吸血鬼は淫魔の夢を見るか?─スピンオフ─   作:マスター冬雪(ぬんぬん)

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短編でお試し。NL(?)は初めてなので初投稿です。
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夜の聖女の恋煩い 〜恋するスタンド〜

水瀬京一郎の幽波紋、『ホワイト・ポニー』には自我がある。彼女は嘗て人であった頃の記憶を持ったまま、水瀬京一郎のスタンドとして彼に付き従っている。

彼女には想い人がいる。
黄金の巨人、凪いだ瞳の寡黙な彼。

彼女は2度目の恋をしている。


夜の聖女の恋煩い 〜恋するスタンド〜

私はスタンド。側に立つ者。本体は彼、畏れ多くも美しい、ずっと私の憧れで在り続ける淫魔。

人間の頃の自我は薄くなってしまったけれど、彼が私に自我を持つ事を許してくれた御蔭で、私は新たな私として今も存在出来ている。

名付けられた新しい名前は『ホワイト・ポニー』。球体関節の身体に黒いドレス。神聖と背徳の聖女の姿は、きっと彼の所以である夜の魔女から成っているのだろう。

彼の名前は水瀬京一郎。私の絶対で唯一の半身である。

 

 

───そんな私は今、到底叶わない2度目の恋をしている。

 

 

 

 

 

水瀬くんとは前の世界でほんの少しだけ話したきりだったというのに、この世界でも縁が出来るなんて。本当に、数奇な人生を歩んだものである。我ながら業の深い生き物だなあとしみじみ思う。……白い部屋での一件は本当に申し訳ございませんでした。反省はするけど後悔はないです。めっっちゃ眼福でした。現在進行形で。

 

昨晩もまたお楽しみでしたね!最高……ホント無理……尊くて目ぇ潰れる……いや、実際目は布で隠れてるんですけどね??

最中もそうだけど、その前のモーションの所から事後に寝起きまでまぁじで堪らんかった……最の高……推しがえっちで寿命伸びる……。カーテンの隙間から漏れる太陽の光に照らされる、乱れたベッドの上でシーツ1枚の推しが愛おしげに隣を見下ろすところとかガチ聖女だから……。最中の緩く癖のある黒髪を乱して不敵に笑う推し……それに煽られて艶のある金髪を掻き上げて覆い被さる推し……はああぁぁ、スタンドになれて幸せ過ぎる……スタンド生さいこぉ……生きてて(?)よかったぁ……。

基本彼は自由にさせてくれるし。勿論彼の意志の通りに動く事は絶対だけども。彼は私の意志も汲み取ってくれるのだ。今だってうっかり出てきて顔を覆って天を仰いでも、あらあらウフフで済ませてくれる。ごめんなさい直ぐ引っ込むんでもうちょっと待って……推しが愛おし過ぎる……。

 

そりゃあこの人はとんでもない悪人だって分かってる。何人もの人の命を戯れに貪り、何人もの人の生を弄ぶ淫魔だ。そう、分かってるけど。

止める資格など、私には無い。この人を此処に呼んでしまった私には。彼の言葉に頷いてしまった私には。

私は決して善にはなれない。白の中にはいない。勇気なんて、私には無い。私は心折れてしまったモノだから。

だけど。……後悔はしない。してはいけない。彼は私にそれを求めないけれど、だからこそ、私はそれを見つめ続けなければならない。

黒である事を。敵である事を。私は抱えて生きる。それが私だけの罪であり、私だけの罰だ。

 

 

 

彼がこの世界に生まれた日。私も再び生まれ落ちた。

いちばんおそろしくて、だからこそとても美しいヒトの元での穏やかな日々は、彼のこの世界での幼年期だ。

三悪と呼ばれるスタンド使い達との生活はハラハラドキドキの連続で、何度心臓を縮めたか分からない。縮める心臓無いけど。何だかんだスタンド能力を本体に教えがてら私も楽しんでたけど。

彼が神父と仲が良くて、だけどお互いがお互いに天敵だって。彼は私に笑って言う。……このまま世界は巡ってしまうのだろうか。出来れば原作通りに進んで欲しい。だけど巡る事なく終わって欲しい、とも思う。だってその時は、皆死んでしまうから。私は彼に死んで欲しくはなかった。

思うだけならタダでしょう?

 

美しくておそろしい吸血鬼が死んでしまった時の彼は、本当に目も当てられない状態だった。私の力をあの人の為にずっと使い続けて、逃げたスタンド使い達を癇癪のまま追い詰めて虐める遊びをして。自分の手足が溶け落ちるまで。脳を溶かしてしまうまで。それくらい、水瀬くんはあの人の事を愛してしまった。

私の嘗て恋した気持ちは既に昇華してある。だからという訳では無いけれど、私は水瀬くんが自覚してしまったその愛情に、とても嬉しく思ったし悲しくなった。堕ちていく水瀬くんのその様を、私は止める事が出来なかった。止める事はしなかった。その姿が触れる事を躊躇うくらいに、あまりにも綺麗だったから。まるで蛹から羽化する蝶のような繊細さで。

 

彼の幼年期は、あの人によって終止符が打たれた。あの人の死によって、夜の魔女は完成した。

 

子を想う彼は本当に聖女のよう。まさかあの人の子供たちを態々世界中から探し出して救い上げてしまうなんて考えもしなかった。原作なら彼らは一様に悲惨な幼少期を送り、最悪な終わり方をする。……多分、彼らはきっと、もう大丈夫。他でもない水瀬くんの愛情でダメになるかもしれないけど。少なくとも幼少期は幸せに過ごせているだろう。

 

……ねえ、聖女な水瀬くんすっっごい綺麗じゃない??子供たちに囲まれて慈愛の笑顔で見下ろし、子供たちを大切に抱き締めて撫でる柔い手付き。惜しげも無く注がれるきらきらとした言葉の宝石たち。これが現実でいいんですか???

だめだ、水瀬くんのウェディングドレス姿とか見たら泣く。ぜったい泣く。想像しただけでも泣きそう。嫁にはまだやらんぞ!!!!覚悟しとけ!!!!例えあの人でも負けないからな!!!!……うん、多分ね、負けない……よ……?(目逸らし)

 

 

 

そんなこんな。今は四部の時空をのんびり、時にピリッと事件に関わりながら、水瀬くんのスタンドをしている。

 

 

 

話を戻そう。

スタンドとして生きる私には現在、好きなひとがいる。水瀬くんやあの人は推しね。そのひとはそんなんじゃあなくて、初めから恋愛的な意味で好きになったひとだ。

スタンドが恋?なんて言われると思う。私も思った。スタンド使いじゃあないとスタンドなんて見えないし。

 

私の好きなひとは、人では無い。

 

「あら。珍しいね、おまえがスタンドを出してるなんて」

 

どうかしたの?と水瀬くんがあの人に問いかける。あの人は再誕して10年ちょっとくらい。15歳くらいの年齢の姿をしているけれど、あの人の肉体は特別製だから自然な事だ。

ちらりとその琥珀色の目を向けたあの人は少し目線上のその姿に向き直る。

あの人のスタンド、という言葉に私は思い切って姿を現した。

目に入ったのは雄々しい肉体美に三角のマスク、背中にあるタンクのような装飾と、手の甲の時計のマーク。

 

『世界』。あの人の魂の半身、あの人のスタンドだ。

 

「あの頃と比べて、まだ力が戻っていない事を確認していただけだ」

「ン〜、まア、そうだろうな。彼はおまえが吸血鬼の時に発現したスタンドだろう?なら、おまえの肉体が完全にあの頃の物になるまでパワーが落ちるのは仕方ない事だ」

「……分かっている」

 

あ、ちょっと申し訳なさそう……可愛い……。

 

そう、何を隠そう。私の想いびととはあの人のスタンド、『世界』なのである───!!

 

水瀬くんの少し後ろで楚々と装っているけれど、私はなけなしの勇気を振り絞って此処に立っている。

いや、もう、切っ掛けなんて些細な物だ。時は三部のあの人の館。あの人が悪戯で時止めして水瀬くんの背後に突然現れた事があって。吃驚して出てきてしまった時があるのだ。そんな私を見下ろした『世界』が目を細め、少しだけ微笑んだ。もうね、きゅーんって胸が締め付けられて……!ハートに矢が刺さった感じ。古典的少女漫画表現なんだけど!

あんまり自分から姿を見せない好きなひとを一目見たいと思うのは当然でしょう?ああ、忠誠心ある所も騎士っぽくて素敵……。私に感化されたのか(死ぬ程嬉しい)偶にあの人の意志とは別に出てきたりする時は絶好のチャンスだ。本体達にバレないように姿を現して彼に小さく手を振る。そうしたら『世界』も真似するように小さく手を振り返してくれるので、……ファンサ最高かよ……真面目なお顔で幼気なその仕草は反則……はーーー……慣れてないとこ可愛い……好き……。

 

「おや、レディ。『世界』と話でもしたいのかな」

 

水瀬くんのその声にあの人と『世界』が此方に視線を向ける。

突然過ぎて少し身体を揺らしてしまう。

真っ直ぐとした彼の視線に水瀬くんの袖を小さく握り、デフォルトの笑みを向けて、いつものようにカーテシーをする。

『世界』はゆっくりと瞬きをすると引き結んだ口角を仄かに弛めた。

ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙お客様困りますぅーーー!!!お客様の中にお医者様はいらっしゃいますかーーーー!!!

 

「ンふ。初心ね、レディ」

 

言わないでぇ……!(震え声)

失礼ならないように静かに水瀬くんの背中に隠れて深呼吸(呼吸しないけど)する。落ち着いたと同時に水瀬くんの背中から離れてちらと『世界』の方を見れば、存外目の前にその顔があって思わず 飛び上がった(浮いた)

 

『──!』

「ン゛ッ……フフフッ……!!」

「……幼稚な……」

「いいじゃあない、可愛らしくて」

 

主犯であるあの人と水瀬くんの方には目を向けていられない。目の前の『世界』が目を細めて明らかに口角を上げているのだ。

スゥ---……録画↑ッッ!撮影↑ッッ!!ヴヴヴ……なんで私は今スタンドなんだ……!

自身のドレスをそっと指先で弄り、少し俯きながらも目に焼き付けようと視線だけは上に向ける。

ヒャ---顔が良いッッ!!!

 

「はぁ……『世界』」

「うふ。『ホワイト・ポニー』?」

 

あの人に呼ばれて『世界』が本体の方へ向き直りかけて。

水瀬くんに促されるようにして、その逞しい腕に手を乗せる。

 

『……───』

 

この後どうすればいいんですかッッ……!!(IQ3)

いたたまれなくなって愛想笑いしちゃうの、魂に染み付いた日本人の悪癖よ……。

そのまま完全に俯いていると、頭に軽い感触が乗って、思わず顔を上げる。目の前に『世界』の姿は無い、が。

 

『──……?』

「良かったね、半歩前進?」

 

い、ま……私、

 

『世界』に撫でられましたか────?!?!

 

 

 

 

 

 

無意識とはいえ本体である水瀬くんに対してスタンドの矢の行方を追わせるなんて事をさせていた私、『ホワイト・ポニー』。

スタンド失格だと落ち込んで、人の来ない中庭にしゃがみ込んでいた。当然の如く暴走である。

 

水瀬くんもあの人も今頃スタンドの矢で遊んでいる所だろう。“キミは本体を思うように動かしたのに、俺にはするなと言うの?”という言い分に撃沈した私はかんっぜんに凹んでいた。あっちゃ〜である。整えられた見事な庭園を鑑賞する余裕も今は無く。

 

だって、知りたかったし不安だった。私の存在がバタフライエフェクトでも起こしたのではないか。だからスタンドの矢が1つ多く見付かって。もしかしたらそれ以降の物語はとうの昔に全て破綻してしまっていたのではないか。

 

原作の知識があるが故に、私は未知が恐ろしかった。……これではプッチ神父を否定できない。自分の人生の全てを知り覚悟して生きる事こそ幸福であると未来のプッチ神父はそう結論付けた。

未知とはあまりに恐ろしい。既知であるが故に。

けれど。だからこそ。プッチ神父の言う覚悟は違うと言い切れる。ある種の幸福である事は否定しない。けれど、覚悟というのは、敷かれたレールに沿う事では無い。殉じるのは、未来へ繋げる為だ。“暗闇の荒野に進むべき道を切り開く”事こそ、覚悟だ。

私には無いそれこそが、そうであるべきだ。

そう、これは自己嫌悪でもある。原作という既知に縛られている私は、あまりにも理想から程遠い。

 

私はスタンド。魂の半身である。それと同時に死人だ。とうに終わった人間だ。だから、最早私が生者に干渉していい事などないというのに。

膝を抱えて俯く。ほんの少しだけ。水瀬くん達の遊びが終わるまでのひと時だけ。それが終われば今度はちゃんと、水瀬くんのスタンドに戻るから。

 

溜息も吐けない身体で、ゆらゆらと揺れる像で。しっかりしなきゃ、遊びが終わればきっと私の姿を見れる人が多くこの屋敷に現れる。その時に私がこんなじゃあ、水瀬くんのスタンドとして情けなくて。

 

……ふと、目の前にスタンドパワーを感じて顔を上げる。

 

『──』

 

マスクに顔の上半分を隠す、黄金の巨人。

 

せ、せ、『世界』サン───?!?!

 

身体を強ばらせて硬直する私を見下ろす彼は凪いだ目をしていた。

……取り敢えずいそいそと膝を崩して横座りする。私は夜の魔女のスタンド。お淑やかに優雅に……。

 

どうしたのだろう?本体たちは屋敷の一室でスタンドの矢を使っている最中だ。10mなんて遠く離れている、から、……彼も暴走しているのか。

今も『世界』は立ったまま此方を見下ろしているので、恐る恐る横を手で叩いて座るように促す。

ゆっくりとその通りに腰を下ろした『世界』に今更ながら緊張しつつ、『世界』を地面に座らせてしまったと内心頭を抱える。芝生だけども。

 

『──?』

 

どうしたのかと問うが特に返ってくる言葉はなく。寡黙なところも……イイ……ッッ!!……じゃあなくて。

想い人が隣にいるというシチュエーションに照れてしまう。タスケテ……タスケテホンタイ……。萌えときゅんとオタクと喪女がフュージョンしている。

 

ちら、と隣を見れば『世界』はずっと此方を見つめていたらしく、思わず組んでいた手に力が入った。

これって……私の自意識過剰じゃあなければ、慰められているのでは……?

ぐーるぐーると嘗て履修したオタク文化が頭の中を駆け巡っている。ええ、ええ。そうですよ、どうせ私は腐れオタク喪女ですよぉ……。

視線を逸らすのも躊躇われた為、私は『世界』と見つめ合っている。

 

ええ、と。どうしようか。ウーン……ウーン……そうだ!(脳死)

慰めてくれるならしっかりちゃっかり慰めて貰お。役得じゃオラァ!!!

 

『世界』の無造作に置かれた手にそっと触れ、窺うように見上げながら持ち上げる。ふぉぉ……大っきい……です……(手が)

そのままちょっぴりにぎにぎしつつ、ぽすんと自らの頭に乗せた。

 

……、……、(憤死)

キャ----やっちまった!やっちまったッッ!!ここまでヤったならもう怖いもんはねぇな!!!!(ヤケクソ)

 

そのまま掌に頭を押し付けて、するりと頬まで滑らせて擦り寄る。大丈夫だ、私の本体は徒花の魔女たる水瀬京一郎。問題ない(ある)

知識だけは豊富だぞ!長年水瀬くんの悪霊してないぞ!自分を魅せる水瀬くんの仕草なら出来るぞ!私は水瀬くんの魂の半身だから!!!

すり、と指が動く。私ではなく、『世界』が動かしているのだ。

ドールな肌でごめんね!人肌みたいに柔らかくはないんだなこれが!!

すり、すり、と往復する指の感触に目を細め、物珍しいのだろうなあと思う。ドールなんて嘗ての三悪のエボニー・デビルくらいしか見た事などなかっただろう。手慰みに愛でられているだけなのだとしても、舞い上がってしまう。

 

大丈夫。到底叶わない恋だってわかってる。彼の本体はおそろしいあの人で。私は水瀬くんのスタンド。

だから私は楽しめればいい。この恋を全力で楽しんで、味わって。ごくりと嚥下して、お腹でじわじわ溶かしてしまうのだ。

水瀬くんが人間の生命力を食べるように。私は私の恋心を噛み砕いて食べるのだ。

仕舞い込む為の宝箱はないけれど。今は私のお腹の中がそうだから。

 

 

 

元気出てきた、ありがとう、と『世界』の手を解放する。

私は水瀬くんのスタンドだ。私の悩みなんて些細な事。全ては本体に任せてしまえばいい。それが私の、今の幸福だ。

 

すっと『世界』がヴェールの下の私の黒髪を掬う。私の髪も水瀬くんと同じ癖のある黒髪だ。これも私の自慢である。さらさらで絡まる事の無いキューティクルの艶々な黒髪。人間の時もそうだったらなあ、毎朝大変じゃあなかったのになあ……。

するる、と『世界』の指から零れる黒髪を目で追って。

その髪に、その白い唇が触れる。

……。

……。

……。

 

そういうところだぞ『世界』ィッッ!!!!(憤慨)

 

 

 

 

 




気が向けば続き書く
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