「この話には教訓がある…一度生まれたミームは、そう簡単には死なない」

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企業展示会潜入

 連なる山々より高く、天を覆わんばかりの黒い傘。

 巨大な支柱から広がる多層構造の建築物は、灼けた空を狭く見せる。

 その眼下には厚い雪が降り積もり、ひどく寒々しい景色が広がっていた。

 コーラルの汚染によってルビコン3は寒冷化へ向かっている──

 

≪くっ……これが独立傭兵だと!?≫

 

 白の世界を疾駆する鋼の巨人が、右腕に装備したバーストアサルトライフルを連射する。

 3発の曳光弾が連なってターゲットへ走っていく。

 

 しかし、全弾命中せず──ならば、高誘導ミサイルの出番だ。

 

 大豊核心工業集団の開発した重量AC(アーマードコア)を駆る傭兵は、躊躇なく背部武装を発射した。

 白を吹き散らして雪原を下る機体の背面から閃光が走る。

 

≪喰らえ…!≫

 

 発射されたミサイルの噴射炎が白い闇を照らす。

 バーストアサルトライフルを連射し、ターゲットの回避を牽制。

 彼我の距離は徐々に縮まっていく。

 

 雪が舞う劣悪な視界の中──コーラルを燃焼させた紅蓮の光が迸る。

 

 火を()べたブースタの生み出す急加速。

 アサルトブーストを使用したターゲットは、高誘導ミサイルに向かって突進する。

 

≪こ、こいつ!≫

 

 直撃の瞬間、空中を横へと滑った。

 それで推進力が尽きることはなく、重量ACへ真正面から肉薄する。

 両者は同時に砲火を放った。

 

 赤熱した弾丸が交差──装甲を削り、火花が舞う。

 

 被弾による焦燥を噛み殺し、傭兵はトリガーを引き続ける。

 ターゲットの射撃は正確だが、マシンガンでは大豊の重量ACは貫けない。

 しかし、それはACS(姿勢制御システム)に多大な負荷を与え、致命的な破綻を引き起こす。

 

≪ぐぁっ!?≫

 

 コクピットを警報が反響し、重量ACの巨躯が雪原に落下する。

 白に沈み込み、鋼の四肢は自由を失った。

 

 そこを逃すはずがない──コーラルの燐光を纏う巨人が、吹雪の中より現れる。

 

 探査用のパーツで構成されたACは一見非力。

 しかし、アイガードの赤き複眼だけは、無機質な殺意を宿していた。

 

≪ACS負荷限界だ、直撃を狙え≫

 

 飼い主(ハンドラー)の指示を聞き、猟犬は獲物を仕留めに掛かる。

 引いた左腕に装備したパイルバンカーの撃鉄を起こす。

 炸薬に発火、加速する鉄杭。

 

≪待っ──≫

 

 爆発、衝撃、そして金属の甲高い悲鳴が鳴り響く。

 

 それらを吸い込んで雪が舞う──決着は一瞬だった。

 

 重量ACの頭部センサーから光が消え、胴体から鉄杭が引き抜かれる。

 制御を失った巨躯が雪原に沈む。

 

≪お前を相手に単機とは……不憫なことだ≫

 

 アイガードが後頭部へ格納され、現れたカメラアイが鉄の亡骸を見下ろす。

 名の売れた独立傭兵は敵も多い。

 報酬に目が眩んだ同業者の襲撃は、()()()()()だ。

 

≪帰投しろ、621≫

 

 名を呼ばれた猟犬は亡骸から興味を失い、ルビコンの地を見渡す。

 ハンガーに装備したアサルトライフルとマシンガンを交換、ジェネレータの出力を引き上げる。

 コーラルの火を燃やし、鋼の巨人は白い闇の中へ飛び去った。

 

 

『新着メッセージ、3件』

『──戻ったか、621。さっそくだが、ベイラムグループとアーキバスグループから依頼が入っている。内容は……お前の仕事だ。嫌なら断ってもいい』

『ビジター、RaDのチャティ・スティックだ。先日の資料収集では世話になったな。ボスは大豊のマスコットキャラクターが気に入ったらしい。あれから工房に篭りきりだ。用件はそれだけだ。じゃあな』

『強化人間C4-621、レイヴン──』

 

 レイヴン、依頼内容を確認してみたのですが、どちらも企業展示会という催しに関連した依頼のようです。

 宣伝に有力な傭兵を起用することで、顧客の獲得を狙っているのでしょうか?

 

 

 レイヴン、あまり気を落とさないでください。

 私は肉体よりも精神こそが重要であると思っています。

 …そもそも、大豊娘娘の胸部と臀部を強調した衣装は破廉恥が過ぎます。

 

「G13レイヴン……その、すまなかった。大豊のコンセプトである樹大枝細の意味を俺は理解していな──」

「大豊はお前の価値を理解していないようだ……話を付けておこう」

 

 あそこまで怒るウォルターを見るのは珍しいように思います。

 あの様子では時間がかかるでしょう。

 …()()()()()で展示会を回ってみませんか、レイヴン。

 

「なんだ、野良犬じゃねぇか……いや、今は負け犬か」

「やめてやれ、イグアス」

 

 G5イグアス、G4ヴォルタ…注意してください、レイヴン。

 生身の状態では分の悪い相手です。

 

「てめぇみたいな貧相な体で大豊娘娘にアサインされると思ってんのか…身の程を弁えるんだな、野良犬」

「イグアス、お前…キャンペーンガールなんざ興味ねぇって言ってなかったか?」

「う、うるせぇ!」

 

 …彼らの行動は理解できません。

 あなたに何を求めているので──後方から()()が接近してきます!

 

「なんだ、ベイ太郎かよ」

「また蹴られに来たのか、あぁ?」

 

 ベイラム・インダストリーのマスコットのようですが、この圧迫感は…

 

「G5! G13との交流に余念がないようだな?」

「は?」

 

 この声はG1ミシガン!?

 

「その有り余る元気を発散させてやろう。付いてこい。楽しいお遊戯会の始まりだ!」

「なっ!? くそっ離せ!」

「俺もかよ!」

 

 G5イグアス、G4ヴォルタの連行を確認。

 …レイヴン、いつからミールワームを頬張っていたのですか?

 貧相な体を成長させたい?

 

「やぁ、戦友」

 

 大丈夫ですか、レイヴン!?

 頬張るにも限度があります…落ち着いて嚥下してください。

 

「驚かせたようですまない…Ⅴ.Ⅳのラスティだ。君の姿が見えたから声を掛けさせてもらった」

 

 ヴェスパー第4隊長の音紋と一致、警戒する必要性は低いと思われます。

 

「この格好か? アーキバス系列シュナイダーのマスコット、シュナやんだ」

 

 一見頼りないようで愛嬌のある姿…大豊核心工業集団とはアピールする層が異なっているようです。

 

「君は大豊の依頼を受けたと聞いていたが……ここは助け合いの精神といかないか。アーキバスはマスコットが()()()()で、展示会の成功も危うい」

 

 ベイ太郎に酷似した等身ですが、あれがアーキバス・コーポレーションのマスコットでしょうか?

 しかし、あれは──

 

「私こそが企業だ!」

「スネイル第2隊長閣下!?」

「第6隊長殿、彼はアーキ坊やですよ」

 

 なぜ、光るフラフープを回しているのでしょうか?

 レイヴン、私はなんだか混乱してきました。

 

「見ている分には愉快だが、終わった後が怖い──ハンドラー・ウォルターが戻ってきたか…またな、戦友」

 

 あの格好で機敏な動作を…!?

 シュナやんの反応消失、撤退したようです。

 

「刺激になるかと思ったが……621、お前はマスコットではない」

 

 …私もウォルターと同意見です。

 

「帰るぞ」

 

 帰りましょうか、レイヴン。

 

 

『新着メッセージ、1件』

『ビジター、RaDのチャティ・スティックだ。展示会には間に合わなかったが、ボスが広報用の義体を完成させた。大豊娘娘に対抗した我儘ボディらしいが、動かすのは俺だ。ビジター、恨むぞ。用件はそれだけだ。じゃあな』

 

 レイヴン、今すぐカーラに連絡を取りましょう。

 広報用とは言え、これで…肉体よりも精神こそが重要?

 人とコーラルの共生、私はあなたにその可能性を見たのです。

 

 あなたなら…ともに歩めると──胸部は薄めで?

 

 残念です、レイヴン。




 なんだかもう良く分かりません(AM並感)

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