キキSide
「さて、戻ってきてみれば、家を放火して騒いでいる村人達を見て感想をどうぞ」
「ええ!? えっと…、キャンプファイヤーが、好きなのかし…ら?」
俺がエルザに話かけると、なかなか面白い冗談が帰って来た。俺たちは森から村に戻ってくると、村はずれが騒がしく、二人でそちらに向かうと村人たちがあばら家に火をつけていた。
「あ! あんたは!?」
そして遠目に俺達が様子を見ていると、村人たちが気づき話しかけてきた。
「なんだ、ぐうたら騎士様じゃないか。こんなところでなにをしてるんだ」
「お前等こそ、なにやってるんだ?」
村人の一人が嫌味を言ってきたが、俺は気にせずに質問をした。
「見て分かるだろ、吸血鬼退治さ」
「…へぇ。吸血鬼退治ね。ってことは、中に人が居るってことか?」
俺は、得意げ顔でニヤついている村人の返答を聞き、さらに質問する
「当たり前だろ! ここのババァ、占い師なんて嘘つきやがって」「そうだそうだ。アレキサンドルの野郎、やっぱり
一人の村人が答えたら、周りにいた奴等も口々に言いはじめた。俺はそれを聞いてなんとなくエルザを見たら、
「こ、怖いね~」
エルザは俺から顔を背けどもり気味に言った。まったく、この子は…。
「おや、エルザちゃん? こんな夜更けに、しかも騎士様と一緒なんて…。どうしたんだ?」
村人はエルザが居る事にやっと気づき、声をかけたので
「ああ、さっき屍人鬼に攫われたから助けてきた。ついでに森の奥に住み着いてた“本物”の吸血鬼も退治してきた」
俺がそう答えると一瞬の沈黙があり、そして次第に村人たちは戸惑い始め、最後に自分達がしたことに顔を青くして騒ぎ始めた。そんなふうに村人がパニックになってるうちにガラガラガシャン! と、あばら家が炎に包まれて崩れ落ちてしまった。
「…ッ!? 火を…、火を消せー!!」「は、早くしろ!」「み、水! 水を!!」
村人たちはあばら家が崩れる音で我に返り、やっとこさ火を消し始めたが、
「もう手遅れだろ、これ」
「元々病気で弱ってたから、煙が充満した時点で手遅れね」
時すでに遅し。俺達は必死な顔で火を消しにかかっている村人たちを見てそんなことを言い合った。
「う~ん。少々後ろ髪を引かれる思いだが、出来る事もないし帰ろうか」
「なっ! ちょっ、待ってくれ! 騎士様の魔法でこの火を消してくれ!」
俺が村長の屋敷に帰ろうとしたら、腕を捉まれそんなことを言われたので
「いやいや。俺はあくまで吸血鬼を退治しに来ただけだし。それに、これはあんた達が勝手にやって起こした事だ。助ける義務も義理も無い。大体俺、無駄なことはしたくない主義だし」
俺はそう言い切り捨てて、腕を振りほどきエルザと屋敷に戻った。
タバサSide
「ん…」
私は朝日の光で目を覚ました。……えっ? おかしい、私は確か怖がっているエルザを安心させるために一緒に部屋に入って、そして…
「思い出せない…」
私は眠ってしまう前の事を思い出そうとしたが全く思いだせなかった。が、しかし、こんな理解出来ない事を出来るの人物に一人、心当たりがある。
「うま~、お肉。お肉なのね~。」
私が昨夜のことを考えていたら、隣からシルフィードのふざけた寝言が聞こえてきた。こいは…。私はベットから降りて、何故か立てかけてあった私の杖を取り、そして…
「ぎゅっ!」
ガンッ! と、シルフィードの頭に杖を振り下ろし、部屋を出て行った。
「きゅい~、な、なんなのね~」
部屋からうるさい声が聞こえてきたが、そんなことはどうでもよくて、今優先すべき事は…、
「キキと話す事」
私は杖を握り締めて、キキが寝ている部屋に行く。私は気配を消し、音を立てないように慎重に部屋に入り、眠っているキキに近づく。
「…ん?」
キキの掛けている布団が不自然に膨らんでいる。私は手を伸ばし布団を捲ると、
「ん~、うゆ~~」
エルザがキキに引っ付いて寝ていた。確かエルザはキキを怖がっていたはずなのに、一体何が?
「ん~、ふぁえ…。ん? あ~お姉ちゃん…おはよ~」
私が動揺して考え込んでいたら、エルザが目覚めた。
「……おはよう。なんで騎士様と寝ていたの?」
私はエルザに質問をした。そしたら
「あ、…え~っと、そ、そうだ。だって私、キキお兄ちゃんの妹になるから~」
何故か狼狽えながら意味が分からないことを言いやがった。そう、これはなにがなんでも絶対に完璧にキッチリと話をしなければならないようだ。
「エルザ。あなたにも聞きたい事はあるけど…、今は彼と話しをしなければならないから」
「う、うん。私…ご、ご飯食べに行くね」
私は優しく声をかけてエルザを部屋から追い出す。エルザは引きつった表情して走って出て行った。さて
「ラナ・デル・ウィンデ」
ドゴォンッ!! と私はエア・ハンマーをキキに叩きつけた。キキはきりもみしながら吹っ飛び、壁にぶつかった。が、壁にぶつかったキキはボフンッと音を立てて、丸太へと変わってしまった。そして、
「せめて理由を聞いてから攻撃しようよ…」
「…ッ!?」
また、私の背後に音も無く彼がいた。しかもキキは喋りながらも私の杖を奪い取り、魔法を使えないようにしてきた。寝ている時なら攻撃を当てられると思っていたが、詰めが甘かった。さて、そんなことよりも、
「説明」
私は、昨夜何をしたのか、何故エルザと寝ていたのか、何故エルザがキキの名を知っていたのかと、とにかく説明をしてもらいたい。
「あ~、えっと、昨夜のことだよな?」
私は、キキを睨みながら頷く。
「そうだな~。それじゃあ俺がタバサを眠らせた辺りから話すとだな…」
キキは私が寝ている間のことを説明してくれた。
「……で、エルザを村に置いとくわけにはいかないから、適当な理由をつけて連れて行こうかなって…。まあ、しょうがないことだった」
キキの説明を聞き終えたが、何というか
「無茶苦茶」
「あはは」
私が呟くと、キキは顔を背けた。しかし、説得しただけでそんなにアッサリとゆうことを聞くものだろうか? 屍人鬼もそうだ、キキは強いのは分かるが、吸血鬼と一緒に簡単に倒せるなんて…。今思えば私はキキの事を東方のメイジと言う事しか知らない。
「どうした?」
キキの顔をジッと見ていたら声を掛けられたので私は
「後で、また(ぐぅ~)……」
「…とりあえず飯食いにいこうか」
間が悪いことにお腹が鳴ってしまった。キキは苦笑しながらそう言って私の背中を押しながら部屋を出た。リビングに着き、朝食を食べていると
「おい、ジジィ。そのガキ俺の屋敷のメイドにするから、報酬の代わりに連れてかせてもらうぞ」
キキが突如そんなことを言い、村長は目を見開いて驚き
「そ、そんな! お願いします! お金ならいくらでも払いますから、エルザを連れて行くのはご勘弁を!」
そう言って、エルザを後ろに庇い、キキに頭を下げて懇願してきた。
「俺がもう決めたことだ。逆らうなんて許さないぞ。それに村の連中には色々な陰口を貰ったからな。それの礼もかねて、そいつは貰っていく。」
「そ、そんな」
キキは村長の懇願を一蹴して食事を開始した。そして朝食後、
「エルザ、元気でやるんだよ」
「うん、おじいちゃん。今までありがとう、おじいちゃんも元気でね」
荷物をまとめて、私たちは村の外れにいた。村長はエルザと別れを惜しみ、悲しい表情でエルザを抱擁している。しかし、村長と数人の子供達しか見送りに来ないのは、キキに聞いたとおり昨夜、勘違いで例のお婆さんを殺してしまったことに、大人達はまいってしまってるのだろう。
「それじゃあ、いくぞ」
エルザが別れを終えて、こちらに来たのを見計らってキキはそう言い、私たちは村から出て行った。
「ふぅ~、まったく悪徳騎士を演じるのは疲れたな」
キキはそう言いながら身体を伸ばして寝転がった。私たちは元の姿に戻ったシルフィードで帰ってる途中だ。私は座って本を読んでおり、エルザはキキの言葉を聞いて引きつったような表情をしていた。
「キキ、エルザの事、どうするの?」
「ん? あ~、…すまないがタバサ頼む。適当に口利きしてくれ」
キキにエルザのことを聞くとそう返ってきた。自分で連れてきといて、他人に頼むのはどうかと…。はぁ、しょうがない。私が内心でため息をしていたら、
「ねえ、お兄ちゃん。昨日は色々あって聞けなかったけど、あなたって一体何者なの? 私に見せた幻覚なんて人間のメイジ達なんかじゃ出来ない芸当だし、口からでっかい炎の玉吹いたりもして」
幻覚? 炎の玉?
「きゅい。お兄様は姿を消したりする以外にもそんなこともできたのね?」
姿を消す…、それなら何度も見たことがある。例の東方の魔法なのだろうが、やはりちゃんと彼に自身のことを聞くべきだろうか? 私は多少迷ったが、好奇心と、なにより母さまのこともあるので、
「キキ。私もあなたのことちゃんと聞きたい」
「あ~。まあ、タバサにはそのうち話そうかなと思ってたし。そうだな、帰ったら話すよ」
キキはそう言ったら、そのまま寝始めてしまった。なんというか…モヤモヤした感じを残して私たちは学院まで帰った。
【とりあえず補足】
原作の吸血鬼の寿命がどうなのかしらなけど、この作品の吸血鬼は人間と同じ寿命ってことで