約3か月ぶりの更新。
夏バテによる集中力の欠如が原因って事にしといてください。
リオンSide
「リオンもっと早くッ! 姫様が連れて行かれちゃう!!」
月夜が照らす街道。馬を走らせている中、僕の後ろにつかまっているルイズが叫んだ。
「無茶を言うな。これで精一杯だ!」
「そこを何とかしなさいよッ!」
ルイズの無茶苦茶な要求に苦言を言い返しながら僕は限界まで速度を上げている馬が脚を踏み外して倒れないように注意を払いながら、前方の空を駆けるグリフォンを追いかけていた。
あれからルイズと2人して城外へと出て空を見上げると、ジェームス1世らは騎士達をほとんど片付けて逃走寸前の所であり、僕はルイズと共に急いで厩舎へと向かった。
厩舎内はグリフォンを追うために大慌てで馬の準備をしており、僕らは丁度馬具を付け終わり乗ろうとしていた騎士の1人に近づき、そしてルイズがアンリエッタに貰った権限をさっそく使って馬を奪い外へと駆け出たのだった。
「この方角…、奴らラ・ロシェールに行くつもりかッ。マズイな船に乗られたらもう追う手段が…」
「そんなッ。そうだ! 私が魔法でッ」
「バカか、お前はアンリエッタごと吹っ飛ばす気か!」
「うぐっ。じゃあ、どうするのよッきゃっ!?」
「はぁッ!」
ルイズが騒いでいるさなか前方の空から拳大の氷の
どうやら中々引き離されない僕らの事を鬱陶しいと思い、攻撃を仕掛けてきたようだ。
「ひゃあっ! あうッ。うごッ!?」
なにやらルイズが背中で何やら奇声を発しているが気にはしていられない。
更にグリフォンの上から氷の飛礫や空気の塊が飛来してくるのを僕は避けて何とか追いすがって行こうとするも、
「ダメだ。離されるッ」
「ちょっ、何とかしなさいよリオン!」
「無茶をッ」
と、そうこうしているうちにもグリフォンとの距離は離れて行き、ついには夜の暗がりの中見失ってしまった。
ワルドSide
「彼らは撒けたか?」
僕は被っていたフードを払い、後ろに乗っているジェームス1世に声を掛けた。
「ええ、この距離まで離れればもう馬では追いつけないでしょう」
ジェームス1世は私の言葉に返しながら杖を仕舞うと憎々しげにアンリエッタを睨みつけた。
「ふっ、そんなにその女王が憎いか?」
「ええ。我々の王族としての誇りと矜持を汚し、己が我儘の為に刺客を送って我が息子を騙し、無様に生き延びさせるとは…。まったくもって度し難い。同じ始祖ブリミルの血に連なる者としてこれほど許しがたいものは有りませんよ。連れ帰った暁には皇帝殿の前に
ジェームス1世はそう言ってくつくつと生前にはけっして浮かべることの無かった暗い笑みを
何故ジェームス1世が怒りに身を焦がしているのか。それは彼とガイウス将軍がクロムェルの虚無によって生き返された際に起きた記憶違いが始まりだった。
ガイウス将軍は生き返って直ぐにジェームス1世に、言いつけを守り手紙を託してウェールズを生き延びさせた事を伝えたのだが。
なんとジェームス1世はそんな手紙書いていないし、死に際には僕に一瞬で絶命させられたのでガイウス将軍へも言葉を交わしていないと言うのだ。
そして僕も確かに刺客ではあったがジェームス1世を手にかけた覚えは全くない。
そのことからあの場には僕以外にも何かを企んでいた者がおり、ウェールズを騙して生き延びさせたと言う事から、もしかしたらアンリエッタが私情に走り刺客を放ったのでは? と言うような推察が出来上がり彼は怒りに震えエンリエッタ、ひいてはトリステインへの断罪を胸に誓っていた。
「ま、好きにすればいいさ。こちらとしてはアンリエッタが手中にあると言う事実がッッ!!?」
僕はジェームス1世から目を離し、ラ・ローシェルの外れにある拠点へとグリフォンを加速させようとした時、真横から強烈な衝撃を受けた。
「くっ、攻撃だと!?」
「な、何がッ」
「アンリエッタを落さないように注意しろ!」
僕はジェームス1世に叫ぶと、ふらつくグリフォンを立て直して攻撃が来た方角を睨みつけた。
「世を騒がし、要らぬ戦乱を起こす悪しき者よ! この私、ウルタス・ブイが始祖ブリミルの名の下に正義の鉄槌を下そう」
睨みつけた先、風竜の背に立った1人の覆面の男が剣先を此方へと向けてそう言い放ってきた。
「ウルタス・ブイとは…。演劇の練習は他でやって欲しいものだね」
僕は
リオンSide
「……なんだ?」
グリフォンを見失ってしばらく、もしかしたらと思いとりあえずはラ・ローシェルまでと馬を走らせていたところ、前方から戦闘らしき音が聞こえてきた。
「え、なに? 誰か戦ってる?」
僕は馬を加速させ音のする場所へと急いだ。
「せいッ!」
「はあッ!!」
戦闘音のする場所へ近づいて行くとそこでは竜に乗った覆面の人物とグリフォンに乗った男…いや、フードが取れ素顔を晒したワルドが戦っていた。
「ワルド!」
「やはりあいつだったか」
僕とルイズはフードの男の正体にそれぞれの反応を表しつつも、馬を更に走らせて僕の晶術の有効範囲まで近づいていく。
「ルイズ、アンリエッタを受け止める準備をしておけ!」
「え!? ちょっと何する気!!」
僕はルイズに指示を出すと馬から飛び降りて、上空で入れ替わりに動き回るグリフォンへとよく狙いを定めて詠唱を始める。
「ちっ、下からくる! 迎撃をしろ!!」
ワルドがジェームス1世に指示を出すが遅い。
「デモンズランス!」
僕は右手に発生させた暗黒の槍を振りかぶりグリフォンへと投げつける。
「グギャーッ!!!」
ジェームス1世は高速でグリフォンに向かってくる槍の対処に間に合わず、槍はグリフォンの翼を貫き、斬り裂いた。
片翼を裂かれダメになった事と痛みとでグリフォンは大きく身をよじりバランスを崩しながら墜落していく。
もちろん背に乗っていた3人は振り落とされるがワルドとジェームス1世は自力で落下を防ぎ、意識の無いアンリエッタは…
「れ、レビテーション!」
ルイズが必死の形相で杖を振り、魔法を発動させて上手く受け止めた。
「この馬鹿リオンッ!! なんて真似するのッ! 姫様が死んじゃったらどうするのよ!!?」
「騒ぐな。何のために指示を出したと思っている」
ルイズはアンリエッタを抱きかかえながら顔を真っ赤にして叫んでくる。
まあ多少は無茶をしたとは思っているが、下手に慎重になるよりかは最良な手段を選んだつもりだ。
「無茶苦茶よッ! それに私には魔法を撃つなって言っときながらあんたは何の躊躇も無くグリフォンに使うなんて、バカじゃないの!? 外れて姫様に当たったらどうする気よッ!!」
「はぁ。僕を爆発でしか攻撃できないお前と一緒にするな。大体、僕がこの程度の距離で外すはずないだろ」
「む。で、でも、もしさっきのレビテーションが失敗しちゃってたら……」
「あの日からコモン・マジックが使えるようになったっとバカみたいにはしゃいで、部屋に居るのにドアの鍵すら魔法を使って開けてた奴が何を言っている?」
「ぐぬゅぬゅぬゅ……」
とルイズに僕が言い返してやると奇妙な唸り声を出して睨んできた。
ちなみにあの日とはタルブ村での戦いから帰った次の日のことで、使えるようになった理由としてはルイズ自身が系統魔法に目覚めたからかもしれないとの事だ。
「いや、少年よ。さすがに今のは私も苦言を呈させてもらいたいものだ」
と、先ほどまでワルドと戦っていたもう覆面の人物がやたら演劇口調で僕たちの横へと風竜から降りてきた。
「え? そのお声は、うぇ…」
「私の名はウルタス・ブイ! 通りすがりの正義の味方さ」
ルイズがその声から覆面の人物の名前を言おうとすると、覆面の男は大きな声で名乗りを上げた。
さすがに自分の身がバレるのはマズイとは理解しているらしく、前回のカツラと付け髭の空賊姿とは違い今回は覆面を使い、更に作り声で誤魔化そうとしている様だ。
ただ……
「さすが、アルビオンの元王子だ。風竜の手綱さばき、そして空中戦での剣さばきと、あの聖堂で戦った時とはまったくの別物で骨が折れるよ。ウェールズ」
「おお、ウェールズよ! よもやこんなにも早く会えるとは思ってもみなかったぞ」
「……わ、私はウルタス・ブイ! ウ、ウェールズなるアルビオンの王子とは別人だ!?」
それが上手くいっているかどうかは別物のようだ。
ウェールズを追って上から降りてきたワルドとジェームス1世はウェールズの名乗った偽名を完全に無視して本当の名前を遠慮なく連呼していた。
「何を言っとるか。その風竜の手綱さばき、そして空中戦での剣と魔法による見事な技。何より、この私が大切で誇りに思う息子の声を忘れてるとでも思っておるのか!」
「ぐッ」
と、ジェームス1世の言葉にウェールズは言葉を詰まらせた。
はぁ…、せっかく変装しているのにそんなあからさまな態度を取っていたら意味がないだろう。
「まったく、落ち着けウェ…ウルタス・ブイ。一々相手の言葉に反応していたらボロしか出ないぞ」
「む、そうだな。すまないリオン君。ゴホンッ。ちち…ジェームス1世はあの日、アルビオンにて刺客に殺され、そしてその遺体はガイウス将軍と共に誇りを抱いて敵軍へと向かった。
それ故にジェームス1世が生きているなどあり得ない。偉大なるアルビオン王の名を騙る貴様は一体何者だ!」
ウェールズは咳払いをして一旦落ち着いた後、大振りな仕草でジェームス1世へと剣を向けて糾弾するように声を上げた。
するとウェールズからの言葉にジェームス1世は俯いて小さく笑い、そして顔を上げ、
「確かに私はアルビオンにて卑劣な手によって殺された。しかし、私はかの皇帝の扱う伝説によって新たなる命を貰い生き返ったのだよ」
と、その言葉を皮切りにアルビオンでその身に何が起きて、そして何故彼がレコン・キスタ側の協力をしているかと言うのを説明し始めた。
現在のアルビオンの状況。新アルビオン皇帝が使う虚無の魔法による死者の蘇生。
そしてジェームス1世の暗殺と手紙の真実。
「ウェールズよ! 我らはそこな愚劣なる
ウェールズよ。アルビオンは虚無の御力をもつ皇帝により始祖ブリミルの加護をもって新たに生まれ変わる。そして、それを支える事こそが元アルビオン王族であった我らの新たなる役目なのだ。
さあ、そのようなふざけた被り物など脱いで私と共に来い」
ジェームス1世は最後にそう締めくくるとその手をウェールズへと招くように差し出した。
【どうでもいい設定】
・ウルタス・ブイ物語
トリステイン城下町の劇場で公開されている、貴族・平民双方に分け隔てなく大人気の演目。
一昔前にとある商人の男が小さな劇団へと物語を話し聞かせたのが始まりであり、以降数十年に渡って愛され続けられている演劇。
余りにも人気過ぎて一時期、貴族のお嬢様と使用人が駆け落ちして居なくなると言う騒動が頻発した。(ただし、その内の7割が一月と経たずに思ってたのと違うと言う理由から屋敷に戻ってきた)