半端に時期が合わない気がする。

 

 もっとも俺は前世からして車は乗れりゃ良いや、と全く自動車の知識はなく、今の知識も完全に同僚の受け売り。むしろ俺の方が間違いかもしれない…。

 

だがここで予想外の返事がくる。

 

「あぁ?フラップタイプなんてお前当たり前じゃあないのか?そりゃ外車や一部の車はグリップ式らしいが…。ははーん、さては良いトコのお嬢さんだな、アンタ」

 

 ふむ…?フラップタイプの車が主流なのか。あとカーナビやドライブレコーダーがなさそうなのは…まぁその辺は普通か。あと先ほどから私がスマホを一切取り出していないが、その辺も気にしていない。まぁドライブ中に助手席側の人間がスマホを出さないのはマナーかもしれないが、それでもカーナビがないタイプの車なら某マップサービスを使用するために助手席の人間が取り出すのも自然な気はするが。

 

 そこで俺はとある可能性に気が付いた。まさか…でも旧作やWindows版の東方projectの発売時期や原作の名探偵コナンの連載開始時期を考慮すれば、その可能性は高くなる。

 

「そういえば…今って西暦何年だったかしら?」

 

「?変なこと聞くなアンタ。まぁいいや。今は1996年だぞ」

 

 そうか…東方シリーズ最初の作品である『東方靈異伝』が原作者によって某大学理工学部の文化祭にて展示発表されたのが1996年だったな。頒布されたのは1997年だが。そして『名探偵コナン』が連載開始したのが1994年だから、名探偵コナンの世界だと8巻は超えてそうだな。

 

 まだ灰原哀が登場していなくて、なんなら劇場版第一作もまだか。とはいえ、毛利小五郎の知名度はもう高くなっている時代ということか。これは…今後どのように行動すれば良いのだろうか?

 

 




参考資料
原作65巻 File6「危険な2人連れ」File7「半殺し」
アニメ557話「危険な二人連れ」

『東方靈異伝 ~ Highly Responsive to Prayers』
1996年11月にとある大学の文化祭にて展示発表され、頒布されたのはコミックマーケット52(1997年8月)より。
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