前回から8ヶ月も経ってしまった。
日本語が所々変かもしれない。
タバサSide
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
いつまでも店に入りたがらなかったキキを連れ込んだ後、店内を少し見回していると近くに居た茶髪の私たちと同い年ほどの少女が私たちに気づき、声を掛けながら駆け足気味に近づいて来た。
「5人よ。一番綺麗な席に案内してちょうだい」
「はい5名様ですね。お席の方はどこもチリ1つない程綺麗にしていますからご安心を。それでは……ん?」
と、キュルケの注文に少女は淀むことなくスラスラと返答していたが、ふと私の背後を見て何かに気づいたように言葉を止めた。
そして、
「あッ、キキ殿! お久しぶりですね! ジェシカさんがここしばらく顔出してくれてないって寂しそうにしてましたよ?」
と、明るい笑顔でキキへと話しかけた。
「違うんだタバサッ、これにはちょっとした認識の違いがッ…ごめんなさい」
少女の言葉に表情を引きつらせたキキは私と目が合った瞬間に早口で言訳を並べ始めようとしたので、少々きつめに睨んで黙らせた。
さて、詳しく話を聞こうか?
ジェシカSide
「え? わたしとキキ君の関係?」
「そう」
と、わたしの目の前でキキ君に抱き付き、そして彼の脇腹へ黒い刃物を押し付けている青髪の貴族の少女が目を怪しく光らせながら聞いて来た。
アリーシャから貴族の子弟の団体さんから指名で呼び出された時は何かと思ったけどそう言う事かと、わたしは今の状況で大体の事を把握した。
わたしはチラリとキキ君に視線を送ると、キキ君は顔を青白くしつつ小さく首を横に振った。
ああ、なるほど。 そりゃあバレたくはないよねぇ。まったく、キキ君はしょうがないな~。
「関係って言ってもたいしたことないわよ。キキ君はこの店の常連さんで沢山の注文とチップをお店に落としてくれる超お得意様って感じかな? 寂しいって言うのもキキ君が来てくれないと私の懐が寂しくなっちゃうって言う意味なのよ」
「…そう」
わたしの喋った内容に青髪の少女、…多分キキ君がよく話しているタバサちゃんなのだろう…、が、納得したのかキキ君に押し当てていた刃物をゆっくりと下げ、同時にキキ君も安心したように身体中の力をぬ抜いた……ところで、
「まあ、何度か肌を重ねたりもしてるから最近じゃ夜が寂しいってのもあるんだけどねー」
「ジェシカッ!? あ゛ぁああ!!? タバサストップ! 刺さる刺さる!」
ちょっとしたイタズラに爆弾を落としてみた。
結果は予想通り。
タバサちゃんはキキ君へと体当たりするように覆いかぶさって刃物を彼の胸に突き立てようとし、キキ君はそれに必死に抵抗するという、修羅場が出来上がったと言う訳さ。
「あはははははははは」
「ジェシカ何笑ってんのッ!? 助けて! 誰か助けて!!」
キキ君の助けを乞う言葉にわたしは勿論のこと、一緒に入ってきた子達も誰も助けようとはしない。
金髪の男の子とロール髪の女の子は関わり合いたくないかのように席の端の方へと離れていき、赤髪の子はキキ君が痛めつけられている事が面白いのかニタニタ嗤ってお酒を優雅に飲んでいた。
「何してるんですかッ!? 店内での
しばらく騒いでいたらアリーシャが何事かと様子を見に来て、すぐさまタバサちゃんをキキ君から引き離した。
引き離されたタバサちゃんの目は、それはそれは恐ろしいほど冷たく暗い感情が渦巻いているのが見えた。
あらら、ちょっとやり過ぎちゃったみたいね。てへ。
「ジェシカ…、お前…」
解放されたキキ君が恨みがましい声と視線を向けてきたので、
「てへぺろっ!」
と、最近街で流行っている失敗した時の可愛いポーズをしてみた。
キキ君はわたしのその可愛さにぐうの音も出ないのか、唖然とした表情をした後、テーブルに頭を落した。
「で、実際のところどうなの?」
「詳細に」
と、赤髪の子が聞いてくるとタバサちゃんもグイっと詰め寄ってきた。
「どうって言われても…。最初はホント気前の良いただの常連さんだったのよ。色々注文してくれるし、チップ沢山くれるし、お酌の時のわたし達の分もケチらないで頼んでくれるしでね。
で、こっからが本題なんだけどね。キキ君ってお酒弱くて、しかも泥酔した際の酒癖が悪いって言って、いっつもワインをグラス1杯しか飲まないのよ。
だからわたしね、ちょっとした好奇心で店で一番強いお酒をキキ君がいつも飲んでる奴と入れ替えて飲みさせてみたの。そしたらキキ君あっという間に泥酔してね。
まあそっからが凄いのなんのってッ。人間が変わるってまさにああいうこと言いうんだなぁ。
ヘラヘラしてた表情がキリッってなってね。いきなりあたしの肩を抱いて寄せたと思ったら、ものすごく情熱的に口説いて来たのよ。
いっつもヘラヘラして飄々としてる風を装ってるけど、実際はただ単に人見知りで喋るのが下手クソだから
もうそりゃあ凄いのなんのって、それでわたしもいつもお金を沢山貰えてるし一晩ぐらいはって思っちゃって…。
で、まあ、なんていうか、キキ君の身体って逞しいって言うか男らしいていうか、なんか色々あるじゃない?
と、そう言う訳なんだけど…ね?」
わたしがキキ君との馴れ初め、と言うか惚れちゃった訳を話すと赤い髪の子は眉を寄せてえぇ~? と表情を曇らせ、タバサちゃんはうんうんと何かに納得したのか何度か頷いていた。
「いや、ちょっと待って。それは…何か禁薬的な物でも飲まされたの? 今の話しにアナタがコレに惚れる理由が全く無いのだけれども?」
「えへへ、キキ君って性格はちょっと問題あるけど、それがまた好いと言うかイジリがいがあると言うかね。
泥酔して手を出して朝起きた時のキキ君の『うわぁ、またやっちゃった』って言う自己嫌悪の表情がたまらないって言うか…。
にもかかわらず、またやって来てはお酒って言う免罪符を自分から飲んで一晩過ごすっていうクズさダメさ加減って言うか…。そこがね……うふふ」
「タバサ聞いたでしょ!? 今すぐコレ首を落すべきだわ! この娘も相当ヤバイきがするけどそんなことは置いといて、コレの本性がもう救えないようなクズだってわかったでしょ? って何彼女の話しに共感するように頷いてるの!? お願い目を覚まして!」
ルイズSide
「なんかとても酷いものを見たわ」
魅惑の妖精亭の厨房。そのカウンターでげんなりとした表情で私は呟いた。
何故私がこの店にいるのかと言うと、とある高貴な御方から拝命したちょっとした極秘任務の為と言っておくわ! 諜報作戦中なの。こういう酒場で働きながら色々な情報を集めてるのよ!
決して考えなしにお金を使って文無しになったとかじゃないの。リオンに泣くまで説教された上での労働とかじゃないの。変な勘くぐりしないでよね!!
んん、ちょっと感情的になったわ。
そんなことより、キュルケ達が突然店に入って来た時にはびっくりしたけど、ジェシカが相手してくれたみたいでよかったわ。
こんなヒラヒラで下着みたいなエッチな支給服であいつの前に出たら一生笑い者にされるに決まってるからね。
それにしても
「ちょいちょい変な事言うなぁとは思ってたけど、確信したわ。ジェシカってヤバイ人なのね」
私はキュルケ達が座っていた席からお皿やグラスを引きあげてきたアリーシャに話しかけた。
「普段はまともなんだ。ただ、好きな人に対して気持ちのタガが外れやすだけなんだ」
「いや、あれはそんな生易しい様子じゃなかったわよアリーシャ」
と、キュルケ達を2階の宿部屋へ案内してるジャシカをジト目で見ながら言い返した。
「でも…普段はあんなんではないし、とても気立てが良くて世話焼きでいい人なのだが…」
「まあ、分からないでも無いけど実際に今のを見ちゃうと…」
「あー…」
「なに、わたしの話?」
私とアリーシャが話していると、その話題の本人がやってきた。
「あー、まあそうね。……その、何て言うか例の人にそのこと言わなくて良かったのかなぁって」
私はやってきたジェシカのお腹を見ながらそう言った。
その、ジェシカのお腹には例のタバサの使い魔の人との子がいるのである。
最初聞いた時は結婚もしていないどころか、恋人同士ですらないのに子供を作ってしまうなんてと大きく取り乱したものだけどジェシカは全然気にしていないどころか、その人との子が出来た事を嬉しがっているようで、私は何も言えなくなってしまったのだ。
「あ、この子のこと? 本当はさっき言い出そうとしたんだけど、実はもっと驚かせられるタイミングで明かそうかなって思って止めたんだ」
驚かせるタイミングって、普通子供が出来たってだけで驚くと思うけど…。
私はジェシカから漂ってくる只ならぬ気配に嫌な予感を覚えながらもついどんなタイミングと聞き返してしまった。
するとジェシカはまさに花が咲き誇ったような満面の笑顔で、
「え? うっふっふ。それはねぇ、………キキ君とタバサちゃんが結婚式を挙げた時に、キキ君の子よって生まれたこの子を見せてあげるのよ! きっとすっごく驚くと思うのよね!」
と、宣った。
それは驚くでしょうね。そして花嫁の衣装が新郎の返り血で真っ赤に染まるでしょうね。
《どうでもいい情報》
『魅惑の妖精亭店員アリーシャ』
とある貴族とその妾の間に生まれた娘。
父親からは可愛がられていたが正妻からは嫌われていた。
不慮の事故により両親が亡くなると、正妻や親族一同から追放当然に捨てられる。
なんやかんやあってスカロン店長に拾われ店で働くようになる。
ルイズとは幼い頃からの文通友達で妖精亭での再開で1年間音信不通だったことを心配される。
父親の教育で正義感が強く騎士に憧れていたこともあり、堅苦しい言葉遣いをするが、本来は明るく女性らしい人柄。
『魅惑の妖精亭看板娘ジェシカ』
何か頭のネジがいくらか飛んでしまったジェシカ
自覚は無いが好きになった人が堕落して不幸になってもがく姿に喜びを見出す。