時系列的にはキキがキュルケに燃やされたのと同じ日です。
リオンSide
「んん~♡、やっぱりこの店のクックベリーパイは最高ね」
「はぁ、それはいいが一体何件店を回るつもりだ。この店で4件目だぞ」
「別に何件回ろうといいじゃない。姫さまとの約束の時間までまだあるんだし。それに、そう言うリオンだってしっかり食べてるじゃない」
「別に僕はちょっと小腹がすいていたからで…」
「ならやっぱりかまわないじゃない」
そう言ってルイズはパイの残りを美味しいと顔をほころばせて
僕達は今、城下町へとやって来ていた。
何故城下町へとやって来ているのかと言うと、数日前に僕とルイズの
ルイズはなんだろう? などとふざけたことを呟いていたが、このタイミングだとしたらタルブの村の事しかないだろう事は明らかだった。
そして昨日、平常日であるため学院から特別外出許可を貰い、今朝早くから張り切っているルイズに連れられ城下町へと来た。
約束の時間は夕刻となっており、朝早くからくる必要は無いのだが、ルイズが折角だからと言ってこのように城下町の甘味が美味しいと有名な店を巡らされている。
「さて、じゃあ次は南地区の方にあるっている『凶戦士のパルミエ』ね。あっちの方は中々行く機会が無いから気になってたのよね」
「なんだその名前は…。ちゃんとした菓子なんだろうな? 何故だかとてつもなく不安を掻き立てられるのだが」
「大丈夫よ。あ、でもそのお店の色々と面白い噂は聞くわね。旦那さんは若い頃騎士になろうとして軍艦に密航して処刑されそうになったとか、奥さんは実は貴族だったけど家の事情で捨てられたとか」
まさかこの世界であいつらと似たような話しを聞くとは…。
僕はフッと小さく苦笑をもらした。
「どうしたのリオン?」
僕の表情に首を傾げてきたルイズに何でもないと一言返した。
そしてルイズの案内で次の店へと向かい、例の店に着いて店員を見た僕は何とも言えない気持ちとなった。
それからなんやかんやと街を巡って時は過ぎ、約束の時間となった。
城へと着き、門番の衛士にルイズがアンリエッタからの手紙を見せるとすぐさまアンリエッタの部屋へと通された。
始めはいつものルイズとアンリエッタの茶番があり、それが終わるとすぐさま本題へと入った。
内容は想像通り、タルブの村での戦闘に関してだった。
僕達が戦っている時、奇しくもアンリエッタもタルブの村付近まで近衛騎士団を率いてやってきており、騎士隊へと指示を出している時、空が輝き艦隊が轟沈していく光景を目撃した事。
そしてアンリエッタとマザリーニ枢機卿は直ちに事の詳細を調べ僕たちの事に気づいた事。
他にも虚無の魔法に関してや、それに伴う危険性。
今現在はアンリエッタとマザリーニ枢機卿の2人だけが既知である事などを話し、そしてアンリエッタはルイズにこの先虚無を口外したり使わないようにと言い含めた。
が、しかしルイズはそんな言葉に少し考え込み、
「おそれながら姫さまに、わたしの『虚無』を捧げたいと思います」
と、またアホな事を言い出し始めた。
更にルイズは自分が持った虚無の力はアンリエッタとこの国を救うために手に入れたどうのと使命感と決意に満ちた表情で毅然と語った。
僕はそのルイズの語りに大きくため息を吐き、頭を押さえた。
きっとこうなるだろう事は多少想像はしていた。…してはいたが実際にそうなるまでを見ていると頭が痛くなった。
まさに力を持って酔いしれてしまっている典型的なパターンだ。
ほんの数か月の付き合いだが、ルイズの最も
また悪いことにアンリエッタもルイズの言葉に感銘を受け、あっさりとルイズの言葉を許諾してしまった。
しかもそのまま自身の直属の女官にしてしまう始末。もう手に負えん。
「まったく。……ん?」
僕が再度2人のバカを見て呆れていた時、コンコンと扉がノックされた。
「誰です。来客中です。控えなさい」
アンリエッタは女王として声を張り、扉の前に居ると思われる人物に叱咤した。
「これはこれは済みませぬな。少々急ぎの要件でしたので、不作法とは思っておりますがお許しを」
「……誰です?」
閉じられた扉の向こうから聞こえたしわがれた声に、アンリエッタは先ほどとは違う困惑した声で再度聞き返した。
すると返事の代わりと言う訳では無いだろうが、扉が開きそこに1人の老人が佇んでいた。
「………」
「えっ…」
僕は現れた老人を見るなり驚きに体を固め、ルイズは信じられないと目を見開いた。
「あ、あなたは!?」
「久方ぶりにお会いするの、アンリエッタ姫殿下。いや、今はもうアンリエッタ女王と呼ぶべきですかな」
現れたそいつはアンリエッタの驚きに柔和な笑顔を向けながら冗談交じりに挨拶をしてきた。
「い、いえ。わたくしなんて女王と言われてもまだまだ若輩で…。そ、そんなことよりも…、貴方はワルドに討たれて死んだはずだと。生きておいででしたか、ジェーム陛下」
「ええ、お恥ずかしながら」
「陛下、一体何が。あ、どうぞこちらへ、今椅子を……」
「そんな必要は無い」
アンリエッタがジェームス1世を部屋へ招き入れようとした時、僕は剣を抜きながらアンリエッタの言葉を遮り、2人の間へと身を割り込ませてジェームス1世へと剣先を向けた。
「リオンさん、何をッ!?」
「姫様下がってくださいッ」
「ルイズまで。何が…」
アンリエッタが僕の行動に声を荒げるが、珍しくも状況を
「おや、いきなり剣を向けるなど以外に荒っぽい方ですな…。私はただ話をしようとしているだけだと言うのに」
「白々しいな。ならその背後に倒れている奴らはなんだ?」
「え? 背後……ッ!!? クロエッ! エレノアッ!」
僕の指摘にジェームス1世の後ろの廊下にアンリエッタが改めて目を向けると、やっと倒れている騎士に気づき名を叫んだ。
パッと見では流血している様には見えないが…、何をされているか分らない以上早急に
「…ふむ、面倒臭がらずに処理しておけばよかったかのう? ま、些細な事じゃな。計画には支障はないしの」
「計画? 何を…ッ!!?」
僕が疑問を口にしようとした瞬間、ジェームス1世の姿が陽炎の様に歪み消え、と同時に強烈な突風が巻き起こり室内がかき回された。
「きゃあっ!!」
「姫様ッ!」
そして突風によって僕らが動けなくなっている所、消えたジェームス1世と入れ替わるよう一人のフードを被った男が現れた。
その男は一旦身を沈ませると室内を荒れ狂う風を見事に利用して素早くアンリエッタへと近づき、勢いそのままでアンリエッタを担ぎ上げて窓を破壊し、外へと飛び出した。
「くそッ!」
男が出て行った後、風が止み動けるようになった僕はすぐさま窓から乗り出し、辺りを見回した。
「リオンあそこッ!!」
僕と同じように身を乗り出していたルイズが叫び、ある方向を指さした。
そこには城の騎士達が駆る竜に追い回されている大きなグリフォンが飛んでおり、その背には男とジェームス1世、そしてぐったりとしているアンリエッタが乗っていた。
「騎士に追われているわ。あれならそのうち…」
「いや、ダメだ。アンリエッタが背に居るせいでまともに攻撃できていない。そして奴らからすればアンリエッタを盾に一方的に攻撃できる」
僕の私見にルイズがはっと表情を硬くし、そして案の定騎士達は攻めあぐね、ジェームス1世らは騎士達を魔法によって撃ち落としていた。
「リオンッ!?」
「わかっている。僕たちも行くぞ」
僕はそう言ってルイズと共に城の外へと走り出した。
とりあえずのモブキャラ紹介
【南地区の店の店主夫妻】
・旦那さんは金髪ロングで元気はつらつな熱血漢。
・奥さんは黒髪のショートで金銭にシビアな守銭奴。
・旦那さんは元騎士であったがトレジャーハンターだった奥さんと出会い、なんやかんや在って結婚。10歳になる息子がいる。
・お店は孤児院としても兼用しており、寝起きの悪い旦那及び子供達には奥さんによる『秘儀・死者の目覚め』が炸裂する。
【トリステイン銃士隊クロエ】
・17歳の黒髪の剣の扱いに非凡な才能を見せる少女。
・実家は剣で名を馳せた名門であったが、ある理由によりお取り潰しなってしまっており、騎士として名を馳せることで家を復興するために日々努力している。
【トリステイン銃士隊エレノア】
・18歳の茶髪の少女
・幼少の頃に傭兵崩れの盗賊によって村を襲われ家族を亡くし、さらに本人も胸に大きな傷が残る程の重傷を負った。
・とてもまじめな性格で、他人への思いやりを忘れないが、常に正しいことを正しく行おうとする堅物な面がある。