青いチビの使い魔   作:だしィー

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なんとか今年中に3巻終わらせられた。

少々どころではないご都合な場面が多いですが深く突っ込まないでください。

では皆さん。来年もよろしくお願いします。良いお年を。


虚無の魔法

 ルイズSide

 

「ちょっとリオン。これ大丈夫?」

 

「知らん。チトセを信じて行くしかないだろ」

 

晴れ渡った空の中、リオンは天空の虹翼の操縦を誤らないように注意し飛ばしながら私の恐々(こわごわ)と呟いた言葉にぶっきらぼうに言い返してくる。

あの後、本当にパッと天空の虹翼の発進準備を済ませたチトセによって、私とリオンは戦火に見舞われているタルブの村へと向かう事になったわけだけど……

 

「……リオン、やっぱり怒ってる?」

 

「いつもの事だ。今更文句を言うつもりはない」

 

と、妙にリオンがピリピリしていてはっきり言って居心地が悪い。いや、原因は私だってのは分かっている。

そりゃあ、友人のシエスタの故郷が焼かれて、しかもこのままだとトリステインが侵略されちゃうって聞いたら居ても立っても居られなくなり無茶なことしようとしたし。

しかもそのせいで今現在、命の危機と言っても過言じゃない状態で移動してる訳だし…………。

 

「……ごめん、リオン」

 

「謝るぐらいなら感情で行動する癖を直せ」

 

「……ぐぅ」

 

ぐうの音も出なかった。そりゃあ昔から感情的にると突拍子もない事をすると、よく説教され続けたにも関わらず今でもこの有様である。

って言うか母様と姉様だって私と似たり寄ったりじゃないッ! 大体それのせいで姉様ってば何度も何度もお見合いを…………

 

「…ッ!?」

 

「どうした?」

 

「えッ、な、なんでもないわ」

 

急に大きく震えた私をリオンが怪訝な目で見てきたけど私は愛想笑いをして大丈夫と伝えた。…うん大丈夫なはず。突然背筋に冷たいものを入れられたかのような、何か得体のしれないうすら寒さを感じたけど…まさかね? 

 

「……ルイズ、振り落とされないようにしっかり掴まっておけ」

 

「え?」

 

「敵だ」

 

リオンがそう言った瞬間、私たちの真横を巨大な炎の塊が通り過ぎた。

 

「あひゃッ! わッ!? にぎゃーッ!!」

 

私は突然の熱さと驚きで反射的にリオンに抱き着くように掴まるやいなや、リオンは天空の虹翼をおもいっきり上昇させた。と、同時に先ほど飛んできた炎と同じものが何発も私たちの真後ろを通り過ぎる。

こ、怖いッ!!! あんなのに当たったら死んじゃうって!! 

 

「リ、リオンッ! 来てる来てる!! 早く何とかしなさいよッ!?」

 

「うるさいッ! 耳元で騒ぐなッ」

 

リオンは後ろから迫ってくる2人の竜騎士を振り向き横目で見るや、急激に天空の虹翼を加速させて竜騎士達から距離を取ったと思ったら反転して竜騎士達へと突撃するように向かっていく。

 

「ちょっとリオン! 何してんのッ!?」

 

「…………」

 

リオンは私の言葉を無視したまま今にもブレスを放とうとしている竜騎士達へとなんの躊躇(ためら)いも無く突き進み、そして……

 

「…ッウィンドスラッッシュ!」

 

リオンが叫ぶと今まさにブレスを吐こうとしていた竜の口が裂けて爆発を起こし墜落していった。

今のって、リオンの世界の魔法なの?

 

「すごい…」

 

「ルイズ、呆けてないでチトセから預かったコレの操作マニュアルを取ってくれ。今みたいな方法はそう何度も成功するもんじゃない。コレの武装も使う必要がある」

 

「ま、まにゅあ? …あ、あの本ね。 ちょっと待って」

 

私は出発直前に渡された奇妙な形の本を取り出しリオンに渡した。

そして一息と言うほどではないけれども、少し落ち着いた私は初めて周辺の様子に目を向ける。綺麗だった丘や小川は竜のブレスや敵の魔法のせいで荒れ果てており、畑や果樹園の作物は無茶苦茶。民家なのど建物も燃えていたり壊れていたりと酷い有様だった。

村人達は何処にも居らず、代わりに敵兵やオークにオーガと言った亜人たちが我が物顔で闊歩していた。

あいつら、なんて酷い事をッ! 私が下の様子に憤っていると、

 

「……チッ」

 

と、突然リオンからこれまでないぐらいの不機嫌さがこもった舌打ちが聞こえてきた。 リオンも怒ってる。そうよね、こんな良い村を無茶苦茶にされたんだもの。怒って同然よね。

私はそう思ってリオンを見つめると彼の視線が下の村ではなく手元の本に向いて、しかもそれを忌々しそうに睨んでいるのに気づいた。……ん?

 

「リ、リオン? …どうしたの?」

 

私は恐る恐る尋ねるとリオンは手元の本…チトセから預かった本を彼にしては乱暴な手つきで返してきた。

さすがの私もそんなリオンの態度を不審に思い返された本を開いてみた。

 

「………え?」

 

本を開いて私は目が点になった。だってなんて書いてあるのか全く読めないんだもの。

こんな文字今まで見たこと無いし、じゃあリオンの世界の文字? とも思ったけど、ならリオンがあんな表情で突き返してくるはずも無い訳だから……。

 

「あのバカの居た世界の文字なんだろう。まったく、こんな状況でやらかしてくれたものだな」

 

私は何も言えなかった。確かにこんな状況でも無ければちょっとした失敗で許されるが、残念ながら今は冗談では済まない状態なのだ。チ~ト~セ~ッ!?

 

「あの娘ってばなんてうっかりをッ!!?」

 

「言っててもしょうがない。幸い絵による説明も付いていた。そこから推測して使う」

 

「大丈夫なのッ?」

 

「迷ってる暇はないッ。 また来る。振り落とされるな、助けられる余裕はないからな」

 

リオンは言うや、天空の虹翼の速さを上げた。

 

 

 

 

 

 ワルドSide

 

 「ワルド様、奇妙な怪鳥がこちらに向かって来ているとのご報告がッ! すでに何騎もの竜騎士達が落とされているようです」

 

僕は部下の持ってきた急報に眉を寄せた。ほぼ占領を完了したと言っても過言ではない状況の中、しかもこちらの竜騎士達は一部とはいえ空戦に慣れている元アルビオン軍の騎士達だ。そう簡単に如何こう出来るようなものでもない。

大体、たかが怪鳥如きに竜騎士が後れを取るなどあり得ない。……トリステイン軍の新兵器か? いや、そんな話は聞いたことが無い。

 

「敵の数とその怪鳥の特徴は?」

 

「報告によると怪鳥は1匹で虹のような羽が生えており、大きさは小柄。そしてその背には人が2人乗っていると…」

 

人が2人で怪鳥は1匹だけだと!? それこそあり得ない。竜よりも速く飛とぶ怪鳥など聞いたことが無いし、しかもその背には人間が2人乗っていると言うのなら尚更だ。………ん? 2人? 

と、僕は部下の報告を聞きながら、ふとニューカッスル城で不覚を取らされたあの2人の事が頭をよぎった。

 

「……まさか、」

 

「どうなされました?」

 

「怪鳥の乗っていると言う2人組の特徴は分かるか?」

 

「はッ。黒とピンクの髪色をした男女であるということしか…」

 

「…ッ。なるほど、それで十分だ!」

 

ニィと口端が歪む。

本来ならそんな表情を戦いの最中に、しかも部下に見せるような愚行は控えるべきなのだがその報告を聞いた僕はそんな事はお構いなしに感情を表に出してしまった。

 

「…た、隊長?」

 

「周辺に出した巡回の竜騎士達を呼び戻して各艦の護衛に集中させろ。怪鳥の方には私が行くッ!」

 

「へ? お1人でですかッ!?」

 

「隊の指揮は任せる」

 

僕は部下の騎士に言い放つと同時に竜を手繰り、怪鳥が来たと言う方角へと向かう。

待っていろリオンくん! あの時の礼、きっちり返してくれる!

 

 

 

 

 

 ルイズSide

「デルタレイッ!」

 

「ぎゃぁッ!!」

 

リオンが天空の虹翼を巧みに操って敵の真上から降下し、魔法を竜騎士に撃ち込んだ。リオンが放った3つの光の弾の内2つは竜の翼に当たり、残りの1つは乗っている騎士の足に当たって貫いた。

そして竜と敵騎士は貫かれた衝撃と痛みによって大きくバランスを崩し、騎士は悲鳴を上げ竜から振り落とされて竜はふらつき下降しながら逃げて行った。

 

「……ふぅ」

 

リオンは厳しい目つきで周囲を見渡して新しい敵が近づいてきていないか確認した後、小さく一息ついた。

 

「や、やるじゃないリオンッ。すごいわ!! 元とは言えアルビオンの竜騎士達を何騎も倒すなんて! この調子であの戦艦も…」

 

「そんなこと出来るわけないだろ。敵の対処が出来ていたのも一度に襲って来ていたのが2~3騎だったからだ。あんなところに突っ込んだら袋叩きに合うだけだ」

 

「そ、それならチトセの武器使えばいいじゃない。ほら、『びーむ』ってやつッ。光がまっすぐ飛んで一瞬で敵を焼き払ったの」

 

私は2度目の襲撃の時にリオンが試しにと使った武器の威力を思い出しながら言った。

向かってきた3騎の敵を一瞬にして燃え尽きた(まき)みたいにしちゃった光はすごかった。まあただその光の飛ぶ距離が以外に長くて地上にまで光が届き、届いた場所の地面がドロドロに溶けて真っ赤になってたけど…。

でもそれだけ遠く、尚且つあんな威力なら戦艦ぐらい楽々落とせるわよ。と私はリオンに言ってみたが、

 

「確かに上手くすれば数隻は落とせるだろうがその後はどうする。それ以前にそこまで近づけることが出来るかどうか…ッ!!?」

 

「え? ッひゃわー!?」

 

と、話していると突然リオンが天空の虹翼を大きく傾けた。いきなりの事で振り落とされそうになってしまいそうになるもリオンに抱き付き何とかなった。

いきなり何してるのよッ! 落ちるとこだったでしょッ!! と、私が文句を言おうとしたら

 

「ほう、今のを避けるか! さすがだよリオンくん!」

 

後方から風竜に乗ったワルドが笑顔で叫んできた。ただ、笑顔と言っても朗らかにとか微笑むようなとかではなく、口角を吊り上げ目を見開いた、獰猛な獣が狩りを楽しむような怖い笑顔だった。

 

「なッ!? ワ、ワルド!」

 

「チッ。面倒な奴が」

リオンはワルドの姿を確認すると忌々しそうにつぶやき、ワルドから距離を取ろうと加速した。

 

「おやおや、折角の再開だと言うのにつれないじゃないか。 まあその程度で私から逃げられるとは思っては無いだろ?」

 

しかしワルドは今までの竜騎士たちとは違いあっと言う間に距離を詰めて私たちの真横に並びそして…、

 

「エア・スピアー !」

 

「くッ!」

 

魔法を放ってくる。ワルドの放った空気の槍は真っ直ぐにリオンの頭へと向かってきたけど、リオンはそれを体を反らしてギリギリで避けた。

 

「ウィンドスラッシュ!」

 

「はっ!」

 

リオンは攻撃を避けた後、今度はワルドの死角に回るように天空の虹翼を移動させて魔法を放った。が、ワルドはまるで攻撃が見えているかのようにリオンの魔法を避けた。

 

「私の風竜は優秀でね、わずかな空気の変化にとても敏感なんだ。残念だがその攻撃は効かんよ」

 

「チッ。ならば……デルタレイッ」

 

「おいおい、その程度の魔法が当たるとでも思っているのかい?」

 

リオンはさらに別の魔法を撃つけどワルドは軽口を言いながら華麗に3つの光弾を避けてこちらに突っ込んで来た。

リオンはワルドの突撃を回避するも

 

「ライトニング!」

 

「ぐぁッ!?」

 

「きゃあぁぁッ!!」

 

ワルドはすれ違いざまの一瞬を狙い攻撃を仕掛けてきた。

 

「ちょ、ちょっとリオン! 大丈夫なの!?」

 

「大丈夫なわけが無いだろッ。ああも動かれてはビーム砲も当てることはできん」」

 

「そんなッ!? どうするのよッ。あッ! そういえばもう1つチトセの付けた武器あったじゃない。あれは…」

 

「残念だがダメだ。すでに試してみたが動かなかった」

 

私がもう1つの先端が丸い円筒の形をした棒がいくつも入っていた箱の事を言うと、リオンは苦虫を潰したような表情で答えた。

う、動かなかったって……そんなぁ~。

私が顔を青くしている間にもワルドは近づいては魔法を放ち離れて、と言う戦法を使い攻撃をしてきた。

それに対してリオンも(うま)く攻撃を防ぎ避け、反撃にと魔法を放つもワルドには全然当たらなかった。

 

「さて、そろそろ終わりにさせてもらおう」

 

何度目かになろうかとう攻防の中、ワルドは私たちの背後を取り止めを刺そうと今までとは違い長いスペルを唱え始めた。

 

「……ルイズ、少し考えがある。協力してもらうぞ」

 

と、リオンが私に向かって唐突に話しかけてきた。私が何か言い返す前にリオンはこれからしようとすることを早口で説明てきた。

 

「えッ!? む、無茶よそんなの! 失敗したら死んじゃうじゃない!!」

 

「このまま何もせず奴の攻撃を受けても同じだ。無茶でも無理でもやるしかない」

 

その内容はと言うと普段のリオンからは考えられないほどの無茶なものだった。でもだからと言って他にいい考えが浮かぶ訳でも無い。

私は上手くいくのかすごく不安だったけど、やらなければワルドによって殺されてしまうわけだし…。

 

「う、うう~。もうッ! やればいいんでしょ。やればッ! やってやろうじゃない! ヴァリエールなめんじゃないわよ!!」

 

私は覚悟を決めてリオンに返事をした。

リオンは私の返事を聞くや否や天空の虹翼を加速させ一気に上昇をし始める。

 

「まだ抵抗するのかい? でも無駄だよ。カッター・トルネードッ!」

 

ワルドはやはりと言うか私たちを逃がす気は無く、唱えていた魔法を放ってきた。

『カッター・トルネード』は真空の刃で出来た竜巻であれに当たったらと思うとゾっとする。

昔、母様の機嫌を損ねた父様があの魔法でズタボロになりながら宙を舞っているのを見たことがある。母様は手加減していると笑顔で言っていたけど、今思えばアレはじっくりといたぶるつもりで手加減をしていたんだと、私は思った。

 

「ルイズッ、ボケっとするな! 今だッ!!」

 

「ッ!? れ、錬金ッ!!」

 

私は迫りくる脅威に少しの現実逃避をするもリオンの言葉に意識を戻し、慌てて天空の虹翼と動かなかった箱の武器をつないでいる金具に魔法を掛けた。

ボンッ!と錬金をした私の掛けた魔法は相も変わらず爆発と言う失敗が起こるが、その爆発で金具が壊れ箱は天空の虹翼から後ろに落ちて行った。

落ちて行った箱はカッタートルネードに当たると真空の刃で切り裂かれて、

 

ドゴォォォォォォォォォンッ!!!!!!

 

と目も眩むような光と火竜のブレスを何倍も強力にしたような熱、そして母様のエア・ハンマーを想像させるような衝撃が起きた。

 

「なんだとッ!!?」

 

「きゃあぁぁぁッ!!」

 

突然起きた爆発にワルドは驚愕の表情になり、私はリオンに聞いていたとは言え思っていた以上の爆発に涙目になりながら天空の虹翼のバランスを必死で取った。

 

「くそッ! よくもやってくれたも…ッ!!?」

 

爆発の煙が晴れるとカッタートルネードは消えうせ、代わりに忌々しそうに毒つくワルドが目の前にいた。

ワルドは油断していたのか反転して突撃して来た私に再度驚くも、ギリギリで竜を反らしバランスを崩しながらも避けた。

 

「なんだ? あれだけの事をしておいて最後はこの体たらくか」

 

ワルドは私の突撃に対して落胆したように吐き捨てるが私はそんなワルドの事を無視してそのまま降下しつづける。

ワルドはそんな私の行動に怪訝な表情をしていたが次の瞬間、天空の虹翼に私だけ(・・)乗っていることに目を見開き、

 

「まさかッ!?」

 

「はぁぁぁぁッ!」

 

ワルドが振り返った、と同時に先の大爆発の時に天空の虹翼から飛び上がったリオンが落下しながらワルドを2本の剣で切り裂きつつ風竜の上へと着地する。

 

「がアァッ! き、貴様ぁあッ!!」

 

「終わりだ! 千裂虚光閃(せんれつここうせん)ッ」

 

そしてリオンは着地の屈んだ姿勢から上体を起こす勢いを使ってワルドを短剣で宙に打ち上げると目にも止まらぬ速さで幾度もの突きを放ち、ワルドはその攻撃を防ぐことも出来ず全てを突きを受け意識を失い、体中から血をまき散らしならが風竜の上から落下していった。

すごいッ! 本当にワルドを倒せちゃったッ!! 私は急降下していた天空の虹翼の体勢をなんとか戻してリオンが乗っている風竜の元へと上昇させつつ、この戦いの結果に目を輝かせて心から喜んだ。

 

「…む?」

 

「あッリオン! って、え? ちょッ!?」

 

すると風竜が主人であるワルドが倒され、落下していくのを目端にとらえたのか、背に乗っているリオンを振り落とそうと体をよじり始めた。

私はリオンが振り落とされてしまうと思い急いで風竜に近づこうとしたら、リオンはいきなりこちらに向かって飛び降りたのだ。

 

「ふッ!」

 

「きゃあッ!? リ、リオンッ、なんで飛び降りるのよ! ビックリしたじゃないのッ」

 

「別にたいした高さではなかったからな。この方が手っ取り早い」

 

「危ないって言ってるの! 落ちたらどうするのよ」

 

「ボクがそんなヘマするわけないだろ」

 

なんて、リオンはすまし顔で何でもないように言い返してきた。

せっかく人が心配してやってるって言うのにこの態度ッ! なんなのよ! まったくもう。

私が心の中で憤っていると、私と操縦を変わったリオンは天空の虹翼を近くの森の中へと向かわせ始めた。

 

「え? ちょっとリオンどこ行くつもりよ」

 

「どこも何も一旦森の中に着陸する。ワルドとの戦闘でこの機体のダメージが心配なのもあるが、なによりこれ以上飛んでいたところで何もできはしないからな」

 

と、リオンは暗に戦艦を落そうなんて馬鹿なことを言うなと私に釘を刺してきた。

私だって無茶な事だってのは分かってるつもりだけど、でもアレをどうにかしなきゃタルブの村どころかトリステインが無くなっちゃうかもしれないと思うと、無茶でも無謀でもどうにかしなくちゃと思ってしまう。

私はなんでこんなにも無力なんだろう。

いつもいつも気持ちばかりが先立ってばかりで、実際何かを解決できる力が無い。

フーケを捕まえる時だってリオンやキュルケ達に助けられて…、アルビオンでも私は震えてるばかりで戦えもしなかった。

今回だってそうだ。自分の我儘で突っ走ってリオンに迷惑をかけている。

悔しい。なんで私は何もできないの!? 魔法だって、いっつも失敗の爆発で……。

いっそのこと爆発するんだったらあの戦艦を木っ端微塵に出来るぐらいの爆発ぐらい起きなさいよ!

………なんて、いくら心の中で叫んだってどうにかなるわけでもなく。私はこの何もできない自分に対しての悔しさや怒りをぐっと心にしまい込んだ。

 

「…? おいルイズ。なんだそれは?」

 

「え? 何って…えッ!?」

 

私が悲しみにくれて目を瞑り、リオンの背に顔を埋めているとリオンが怪訝な声と表情を向けた。

私はその声に反応して顔を上げ、目を開くと体にかけていたバックの中が光っていた。

 

「ふえッ!? なに? き、祈祷書!? 始祖の祈祷書と水のルビーが光ってる?」

 

私はバックの中に入れっぱなしにしてしまっていた祈祷書と水のルビーをおっかなびっくり取り出した。

祈祷書と指輪は淡く光を放っており、一体何が起こっているのか恐る恐るページを開いた。

なぜいきなりページを開くなどという事をしたのかは私自身分からないが、そうするべきなのだと、私は無意識のうちに行動し始めた。

 

「ルイズ?」

 

リオンが心配そうに言葉を掛けてきたが私は祈祷書から目を放せずにいた。

祈祷書を開くと白紙だったはずのページに文字が現れ始めた。私はそのことに目を開き驚くも心は冷静であり、現れた『この書開きし者、我が理想と目標を受け継ぎし者なり。選ばれし読み手であれば四の系統の指輪をはめよ。さればこの書は開かれん』という文章に従い一緒に光っていた水のルビーを疑問も無くはめた。

すると次のページに新たなる文章が現れ、私はそれを食い入るように読み始める。書いてある文字はハルゲギニアの古代語だったけどこの程度であれば私は難なく読む事が出来る。

 

「虚無の系統……。嘘…、伝説のッ!? 伝説の虚無の系統じゃない!」

 

私は現れた文章を読みながらその内容に驚き呟く。それはあの伝説の『虚無の系統』に関することだった。

本物の始祖の祈祷書には始祖ブリミル自身が虚無の事を書き記している、とは有名な話であるが実際その記録を読んだ者はおらず、もはや本物の祈祷書は失われていると噂も立つほどだったが…。

なるほど、こういう事ならば誰も分からないはずだ。だってこれは担い手しか読めないんだから。

 

「……………………ねえリオン。お願いがあるの」

 

「ルイズ?」

 

それから、リオンが森の中へと天空の虹翼を着陸させても私は地面に降りずにそのまま祈祷書を読み続け、そしてある程度読みきると天空の虹翼の状態を確認しているリオンへと声を掛けた。

 

「私を……、私をあの戦艦の所まで連れて行って!」

 

「何を言っているんだ? そんな事をしてどうする。言っただろ? いくらこの武器が強力でもあんな敵軍のど真ん中に入っては戦艦に攻撃をすることもままならないと」

 

「分かってる。だから連れて行ってくれるだけでいいの」

 

「……なにが書いてあった?」

 

「虚無の魔法こと」

 

「…あの伝説と言われている系統の魔法か。それは信用できる物なのか? 失敗すれば…」

 

「大丈夫ッ! 理由はうまく説明できないけど…。でも絶対大丈夫ッ」

 

「……はぁ、やれやれだ。まったく。そう自信満々で言うからには失敗は許されないからな」

 

「…ッ! うん!!」

 

私の言葉にリオンはため息を吐いて肩を竦めるも、気持ちが届いたのか天空の虹翼に乗り込み、ゆっくりと上昇させ始めた。

 

「行くぞルイズ。準備はいいか?」

 

「うん、お願い」

 

返事をするとリオンは戦艦が浮かんでいる場所へと天空の虹翼を飛ばした。

私はお願いした場所に向かってもらう中、目を閉じ深呼吸を一つして杖を握り掲げる。

そして、

 

『エルオー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ』

 

小さく、けれど力強く呪文を紡ぎ始める。

 

『オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド』

 

ある程度戦艦に近づくと向こうも私たちに気づき砲撃を仕掛けてきたり、竜騎士達が攻撃しに向かってくるが私はそんな事気にせずにさらに呪文を唱え続けた。

怖いとか不安は無かった。だってリオンが守ってくれるから。現にリオンは砲撃や竜のブレスなんかを華麗に避けてどんどん戦艦へと近づいていく。

 

『ベオーズス・ユル・スヴェエル・カノ・オシェラ』

 

私の中で大きな何かが生まれ、うねり、行き場求めて回転していく。

魔法を使う際に今まで感じていたフワフワ感は無く、むしろ自分の中にきっちりと嵌るような安定感がある。

そういえば誰かが言っていた。自分の系統を唱えると他の系統より大きな力を感じるって…。

 

『ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル…!』

 

そして、私がこの長い長い呪文を唱え終ると同時にリオンはあの砲撃やブレスに魔法が飛び交う中を潜り抜けて、旗艦であるレキシトン号を中心にした艦隊を一望できる場所へとたどり着いた。

私は呪文が完成した瞬間、この魔法がどういうものでどれほどの威力を(よう)するものか理解する。これは目に映る全てを巻き込むもの。そして選ぶ魔法。

殺すか、殺さないか。

破壊すべきは? 失くすものは?

私は己の中にある気持ちに従い杖を振り下し、この魔法の名を叫ぶ。

祈祷書に記したブリミル曰く、虚無の力の初歩の初歩の初歩…

 

「『エクスプロージョンッ!!』」

 

次の瞬間、目の前が一瞬にして光に覆われた。

 

「これはッ!?」

 

「これが虚無の魔法…ッ!?」

 

光は1秒にも満たない程度で収まり、私とリオンは目を開ける。

するとそこには全ての戦艦が火を上げて墜落し、戦艦を守っていた竜騎士たちと竜はまるで力が抜けてしまったかのようにどんどん降下していく姿があった。

 

 

 

 

 

 

 




【どうでもいい言い訳】

書いてる途中でルイズが一体どこに祈祷書や説明書をしまっているんだ? という事に気づき、タルブに向かう前にチトセから説明書を入れた肩掛けバックを持たされたと言う設定をつけました。
 
あと、リオン達がレアバードに乗って行ってボロボロにしてしまったので、飛ぶのを楽しみにしていたキキは残念ながらしばらくの間レアバードに乗れずに少々不貞腐れるのであった。
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