キキSide
「いやー。参った参った。完敗だよ」
夜、酒場で夕食を食べている時、2階から降りてきたワルドは席に座りながら笑顔でリオンに向かってそう言った。多分今朝の手合わせのことを言ってるのだろう。話しかけられたリオンは笑顔のワルドを一瞥しただけで何も言わずに食事を続けている。
「ちょっとリオン!」
「あはは、別に構わないよ」
ルイズがリオンの態度にいつも通りに騒ぐが、ワルドは気にした風も無く爽やかに笑っていた。俺はそんな何とか爽やかを装うとしているワルドをとても残念な目で見ていた。
だってあちこち包帯だらけなんだもの。服とかマントで大体は隠れているものの、首元や手首あたりからチラチラと見え隠れするし、さっき階段から降りてくる時もめっちゃギクシャクした動きをしてた。
身体痛いんだなぁ、と思いながらも俺はワルドから視線をテーブルに戻し食事を続けた。肉が美味い。
「ん?」
食事もそこそこ食べ終わり、各自談話したりとゆっくりしていたら外が妙に騒がしくなり始め、店の扉へと意識を向けた瞬間……ドゴォン!!!と扉…というか入り口が全体がバラバラに吹き飛んだ。
「なっなんだぁっ!?」「きゃー!!」「うわぁっ!!」「なんだよっ! 何がっ」
入り口の爆散に酒場に居た客達が騒ぎ喚いて逃げ惑う中、俺は目の前のテーブルを蹴り起こして壊れた入り口に対して壁のようにして身を隠す。俺の行動とほぼ同時に他の皆もすぐさま起こしたテーブルの後ろへと身を隠して臨戦態勢をとった。ちなみに察しの悪いルイズ、ギーシュ、チトセの3人はそれぞれリオン、キュルケ、ジンによってテーブル後ろへ引っ張り込まれてた。
まぁそんなことより、俺たちが隠れた直後、壊れた入り口から大量の矢と魔法が撃ち込まれ始めた。
「これはまさか昨日の賊の仲間なのか?」
「にしても連中の格好は賊にはみえないわ。どうやらただの物取りじゃなかったみたいね」
ワルドの言葉にキュルケが参ったわねぇと、顔をしかめて言い返す。
「ちょっと! 何がどうなってるのよっ!?」
「ひゅわっ!? なんですかっ!」
「ひぃぃっ! いきなり何なんだっ!」
ルイズ、チトセ、ギーシュの三人は賊の奇襲に錯乱して叫んでいた。ちょっとうるさい。
「……で、どうする?」
騒いでる連中は置いといてリオンがどう対処するかを聞いてくる。まあ、ぶっちゃけ予想してた通りなので俺は考えておいた案を提示する。
「此処は俺が何とかするから、リオン達はあそこの厨房にある裏口から退却。後は桟橋まで向かってアルビオンまで一気に行くか、騒ぎが収まるまでどこかに隠れるか。まあ対処は任せるってことで」
「しかしこれだけの敵の数、メイジでない君の一人だけでどうにかできるとは思えない。他にも何人か残していくべきだと僕は思う」
俺が考えておいた内容を説明し終わるとワルドは俺一人じゃどうにもならないからと苦言を呈してくる。
うんうん分かってる。こんなに大勢で船まで移動されたらリオンを奇襲出来ないもんな~。しかし、知ったこっちゃない!
「じゃあ、タバサも一緒に残ってもらう。タバサはトライアングルだし機を見て退却した際に使い魔のシルフィードで逃げられる。いいか?」
「大丈夫」
と、俺はタバサに聞くとタバサはコクリと頷いて了承してくれた。
「しかしだね……「分かった。
ワルドが更に言い募ろうとしたのをリオンが遮り、未だにオロオロしているルイズの手を引き、厨房へと一気に走っていった。
「じゃあ、任せたっ! チトセ早くっ!」
「えっと、よく分かりませんが任せました!」
そして次にジンとチトセが厨房へ、
「タバサ、気をつけてね」
「ええっと…君達も無理をしないでくれよ!」
とキュルケはタバサに一言声をかけ、そのキュルケを追う様にギーシュも厨房へと駆けて行った。
「……っ」
そんな中ワルドは一瞬だが俺を忌々しそうに見るとすぐさま先に行った6人を追いかけた。分かり易いよワルドさん。俺の記憶ではもうちょっと有能なイメージだったんだけどなぁ。まあいいや。
「さてと」
俺は皆が居なくなったのを確認してから起爆札を付けたクナイを酒場内に入って来た賊達の足元へと投げ込んだ。先頭にいた賊は飛んで来たクナイに驚いたものの難なく避け、尚且つしょぼい反撃だなとでも言う様な
もう、目も当てられないような惨状の出来上がりである。
「さてっと。口寄せ」
俺は敵が先ほどの爆発で混乱錯乱してる中、懐から巻物を取り出して
数は2体。一つは前に手に入れた
そしてもう一つ。それは
銃の方はチャクラ弾を撃てるように改修するから問題ないとしても針の方は完全にアウトだった。これじゃあ残りの
なお、鎧に関しては傀儡の術を使って動かす為の最低限の処理しかしてないってかする必要が無かった。
「さて、再調整は完璧。さあ、暴れて来い!」
なんて言ってみたりしながら日和号・改と賊刀・鎧を操り外の賊達に突っ込ませた。ちなみに、タバサはワルドが見えなくなった時点で本を読み始めた。信用してくれてるのはいいんだけど少しは手伝ってくれてもよかったんじゃないかな?
リオンSide
「よし、此処らへんにはまだ敵は居ないみたいだ。今の内に船まで駆けるぞ」
キキとタバサの二人と別れた後、僕たちは敵の目を掻い潜りながら船が泊まっている桟橋へと移動する事にした。そして桟橋の出入り口付近の建物の陰からワルドが辺りを見渡して僕達にそう声をかけ、走り出した。
「まったく! 何なんですかあの人たちはっ!?」
「大方、例の貴族派とか言う連中の差し金だろ」
船を止めてある大樹の中、その内側に作られている階段を上っていると後方にいたチトセが迷惑だとでも言うような表情で叫んできたので、僕は宿屋でキキに聞いたこと簡単に話した。
「ちょっとどう言う事よ! 私達の任務はお忍びのはずよ!? 何であいつらにバレてるの!」
驚いたルイズが顔を蒼白にしながら声を上げて聞いてくる。
「そんなの情報が漏れていたからに決まっているだろ」
「そんなっ! ありえないわ。だってこの任務はあの夜に姫さまから直々に
ルイズは僕が言い返した言葉に今度は顔を青くして俯いた。が、むしろ何故バレていないと思っていたのか、僕としては不思議でならない。ここまでの大所帯で、しかも内乱中のアルビオンへと行くことを隠そうともしていない。密偵などいれば直ぐに怪しまれ調べられるだろう。
何より、こちらに間者が入り込んでいるなら情報など筒抜け、バレるのも当然だ。
「さあ、あと少しで僕たちが乗る船に着く。急ごう」
ある程度上り先頭にいるワルドが僕らに声をかけた時、階下からタッタッタッと小さな足音が階段を上って来るのが聞こえ始めた。
「………」
「ちょっとダーリン。いきなり剣を抜いてどうしたの?」
「僕たち以外に階段を上ってくる奴らがいる」
「タバサたちじゃ……無いのよね」
剣を構えた僕にキュルケも杖を取り出し階段下を警戒しながら聞いてきた。
「ああ、違う。………ッ」
ガキンッと僕は螺旋階段上の方から飛び掛ってきた仮面にフードを被った奴の斬撃を防ぎ、距離を取る。そして下から来た足音の奴らが3人。こちらも全員同じ格好をしており剣を構えていた。
「……4人か」
僕は斬りかかってきた奴を警戒しつつ、上がってきた敵を視認する。……一人で対処するにはさすがに多いな。
「くっ、こんな所で。リオンくん、奴等の足止めをお願いできるか? それにジン、君にもお願いする。さすがに4人相手にリオンくん一人じゃ危険だ」
ワルドは現れた敵を見ると僕とジンに足止めの指示してきた。
「ワルド、リオン達を囮にするの!?」
「僕たちは今一刻も早くここから逃げてアルビオンへと行かなければならない。それにルイズ、彼らほどの力が在れば負けるなんてことは無いだろうし心配はいらないよ。さ、リオンくんが持ってる手紙を返してもらって、僕たちは先を急ぐんだ」
ワルドの指示にルイズが驚いたように声を上げるが、ワルドは仕方が無いと言うようにルイズを説得した。……分断させる気か。しかしどうする。流石にこの状況下で4人を相手にするには分が悪いか……仕方が無い。
「おいキュルケ。これを持ってルイズ達と先に行け」
「え? ってこれって例の手紙じゃないの。なんで私に?」
「ルイズよりかはまともな判断ができるだろ」
「……わかったわ」
僕は懐から出した手紙をキュルケへと渡した。キュルケは手紙を渡されたことに一瞬驚い
たが、直ぐに笑顔になり手紙を仕舞った。
「キュルケなんであんたが手紙預かってんの! それ私に渡しなさいよっ!」
「そんなことより先急ぐんでしょ?」
「ちょっと何よ。待ちなさいって!」
キュルケはルイズの手を掴んで上へ走って行き、
「すまない。任せたよ」
「ジンさん頑張ってください! 私、信じてます!」
ワルドとチトセも2人の後を追って行った。
「え? ちょっと……ええいっ! 僕だってグラモン家の人間だ! 刺客の1人や2人倒してみせる!」
「さっすがギーシュ、だけど無茶はするなよ」
「お前たち、無駄口もいいがコイツらを何とかしなければ置いてきぼりにされるぞ」
ギーシュは震えながら、ジンは悠々と杖を構えて追ってきた敵に対峙する。そして僕も腰からダガーを引き抜き構え直して敵へと攻撃を仕掛けた。
ワルドSide
よし、上手くいった。僕はあの2人を引き離したことに心の中で笑みを浮かべる。
しかし想像していた以上だった。ジンはともかくあのリオンとか言う使い魔、なんて実力だ。かのガンダールヴの力を持っているとは言え、今朝の決闘で僕に後れを取らすとは。
僕は今朝の決闘を思い出しながら後方に意識を、……正確には偏在の魔法で作りだした僕の分身4体に向けた。
さすがジンだ。僕の偏在2体相手にまったく引けをとっていない。この任務で一番の障害と思って警戒して正解だった。彼を倒せるとは思っていないが足止めならいくらでもできる。グラモンの子息くんはいい感じに足手まといになってるな。
問題は使い魔くんの方だ。今朝の戦い方とは違いダガーを使っての二刀での戦いをしている。まさか今朝は手加減されていたのか? もしそうなら舐められたものだな。僕は表には出さないが苦虫を噛み潰した気持ちを持った。
まあいい、アルビオンへ出航してしまえばいくら力があろうとも追っては来れまい。あの風竜を使うにしてもまだ幼竜、船には追いつけやしまいしアルビオンへと辿り着くにも相当の時間がかかる。その頃にはこちらの計画は既に完遂されている。僕はこれから先の計画を思い浮かべほくそ笑んだ。
「な、なんでぇ? おめぇら!」
走って上がって来た僕らに気づいて起きた寝ぼけ眼の船員が声を掛けてきた。
「船長は居るか?」
「船長なら寝てるぜ。用があるなら明日の朝、改めてくるんだな」
船員は寝酒をしていたのだろうか、寝起きだというのに手に持っていた酒瓶から酒を煽り追い払おうとしてきた。平民風情が。
「貴族に二度同じ事を言わせる気か。僕は船長を呼べと言ったんだ」
「き、貴族っ!」
僕は杖を引き抜き睨みつけると、船員は顔を引きつらせて、慌てて船長室だろう部屋へと走りこんでいった。しばらくすると、扉が開きこちらを胡散臭そうにジロジロと見ながら初老の男が歩いてきた。彼がこの船の船長か。
「こんな真夜中に何の御用ですかな?」
「女王陛下の魔法衛士隊隊長、ワルド子爵だ」
「……ッ、これこれは。して、当船へはどういったご用向きで?」
船長に僕の肩書きを言うと、驚き態度を改めて丁寧な口調で聞き返してくる。
「アルビオンへ、今すぐ出航してもらいたい」
「無茶を!」
「勅命だ! 王室に逆らうつもりか?」
「あなた様方が何をしにアルビオンへと行くのかこっちは知ったこっちゃありませんが、アルビオンが最もここラ・ローシェルに近づくまで、まだ1日もあります。大体、今船に積載している風石の量じゃアルビオンまで行くなんぞ到底無理です。出航した所で途中で墜落してしまいますよ!」
「風石の足りない分は僕が補う。僕は風のスクウェアだ」
「……ならば結構で。料金ははずんでもらいますよ」
「僕の名で請求しても構わない。言い値を払おう」
僕がそう言うと、船長は笑顔を浮かべた後、大声叫び船員たちをたたき起こし始めた。船員たちは叩き起こされた事に不満を言いながらもテキパキと出航の準備を整えた。
「さあ、行くよルイズ」
「……ええ」
ルイズに声を掛けるとルイズはタラップの入り口辺りを心配そうに見つめていた。
「彼らが心配なのかい?」
「……ねえワルド。お願いがあるのだけど、少しだけでいいからリオン達を待ない?」
ルイズは僕にそう提案をして来るが冗談ではない。せっかく引き離したんだ。合流されては困る。
それに既にジンと使い魔くんによって分身達は苦戦を強いられている。早くここを出なければ。
「ルイズ、せっかく彼らが僕らのために足止めをしているんだ。僕たちは一刻も早くアルビオンへと行くことが彼らへの誠意だ。それにさっきも言ったように彼らの実力なら心配いらない。さ、行こう」
僕はルイズの手を取り、船へと乗り込む。そして残りの着いてきた娘達も乗り込むのを船長は確認すると船の帆を下ろし、出航さた。
これで邪魔者は居なくなった。後は僕の任務をアルビオンでこなすだけだ。
【とりあえず補足】
日和号・改の改造設定。
悪刀・
頭部内に仕込み、雷遁チャクラで充電してザ〇ルが撃てる
千刀・
腕に道具の忍具口寄せの印を刻み、そこから取り出す事により戦闘中に刀が折れてもすぐに交換できる。
絶刀・
後ろ足2本に内部に仕込んでおり、足底で蹴りをする際に光速で飛び出す。
炎刀・
前足2本に仕込んでおり、足底を敵に向けて銃撃を行なう。(ロボット物でいうところの両脇についてるレールガンとかマシンキャノン的な感じ)
なお、設定は作っているがこれらの機構が活躍する事は多分無い。