ポーキュパイン異聞   作:埴輪庭

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遥かな夢、ストライダー交錯

 Θ

 

 ポーキュパインは夢を見た。

 それは闘争の夢だ。

 

 夢の中で彼は彼ではない誰かとなり、彼の知らない者達と闘争を続けていた……。

 

 ここは"ネスト"。

 闘争者達の楽園、あるいは地獄。

 

 ──終わりのない無限闘争空間

 

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 ・

 ・

 

 特殊軌道を描き、軌道上を爆破するミサイル

 

 小型のミサイルを散布し、囲い込む様に敵を追い詰めるハンドミサイル

 

 敵に追従し、四方からレーザーを放つレーザードローン

 

 そして、まるで鎖鎌の様に伸縮し、敵を打ち据えるプラズマ機雷投射器

 

 これらは本来ポーキュパインが使用する事はまずない兵器群であった。彼はブレード使いだ。ミサイルや奇妙奇天烈な鎖鎌のような得物は持たない。機体そのものも中量二脚を使用する彼の好みとはまるで異なり、四脚の重装型だ。

 

 ポーキュパインは困惑するが、体は勝手に動く。

 

 ──夢か

 

 夢ならば仕方ないとポーキュパインは事態を見守る事にした。

 

 対面に佇むのは彼と同じ四脚のACである。

 両の手にショットガンを携え、両肩にはSONGBIRD……二連装グレネードランチャーを載せている。

 

 ──奴には誉れが無い様だ

 

 不意にその様な事を思うが、次の瞬間、ポーキュパインは自身もまた同類なのだと気付いてしまう。闘争にやりすぎも糞もないのだが、ハンドミサイルと四脚&プラズマ機雷投射器は "やりすぎ" であった。

 

 しかし互いに誉れがないのであれば、負の誉れは互いに打ち消し合って0となる。つまり、フェアという事だ。

 

 ──まずはレーザードローンとミサイルで削る。距離を詰め、チャージしたレーザードローンを放ち、すかさず肩の特殊軌道ミサイルを撃つ。さらに時間差をつけてハンドミサイルを放つ。敵はミサイルとレーザーオービット攻撃の回避に気を取られる筈だ

 

 ──俺はそのまま牽制を続けてもいい。ショットガンとグレネードランチャーでは距離を取られればどうにもなるまい。だが俺は逆にABで距離を詰める。それで虚を突けるだろう。QBも併用しつつ……蹴りとばす。硬直したならば、プラズマ機雷投射器を叩きつける

 

 思考が勝手に進んでいく。自分ではない誰かが思いを馳せているのを、ポーキュパインはどこか俯瞰的に眺めていた。

 

 Θ

 

 ポーキュパインは先程シミュレートしていた戦術を実行に移した。

 

 だが意外! 

 

 敵機はミサイルなど見えないとばかりにABで距離を詰めてきたのだ。とはいえ考えれば当たり前の話ではある。ポーキュパインは狼狽えず、その場で短くABを吹かし、ろくに推進しない内に蹴りをうちはなった。

 

 四脚が回転し、打擲の花が宙空に咲く。

 

 その作戦は功を奏したようで、ABの推進力を加味したショットガンの凶悪な一撃は蹴りで妨害された。敵機の体勢が崩れる。チャンスである。

 

 ぶうん、とプラズマ機雷投射器をふりまわす。

 紫色のプラズマウィップが敵の四脚を打ち据えると、その頃には先に放ったミサイルが着弾し、軌道上で爆破が置き、レーザードローンが敵機をハチの巣にした。

 

 ──スタッガー! 

 

 チャンスだがしかし、ポーキュパインには放つべき武器がない。しかしここで頼りになるのはやはり蹴りである。先程と同様に短くABし、即座に蹴りとばした。蹴られ、スタッガーが延長され……そして止めのAA(アサルトアーマー)だ。

 

 凄まじい猛攻を前に高い耐久を誇る四脚と言えども崩れ落ち、炎上した。

 

 ここまで1分もかかってはいない。

 僅かな時間で勝負がついた。

 

 しかしポーキュパインの表情は険しい。

 敵機が持つショットガンは凄まじい破壊力と衝撃力を持つ凶悪な武器である。

 もし敵機がもう少し慎重ならば、爆破炎上していたのはポーキュパインのほうだっただろう。

 

 それに、まだ一回勝利しただけだ。

 

 ポーキュパインの視界が暗くなっていく。

 そして次の瞬間、爆破炎上した筈の敵機は再び視界の先に佇んでいた。

 

 ──ここでは終わりがない。終わりがないのが終わり。俺たちは永久に戦い続ける。ここは地獄だ、そう、レイヴンの地獄……

 

 なんて素晴らしい場所なのだろう。そう、ポーキュパインは思う。そして再び……

 

 ◆◆◆

 

 ポーキュパインははっと目を開けた。

 時計を見れば既に朝だ。ルビコン解放戦線の捕虜救出後、やや疲労を感じたポーキュパインは拠点へ帰還後に早めに休んだのだ。

 

 ──あの夢は……一体……

 

 ポーキュパインは夢に思いを馳せるが、夢の常としてどんどん記憶から内容が失われていく。

 

 それから少し時間が経つと、ポーキュパインは夢の事などすっかり忘れてしまった。そして何気なしに端末を見ていると、一通のファイルを受信した。

 

「ん? 音声データファイル……カーラからか」

 

 ポーキュパインが端末のデータファイルを確認すると……

 

『ポーキュパイン、ちょっと頼みがあるんだけど一仕事受けてくれないかい? 依頼……といっても、あたしからの依頼というよりは下請けみたいなものなんだけどね、武装採掘艦『ストライダー』の護衛を頼みたいんだ。どうにも連中、最近正体不明の戦力にちょっかいを出されているみたいでね。ほら、最近ウチが連中の幹部を助けてやっただろう?それで今回も助けてくれってね。あたしとしてはもう少しだけ連中が潰れるのを先延ばしにしたい。報酬は連中からの報酬を折半……いや、7! あんたがもっていっていいよ。あんたが色々とパーツのカタログを漁っているのをあたしは知っている。金が欲しいんだろう? ガツンと稼ぐ機会をやろうじゃないか。あたしはちょっと野暮用があって暫く留守にするが、もし受けてくれるっていうならチャティに詳細をきいておくれ』

 

 ◇◇◇

 

『621、仕事だ。アーキバスグループから依頼が入っている。武装採掘艦『ストライダー』の破壊だ。かなり大きい仕事だぞ、よくブリーフィングを確認をしておけ』

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