キキSide
「おお、近くで見ると意外にデカイな」
俺は小屋の背後から現れたゴーレムを見上げながら呟く。
「……はやくっ」
「おう、そんなに急ぐなって」
のんびりとゴーレムを見上げていた俺の服をタバサが引っ張って逃げるのを急かす。ちとせはゴーレムを見た瞬間に例の宝を持って即座にとんずらし、ジンもゴーレムの攻撃範囲から脱出していた。
「あ、ヤベッ」
「!?」
ゴーレムが拳を逃げる俺たちに向かって振り下ろしてきたので
「よっと」
俺はタバサを脇に抱えて一気にゴーレムの攻撃範囲から離れる。それと同時にゴーレムの拳が地面にめり込む。
「はぁ、危ない危ない。タバサ大丈夫か?」
「…おろして」
「おお」
抱いていたタバサを地面に降ろす。なんかふてくされてるように見えるのは気のせい…じゃないな。なんか不機嫌オーラ出してるし。
「ちょっと! 何してんのよ! 早く逃げるわよ」
のほほんとしてたらキュルケが叫んできた。まあ、確かにゴーレムが暴れてるのにのんびりしてるのはマズイよな。俺とタバサは言われたとおり森に向かって逃げていると、前を走っていたリオンが何かに気づきゴーレムの方を振り返り、
「…っ!? おいルイズ! 何をやっている。早く逃げろ!」
驚いた表情になり立ち止まり叫んだ。俺も背後を向くとそこには魔法でゴーレムを攻撃していたルイズがいた。なにやってんだが。
「うるさい! あいつを捕まえれば、誰ももう、わたしをゼロのルイズとは呼ばないでしょ!」
ルイズは状況判断が出来ていないようだ。あのての巨大な相手に一人で挑むのはただの無謀でしかない。基本は一度撤退して、作戦を練り複数人で潰すのがセオリーである。まあ、そんなこと箱入りの貴族娘が知ってるわけないよね。
「何バカなことを言っている! お前一人でどうこう出来る相手じゃない!」
「やってみなくちゃ、わかんないじゃない!」
「くっ、このわからず屋が」
そうこうしてる間もルイズが何度も魔法を唱えてはゴーレムの表面に小さな爆発を起こすが、まったくもって効果は見込めず。それどころか相手は気にするでもなく足を振り上げ、ルイズに向かって降ろし始めた。
「えっ?」
「はぁッ!」
ルイズが迫ってくるゴーレムの足を呆然と見ている所に、リオンが走って近づき、ほとんどタックルに近い形でルイズを抱きかかえ、ゴーレムの踏みつけをかわす。
「バカかお前は! 死んだらどうするつもりだ!」
「……だって、うっぐ…悔しいんだもの。ひっく…、ここで逃げたらゼロのルイズだから…ってまたバカにされる。うっく……わたしにだって、小さいけどプライドがあるの! …だから、だから…」
「…まったく、くだらない」
「なっ!? くだ…らない、ですって…」
ルイズの弱音にリオンは一言切って捨てる。それを聞いたルイズは泣きながらもリオンを睨みつける。
「ああ、くだらないな。周りの、お前の上っ面しか見てないヤツらの事を気にするなどバカバカしい。お前はそんなバカ共の気を引きたいがために此処にいるのか?」
「べ、別に…気を引きたいとか…そんなんじゃ……」
「お前は、お前だ。それに、周りのヤツらがお前の事をゼロと言おうと僕はそうは思わん」
「ふぇっ?」
「アレに単身挑んだのはただの無謀だが、立ち向かう勇気があるのは認める」
リオンはルイズにそう言って立ち上がり、ゴーレムに向かって剣と短剣を抜き構える。
「確かメイジの実力は使い魔で測れる様なことを言っていたな。なら、ルイズ。お前は
リオンはルイズにそう言うと、ゴーレムに向かって走り出した。
「カッコイイなぁ。流石リオン・マグナス」
俺もあんなふうに成れると信じてた頃があったな……3歳までは。
俺は苦い思いでを思い出しながらリオンとゴーレムの戦闘をシルフィの上から見ていた。ちなみに、シルフィに現在乗っているのは俺、タバサはもちろんキュルケとジンもいる。
チトセとロングビルさんは絶賛行方不明だ。
「ちょっと、ダーリン無茶よ!」
「無謀」
キュルケとタバサにはリオンの行動はただの無茶にしか見えないようだ。まあ二人じゃなくても無茶にしか見えないだろうけど。……よし、俺も加勢するか。本来ならチトセが持ち去ってしまった物でゴーレムを倒したはずなんだが、…どっかい行っちゃったし、しょうがないか。
「タバサ。ルイズの回収を頼んだ」
「なにを…?」
タバサが質問し終える前に俺はシルフィからゴーレムに向かって飛び降りる。俺はチャクラを練り、リオンたちを攻撃しようと腕を振り上げていたゴーレムの目の前に来た瞬間に
「
ゴーレムの頭部へと掌底を叩き込み、同時にチャクラによる真空の衝撃波を放ち吹き飛ばす。そしてゴーレムが倒れてる隙にタバサがレビテーションでルイズを回収する。
「これで後ろを気にしながら戦わなくて済むだろ?」
「ふん、余計な事を。だが助かる」
俺はリオンの近くに行き、お互い話しかけながら体勢を整える。そうしてるうちにゴーレムは消し飛んだ頭部を再生させながら立ち上がる。
「再生か…。あれじゃあいくら攻撃してもキリがないな」
「ああいう手合いは、どこかにあるコアを破壊するか又は原形が無くなれば倒せたりするもんだけどな」
「なるほど。……おい、アレの足止めは出来るか」
「余裕っす」
「そうか。任せたぞ」
「おう」
リオンは言い終わると、呪文を詠唱し始めた。俺はこちらを向いたゴーレムに突撃する。もちろん囮役なので派手に攻撃を仕掛ける。っつても、リオンに近づかないように単純に殴打して後退させるだけなんだけどな。
「はぁっ!」
ズガンッ!!と、ゴーレムの胸辺りに掌底を打ち込みよろめかせる。が直ぐに建て直し攻撃をし返してくる。
「よっ」
しかし、攻撃はゴーレムの見た目通り遅く、単調なので簡単に避けられる。そんな感じで当て逃げ作業をしばらく続けていると
「ソイツから離れろッ!」
リオンの声に俺は瞬身の術でゴーレムから離れる。俺が離れたのを確認したリオンはゴーレムを睨みつけ
「僕の目の前から消えろ! ブラックホール! 」
ゴオ゛オォォォォォォッ!!!!
リオンが叫んだ瞬間、ゴーレムが漆黒の渦に飲み込まれて消滅した。………おお、カッコイイな。
タバサSide
私のは目の前で起きたことに驚愕し目を見開いた。キキはこの前説明してもらったので強いことは知ってはいたが、まさかあんな巨大なゴーレムとですら戦えるなんて…。それともう一人。ルイズの使い魔であるリオンと言う名の彼だ。彼も相当腕の立つ人物であることは理解していたが、彼が使った魔法は一体なんなのだろうか。
「すごい…」
「すごいわダーリン! やっぱりメイジだったのね」
ルイズとキュルケはあの光景…ゴーレムが黒い何かに吸い込まれていく光景を見て興奮しているが、あんな魔法今まで見てきた本には一切乗っていなかった。それに、アレは私たちの魔法とは何か違う気がするし、キキに教えてもらっている忍術とも違う。
「ねえタバサ、もう大丈夫みたいだし早く降りましょう」
キュルケが呆けていた私に声を掛けてきた。私はシルフィードに指示を出して降下させる。
「ダーリンすごいわ! 一人であんなに大きいゴーレムを倒してしまうなんて!」
彼一人ではなくキキも戦っていたのだけれども、あの状態のキュルケに言っても聞かないだろう。
「ちょっとキュルケ! リオンに引っ付いてんじゃないわよ!」
「なにルイズ~。嫉妬なの?」
「ち、違うわよっ! リオンは私の使い魔なのよ! だから、そのっ…アレなのよ!」
「はいはい。そうですね~」
「な、なななによ、その態度は!」
ルイズとキュルケがいつものやり取りをしていると、ガサガサと森の茂みから音がし、杖を構えてそちらを向くと、
「終わりました?」
黒い箱を抱えたチトセが出てきた。もしかしてずっとそこにいたのだろうか? さらに、茂みから出てきたチトセの後ろからミス・ロングビルが出てきた。
「あ、ロングビルさん。よかった、無事だったんですね」
ミス・ロングビルはチトセの言葉にニコリと笑いながら、彼女に近づき
「ふぇ? なんですか?」
「全員動くんじゃないよ!」
チトセの首を背後から絞めて、杖を彼女の顔に突きつけた。私が事を理解したときには完全にミス・ロングビルにこの場の主導権を握られてしまっていた。
「えっ! ちょっと、ミス・ロングビル! どういうことですか!?」
「ハッ、お気楽なガキ共だねぇ。この状況を見て“どういうこと”なんて聞くなんてさ、所詮は甘やかされて育った貴族様だね」
ルイズの言葉にミス・ロングビル…いや、土くれのフーケは嘲笑しながら言い返した。
「ロングビルってのは学院に忍び込むための偽りの名さ。私の本当の名はフーケ。土くれのフーケさ!」
「そんなっ! わ、私たちを騙していたんですか!?」
「ああ、そうだよ。おっと、反撃しようなんて思わないことだね。この子がどうなってもいいなら話は別だけどね。さあ、持ってる杖と剣を地面に置いて離れな!」
私たちは仕方なく杖を、キキたちは剣を置き離れる。
「いい子だね。しかしまったく、学院の教師達ってのはホント無能ばっかりだねぇ。本来ならあんたらみたいなガキじゃなく、アイツらを誘き出して破壊の杖の使い方を見るつもりだったんだけどね」
フーケは私たちが離れると一安心したのか、愚痴り始めた。
「まあ、いいさ。テキトーな物好きにこの『竜の心臓』と一緒に高値で売りさばくか」
そう言ってフーケは懐から拳大の宝石を取り出した。
「…ッ!? あれはっ」
リオンはその宝石を見た瞬間、驚愕の表情になった。
「さて、女子供の殺生は気が進まないんだけど私の事をを見られた以上「いぃぃやぁーっ! 助けてー! 殺さないでーっ!!」ちょっ、いきなり叫ぶんじゃないよ! 暴れるんじゃないってば!」
フーケが私たちに杖を向け魔法を放とうとしたとき、人質になっていたチトセがいきなり叫びだした。
「ジンさーん! 助けてくださーい! 私まだ死にたくありません。早く何とかしてください。あなた私の主人なんでしょ!」
「だから、うるさいって言ってんだろ! 大人しくしないならお前からっ」
「ちょ、ま、なんで私からなんですか!? 私みたいな無害で可憐な美少女なんかより、そこにいる頭のおかしいジンさんからにすべきです!」
「……いっその事、チトセごと」
ボソリと、ジンが殺気をみなぎらせなが呟いたが聞かなかったことにしてあげよう。その後も暴れ叫ぶチトセとそれを抑えるフーケの問答が続き、そして…
「ムキュッ!?」
妙な声を上げてフーケは意識を無くし倒れ、後ろにはキキがいつのまにか立っていた。
「えっと、助けていただいてありがとうございます。というかいつの間に?」
「そんなのお前らが暴れてる時にきまってるだろ。あんだけ隙があれば背後を取るぐらい簡単だって」
チトセの質問にキキはそう答えながら、フーケを縄で縛っていく。その後、私たちは縛ったフーケと共にシルフードに乗って学院に帰った。