青いチビの使い魔   作:だしィー

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1月以内更新を数年ぶりに成し遂げた気がする。




夏季休暇

 キキSide

 

タバサの実家から帰って来てはや2週間程が過ぎた。

 

あの後、学院へと帰って来てから俺は本当にタバサの部屋を追い出される事になった。

今では学院端にある使用人用の寄宿舎に寝床を移すことになり、そこで寝泊まりをするようになった。

ちなみにエルザのご飯(吸血)のこともあるので、エルザと一緒である。

 

と言っても本当に寝泊まりだけで、それ以外は大体今までと同じでタバサのそばに居る感じである。

 

そいで他に変わった事は1週間前から学院が夏季休暇に入った事。それと変わったとは違うけど、ちょっと面倒になりそうな事が起きた。

学院に帰って来てからしばらくした日の朝の鍛錬の時、リオンから俺の世界で死者の蘇生技術はあったのか? と言う質問を受けた。

 

突然の質問に俺は理由を尋ねたら、多少言い渋っった感じだったけど少し前にあったお姫様の誘拐事件のことをざっくりと説明してくれた。

 

そしてそれを聞いた俺は表情に出さなかったけれども、内心は大変動揺していた。

いやだってあの時色々やったの俺だし…。

 

さすがに俺が何かしたとは微塵も勘づいてはいないみたいなので、下手に嘘はつかずに俺の世界の死者蘇生術の1つである『穢土転生(えどてんせい)の術』の事を教えた。

 

ただ術の説明に少しの誇張や多少誤ってるかもしれない自己解釈的な部分が含まれているので正確に相手に伝わったかどうかは分からないですけどねッ!

特に蘇った人の記憶の事とか意識の事とか。

 

まあそんな感じの説明を聞かせたリオンは考えごとをする様にあごに手を添えて瞑目した。

その姿は普通にカッコ良く絵になり、羨ましいと思った。このイケメンめ。……まあいいか。

 

それから後リオンは何かに納得したのか軽く頷くと俺にお礼を言い、その日の鍛錬を終わりにした。

ちなみに、夏季休暇に入った次の日からリオンとルイズは共に街へと出かけてから戻ってきていない。

 

たぶん原作の何かしらのイベントがあったはずだけどよく思い出せないので気にしないことにした。

何かあればジンから話が来るだろうしな。

 

まあ、そんなこんなでこの夏季休暇中の学院は暇である。

ガリアからの依頼も全く来ず、授業も無く、日がな一日タバサと本を読んでいるぐらいで基本暇である。

なんてすばらしい日々なのだろう。怠惰な生活最高である。

 

まあ、多少不満があるとすれば休みに入ってから街に1人で遊びに行けていない事ぐらいである。

出かけようとするとタバサが一緒に行こうとしてくるので贔屓にしていた店に行けなくなったのだ。

 

「ねえ、シャルロット! 街へ遊びに行きましょう」

 

そして今日も暇を飽かして本を読んでいる中、タバサの部屋へと遊びに来ていた…まあ正確に言うならタバサの使う魔法で涼みに来ていたキュルケがそんなことを叫んだ。

 

「……タバサ」

 

「ああ、そうだったわね。学院(ここ)じゃあタバサのままの方がいいのよね。そんなことよりこんな暑い寮にこもってちゃ頭がおかしくなっちゃうわ」  

 

と、キュルケがタバサの体を揺らしながらわーわー叫ぶ。

ちなみに、暑いとは言われているが生前の日本や少し前までいた火の国の湿気の強い夏に比べれば、この地域は乾燥しており、どちらかといえば爽やかでとても過ごしやすい。

 

「帰省しないの?」

 

「そりゃあゲルマニアの方はここより涼しいかもしれないけどね。帰るとまあ色々大変なの知ってるでしょ? 手紙では自由にしなさいって書いて来てるけど、あの両親のことだから帰ったら絶対にお見合いさせられるわよ」

 

と、タバサの質問にキュルケはやれやれと肩を(すく)めて首を振った。

 

そんな設定だったっけ? と俺はキュルケの話しに対して原作の内容を思い出そうとするが、全く思い出せないので考えるのをすぐやめた。 まあ思い出したからってどうなるって訳では無いしね。

 

「そんな事よりもッ! とにかく街へ行きましょうッ。もう決めたわ。遊びに行くわよ! さあ出発よ!」

 

まあそんなどうでもいい事を考えていたら、いつの間にかキュルケはタバサの手を引き、ベットから引っ張り上げて部屋を出て行ってしまった。

相変わらずアクティブだなぁとキュルケに感心しながらも、置いていかれるのも寂しいので俺はいそいそと2人の後を追って部屋を出た。

 

 

 

 

 

 タバサSide

 

時刻が夕刻に差しかかった頃に私たちはトリスタニアの城下町に着き、キュルケを先頭にチクトンネ街をフラフラと歩いていた。

 

「さて、どこに行こうかしら?」

 

と、キュルケは辺りを見渡しながらどの店に入ろうかと誰に聞くでも無く言葉にした。

 

「ねえ、やっぱりブルドンネ街の方に行きましょうよ。態々(わざわざ)チクトンネ街に来なくたっていいじゃない」

 

とキュルケの言葉をきっかけにモンモランシーが眉をひそめながら文句を言った。

ここチクトンネ街は賭博場や酒場が多く軒並みをそろえているのだが、その中にはいかがわしい酒場や非許可の賭場などもあり、モンモランシーには印象が悪いようだ。

 

私としては料理が美味しければどこだろうと問題は無い。

 

「何言ってるのよ。表通りのお店なんて新鮮味がなくてつまらないじゃない。せっかくなんだし面白そうで美味しいお店の方がいいでしょ? ねえどこか知ってるお店ない?」

 

しかしキュルケはモンモランシーの文句など一切気にせず、モンモランシーの隣を歩いてるギーシュへたずねた。

たずねられたギーシュはにやっと笑い、そして

 

「いや実はね。ちょっとした噂の店がってね。1度行ってみたいと思ってたんだが……」

 

「ヘンな店じゃないでしょうね?」

 

と、噂の店の事を話そうとしたら何かを察したモンモランシーの咎めるような視線と言葉に遮られた。

 

「全然ヘンな店じゃないよ!」

 

ギーシュは首を振り、すぐさまモンモランシーの言葉を否定するが、その表情は少しだけ引きつっており多少の後ろめたさを感じられた。

 

嘘はついていないが完全に潔白ではないと言う事だろう。

 

ちなみにこの2人が何故私たちと一緒に城下町に来ているかと言うと、出かける間際に寮で一悶着起こしている所に出くわし、そしてついでとばかりにキュルケが誘ったのだ。

 

「どういう店なの?」

 

「えと……」

 

「やっぱりヘンな店じゃないのよぉ~ッ!!言ってごらんなさいよぉッ!」

 

モンモランシーは質問に言いよどんだギーシュを怒りの形相で睨み、その首をしめあげた。

 

「ち、違うんだ。本当にヘンじゃ、ないんだよ。女の子が、その、とても可愛らしい恰好でね、お酒を…ぐぇっ」

 

「ヘンな店じゃないのッ!?」

 

その店の誤解(?)を解こうとギーシュが店の事を話すも、モンモランシーは納得できず更に怒りの表情を浮かべ、ギーシュの首を力強く絞り始めた。

 

ふとその時、私はキキの表情を盗み見た。

何故突然そんなことをしようと思ったのかはわからない。それでも私は目端でキキの表情を見た。

 

その時のキキはいつもの締まりのないへらへらした表情ではあったが、どこか違和感を感じた。

どこが? と聞かれると上手く説明できないが、()いて言うなら目尻がいつもより少しだけ下がっていて、そして頬が微妙に引きつっているような感じと言うぐらいだ。

 

私はそんなキキに疑問を持ったが、別段大したことではないだろうと思いキキから目を離して前を歩くキュルケ達の後に続いた。

 

「あそこが噂の店だよ」

 

しばらく歩くと先頭を歩いていたギーシュが一軒の店を指さした。

その店は他の店よりかは少し大きいと言うぐらいで他に特徴が無く、いたって普通の店のように見えた。

 

「ん~、見た目は普通ね。まあいいわ。じゃあ…」

 

「なあ、突然だけど別のいいお店知ってるからそっち行かないか?」

 

と、キュルケが店に入ろうと扉に手を掛けようとした時、突如としてキキがそんなことを言い出した。

 

「ええ? いきなり何よ? 今更違う店に向かうなんて面倒じゃない?」

 

「そうだよ。せっかくここまで来て違う場所に行くなんて…。ねえモンモランシー?」

 

「別にこんないかがわしそうな店じゃ無ければ私はいいわよ」

 

キキのその言葉に皆が疑問符を浮かべながらキュルケ達は、何故今更そんなことを? と言う様にキキに言い返した。

 

もちろん私もキキの言葉に驚き疑問を持った。

だが私の場合はキュルケ達とは違い店を変えようと言った事よりも、キキが自分から皆へ話しかけたことに強い疑問を持った。

 

彼は本人も言っていたが自身が言いたい事を喋るのは大丈夫だが、誰かと会話するのはとても苦手だと言っていた。なんでも相手の意図に合わせて話しを続けることが不得手だとか。

 

なので、彼がこのように唐突に複数の人に話しかけると言う事自体とても珍しいのだ。しかも、ほぼ決まっていた事を覆すような事を言うなんて…‥。

 

怪しい。

 

何がとは言わずもがな、彼はどうやらあのギーシュが案内した店に入りたくないようだ。

それは何故?  彼にとってこの店に入られるのがとても困るからだ。

何故困る?  何か彼にとってやましい事があるからだ。

やましい事とは?  隠し事だ。……何を隠しているのだろう。

 

いや、(わざ)と考えをぼやかすのはよそう。

彼はこの店を常連なのだろう。しかも特定の人物を目的としている。

もちろん証拠なんてない。ただの勘だ。

 

イラっと、心の中に黒い感情がともった。私の事を差し置いて別の女性と会っていたとは少し話をしなければ……っと、そうじゃない。落ち着け私。

 

店がそういう雰囲気だからと言って、会っているのが女性とは限らないではないか。

私が知らないだけで男性の飲み仲間がいるのかもしれない。

 

だが、でも、と私は悩み、答えの出ない考えを一旦止めてふと顔を上げると、キキを嫌っているキュルケはともかく、ギーシュとモンモランシーはキキによる例の詐欺師紛いの話術で店を変えようかと意見を出し始めていた。

 

このままでは別の店へと移動することは確実になるだろう。

色々考えたが、とにかく彼がこの店に関して隠し事をしていると言うのは確定だ。

ならば私のやることは一つだけ。

 

私は皆が話している間に気配を消し、素早く店の扉へと近づいて……そして、

 

「「「「!?」」」」

 

カタンッと態と音を大きく立てて扉を開いた。

話し合っていた皆は私が扉を開けて入ろうとしている事にポカンとした表情で止まっていたので

 

「早く入る」

 

と、一言声を掛けて私は店へと入店した。

すると

 

「あらま。まあタバサが入っちゃったしやっぱりもうここでいいわよね」

 

と、キュルケが入り、

 

「うむ、まあそうだね。入ってしまったのならいいか」

 

「何でもいいわよ」

 

と、ギーシュとモンモランシーが入る。そして…

 

「……え、いや、別の、別のね…」

 

「早く入る」

 

「……おうぅ」

 

最後に動揺しているキキを睨み、無理矢理入店させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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