向日葵の暗躍   作:黒色の向日葵

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なんとリアル現代ではなく四半世紀以上も前の時代に転生してしまったことが分かった主人公。今後どう行動するのか、そしてこの奇妙なドライブはどうなっていくのか?


第3話 奇妙なドライブ 後編

(少女思案中…)

 

 1996年ってアレやん、ガラケーどころかポケベルやPHS全盛期じゃねえか。俺の父親や母親が使ってた時代かよ…。あとアニメ版名探偵コナンの放送開始年でもあるのか。ある意味納得というか、そりゃまぁ「風見幽香」で名探偵コナンの世界に憑依転生するならこの時代になるのも不思議ではないかもな。異世界転生や憑依自体が不思議ではあるけれど。

 

 ということは、先ほどから察せられる現在乗車している自動車に少しの間乗っていなかったのも、なんとなく理由が見えてきたな。この大和敢助警部、ある事件の捜査中に雪崩に遭い、半年間の間意識不明のまま入院していたのだ。

 

 そりゃ半年間も車の運転を放置してたら、助手席だけでなく、運転席にも埃は溜まるわな。大方今回のドライブも運転のリハビリみたいなもんだったんだろう。凄い丁寧な運転も、実は慎重の裏返しなのかもしれない。まぁ安全運転は素晴らしいし、文句はないどころか大歓迎だが。

 

 ってことは、主人公が長野県で大和敢助警部と初対面するのもかなり先になるな。原作だと59巻だから2007年か…。あと11年も先なのか。まぁ原作はサ○エさん時空とはいえ、かなりゆっくりと進行はしているし大丈夫だろ。なんならこの身体は妖怪なので、普通に時の流れに耐えきれるだろうし。

 

 時の流れで思い出したが、主人公と対立する「黒ずくめの組織」とはどう接しようか。まぁ味方はないな。スパイや裏切り者だらけのガバガバセキュリティだし。そもそも夕方に放送される作品の主人公達の敵対者なのだ。組織や組織の構成員もロクな末路にならないだろう。原作者も犯罪者には容赦ない傾向があるし、絶対に同陣営には入らないようにしよう。

 

 とはいえ、完全に敵対するには強大過ぎる。某巨大自動車産業の会長で経済界のボスや、「千の顔を持つ魔女」が幹部として蠢動している組織だ。しかも攻撃ヘリや潜水艦といった軍事兵器を保持し運用している組織でもある。いくら物理的にも精神的にも強靭な妖怪とはいえ、まぁ面倒くさいことになりかねない。

 

 なので基本的には積極的には関わらず、さりとてこちらの領分に入ってきたら即座に滅殺するのが無難か。先ほどから風見幽香の思考回路も、基本的には摩擦を望まず、笑顔で紳士的に事態が推移するのを望んでいるようだし。とある幻想郷の書籍にも似たようなことが書いてあったし、まぁ良くも悪くもマイペースなんだろう。原作からしてちょっとお節介な面もあり、風見幽香らしい方針だと思う。

 

 もちろん「我々は神でもあり悪魔でもある。なぜなら時の流れに逆らって、死者を蘇らそうとしているのだから…」などと発言している連中なのだから、時の流れに耐え、神でも悪魔でもないが、人間でもない風見幽香の正体を知られるのも厄介だ。これに貢献するシステムソフトを作ると組織からみなされた板倉さんってマジですげぇよな…。

 

 と、今後の風見幽香の方針をボケーっと助手席側の窓から風景を楽しみながら考えていると、大和敢助が声をかけてきた。結構話好きなのか、職務の一環として軽い誘導尋問を無意識下でやっているのか、確信的に意図してやっているのか不明だが、結構話しかけてくれる。ちょっと嬉しい。

 

「そおいや探偵の依頼処理中だったようだが、終わったのか?」

 

「えぇ、9割がた終わったわね。だからまぁドライブに誘ってくれたのは結構ありがたかったわよ?」

 

「そらどうも。しかしアンタみてぇな若い女が…それも珍しい理系の研究者の卵が探偵も兼業するとはねぇ…。平成ってのはえれぇ時代になったもんだ」

 

 …なるほど、1996年的な感じの会話だ。確かに平成一桁なら昭和の時代の方が良くも悪くも馴染みがあるのだろう。

 

 思わず時代感覚のずれを再認識し苦笑していると、会話が続いた。

 

「そういや内容は教えてくれなくてもいいが、難度の高さはどれくらいなんだ?東京や大阪だと探偵はかなりいるみたいだが、ここらじゃあんまり見たことねえぇんだ。もちろん単に俺が偶然遭遇していないだけかもしれないが」

 

「(『遭遇』って妖怪みたいな扱いだな…)そうね、まぁ大したレベルじゃないわよ?探偵とはいえ、所詮は弱小。今をときめく大探偵である毛利小五郎や、平成のシャーロックホームズこと工藤新一クラスみたいな凄まじい事件は扱えないわ」

 

 ここで主人公達の名前をそれとなく出して様子を伺ってみる。毛利小五郎は知名度急上昇中だろうし、工藤新一は「日本警察の救世主」なのだから、長野県警の警察官も名前は知っているはずだ。

 

「あー工藤っつう高校生探偵は知っているな。警察庁の連中が称賛していたし、県警本部にも色々と良い噂は流れてくる」

 

 おー!さすが主人公だ。やはり知られていたか。まぁイケメン男子高校生探偵だし、あのキザな推理は映えるよなぁ。おまけにお父さんは世界的な推理小説家で、お母さんは伝説の女優。そりゃ抜群の人気や知名度ですわ。というか警視庁ではなく警察庁が褒めているのは面白い発見だ。まぁ警視庁の方よりは警察庁の方が県警と交流があるからだろうが。しかし…

 

「あら?毛利小五郎は?本人は警視庁出身で奥様は弁護士という、法曹界にとって良き味方のような探偵だと思うけど?」

 

「うーん…名前くれぇしか知らねぇなぁ。安楽椅子探偵の千間降代や美食家探偵の大上祝善なら知っているが…」

 

 なるほど、これは興味深い。1996年時点だと有名ではあるが、まだ名前だけ知っているクラスなのだろう。確かに連載開始から2年で、アニメ放送に至っては開始したばかりだもんな。文字通り知名度クラスなのか。

 

 と主人公達の知名度について考えていると、窓から見える風景が変わってきた。険しい山が消え、田畑が目立ってきた。ポツポツ農家住宅も見えてきたし、おそらく市街化調整区域地帯に入ったのだろう。長野市市街化区域までもうすぐだ。

 

 この奇妙なドライブももうすぐ終わるかと思うと、ちょっと寂しくなってきた。なんだかんだで会話は楽しめたし、思考も纏めることが出来た。軽い主人公達の立ち位置も伺えたのは収穫だ。特に他県の警察官からみた毛利小五郎の知名度ってのは興味深かった。

 

 そう思い、ふと運転席に座る大和敢助警部を見ると少しだけ険しい顔をして前方の車を睨みつけていた。

 

「どうしたの?前を睨んだりして」

 

「いやぁ…なんか怪しい動きをしてんだよな、あの黒色のバン」

 

 そう言われて前を見ると、先ほどから少し前を走行中の黒色のバンが見えた。

 

 ふむ…見る限りそんなに怪しくはなさそうだが…普通に走行しているありふれた自動車に見える。しかし現職警察官が、それも名探偵コナンの世界でも非常に優秀な刑事が「怪しい」と言っているのだ。何かあるのだろう。

 

 そう思い、ジッと睨んでいると、ふとその黒色のバンが左折した。その際にチラりと運転席や助手席の男たちの顔が見えた。妖怪特有の視力で見る限り、まぁ確かに真面目そうな人間には見えなかったが…人は見た目で判断しちゃいけない。いけないと思いつつ、運転席に座る長野県警刑事部捜査一課警部殿にご注進する。

 

「運転席と助手席に座る男連中を見たけど…人相が悪いわよ?服装も派手な感じだったし」

 

「ほーう…ところで風見探偵、少し急用を思い出したので左折してもよいか?」

 

「どうぞどうぞ大和警部。善良なる一市民かつ一小探偵として、偉大なる県警警部閣下のご指示に従いましょう」

 

 ニヤリととまるでこちら側が犯罪者のような悪い笑みを浮かべながら、車を左折させ、前方の黒色のバンを静かに追いかける。すると急に運転席に座る大和勘助が大きな声をあげた。

 

「あぁ!?あぶねぇな、あの野郎!」

 

「酷い運転をするわね…」

 

 そう、前方の黒色のバンが急にアクセルを踏み、対向車線に出て更に前方の車を追い越していったのだ。それも右折ランプもつけないでやったもんだから、周囲で運転していた車は慌てて道を譲ったり急ブレーキを踏んで車を路肩に停止していた。

 

「いくら急いでいても、ああいう運転は感心しないわねぇ」

 

「全くだ。つうか怪我人が出ていないだけで、れっきとした違法行為だぞまったく…」

 

「それで…どうするの?」

 

「そりゃあもちろん…追いかけるに決まってらぁ!」

 

 そうこなくては!とはいえ内面の風見幽香の精神が「いや面倒くさいことに首を突っ込まないでよ…静かに無難にやり過ごしなさいな」と呆れている気がするが…まぁ気のせいだろう。

 

 

(少女追跡中…)

 

 

 カーチェイスとまでは行かないが、なんとか前方の黒色のバンを追跡する俺たち。まぁ『純黒の悪夢』や『ゼロの執行人』、『緋色の弾丸』みたいなカーチェイスは本当に凄いが、あれはとある公安捜査官やとあるFBI捜査官じゃないと無理なんじゃないっすかね…。大和敢助警部はなんだかんだでリハビリ中だし、無理はさせちゃいけない。

 

 市郊外にある廃工場に入ったその黒色のバンは一時停止し、運転席から派手目の男2人組が出てきた。また後部座席からも男が1人出てきた。流石に怪しまれたか、と思いながらもそのまま黒色のバンの横を通り過ぎたら、男たちはこちらを少しだけ睨みつけながらも、あまり気にせずに後部座席から荷物らしきものを出した。

 

「あれ、ただのガラの悪そうな運搬屋だったんじゃないかしら?」

 

「うーん…怪しいと思ったんだがなぁ…出してる荷物も事務用品っぽいし…ん?」

 

大和敢助警部が目を細めてミラーを見ながら疑問の声をあげていたので、俺も思わず振り向き、既に小さくなっている彼らの運んでいる荷物を妖怪特有の視力の高い目で見た。そこには…

 

「小さな…絨毯…?」

 

「絨毯って…いやまぁ事務用品もあるならそこまで不思議でもないのか?応接室とかで使うだろうし…」

 

「それにしては少々小さいような…?」

 

 彼らは非常に小さな絨毯を男2人がかりで運んでいた。そしてなぜだろう?先ほどからこの「風見幽香」の身体や精神が少しずつ気が立ってきたのだ。うーん…心当たりがないんだが…。

 

 そう思い、男たちを眺めていると、なんとその絨毯が動き出したのだ。まさか…。いや流石にそんなことやるか…?

 

 そこで思い切り睨みつけていると、なんとその絨毯から小さな子どもの手が飛び出し、助けを求めるように空を切っていた。

 

 

 そして、俺の中の風見幽香の精神が沸騰した。

 

 

 




子どもには優しい幽香さん
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