俺たち3人は6年生になり今は秋。もう少ししたら中学生になる。
圧倒的な実力を身に着けトレセン行きを決めた二人と中学は普通の学校に行く俺だ。今年限りでお別れだろう。
父によると何でもトレーナー学で優秀な成績を納めると飛び級制度が適用されるらしい。
そこまでして俺をトレセン学園とやらに入れたいみたいだ。
「ただいま帰りました。」
中学生になる手前トレーナー修行は続く。
そのためシンボリ家に居候と言うわけだ
ただ、いままで住んでいた家と比べるとただっ広い家なため落ち着かない
さらに自分の部屋も今までとは比べ物にならないくらいの広さだ。
緊張して寝れないったらありゃしない
あーそうだ。俺の姉についてだ。
俺の姉は一足先にトレセン学園に入学出来たそうだ。だが父が言うにはここからも難関らしい。
模擬レースと呼ばれるレースで良い結果もしくは期待をさせる走りを見せなければトレーナーとの契約は出来ないそうだ。
父も親子としてではなくトレーナー目線で姉を見るそうだ。今まで見てきたからこそトレセンで通用するのかこれから見極めるらしい。
父がトレーナーとして付くこともないと言ってはいたが…
まぁそんなこんなで俺は今もルドルフとシリウスのトレーニングを見ている。
来年にはトレセンに行く二人だ。これでもトレーナーの端くれ…しっかりしないとな
「……!」
だがコミュニケーションは取れてもメンタルケアは仕方ないよな
「……い!」
そこはシンボリ家のメイド達に頼もうとするか…
「T!おい!」
「T君!」
「あ、何?呼んだ?」
この容姿端麗なお二方こそシンボリルドルフとシリウスシンボリ。
小学生にしては大人びている二人だがまだあどけなさが残っている。
この二人ももう中学生と思うと感慨深いな…
「なにボーっとしてやがる、トレーニングもう終わったぞ」
「次は何をすればいい?」
あ、もうそんな時間かと思い時計を見る。
結構な時間上の空だったらしい。
「ごめん、ごめん、今日はもう終わりだよ。」
この二人は、やはり優秀で呑み込みが早い。
やはりウマ娘の名家出身。なんでもできる。
「もう終わりか?私はまだいけるぜ」
シリウスが不満そうに口を出す。
確かに普段の練習量からは明らかに少ないが今日は週末。休みも練習のうちだと思い少ない練習量にした。
しかし、シリウスの横でルドルフも物足りない顔をしていた。
二人に今日はこういう理由で少なくしたと説明しても納得はしないだろう、、、
どう伝えるべきか…
「じゃぁよぉ、ここは対決と行こうじゃねぇか。なぁルドルフさんよぉ」
「ふむ、面白そうだね。賛成だ。」
え?何言っちゃってんのこの子たち。
「だ、ダメだ!今日はもう終わりにして——」
言い終わる前に彼女たちが続ける。
「勝負ってんで賭けと行こうじゃないか」
「賭け事かやぶさかだが面白そうだ。乗ろう」
何やら俺抜きで勝負の内容まで決まりそうだ。いいことではあるのだがこれ以上はオーバーワークだ。
早急にやめさせなければならない。
「距離は、そうだな。おい、トレーナーさんよ。何mがいい」
「え、あ、そうだな、走れるとはいえトレーニング後なわけだし800mくらいが、、って今日はもうダメだって」
聞かれた手前答えてしまったが今度こそちゃんと制止を試みる。
が、だめ。やはり二人は勝負するらしい。
賭けをすると言ってたが、何を賭けて勝負するのだろうか、お菓子とかそういうのだろうか。
それだったらまぁいいのだが、、、
優しく見守るとしよう。
「今度の休み、出かける権利とかどうだろうか。」
「権利だぁ?そんなの許可を取れ———。あぁなるほど、そういうこと。乗った。いいぜ」
なにやら、怪しい目がこちらを見ている気がするが気のせいだろう。
うん、きっと気のせいだ。
そんなこんなで首掛け看板を掛けゴールに立つ。
スタートの合図は執事がしてくれるそうだ。
いつの間に用意したんだよ。
気にしたら負けか?
と、考えていたらスタートしたらしい。
最初は、シリウス優勢に見えたが後半の差しを意識しているルドルフが追い上げてくる。
800mで短いが残り200mでほぼ並びかける。
ウマ娘にとって800mは短距離走にしか思えないのかというくらいに速いスピードでゴールに迫ってくる。
ほぼ同時にゴールイン。若干シリウスのほうが姿勢有利ではあったが俺の眼にはほぼどころか同時にゴールに見えた。
「「どっち!!」」
と、二人から詰められるがあたふたするしかない。
あーでもないこーでもないと脳内でいろいろ考えているうちに後ろから
「シリウスシンボリ様のほうが姿勢有利のハナ差で勝利です。」
と後ろで見ていたウマ娘のメイドさんに助けられた。
「あ、ありがとうございます。」
すぐさま礼を言う。
さすがウマ娘と言ったところか、あれが見えてるなんて
「いえ、T様も早めに見えるようになった方がいいかと思われます。もう5年も見ていらっしゃるのですから。」
と半ば叱られるように言われた。
はい、、その通りですとしか言えない。
実際走りは見ていても間近で見ると目に追えない。
トレーナーとしては欠陥なんじゃないのか?
そんなこんな考えているとシリウスはどこかうれしそうな顔で近づいて腕を組んできた。
「勝ちは勝ちだ!次の休みは貰ったぜ!邪魔すんなよ!」
「言い出しは私だ、、、好きにするといい、、、」
と、ルドルフは対照的に不機嫌そうに顔を背けながら言った。
「ただ!次は私が貰う、、、!」
「へっ、どうせ次も私だな」
対象者の俺を置き去りにし二人は睨みを効かす。
ん?次の休み?それは俺は関係ないんじゃないのか?と思ったが少し整理する。
休みを賭けにし俺の方を見て二人で納得したかのようにレースの準備に取り掛かる、、、。
これ俺の休みのことだな。
と理解するのが遅すぎたそうだ。
もう賭けは終了し、シリウスが勝利した。
それをないがしろにもできない。
と、心の中で思い、渋々了承することに決めた。
————
そして休みが来た。
俺だけで出かけるときはほぼ徒歩で出かけるがルドルフとシリウスと出かけるときは大抵リムジン移動。
シリウスは初めての徒歩移動ではないのか、ましてや二人っきりなんてことは今回が初めてだ。
「何してんだよ。早く行くぞ。時間ねぇんだからよ。」
「う、うん。」
と終始リードされる形で外に出向く。
とは言ってもお互い小学生、行くところなんかはほぼ決まってる。
あとは後ろにSPがついてることは言及しなくていいか…
「アンタ、いつも出掛ける時どこ行ってんだ?」
シリウスから耳を疑う疑問が飛んできた。
まさか俺が行きたいところに連れてってくれるのか!
「最近は、本屋かな。」
「本屋だぁ?」
まぁシリウスは本を読むというより破くに近いイメージがある。
選択を誤ったかもしれない。
「ま、まぁ今日ぐらいは許してやる」
お?今日のシリウスはなんだか大人しいぞ?
まぁたまにはこんな日もあっていいか。
軽く(シリウスのみの)ルドルフの愚痴で道中暇を潰し、本屋にたどり着いた。
「飽きたらウマ娘関連のところにいるから声かけてね」
とシリウスに声を掛ける。
まぁすぐ飽きてくるだろうと思ってはいる。
中に入ろうと一歩目を踏んだ瞬間、なにかに裾を踏まれたかと思うくらい重いものが後ろにあった。
振り返るとシリウスが服の裾を掴んでいる。
ちょっと待て、なんだその力、本当に小学生か。
と疑うくらいびくともしない。
「私もそっち行くからよ、飽きたら言うわ」
は?聞き間違いじゃない?ウマ娘関連の本はほとんどトレーニングとかそれこそ歴史みたいな本ばっかなのに。
「い、いや好きな本見てきていいよ?無理しなくてもさ、」
というとシリウスがにらみつけてきたのでそれ以上は何も言わず同行させた。
しかしシリウスに刺さりそうな本か、、、あ、トゥインクルシリーズの本なら刺さるんじゃないか。
それなら大丈夫か、な?
本屋に入りこの世界についてのことを調べるつもりがシリウスがトレーニングの本を横から見てくる、、、
これじゃあ他の本に辿り着きやしない。
今日はこれでおしま————
「な、なぁ、アンタこういう本が好きなのか」
俺が見ているウマ娘の歴史とやらの本。
トゥインクルシリーズやトレーニングセンター学園のことなど大雑把ではあるが書いてある本を横目に話しかけてきた。
「いや、俺はまだトレーニングセンター学園のことをよく知らないから少しでも知っておこうかなって。何年も一緒にいたシリウスたちが行くんだ。少しでも知っておかなきゃね」
と思ってもいないことを口にする。
何をやっても平凡の俺があんなことをやっても意味がないからな。
正直俺?の親がトレーナーじゃなけりゃこんなことはやってない。
「そうか、ありがとよ、、、」
シリウスの感謝を久々、、いやちゃんとした感謝は初めてかもしれない。
この子が感謝できるなんて、、、
おじさん嬉しいよ。
なんて言ったがこの肉体はまだ12歳だった。
それに最近思うことがある。
肉体は俺の物なのだろうかと。
肉体の子の命を奪い俺が生まれたのではないかと。
この世界はあいにく現実とほとんど、、、というか違うところはないに等しい。
そのおかげで異世界転生についてもいろいろ調べることが出来た。
過酷な異世界転生やギャグのような異世界いろいろな異世界の物語があるが俺の転生物語は何なんだろうな。
なんて考えていると時間が来てしまったようだ。
シリウスの機嫌を損ねないよう気をつけて帰ろう。
「そろそろ帰ろうか、シリウス」
「そうだな、、、」
どことなく元気?というか気力がないように見えるがさすがのシリウスもこれだけ本がある場所は疲れるだろう。
名家だからある程度の教養はあるがどちらかというと活発な子だからな。
「な、なぁ」
いつもとは違ったよそよそしい声で話しかけてくるシリウス。
なにか隠すような話し方だ。
「どうした?」
「い、いやなんでもねーよ!さっさと帰ろうぜっ!!」
と言い残しシリウスは走り出してしまった。
「あ、ちょっ、俺は追いつけないんだからさ!」
シリウスと2人で出かけた休みは初めてのため、今日の休みは少しだけ新鮮に感じた。
もう少しでルドルフとシリウスともお別れだ。
たまに帰ってはいたがトレセン学園に入った後の姉にも会えていない。
会えたらいろんな話を聞こうと思う。
———
秋が明け冬真っ只中。
大晦日が近づき、俺は帰省準備をしていた。
来年にはあの2人はトレセン学園への入学。対して俺はシンボリ家からトレセン学園へ通ずるコネを用意すると言われたが拒否。
普通の中学校へと進むことを決めたが電話口で父が
『お前のことだから何も言わないが中学ではトレーナー業を学んでくれ』
とのことだった。
まぁ親は後を継いでほしいと考えるよな。
俺には子どもがいなかったからあんまりわからなかったが親心というのはそういうものだろう。
とりあえずやることもないため中学でもトレーナーのことを学ぶ予定である。
ただ無気力に生きるのが俺の個性だと言わんばかりに日常が過ぎていく。